2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業環境に関するリスク

① 市場動向について

  発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社のDX推進事業を取り巻く環境は、日本の労働人口の減少が企業の生産活動に大きく影響するという危機感から生産性向上を目的としたDXに取り組む企業が増加するなど多くの企業でその必要性が高まっていることで、DX関連の国内市場は2023年度4兆197億円から2030年度8兆350億円まで拡大するという予測(出所:『2024 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編/企業編』まとまる(2024/4/10発表 第24034号))があり、時代の変化に対応したビジネスモデルの変革などでDX・ITニーズはさらに高まるものと判断しております。

 しかしながら、予期せぬ法的規制や企業のIT投資に対するニーズに変化が生じた場合等により、市場全体の成長が大きく鈍化した場合には、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、市場動向をモニタリングしつつ、企業のニーズやトレンドの情報の取得を行うとともに、状況に応じて当社エンジニアに対して研修を行い、市場のニーズやトレンドに沿った技術や知識の取得に努めております。

 

② 同業他社との競合について

 発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社の主要事業であるITエンジニアリングサービス及びDXソリューションサービスでは、市場に多数の事業者が存在します。外部協力企業とは取引先である一方で競合にもなります。当社では、市場における競争力及び専門性を高めるため、自社エンジニアの付加価値向上を目指して教育研修に努めております。しかしながら、景気後退、同業他社間における価格競争の結果として取引単価が低迷した場合、また多くの自社エンジニアの稼働率が低下した場合、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新について

 発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社が受注する案件の多くは基礎技術があれば対応できる案件であり最新の技術を用いた案件は少数であります。加えて、当社は、全エンジニアへ外部研修の受講を支援する制度や書籍購入補助制度を整備しているほか、未経験・微経験エンジニアに対しては当社育成プログラムを用いた短期間で必要スキルを習得できる体制を構築しており、また、熟練エンジニアに対してはスキルの均一化を企図した社内の横の繋がりを強化するオンライン勉強会の開催等を積極的に行い案件に対する対応力を高めております。しかしながら、当社の事業領域においては日々急激な技術革新が進み新しい機能開発が推進されており、当社のこれまでの経験が活かせないような技術革新があり適時に対応ができない場合、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業・サービスに関するリスク

① エンジニアの確保について

 発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社のDX推進事業において、事業の収益性を高めながら、継続及び拡大させていくためには、エンジニアを継続的に確保することが重要です。当社は、積極的にエンジニアの採用活動や外部協力企業及びフリーランスエンジニアとの接触を行っておりますが、エンジニアの採用活動や外部協力企業及びフリーランスエンジニアの確保が当社の想定と異なり、採用及び確保できない場合には、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、採用の市場環境及び当社の採用状況をモニタリングし、採用媒体の追加や停止を適時に行えるよう対応しております。また、外部協力企業やフリーランスエンジニアの確保のため、人員を増強し積極的なコンタクトをとるようにしております。

 

② エンジニアの常時雇用について

 発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は、多数のエンジニアを正社員として常時雇用しております。そのため、景気動向、事業環境の変化等といった外的要因や、当社の社会的信用の低下等といった内的要因により自社エンジニアの稼働人数割合の低下、稼働日数の減少又は取引単価の下落等が発生した場合には原価率が上昇することが考えられ、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社ではエンジニアの技術向上のため、研修体制を充実させることで事業環境変化への対応や信用低下の防止をするよう取り組んでおります。

 

③ プロジェクト採算管理について

  発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社では、DXソリューションサービスにおいて顧客先の各種システムの受託開発業務を行っております。プロジェクトごとに要員管理・進捗管理・予算管理を行っておりますが、当初想定できなかった事象等の発生による追加コストの発生、当社の過失による納期遅延又はシステムの不具合による損害賠償が発生した場合等には、当初見込みからプロジェクトの採算が悪化するほか、当社の社会的信用が低下し、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、リスクへの対応策として、進捗管理、取引先との十分なコミュニケーション、役職者による確認を行うなどの対応を行い、プロジェクト採算管理に留意しております。

 

④ 外部協力企業及びフリーランスエンジニアの確保及び管理について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社が受注する業務の一部では、人的資源の制約から外部協力企業やフリーランスエンジニアに対し、委託をすることがあります。外部協力企業やフリーランスエンジニアから十分なエンジニアを確保できない場合には、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また当社では委託先の選定に当たって、プロジェクト遂行能力等を勘案し選定しておりますが、委託先のプロジェクト管理が適切に行われない場合には、コストの増加や納期遅延あるいは品質の低下等を招く可能性があります。当社では、役職者によるレビューにより早期の問題の顕在化及び対処を行っておりますが、不測の事態によりそのような問題の早期発見や対処を適切に行うことができない場合には、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 訴訟について

 発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は、法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を構築するとともに、取引先、従業員その他第三者との関係において、訴訟リスクを低減するよう努めております。しかしながら、当社が開発したシステムの不具合、瑕疵や納期遅延、第三者の権利侵害に関連して損害賠償請求等の訴訟を提起される可能性があります。これらの内容及び結果によっては、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼすおそれがあります。

 当社では開発体制において進捗管理、取引先との十分なコミュニケーション、役職者による確認を行うなどの対応を行い、訴訟にならないよう体制を構築しております。

 なお、前事業年度末時点で係争中であった請負代金支払請求訴訟及び損害賠償請求別訴について2023年9月28日付で裁判上の和解が成立しており、当事業年度末時点において係争中の案件はありません。

 

 

(3)法的規制・業界規制に関するリスク

① 労働者派遣法・職業安定法

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 DX推進事業においては、労働者派遣法及び職業安定法に基づいた運営を行っております。当社は顧客企業と業務請負契約を締結後、業務の遂行にあたり、当社の従業員が顧客企業内にて業務を行う必要が生じた場合には、必ず管理責任者を設置し、従業員への指揮命令を当該管理責任者が行うこととする体制にしております。また管理責任者からは定期的な業務報告を受けることとしており、偽装請負問題に発展しないための対策を講じるなど、関係法令を遵守して運営しております。しかしながら、労働者派遣法に定める派遣事業主としての欠格事由に該当若しくは当局により偽装請負問題を指摘され、是正指導に従わない等、法令に違反する事項が発生した場合には、事業の停止や派遣事業者の許可の取り消しをされる可能性があり、その場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は有料職業紹介事業者として、厚生労働大臣の許可を受けております。当社の職業紹介の継続には有料職業紹介事業者の許可が必要であります。職業安定法が定める有料職業紹介事業者としての欠格事由に該当した場合、あるいは当該許可の取消事由に該当した場合には、事業の許可を取り消し、または、期間を定めて当該事業の全部若しくは一部の停止を命じられる可能性があります。現時点において当社が認識している限りでは、これら許可取消の事由に該当する事実はありませんが、将来そのような事態となった場合には、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 さらに、将来これらの法令並びにその他の関係法令が、労働市場を取り巻く社会情勢の変化などに伴って、改正若しくは解釈の変更などがあった場合、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、職業安定法が定める有料職業紹介事業者としての欠格事由又は取消事由に該当しないよう定期的に状況確認をするとともに、改善すべき事項が生じた場合には早急に対応できるよう体制を整備しております。

 

② 下請代金支払遅延等防止法

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社が委託先に対して業務の一部を外注する場合は、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の適用を受け、書面の交付、書類の作成等及び下請代金支払遅延の防止が求められます。下請法に違反した場合、公正取引委員会による勧告・指導に加え、罰金刑が課される可能性があります。

 当社では、上記の各種法的規制に抵触しないように、管理事業推進本部にて、コンプライアンス規程を制定し、当社の役員及び従業員が遵守すべき法的規制の周知徹底を図り、内部通報制度の導入等によって速やかに法令違反行為等の情報を収集する体制を構築しております。

 しかしながら、上記の対策を講じているにもかかわらず、各種法的規制についての違反が生じた場合、刑事罰を含めた罰則の適用、損害賠償請求等の金銭補償や企業イメージの悪化等により、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)組織体制に関するリスク

① 優秀な人材確保・定着及び育成について

 発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社は、競争力の向上及び今後の事業展開のため、優秀な人材の確保・定着及び育成が重要であると考えており、適切な評価、報酬支給、福利厚生の充実等により確保・定着を、研修等により育成を行っております。しかしながら、優秀な人材の確保・定着及び育成が計画通りに進まない場合や優秀な人材の社外流出が生じた場合には、競争力の低下や事業規模拡大の制約要因になる可能性があり、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

② 情報管理について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

 当社は、サービス提供をする上で、メールアドレスをはじめとし、利用者本人を識別することができる個人情報や顧客企業の製品開発やシステム開発業務への従事により、顧客企業の機密情報に接する場合があります。当社では、「個人情報の保護に関する法律」に従い、個人情報の管理や、機密情報の取扱いに関する社内研修を行うなど啓発活動を行っております。またプライバシーマーク(Pマーク)の認証を取得し、認証継続に注力しております。しかしながら、このような対策にもかかわらず、個人情報や顧客企業の機密情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、損害賠償請求等の金銭補償や企業イメージの悪化等により、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

 当社は、当社が運営する事業に関する技術・商標等の知的財産権の保護を図っております。しかしながら、当社が使用する技術・商標等の知的財産権について、何らかの理由で第三者からの侵害を保護できない場合、または、保護に多額の費用が発生する場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社の提供するサービスが第三者の技術・商標等の知的財産権を侵害しないように留意しており、当社は現在まで第三者の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはありません。しかしながら、第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。このような場合、当社に対する訴訟等が発生し、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、知的財産権の保護及び侵害の防止のため、適宜弁理士等の専門家への相談や事前調査を行うこととしております。

 

④ 内部管理体制について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は、今後更なる業務の拡大を図るために、コーポレート・ガバナンスを有効に機能させることが必要不可欠であると認識をしております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令の遵守を徹底してまいりますが、事業が急拡大することにより、内部管理体制の構築が追い付かない等、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しなかった場合には、適切な業務運営を行うことができず、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、事業規模の拡大に合わせて内部管理体制を構築できるよう、人員採用の必要性を定期的に確認し、内部管理体制の充実を図っていく方針であります。

 

(5)その他のリスク

① 配当政策について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

 当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しておりますが、当社は現在、成長過程にあると考えているため、内部留保資金の充実を図り、財務体質強化・優秀な人材の採用及び育成・内部管理体制強化等の原資として有効活用し、企業価値をさらに高めることで株主の期待に応えていきたいという考えがあります。

 現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定でありますが、今後の業績動向、財政状態及び成長戦略等を総合的に勘案しながら、中間配当及び期末配当による株主への利益還元に努めてまいります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:小

 当社は、役員及び従業員に対して、ストック・オプションとして新株予約権を付与しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在、新株予約権による潜在株式数は71,700株であり、発行済株式総数1,413,500株の5.07%に相当します。

 

③ 当社株式の流通株式時価総額について

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社は2022年12月27日に東京証券取引所へ上場し、当事業年度末現在、流通株式時価総額は同取引所が定める形式要件を満たしております。今後も資本政策を検討し、ストック・オプションの行使等により流通株式数の増加に努めてまいります。さらに、業績拡大等により持続的な企業価値向上を図り、時価総額の向上にも努めてまいります。しかしながら、これらの施策が奏功せず、又は株式市況等の要因により、流通株式時価総額が増加しない、あるいは低下する可能性があります。

 

④ 自然災害等のリスクについて

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

 大規模な地震や台風等の自然災害が発生した場合、当社及び当社取引先の事業活動が困難となり、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社及び各拠点においては、最低限の食料等を蓄えるなど自然災害等へ備えております。また全国に各拠点を開設しており、業務遂行が困難になるリスクの分散を図っております。

 

⑤ 新規拠点の立ち上げについて

 発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

 当社は「日本の全世代を活性化する」をミッションに掲げ、日本全国のDX化を促進することで地方創生に貢献すべく、DX推進事業、具体的にはITエンジニアリングサービス及びDXソリューションサービスを主たる業務としております。そのため、当社は地方に開設する小規模開発拠点をラボと定義し、当該ラボを日本全国に開設し各地でエンジニアを採用しております。ラボの開設に際しては、社内基準に従い十分な検討を行い、意思決定を行っておりますが、市場環境の変化や不測の事態により、当初予定していた投資回収が実現できない可能性があり、人材の採用、備品等の購入等の初期費用が発生した場合には、当社の業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社が新規拠点の立ち上げの際には、初期費用を抑えた形での業務を開始し、人員の拡大等に伴って段階的に投資を行っていくという形を採用しており、当社業績及び財政状態への影響が限定的になるよう対応を行っております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しております。しかしながら、当社は現在、成長過程にあると考えているため、内部留保資金の充実を図り、財務体質強化・優秀な人材の採用及び育成・内部管理体制強化等の原資として有効活用し、企業価値をさらに高めることで株主の期待に応えていきたいという考えがあります。

 現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定でありますが、今後の業績動向、財政状態及び成長戦略等を総合的に勘案しながら、中間配当及び期末配当による株主への利益還元に努めてまいります。

 剰余金配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会としております。

 なお、当社は会社法第454条第5項の規定に基づき、9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。