2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

リスクの認識、及びその管理についてはリスク管理・コンプライアンス委員会を中心に行っており、当該体制・枠組みについては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 d.リスク管理・コンプライアンス委員会」に記載しております。

また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項につきましても、投資者の投資判断の上で重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社はこれらのリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避、及び発生した場合の適切な対応に努める方針であります。

なお、本項記載の将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

<事業環境及び事業内容に関するリスク>

(1) 他社との競合について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の得意とするメンテナンス受託事業については、自動車整備の知見、オートリースをはじめとした自動車アフターマーケット領域の業界動向、幅広い整備工場とのネットワークが不可欠であることが、高い参入障壁となっており、競合の数が限定的となっております。しかし、他社のサービス力向上や価格競争により、当社のサービス、価格が相対的に低下した場合には、収益性の低下を招き、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、継続的に競合情報の入手を心掛け、市場に変化がある場合は、議論、検討してまいります。また「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営戦略」に記載したとおり、安定的な成長の自動車メンテナンス受託サービスに加えて、新しい領域へのBPOサービスの拡大によりサービス品質の向上に努めてまいります。

 

(2) 業界動向について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社のメンテナンス受託事業については、現在の主力得意先であるリース会社の方針に一定程度の影響を受けます。リース会社が自社物件の維持管理についてアウトソーシングする割合を減少させる方針を採用した場合には当社の受注に大きく影響する可能性があります。またエネルギー商社が中心となって進めている車両メンテナンス管理専門の業界共通プラットフォームが本格導入された場合には、一部の提携先からの案件について当社受託から当該プラットフォームに変更されるなど受注に影響する可能性があります。仮に上記の事案が生じたとしても、メンテナンス受託契約は受託車両のリース期間と同一期間での複数年の契約が大多数のため、直ちに影響を受けるわけではありませんが、将来的に当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金利変動による影響について

(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低)

当社は有利子負債により資金調達を行っているため、金利が上昇した場合には、資金調達コストが増加し、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、金融機関取引方針に基づき調達条件の随時見直しに努めております。

 

 

(4) 外注費の変動について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社のメンテナンス受託サービスの売上原価は自動車整備の工賃及び交換部品で構成されております。エネルギー価格及び原材料高の高騰や為替の影響により、オイル、タイヤ等自動車整備部品単価が上昇した場合、また、降雪の状況により冬タイヤの交換が増えた場合には収益性が低下し、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社では自動車整備工場の整備士不足等の外部環境変化に対応するため、2024年4月1日より自動車整備工場向け外注単価の一部値上げを実施しておりますが、今後外注単価の更なる値上げを実施した場合には、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、タイヤや高額整備部品については複数企業と取引しており、年度単位で主要外注先を選定する等リスク低減に努めており、また企業努力だけでは吸収しきれない外注費用の上昇等については、販売価格への転嫁に努めております。

 

(5) のれん及び顧客関連資産の減損リスクについて

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)

当社は、「第1 企業の概況(はじめに)」に記載したとおり、旧ナルネットコミュニケーションズの株式をLBOスキームにより取得しており、第5期事業年度末残高において、のれん及び顧客関連資産を4,505,379千円計上しております。当該のれん及び顧客関連資産について将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、急激な景況の悪化や事業環境、競合状況の変化、法規制の変更、当社の事業戦略の変更等により、将来の収益性が低下した場合に、減損を認識することにより当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、のれん及び顧客関連資産の減損に係るリスクを低減するため、主な内容は前掲の経営方針等に記載のとおり、当初事業計画に関する定期的なモニタリングと差異要因の正確な把握により当社収益性について評価し、必要に応じて業績改善・成長に向けたシナリオの策定により売上高の拡大及び利益率の向上に努める方針です。そのため、回収可能価額が事業価値の帳簿価額を十分に上回ることが想定され、減損の可能性は低いと考えております。

 

(6) 残価保証サービスについて

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低)

当社はメンテナンス受託事業に付随して、取引先であるリース会社のリース車両が満了した際の車両価格を保証する残価保証サービスを実施しております。残価保証金額は中古車市場の動向を十分に勘案して、適正な価格でのサービスを提供しておりますが、何らかの要因で中古車の市場価格が下落した場合には、収益性が低下し、当社の経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

<組織体制及び事業運営に関するリスク>

(7) 内部管理体制について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は急速に事業を拡大しており、また、新規サービスも次々とリリースしております。急速な事業拡大や新サービスによる変化に対応できず、事業規模に応じた組織体制、内部管理体制の構築ができなかった場合には、当社の業務遂行及び経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しており、組織規模や環境に応じた管理人員の増員を図り、業務の自動化、効率化、各種研修等の教育により管理体制の充実に努めております。

 

 

(8) 人財の確保・育成について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社のメンテナンス受託事業のサービス品質向上やそのための情報システム基盤の開発、また、新規サービス領域におけるオペレーションを支えるために、人財の確保が必要不可欠と考えております。当社では福利厚生を充実させ、人事戦略としてはイノベーション創出、ジョブローテーション、女性活躍の視点により採用、研修に力を入れ、より優れた人財を確保できるよう努めております。しかしながら、昨今におきましては人財確保の競争が激しく、必要な人財が確保できなかった場合、当社の業務遂行及び経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。継続的に長期視点の採用計画の検討、施策実施とともに、定着率向上の施策を実施してまいります。

 

(9) 基幹システムについて

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)

当社のビジネスはスクラッチ開発(注1)した基幹システム及び付随するシステムに大きく依存しており、現在、基幹システムのリニューアルプロジェクトが進行中です。当該プロジェクトが中断した場合、将来の収益獲得又は費用削減効果が大幅に損なわれるほか、減損が必要となる場合や当該プロジェクトについて、想定以上の追加コストが発生した場合、経営成績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。また人為的ミス、機器の故障、ソフトウエアの不具合等のなんらかの理由で大規模なシステム障害が生じた場合には、当社の業務遂行及び経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、リスクを最小限にするためにPMBOK(Project Management Body Of Knowledge:プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)に従ったプロジェクト管理を行っており、定量的な進捗管理を行いつつ、工程ごとの成果物の管理と合意を取っております。またフルリプレースではなく、分割リプレースの手法を採用し、改修範囲を限定することによりリスクの低減を図っております。さらに耐震・免振機能・自家発電装置を備えたデータセンターと定期的なバックアップによる資産保護を行いつつ、JSOXに基づいた管理体制と脆弱性診断及び不正アクセス対策等による情報資産の保護に努めております。

(注) 1.システムやソフトウエアをゼロから新たに作り上げる開発方式。既存システムを活用するパッケージ開発と比して、開発者の高いスキル・工数が必要。

 

(10) 個人情報保護について

(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は業務に関連して非常に多くの個人情報を取り扱っております。そのため、厳格な管理体制を構築する必要があると考え、2009年にプライバシーマークを取得して以降、個人情報保護について十分な対策を講じております。しかし、何らかの理由で個人情報が漏洩した場合には、当社の社会的信用の低下、損害賠償責任の発生等により、当社の業務遂行及び経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 法的規制について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は下請法、古物営業法、保険業法など、さまざまな法令の規制を受けております。当社は、法令遵守・企業倫理の徹底は企業活動を行う上での根幹であると認識し、法令遵守の周知徹底を図っております。しかし、これらの法規制が遵守されなかった場合、又は、事業に重大な影響を及ぼすような法的規制等の制定や改廃が行われた場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<その他のリスク>

(12) 自然災害や感染症の拡大等について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高)

当社は愛知県春日井市にある本社に業務機能が集中しており、自然災害や感染症の拡大等により本社が機能しなくなった場合には業務遂行に大きな影響があります。そのため、自然災害等が発生し、本社が機能しなくなった場合には、当社の業務遂行及び経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、リモートワーク可能な体制を構築しており、本社が機能不全となった場合には営業所及び在宅勤務により重要度が高い業務の遂行は可能となります。今後もリモートワークによる業務体制は引き続き継続しながら、事業継続計画(BCP)策定を協議していきます。

 

(13) 訴訟について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、当事業年度末現在において、第三者から訴訟を提起されている事実はありません。法令遵守に努めてはおりますが、事業活動を行う中で訴訟、その他の法律的手続の対象となる可能性はあり、重要な訴訟等の提起を受けた場合には、当社の業務遂行及び経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 伊藤忠商事株式会社との関係について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

伊藤忠商事株式会社が親会社であるMobility & Maintenance Japan株式会社は、当事業年度末現在、当社の議決権の35.6%を保有しているため、伊藤忠商事株式会社は当社のその他の関係会社に該当いたします。同社の状況については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載のあるとおりになります。

Mobility & Maintenance Japan株式会社は、当社の上場時において、保有株式についてロックアップの合意を行っておりましたが、ロックアップ期間経過後においては、当社株式の売却は制限されておりません。仮に同社(および伊藤忠商事グループ)が当社株式を売却する場合には、売却する株式数や売却時の市場環境等により、当社株式の流動性や市場価格等に悪影響を及ぼす可能性があります。

伊藤忠商事株式会社は、当社株式の上場後においても、当社の取締役の選解任を含む株主の承認を必要とする事項について引き続き一定の影響力を有します。さらに当社の運営その他の事項に関し、当社の一般株主と異なる利害関係を有している可能性があり、Mobility & Maintenance Japan株式会社(および伊藤忠商事グループ)が保有する株式に係る議決権行使は、一般株主の利害と異なる可能性があります。

 

(15) 株式価値の希薄化について

(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低)

当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、当社の新株予約権を付与しております。当事業年度末現在、新株予約権による潜在株式数は219,000株であり、当社発行済株式総数の5,332,100株に対する潜在株式比率は4.1%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合には、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様の利益の最大化を重要な経営目標の一つと認識しております。当社の事業の大半がストックビジネスであり、当該事業による堅調な業績及び安定した財務体質の維持が見込まれることを踏まえ、配当政策といたしましては、事業拡大のための成長投資、内部留保の充実、株主還元の最適なバランスを図り、配当性向30%を目標とすることを基本方針といたします。

内部留保資金につきましては、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現するための資金として、有効に活用していく所存であります。

また、当社は、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨を定款で定めております。

 

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年5月15日

取締役会決議

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