2023年9月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況経理の状況等に関するリスクについて投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがありますただしこれらは当社に関する全てのリスクを網羅したものではなく記載された事項以外の予見し難いリスクも存在します

 なお文中の将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであります

 

(1) GNSSへの依存について(顕在化の可能性:低、影響度:大)

 当社が提供するサービスは、国土地理院が取得する電子基準点におけるGNSSのデータを利用して、お客さまが取得するGNSSのデータを解析することによって成り立っており、GNSSのデータを取得できることが前提となっております。当社は、配信システム等のサーバーを冗長化し配信を停止しない体制を構築しておりますが、GNSSの不具合や国土地理院側で何かしらのトラブル等、GNSSからのデータ取得ができない場合は、売上の減少等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 当社が利用するデータの入手先とその依存について(顕在化の可能性:低、影響度:大)

 電子基準点は、国土地理院が設置しているGNSSの連続観測点です。連続観測点では、24時間GNSS衛星から測位信号を受信して、全国の地殻変動を調べるために位置座標が追跡されています。この電子基準点のリアルタイムデータは、GNSS測量の基準点データとして使えるように2002年5月から民間開放されています。国土地理院から日本測量協会へリアルタイムデータの提供が行われ、日本測量協会にてデータの品質検査や遅延を監視し、民間の位置情報サービス事業者に配信しています。

 当社は、その日本測量協会から入手する電子基準点データを利用して補正データを算出・配信しております。同データは日本測量協会のみからの提供であり、依存度が高いものとなっております。当社は、入手したデータ自体を当社側でも管理し、例えば、万が一ある基準点からのデータが受信できない、もしくは、データの受信が不安定等の状況が見受けられたりした場合、当社から日本測量協会へ連絡をし、主体的に状況を確認するなどの対応を行っております。また、常日頃から国土地理院や日本測量協会を訪問し、各状況のヒアリングを行い、積極的にコミュニケーションを取るなどして協力体制を構築し、万が一の際のトラブル等の回避もしくは最小限の影響に収まるよう努めております。しかし、日本測量協会側で何かしらのトラブルや、国土地理院、日本測量協会が今後同データの配信価格の変更や停止等をした場合は、売上の減少等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 小規模組織であることについて(顕在化の可能性:低、影響度:中)

 当社は、小規模組織であるため、業務執行については、役員を含む各部門の責任者が重要な役割を担っております。また、小規模組織であるため、内部管理体制もこのような組織に応じたものとなっております。今後に関しては、当社の事業規模の拡大、サービスの多様化等に対して、必要なガバナンス状況を適切に把握し、体制の見直しや人員補強、従来の業務の自動化、IT化等の必要な対応を取る考えであります。しかしながら、今後の規模の拡大やサービスの多様化等に応じた適切な内部管理体制や業務執行体制を柔軟に変化させることができない場合、当社の企業競争力や事業推進力に何かしらの影響が出る可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システム障害等について(顕在化の可能性:低、影響度:大)

 当社のGNSS補正情報配信サービス等は、通信ネットワークを通じてサービスを提供しております。当社では、配信システム等のサーバーを冗長化し、配信を停止しない万全の体制を構築しておりますが、当社の予想を遥かに超える災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合、サーバー機能が停止した場合、コンピュータウイルスによる被害にあった場合、ソフトウエアに不具合が生じた場合等によりサービスが提供できなくなる可能性があり、売上の減少等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 競合他社による影響について(顕在化の可能性:中、影響度:中)

当社は、高品質の補正データを安定的に配信することにより、お客さまからの信頼を獲得し、長い年月をかけて同業界での優位性を高めてきております。しかし、特許の取得にも積極的に取り組んでいるものの、新規参入の障壁は必ずしも高いものとは言えず、高精度の位置補正情報のニーズの拡大に伴い競合他社が参入してきております。そのため、他社との品質や価格の競争等が激化した場合には、売上の減少等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 許認可について(顕在化の可能性:低、影響度:大)

当社は、事業を営む上で許認可等を取得しており、かかる許認可等に基づく基準を遵守する取り組みを行っています。

「測量法」・・・この法律は、国若しくは公共団体が費用の全部若しくは一部を負担し、若しくは補助して実施する土地の測量又はこれらの測量の結果を利用する土地の測量について、その実施の基準及び実施に必要な権能を定め、測量の重複を除き、並びに測量の正確さを確保するとともに、測量業を営む者の登録の実施、業務の規制等により、測量業の調整及び測量制度の改善発達に資することを目的としています。当社は、測量法第30条(測量成果の使用)の規定により、毎年、『測量成果の使用承認申請書』を国土地理院に提出し、承認を得ております。なお、測量法第30条第2項において、申請を行った場合でも、①申請手続が法令に違反している、②当該測量成果を使用することが当該測量の正確さを確保する上で適切でない、これらに該当する場合は、承認を受けることができません。

「リアルタイムデータ配信契約約款」・・・この契約約款は、日本測量協会の行う電子基準点リアルタイムデータ(国土地理院が設置した電子基準点からリアルタイムに得られるGNSS観測データ)の配信、及び事業者等がデータを処理・加工したデータ(いわゆる「補正データ等」。)の利用に関する契約について定められております。当社は、当該約款第5条の規定により、毎年、『補正データ等配信事業計画書』を提出し、承認を得ております。

なお、将来において、法令の変更や、許認可等の有効期限到来時の更新のため、さらなる対策を講ずる費用が生ずる可能性があります。また、将来の事業領域の拡大の際に新たな許認可等取得の必要性が生ずる場合には、許認可等取得のための対策費用が生ずる可能性があります。さらに、何らかの原因で許認可等の更新が適切に行われない場合、当社の事業運営に支障をきたす可能性があります。それらに対して当社は、事業が関わる業界の管轄官庁や業界団体等とも日頃から一定のコミュニケーションをとることで正確な情報収集に努め、また、重要な法令違反等はなく、継続的な手続き等においても、随時、適宜・適切に対応するようにしており、本項目におけるリスクが顕在化する可能性は低いと考えておりますが、将来的に当社業務に関係する各種法令や実務慣行、解釈等の新設や変更等があった場合、もしくは、これらの可能性が顕在化した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 技術革新に関するリスクについて(顕在化の可能性:低、影響度:中)

 GNSS補正情報配信サービス等の市場において、特に測量業界のように高精度を必要とする事業については、現時点では、衛星測位技術が完成し利用されているので、それに代わる代替技術の創出等についての可能性は低いと考えております。当社自身も常に業界の動向を注視し、引き続き新しい技術によるサービスの研究開発を続けるとともに、必要に応じて迅速に技術革新に対応するため適時に事業戦略を見直してまいります。

 現在のGNSSを用いた位置情報の取得方法に代わる新しい技術が開発され技術革新に対応するための相当な開発費用が発生する場合や、適切な対応ができない場合は当社サービスの競争力が相対的に低下する可能性があります。現在、当社としてはそのような技術があることは認識していないものの、将来に実在するようになった場合には、そのための開発コストが大きく増加する可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 知的財産権について(顕在化の可能性:低、影響度:小)

 当社は、当社のサービス名等について商標登録を行っている他、測量システム並びに測量方法、仮想基準点の補正方法及び測量方法についても特許の登録を行っております。当社が使用する知的財産について、現時点において第三者の知的財産権を侵害するものはないと認識しております。今後も、事業活動において、第三者の特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう、外部の専門家の知見も踏まえながら、適切な管理に努めてまいります。しかしながら、仮に当社が第三者の知的財産権を侵害した場合は、当該第三者より、損害賠償請求、使用禁止請求等が発生する可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 業績の季節変動について(顕在化の可能性:高、影響度:小)

 当社のサービスは建設現場などで利用されることが多いですが、建設業等は国及び地方自治体等の公共事業予算の影響を受けることが多々あります。毎年4-6月については、国及び地方自治体等の会計年度では年度初めに当たるため、予算執行等が緩やかに進み、その後年末に向けて増加していく傾向があります。これを当社(9月決算)に当てはめると、第1四半期(10-12月)の売上が他の時期に比べ高くなる傾向があり、その後、春先及び第3四半期(4-6月)の売上がやや下がり気味になる傾向がございます。当社は国及び地方自治体等の動向を検討して事業計画を作成しており、今後はこういった公共事業予算に連動しない業界への売上比率を拡大していくことを想定しております。また、国及び地方自治体等も年間を通して予算執行の平準化を推奨してきております。徐々にその傾向は現れてきてはいるもののすぐに大きく変化するわけではないため、国及び地方自治体の予算執行状況が、各四半期における売上高に影響し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 主要株主との関係について(顕在化の可能性:低、影響度:中)

 当社の主要株主である南安子、南尚子の両氏においては、今後についても継続保有する旨の意向を確認しております。株式会社トプコンについては、当社の業務提携かつ取引先であり、今後についても継続保有する旨の意向を確認しております。当社といたしましても、これらの主要株主は今後も当社にとっての安定株主であると認識しており、継続保有をして頂けるよう当社企業価値の向上に努めてまいりますが、将来的に何らかの事情により、主要株主の株式が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 個人情報の取り扱いについて(顕在化の可能性:低、影響度:中)

 当社が保有する利用者等の個人情報、特定個人情報及び顧客企業に関する情報の取り扱いについては、厳重に社内管理を行っております。また、2022年1月27日付にて第三者認証機関の外部審査により、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「JIS Q27001:2014(ISO/IEC27001:2013)」の認証を取得しており、ISMSを適切に構築・運用し、重要な情報資産の機密性や完全性、可用性の確保を高いレベルで実現しております。しかしながら、不正アクセス者等からの侵入や、万が一にも個人情報等が外部に漏洩し、不正使用される可能性が完全に排除されているとはいえません。したがって、このような事態が起こった場合には、当社への損害賠償請求や信用の失墜により、当社の経営成績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:中、影響度:小)

 当社は、当社の役員、従業員に対するインセンティブを目的として、ストックオプションによる新株予約権を付与しており、当事業年度末日における発行済株式総数に対する潜在株式の割合は16.16%となっております。これらの新株予約権が行使された場合、既存株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。新株予約権の詳細については、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2)新株予約権等の状況をご参照ください。

 

(13) 調達資金の使途について(顕在化の可能性:低、影響度:小)

 当社が東京証券取引所グロース市場に上場した際に自己株式の処分によって調達した資金の使途については設備投資及び人材確保のための人件費や採用費に充当し、また当期以降においても充当する計画でありますしかしながら急速に変化する経営環境へ柔軟に対応していくため当初の計画を変更し調達資金を上記以外の目的で使用する可能性があり、その場合は速やかに資金使途の変更について開示を行う予定でありますまた当初の計画に沿って調達資金を使用した場合でも想定していた投資効果を上げられない可能性もあり当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります

 

(14) 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:低/影響度:中)

 当社は、当社株式の流動性の確保に努めることとしており、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は当事業年度末日において26.31%になります。現時点では、上場維持基準にすぐに抵触する水準ではありませんが、今後の当社の資本政策上の計画や実行等において、流通株式比率が低下することもあり得るため、今後も、既存株主への一部売出しの要請、新株予約権の行使による流通株式数の増加分を勘案し、これらの組み合わせ等により、引き続き流動性の向上を図っていく方針ではあります。しかし、何らかの事情等により上場維持基準近くの水準にまで流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社では、データセンターの増強や事業に係る設備のメンテナンス等を踏まえた設備投資など、それらは定期的に業務拡大に必要不可欠であるものと認識しており、財務体質の安定性強化と中長期的な成長に繋がる投資への原資とするための内部留保資金を充実させるとともに、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と位置付け、利益水準と財務状況を総合的に勘案して、弾力的な利益還元策を行うことを基本方針としております。

 当社は、第20期、第21期、第22期(前事業年度)及び第23期(当事業年度)と、上場前からカウントして4ヵ年継続して期末配当を実施しております。今後も、期末配当の実施をベースに安定的に株主の皆さまのご期待に沿えるような剰余金の配当を実施してまいりたいと考えております。中間配当については、実施した実績はありませんが、資金ニーズや内部留保のバランスなどを総合的に勘案した上で検討してまいりたいと考えております。なお、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。また、中間配当については定款において、取締役会の決議により毎年3月31日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定めております。

 当事業年度の配当につきましては、以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2023年12月22日

定時株主総会決議

54,392

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