2024年6月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社は、事業展開上のリスクになる可能性があると考えられる主な要因として、以下の記載事項を認識しております。また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 景気動向及び業界動向の変化について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う企業経営の効率化等の動きにより当社が事業を展開するAI技術を用いた計画最適化市場は今後も拡大すると予想されるものの、景気による影響や各種新技術の発展による影響を受ける可能性があります。当社が事業を展開する市場においては、経済情勢や世界的に研究開発が進んでいるAI関連技術の技術革新等により事業環境が急速に変化する可能性があり、そのような経済情勢及び技術革新等への対応が遅れた場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社はこうした技術革新等による事業環境の変化に対応できるよう研究開発活動を推進することに加え、社外取締役を含むAIや産業分野を専門とする大学の研究者と連携し、最新の研究技術を取り込む体制を構築することで事業環境の変化に対応できるよう対策を講じております。

② 競合について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の事業に関する競合企業はあるものの、製品・サービスの特性、その導入実績、最適化技術等、様々な点から他社と比較して優位性を確保できていると認識しております。特に、当社は社会インフラ分野に特化して計画最適化システムの開発を行っており、当該開発を通じて蓄積されたノウハウ面で先行優位性があるほか、既に複数の大手企業にシステムを実装・提供し、運用・サポートサービスを開始しているため、競合企業にとっても参入障壁が高いものと認識しております。他方で、将来の成長が期待される市場であり、国内外の事業者がこの分野に参入してくる可能性があります。このため先行して事業を推進していくことで、さらに実績を積み上げて市場内での地位を早期に確立してまいります。しかしながら、今後において十分な差別化等が図られなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 業績変動に関するリスクについて

① 四半期ごとの業績変動等について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社のAI開発事業における売上高は、顧客との契約形態に従った適切な収益認識基準に基づいて計上されております。各プロジェクトにおいては、見積り時に想定しなかった事実の発覚、不測の事態の発生等により、プロジェクトの開始時期や納期に変動があった場合、四半期ごとの業績に影響が生じ、結果として通期業績に影響が生じる可能性があります。このような事態を回避するため、顧客との業務範囲・要件の明確化を図るほか、プロジェクトの積み重ねによる工数見積り精度の向上を図ってまいります。

② プロジェクト収支の悪化による業績変動の可能性について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社は、プロジェクトごとに収支管理を行っておりますが、プロジェクトの状況によっては当社の業績に影響が生じる可能性があります。また、各プロジェクトについては、想定工数を基に見積りの作成をしており、乖離の生じないように工数管理を行っておりますが、見積り時に想定しなかった事実の発覚、不測の事態の発生等により工数が増加した場合、プロジェクト収支の悪化を招き、当社の業績に影響が生じる可能性があります。このような事態を回避するため、顧客との業務範囲・要件の明確化を図るほか、プロジェクトの積み重ねによる工数見積り精度の向上を図ってまいります。

③ AI開発事業の業容拡大期における業績変動について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社は、2016年6月期よりAI開発事業を始め、着実に実績を積み上げてまいりましたが、運用・サポートの開始は2022年6月期であり、開発の実績及び経験について今後も積上げが必要な段階にあると考えております。そのため、新規受注の進捗の遅れや開発期間の延長により売上が下振れる場合があり、当社の業績に影響が生じる可能性があります。また、AI開発及びシステム開発における新規受注の進捗の遅れは、運用・サポートというストック型売上の伸び悩みにも繋がり、同様に業績に影響が生じる可能性があります。このような事態を回避するため、受注進捗に合わせた営業活動の適切なマネジメントや開発の標準化及びモジュール化を推進してまいります。

④ 繰延税金資産の回収可能性の評価における影響について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることに加え、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提となる条件や仮説に変更が生じた場合、繰延税金資産及び法人税等調整額に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 技術革新の影響によるリスク(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社の事業に関連するAI技術は、世界的に研究開発が進んでおり、技術革新のスピードが極めて速い分野であります。当社はこうした技術革新に対応できる研究開発活動を推進することに加え、社外取締役を含むAIや産業分野を専門とする大学の研究者と連携し、最新の研究技術を取り込む体制を構築することで、AIを活用した事業により事業基盤の拡大を図ってまいります。しかしながら、技術革新への対応が遅れる可能性もあり、その場合には当社の競争力が低下し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) コンプライアンス・法的規制に関するリスクについて

① 法的規制等について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日現在において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育等を行っていく方針でありますが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 知的財産権について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、事業運営の際に第三者の知的財産権侵害等が起こらないような管理体制を構築しておりますが、第三者の知的財産権に抵触しているか否かを完全に調査することは極めて困難であります。このため、知的財産権侵害とされた場合には、損害賠償又は当該知的財産権の使用に対する対価の支払い等が発生する可能性があり、その際には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。このような可能性を最小化するため、特許の侵害調査については、新規の製品・サービスの提供開始に先立つ個別調査と、継続的な年次調査を行うこととしております。

③ 情報管理について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社では、その業務の性格上、顧客側で保有している秘密情報(経営戦略上重要な情報等)に触れる場合があります。情報の取扱いについては、情報セキュリティ管理規程等を整備し、適切な運用を義務づけております。このような対策にもかかわらず当社の人的オペレーションのミス、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入等による情報流出、重要データの破壊、改竄等により何らかの問題が生じた場合には、当社が損害賠償責任等を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、その場合は当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 訴訟等について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社では、本書提出日現在において業績に影響を及ぼす訴訟等は生じておりません。しかしながら、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟等が発生する可能性は否定できず、かかる事態となった場合、その経過又は結果によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。訴訟等への発展を未然に防止するため、コンプライアンス・リスク委員会においてリスク管理に必要な情報の共有化を図り、コンプライアンスに関する取り組みを推進するほか、コンプライアンス違反の事例が生じた場合に迅速な対応、事実関係の調査、再発防止策の立案等を行うこととしております。

 

(5) 事業運営体制に関するリスクについて

① 小規模組織であることについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は2024年6月30日現在、従業員97名と小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものとなっております。当社は今後の事業拡大に応じて従業員の育成、人員の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 人材の確保と育成について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は今後更なる成長を成し遂げていくため、優秀な人材の確保と育成を重要課題の1つであると位置付けております。当社は優秀な人材の採用を進めるべく採用手段の拡充等の採用施策を講じておりますが、これらの要員を十分に採用できない場合や、採用後の育成が十分に進まなかった場合、あるいは在職中の従業員が退職する等した場合には、受注するプロジェクトの開発に制約が発生することや、受注したプロジェクトの品質・利益率の低下を招き、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 特定人物への依存と筆頭株主との関係性等について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の代表取締役社長である曽我部完は、当社の創業者であり、設立以来当社の経営方針や事業戦略の立案やその遂行において重要な役割を担っております。当社は特定の人物に依存しない体制を構築するべく、他の役員や従業員への情報共有や権限の委譲によって同氏に過度に依存しない組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社における業務遂行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、同氏の資産管理会社である株式会社Weは当社の筆頭株主であるほか、同氏が過去に代表取締役(2021年9月退任)であった株式会社清長の全株式を保有しております。同社は物流アウトソーシング事業及び物流コンサルティング事業を営んでおりますが、当社の事業との関連性はありません。そのため、これらの会社と当社との間で関連当事者取引の発生は想定しておりませんが、取引が発生する場合には、関連当事者取引管理規程に従って管理することにより、統制を図ってまいります。当社は関連当事者取引管理規程において、原則として関連当事者取引を行わないことを方針として明記しつつ、例外的に関連当事者取引を開始する場合には取締役会(本書提出日現在において独立社外取締役2名を含む。)の承認を得た上で実施し、実施について取締役会に報告することとしております。

④ 内部管理体制について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、今後の事業運営及び業容拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、今後、事業規模の拡大に合わせて、システムの導入及び人員の拡充により内部管理体制も充実・強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模に応じた内部管理体制の整備に遅れが生じた場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) その他のリスクについて

① システムトラブルについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の事業には、PCやコンピュータシステム並びにこれらを結ぶ通信ネットワークを利用するサービスが存在しております。そのため、これらにトラブルが発生した場合には、業務遂行に障害が生じます。当社では、システムトラブルを回避するために、サーバ負荷の分散、サーバリソース監視、定期バックアップの実施等の手段を講じることでトラブルの防止及び回避に努めております。しかしながら、自然災害や事故等により予期せぬトラブルが発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が利用しているクラウドサーバの稼働にトラブルが生じた場合、当社が提供するサービスの安定稼働に支障が生じ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 海外展開について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社はこれまで国内を中心に事業展開をしてまいりましたが、社会インフラの業務オペレーションの多くは世界共通であり、インダストリークラウドを強みとして今後は海外における事業展開も検討してまいります。海外展開におきましては、為替変動、進出国の経済動向、政情不安、法規制の変更等多岐にわたるリスクが存在し、リスクが顕在化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社はこれらのリスクを最小限にすべく、現地専門家の起用等を含め、十分な対策を講じた上で事業展開を進めていく方針であります。

 

③ 配当政策について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案し、利益還元政策を決定していく方針であります。しかしながら、当社は、成長過程にあり、現時点では事業の効率化と事業拡大のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元を行うことを検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

④ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、企業価値向上に対する役員及び従業員等の意欲向上を目的として時価発行新株予約権信託を導入しており、会社法の規定に基づく新株予約権を当社の役員及び従業員等に付与することが可能となっております。2024年6月30日現在、新株予約権による潜在株式数は560,253株であり、当社発行済株式総数の4,720,947株に対する潜在株式比率は11.9%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合には、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。

⑤ M&Aによる影響について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社は、事業拡大を加速する有効な手段の1つとして当社に関連する事業のM&A戦略を検討していく方針であります。M&A実施に関しては、対象企業の財務・法務・事業等について事前にデューデリジェンスを行い、十分にリスクを吟味した上で決定いたしますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前の調査で把握できなかった問題が生じた場合、また事業の展開等が計画どおりに進まない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

⑥ 資金使途について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社株式上場時の公募増資による調達資金の使途については、主に持続的な成長の実現に向けたプロダクト開発等の研究開発費、事業拡大に向けた優秀な人材の採用費及び人件費、販路拡大に向けた広告宣伝費等に充当する予定であります。しかしながら、急速に変化する経営環境へ柔軟に対応していくため、投資による期待どおりの効果があげられなくなる可能性や、場合によっては資金使途の変更が生ずる可能性があります。この場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 関連会社が保有するメガソーラーに関する災害リスクについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)

関連会社(H&Gソーラー合同会社)が福岡県にメガソーラー施設を1か所保有しております。同施設が災害等の不測の事態により被害を受け又は周辺住民に被害を与えた場合、関連会社の業績に影響が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような不測の事態に備え、火災保険・賠償責任保険に加入しております。

⑧ 大規模な自然災害等について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波等の自然災害が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社又は当社の取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案し、利益還元政策を決定していく方針であります。しかしながら、当社は、成長過程にあり、現時点では事業の効率化と事業拡大のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えており、現在のところ配当を実施しておりません。将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元を行うことを検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。内部留保資金については、将来の成長に向けた投資資金として、収益力の強化や事業基盤の整備のための投資や今後の成長に資する優秀な人材の採用等に有効活用してまいります。

剰余金の配当を行う場合には、年1回の期末配当を基本方針としております。なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。また、剰余金の配当等、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって定める旨を定款に定めております。