リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。また、当社がコントロールできない外部要因や必ずしもリスク要因に該当しない事項についても記載しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、「第4[提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要] ③ 企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備の状況等」に記載のとおり、リスク・コンプライアンス委員会にて協議の上リスク回避あるいは発生時に迅速に対応する所存ですが、当社の経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。
各リスクについて、発生可能性、発生する可能性のある時期、影響度、総合的な重要性については、下表のとおりです。
各リスクの具体的な内容は、下記のとおりです。
1 宿泊市場について
新型コロナウイルス感染症のまん延前である2019年までにおいては、訪日外国人数の増加もあり、年ごとの延べ宿泊者数は継続的に増加してまいりました(国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」によります)。しかしながら、2020年以降、新型コロナウイルス感染症のまん延により宿泊業界は大きな影響を受けました。新型コロナウイルス感染症以外にも様々な要因により、宿泊市場が影響を受ける可能性があります。たとえば、自然災害などの天変地異、新型コロナウイルス感染症以外のウイルス性の疾患の流行、国際紛争等の不測の事態による国内旅行者、訪日外国人の減少等により、宿泊施設の収益を悪化させ、宿泊施設のDXへの取組が減衰するような場合には、当初計画していたような営業収益の成長が見込めず、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクは完全に排除できる性格のものでないことから、市況の急変等の場合においては、顕在化する可能性があると認識しております。
2 新規事業立上げに伴うリスクについて
当社はさらなる事業の拡大を目指し、新規サービスを視野に入れ事業展開を行っております。早期の収益化ができるよう、事前にサービス、プロダクトを綿密に検討の上で実施していく方針です。しかしながら、新規事業においては、安定して収益を生み出すまである程度の時間がかかることも予想され、その結果当社の営業収益率の低下を招く可能性があります。また、tripla Analytics、tripla Link、tripla Page等の新規サービスは販売開始前であり、採算性には不透明な点があるため予想した収益が得られない可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は、翌期においても相応に存在すると認識しております。当社は、新規事項の概況及び市場動向を注視しながら、適切なタイミングで事業の再編や構造改革を実施するよう努めております。
3 海外事業におけるリスクについて
当社は2023年11月に、BookandLink社の株式取得を完了し、BookandLink社及びSJM社を子会社といたしました。
また、2023年12月に、Surehigh社の株式を取得する契約を締結いたしました。Surehigh社の株式取得も契約どおり完了した場合には、インドネシア、台湾を中心として海外に多くの顧客が増え、営業収益に占める海外子会社の割合も増加することとなります。当社は、株式取得時点におけるDDにおいて、リスクをDDで把握した上で、将来の事業計画を策定の上、事業計画を策定しております。しかしながら、シナジーを生み出すには時間が掛かることも予想され、その結果、当初の事業計画の遅れを招き、株式やのれんの減損損失が発生し、財務面に影響を与える可能性があります。また、法務DDは行った上で買収を行っておりますが、海外の法令等の変更に関するリスク、重要な従業員の退職等が影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は、翌期においても相当に存在すると認識しております。当社は、各子会社及び弁護士事務所を含めた外部の専門家との各種連携を進め、事業計画の達成に努めます。
4 競合について
当社が事業を行っているtripla Bookやtripla Botは、コアな特許等による参入障壁が存在しない業界であるため、当該市場にも競合他社が複数存在しております。当社は競合他社のプロダクト、サービスの情報を把握の上、日々改善に努めておりますが、競合他社のプロダクト、サービスのレベルが大幅に上昇すること、強力な新規参入者が市場参入することにより、当社の優位性が損なわれるような場合、当社の営業収益が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いものの、中長期的に顕在化する可能性があると認識しております。当社は技術力の強化、サービス品質の向上等により、競争力の維持に努めております。
5 大口・大手(注)の契約先の倒産・廃業について
当社は、2023年10月末時点において、2,897施設の宿泊施設を顧客として、事業を展開しております。当社の顧客の中には、複数の施設を抱えるチェーンホテルブランドもあります。新型コロナウイルス感染症のさらなる拡大を始めとした様々な要因により、このようなチェーンホテルが倒産・廃業となる可能性があります。このような場合、当社の営業収益が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は特定の大口顧客には依存しておらず、営業収益の10%を超える取引先としては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「4 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおり、2022年10月期及び2023年10月期にはありませんでした。特定の大口顧客に依存せず、宿泊施設に広くあまねく利用して頂くよう努めております。
(注) 大口・大手は、当該顧客への営業収益の割合が、営業収益全体の10%を超える取引先を言います。
6 設備及びネットワークシステムの安定性について
当社のサービスは「tripla Book」、「tripla Bot」、「tripla Connect」を含め多くがクラウド型のシステムの提供であるため、常時、宿泊施設、ユーザーとの通信が発生いたします。また、当社のサービスはAmazon Web Service(以下、「AWS」という。)等の外部クラウドサーバーを利用しております。そのため、当社の事業は通信ネットワーク及びAWSに依存しており、システムに障害が生じた場合、当社のサービスが停止する可能性があるため、不正アクセスに対するモニタリング、ファイヤーウォールの設定など、システム障害を未然に防ぐための取組を行っております。しかしながら、上記の取組をもってしても、すべての可能性を想定しての対策は困難であり、火災、地震などの自然災害や外的破損、人為的ミスによるシステム障害、想定外の長期間に渡る停電、コンピュータウイルスの侵入やクラッカーによる妨害等、その他予期せぬ事象の発生により、万一、当社の設備及びネットワークの利用に支障が生じた場合には、当社はサービスの停止を余儀なくされることとなり、当社の営業収益が低下するとともに営業費用が増加し、事業及び業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いものの、翌期においてもリスクは常に存在すると認識しております。当社は、障害に対して迅速に対応すべく、システム稼働状況のモニタリングを継続的に行っており、障害の発生又はその予兆を検知した場合には速やかに連絡が入り、早急に復旧を行うための体制を整備・運用しております。これにより、障害発生の未然防止及び障害発生時の影響最小化に努めております。なお、AWSはFISC安全対策基準(注)を満たす安全性を備えております。
(注)「FISC」とは、金融情報システムに関連する様々な問題についての研究調査や、安全対策の普及・推進活動を行うため、1984年に設立された財団法人(2011年に公益財団法人へと移行)であり、「FISC安全対策基準」とは高い信頼性とセキュリティが求められる金融情報システムを構築する際の、安全対策の共通の指針となることを目的に、1985年に策定されたものです。
7 個人情報保護について
当社は、当社ウェブサイト上の各サービスの中で、ユーザーの個人情報を取得し、また保有しております。その個人情報の管理は、当社にとって重要な責務と認識しており、厳重なアクセス管理を行うとともに、各種不正アクセス防止対策を行うなど、ネットワークセキュリティの向上に努めております。一方、「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)は、個人情報を利用して事業活動を行う法人及び団体等に対して、個人情報の適正な取得、利用及び管理等を義務付け、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権益保護をはかることを目的とした法律であり、当社においても個人情報取扱事業者としての義務が課されているため、当該法律の規定を踏まえた個人情報の取扱いに関して、個人情報保護の方針(以下「プライバシーポリシー」という。)を定め、運用しております。また、プライバシーポリシーの運用を徹底するとともに社内の情報アクセス権を管理し、かつ個人情報の取扱いに関する社内教育を行うなど、管理運用面についても、慎重を期しております。しかしながら、個人情報が外部に流出したり悪用されたりする可能性が皆無とは言えず、かかる事態が発生した場合には、当社の風評の低下によるサービス利用者の減少、当該個人からの損害賠償請求等が発生し、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は、コンピュータウイルスによる被害等が社会的に発生しており、コロナ禍により在宅勤務が増加している昨今、当社においても翌期以降、相応に存在すると認識しております。当社では、システム上のセキュリティ対策やアクセス権限管理の徹底に加え、プライバシーマークの取得、当該公的認証に準拠した規程・マニュアルの整備・運用、各従業員への研修等を行うことで、個人情報管理体制の強化に努めております。
8 法的規制について
当社はインターネットを通じて、インターネットユーザーに各種サービスを提供しておりますが、インターネットに関しては法的整備の不備が各方面から指摘されており、当社事業を規制する法令等が今後新たに制定される可能性があります。このような場合、当社の事業展開に制約を受け、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。宿泊業界においては、「旅行業法」、「旅館業法」等関連事業法令の規制があります。これらの法令等の改正や新たな法令等の制定により規制強化が行われた場合、当社の事業展開に制約を受け、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、「住宅宿泊事業法」もあり、同法については規制が強く事業展開については慎重に見極めながら行ってまいります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、法制改正の動向などの情報収集を適宜行い、適時に対応できるようにすることによりリスクの軽減を図っております。
9 知的財産権について
当社は、当社が提供するサービスに関し、知的財産権を登録しておりません。現時点において、当社は第三者の知的財産権は侵害していないものと認識しておりますが、万一、知的財産権の侵害を理由として、第三者より損害賠償請求及び使用差止請求等を受けた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。当社が属するIT事業において知的財産権の状況を完全に把握することは困難であり、当社の事業に関連する知的財産権について第三者の特許取得が認められた場合、あるいは将来特許取得が認められた場合、当社の事業遂行の必要上これらの特許権者に対してライセンス料を負担する等の対応を余儀なくされる可能性があり、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、第三者の知的財産権を侵害しないよう調査を行っております。また、必要に応じて専門家と連携を取りリスクの軽減を図って参ります。
10 新型コロナウイルス感染症以外の感染症について
2020年から新型コロナウイルス感染拡大が始まり、旅行需要に対して大きな影響を与えましたが、新型コロナウイルス感染症以外にも、感染症が流行する可能性があります。2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome)、2012年に中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)が海外で流行しました。新たな感染症の発現、流行により、予約数に応じた従量収益の減少、及び新規契約獲得の鈍化や閉館等による契約数の減少等による営業収益の減少等の当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。顕在化した場合には、新型コロナウイルス感染症で培った対応を活かし感染予防策を取ることに加え、状況に応じて有効な対策を取ることによりリスクの軽減を図って参ります。
11 業績の季節偏重について
当社の営業収益の一部は宿泊チェックアウト時に発生する取扱高・GMVに連動して課金しています。そのため、旅行需要が多いシーズン(8月等)に営業収益も多くなる傾向にあります。そのため、新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の蔓延など何らかの理由により、旅行シーズンの営業収益が計画どおりに進捗しなかった場合、当社の営業収益が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置付けも5類へ移行され、社会活動が正常化に向かっていることから、新型コロナウイルス感染症及び新たな感染症の拡大により、このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。なお、第8期(2022年10月期)及び第9期(2023年10月期)における当社の四半期の営業収益の推移は下記のとおりです。
・第8期(2022年10月期)
(注)上記第1四半期及び第2四半期の金額については、監査法人によるレビューは受けておりません。
・第9期(2023年10月期)
12 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、本書提出日現在における付与数は340,400株であり、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は、6.12%となります。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が発行され、既存株主が保有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
当社では適切な資本政策により、新株予約権の付与割合(将来株式価値の希薄化程度)をコントロールしております。
13 配当政策について
当社は、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つと位置付けておりますが、当社は現時点において配当を実施しておりません。今後におきましては、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針であります。しかしながら、当社の事業が計画どおり推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。
当社は未だ成長過程にあり、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先することが、株主への最大の利益還元につながるものと判断しております。
14 社歴が短い、小規模組織であることについて
当社は、2023年10月期が設立第9期目であり、社歴は短く、組織体制は未だ小規模であり、業務執行体制及び内部管理体制もそれに準じたものとなっております。当社は、今後の業務拡大に伴い、内部管理体制及び業務執行体制の充実を図っていく方針ではありますが、これらの施策に対し十分な対応ができなかった場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、事業拡大に応じて人員の増強や内部管理体制の一層の充実を図って参ります。
15 特定人物への依存について
当社の創業者であり、代表取締役でもある高橋和久、鳥生格の両氏は、当社事業に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略構築など、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。代表取締役CEOである高橋和久は、全社的な経営戦略全般において重要な役割を果たしております。代表取締役CTOである鳥生格は、全社的な経営戦略及びサービス・プロダクトの戦略において重要な役割を果たしております。当社は事業拡大に伴い、取締役会等における役員及び幹部社員との情報共有や経営組織の強化を図り、両氏に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、何かしらの理由により両氏のうちいずれかが業務を継続することが困難となった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は低いと予想しております。当社は、両氏に過大な依存をしない経営体制を構築すべく、幹部社員の情報共有や権限委譲等によって両氏への過度な依存の脱却に努めております。
16 税務上の繰越欠損金について
2023年10月期末時点において、当社に税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
このようなリスクが顕在化する可能性は、高いと認識しております。
17 過年度業績等について
当社の過去5期間における主要な経営成績の推移は、「第1 企業の概況 1 主要な経営指標等の推移」に記載のとおりであります。第7期(2021年10月期)までの期間においては、継続的に営業損失、経常損失、当期純損失を計上しておりました。また、第6期(2020年10月期)及び第7期(2021年10月期)においては、tripla Bookによる宿泊代金の預り金を除くと継続的に営業キャッシュ・フローの赤字を計上しておりました。一方、宿泊市場向けに市場展開を行っており、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、導入施設数、営業収益を拡大させるとともに、営業損失の額を減少させて参りました。
第8期(2022年10月期)においては営業利益、経常利益、当期純利益とも黒字化し、tripla Bookによる宿泊代金の預り金を除いた営業活動によるキャッシュ・フローもプラスに転じました。また、第9期(2023年10月期)においては営業収益、経常利益、当期純利益とも第8期を上回りました。
当社は、今後も導入施設数の拡大、取扱高・GMVの増加等により収益獲得を進めるとともに、規律あるコスト管理を行うことで黒字を維持していく方針でありますが、計画が想定どおりに進まない場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化した場合でも会社運営が行えるよう、手元流動性を確保いたします。
このようなリスクが顕在化する可能性は、中程度と認識しております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。しかしながら、株主に対する利益還元については経営の重要課題の一つとして位置付けておりますので、将来的には、経営成績、財政状態、事業計画の達成状況等を勘案しながら、株主への利益配当を検討していく方針でありますが、配当の実施の可能性及びその実現時期等については、本書提出日現在において未定であります。なお、内部留保資金については、財務体質の強化と人員の拡充・育成をはじめとした収益力強化のための投資に活用する方針であります。今後、剰余金の配当を行う場合は、期末配当(10月31日基準日)の年1回を基本的な方針としており、このほか基準日を定めて剰余金を配当することができる旨、中間配当(4月30日基準日)を取締役会の決議により行うことができる旨を定款にて定めております。