リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす恐れのある経営リスクについては、「リスク管理規定」に基づき、それぞれの担当部署及び各子会社において事前にリスク分析、対応策を検討し、経営会議等で審議しております。リスク分析・対応策の検討にあたっては、必要に応じて顧問弁護士等の専門家に助言・指導を求めております。経営リスクのうち、組織横断的リスクについては、当社管理部門の各部が、それぞれの所管業務に応じ関連部署と連携しながら、全社的対応を行っております。
また、「リスク管理規定」に基づき社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しており、年2回開催する同委員会にて当社グループのリスク管理活動を統括し、リスク管理体制が有効に機能しているか適宜調査・確認しております。
当社グループにとって重大なリスクが顕在化し、又は顕在化が予想される場合には、「危機管理規定」に基づき、社長が危機管理本部を設置します。
このようなリスク管理体制のもと、グローバルに展開する当社の事業活動も考慮のうえ、当社グループの財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクを次のとおり記載しております。ただし、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらのリスクを認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
(政治経済情勢・需要変動・法律・規制等に係るリスク)
当社グループは、タイヤ事業、スポーツ事業及び産業品他事業を展開しております。各分野や各地域に特有の需要変動や、環境対応など顧客ニーズの変化、また、各国の政治情勢の影響を受けることがあります。海外における戦争、テロ、暴動、ストライキ等のリスクに対しては、リスクコンサルタント等の専門家や政府関係機関等より情報収集を行うとともに、有事の際には現地拠点の安全確認、現地情報の社内展開を行っております。さらに、アジア・大洋州、欧州・アフリカ、米州の各地域を統括する組織を設置し、必要に応じて弁護士やコンサルタント等の専門家と契約するなどして現地特有の法規制、商習慣、リスク等を踏まえ現地拠点の経営について協議する等、リスク管理の面からも各地域における関係会社の支援を行っております。
また、当社グループは、連結売上収益に占める、国内外の自動車用タイヤの割合が大きく、自動車産業の景況が悪化した場合、自動車用タイヤの需要減少や大口顧客との取引減少など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
技術開発・研究面でも、製品開発の遅延等により顧客への新製品納入遅れが生じた場合、販売減少、信用・評判の失墜、競争力低下など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが運営する事業分野において革新技術が出現し、市場で普及した場合、当社製品の需要が減少するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
このほか、各市場において、輸入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク、各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更や移転価格税制等により税金コストが増加するリスクなど各市場における法律・規制変更が当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(投資回収に係るリスク)
当社グループは、グローバルでの事業拡大に向け、成長領域や需要の拡大が見込まれる事業への設備投資及び事業の買収等の投資を行い、更なる企業価値の向上に努めております。
投資実行にあたっては、事業計画の策定、将来価値の測定について十分な検討を行っておりますが、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離や、割引率、移転価格税制等の重要な仮定の変動によって、想定した回収可能価額が見込めない場合は減損損失が発生するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループ会社において経営環境の著しい悪化や収益状況の悪化等が将来にわたって見込まれる場合、当社が保有する関係会社株式や当社グループ会社への貸付金の評価に影響を及ぼすなど、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度末における、当社が買収により取得した主要な連結子会社は、Sumitomo Rubber South Africa (Pty) Limited、㈱ダンロップスポーツウェルネス、Lonstroff AG ※、Sumitomo Rubber USA, LLC.及びMicheldever Group Ltd.となります。
※翌連結会計年度にLonstroff AG(LAG)及びLAGの100%子会社であるLonstroff Medical Elastomer d.o.o.(LSI)の支配を喪失することになりました。なお、LAGの株式の譲渡は、2024年1月31日に完了しており、本株式譲渡により、LSIも当社の子会社ではなくなります。
(製品の品質管理に係るリスク)
当社グループは、所定の品質基準に基づき、製品の品質確保に万全の対策を講じておりますが、製品の欠陥やクレームが発生する可能性があります。
当社グループは、欠陥が発生した場合又は裁判等により欠陥が認定された場合に備え、欠陥に起因する損害賠償等の諸費用に対する損害保険を付保しておりますが、保険で補償されない費用が発生する可能性があります。また、クレームに対する処理費並びに製品の回収・交換による費用が発生する可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、品質保証本部を中心に品質保証体制の強化や過去の不適切事案を教材としたケーススタディ研修、部門間・拠点間のコミュニケーション向上やグループガバナンスの強化につながる諸施策を継続的に進めております。引き続き、Our Philosophyに掲げる「信用と確実」の遵守を徹底し企業風土改革を推進するとともに、Bad News First/Fastも徹底していくことで、不適切な事案が再発しない体制づくりを進めてまいります。
(コンプライアンスに係るリスク)
当社グループは、グローバルに事業を遂行するにあたり、国内外の各種法令の適用を受けております。これらの法令に違反する行為、企業倫理に反する行為などにより、法令に基づく処罰、訴訟の提起及び信用・評判の失墜など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、「住友の事業精神」をベースに制定した「Our Philosophy」に基づき、コンプライアンスを基盤とした事業運営が実践できるよう取り組んでおります。組織としては、社長を委員長とする「企業倫理委員会」を設置し、年4回の委員会開催を通じ当社グループのコンプライアンス体制の強化を図っております。併せて、企業倫理ヘルプライン(相談窓口)として、社長直轄の「コンプライアンス相談室」を設置し、当社グループ内で問題が発見された場合には、相談者が不利益を被らないよう十分配慮したうえで、事実関係の調査を進める体制を整えております。また、必要に応じて顧問弁護士の助言を得るなど、適法性にも留意しております。さらに、コンプライアンスに関するべからず集である「企業行動基準」を作成し、国内従業員に配布するほか、英語版や当社グループが所在する地域のその他の言語版も作成し、毎年10月の法令遵守・企業倫理月間において浸透活動を行うなど、グローバルでのコンプライアンス強化を図っています。
(気候変動によるリスク)
当社グループは、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」に賛同し、気候変動に関するリスクと機会の分析を行い、事業戦略への影響を把握し、気候変動の緩和や適応につながる対策を検討しております。
気候変動による当社グループの事業に及ぼすリスクとして、世界各国における気候変動に対する規制や制度の変化に伴い、当社グループの製造拠点におけるエネルギー転換などの費用増加、気温上昇に伴う台風や洪水、降水量の増加などの自然災害の激甚化による生産設備への損害など事業活動へのさまざまな影響が考えられます。その他、主要な原材料である天然ゴムの収穫不良による価格高騰をはじめとした原材料調達への影響、降雪量の減少によるスタッドレスタイヤの需要減少なども考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
気候変動の緩和に貢献するため、当社グループは2050年までに自社事業のカーボンニュートラルの達成を目指すとともに、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル実現に向けて、自社事業に伴う直接的なCO2排出および間接的なCO2排出を含む2030年の削減目標を設定しています。自社操業による燃料等の燃焼および電気の使用によるCO2排出(スコープ1および2)については2017年比55%の削減を目指します。また材料開発・調達(スコープ3 カテゴリ1)では、サステナブル原材料の活用およびサプライヤーエンゲージメントの強化などにより、2021年比25%の削減、そして物流(スコープ3 カテゴリ4)ではモーダルシフトの推進などにより、2021年比10%削減を目指します。また販売・使用(スコープ3 カテゴリ11)および回収・リサイクル(スコープ3 カテゴリ12)においてはCO2排出量の削減に貢献するために、タイヤの転がり抵抗低減、ロングライフ化、およびリトレッドタイヤの販売拡大などを進めます。
気候変動による機会の獲得に向けては、CASE/MaaSの進展による次世代タイヤの需要増加、環境負荷低減を考慮したタイヤや低燃費タイヤの需要拡大など、気候変動が進展した場合に見込まれる商品需要へ備えていきます。そのうえで、気候変動が当社グループの事業に与える影響について、財務的評価を継続的に行い、気候変動の緩和と適応に取り組みます。
詳細は、当社企業情報サイトの「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応」(https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/04_5.html)をご覧ください。
(原材料等の調達に係るリスク)
当社グループの製品の主要原材料は、天然ゴム、石油化学製品及び金属材料です。従いまして、天然ゴム価格、原油価格、鋼材価格等の商品市況価格が上昇すると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がありますが、価格転嫁交渉等により財政状態及び経営成績への影響を最小化するよう取り組んでおります。原材料については、サプライヤーの倒産、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、交通機能の障害等により、必要量の調達が困難となる可能性があるため、複数購買先の確保、供給に問題が発生した場合に備えた事業継続計画(BCP)策定、代替が効かない重要部材は備蓄を行う、サプライヤーとの対話によるリスク抽出等の対策を講じ、財政状態及び経営成績への影響を最小限にとどめるよう取り組んでおります。
(為替変動によるリスク)
為替の変動は、当社グループが輸出販売する製品の価格、購入する原材料の価格及び外貨建資産・負債の価値、外貨建財務諸表の邦貨換算等に影響を与えますが、日本円が他の通貨に対して円高になると、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、連結売上収益に占める海外売上収益の割合が当連結会計年度で70.5%(国際会計基準(以下「IFRS」という。)での数値)となり、今後も当社グループの財政状態及び経営成績が為替変動により受ける影響は拡大する可能性があります。
このため、当社グループでは、為替予約や通貨ごとの輸出入のバランス化等により、為替変動によるリスクの軽減を図っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではありません。
(災害時のリスク)
当社グループは、世界の広範な地域で事業を展開しており、それらの事業は自然災害、疾病、戦争、テロ等に直接又は間接の影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった巨大地震、集中豪雨、大型台風等により被害を受けた経験を踏まえ、大規模自然災害が発生した際も重要業務を継続し、迅速な復旧を図るため、事業継続計画(BCP)の策定と、国内外の拠点で災害を想定しBCPに基づいて事業継続のために対応する実践訓練を行うなど、従来より対策を講じております。また、各事業所で地震、火災等を想定して防災避難訓練及び安否確認訓練を実施するなど、有事の際に被害を最小限に抑えるよう従業員の防災意識を高めるための活動を実施しております。
(産業事故等のリスク)
当社グループは、日本、アジア、欧州、米州等に製造拠点を有しており、各製造拠点において火災、爆発、有害物質の漏えい等の産業事故や環境汚染が発生し、工場の操業や地域社会に大きな影響を及ぼした場合、社会的信用の失墜、被災者への補償、復旧費用、生産活動停止による機会損失、顧客に対する補償など、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、産業事故を予防するため、点検と対策を計画的に進め、産業事故の発生防止対策を実施しております。また、定期的に海外製造拠点を含め防災監査を実施し、防災対策の点検と評価を行い、各拠点の防災活動強化を図っております。環境面でも環境汚染防止のための設備対策やモニタリングを実施するなど、環境に配慮した事業運営を実施しております。
また、重要設備の停止による生産活動への影響を最小限に抑えるために、日常的及び定期的な設備保全を行う一方、老朽化更新を計画的に進めております。
(情報の流出によるリスク)
当社グループは、事業活動を通じて、営業秘密、ノウハウ、データ等の機密情報のほか、顧客情報や従業員の個人情報も保有しております。コンピューターウイルス感染や不正アクセスなどサイバー攻撃のほか、パソコン、スマートフォン等の情報端末の紛失など、故意、過失を問わず情報漏えいし、社会的信用の失墜、ブランドイメージの低下、技術開発情報漏えいによる競争力低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。企業の情報管理の重要性が増している中、機密情報や個人情報等の秘密保持については、社内規定の整備と運用の徹底、情報機器へのセキュリティ対策などソフト面、ハード面での対策を実施し、リスクを最小化するよう取り組んでおります。
(金利の変動によるリスク)
当社グループは、有利子負債の削減を推進し財務体質の改善を図るとともに、資金調達手段の多様化や金利スワップ等により金利変動によるリスクを軽減するための対策を講じておりますが、金利が中長期的に上昇した場合、資金調達コストが上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(保有有価証券の時価の下落によるリスク)
当社グループは、市場性のある株式を保有しております。このため全般的かつ大幅な株価下落が続いた場合、保有有価証券に減損又は評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付債務に係るリスク)
当社グループは、ポイント制の退職一時金、確定給付企業年金、確定拠出年金制度を導入しております。従業員の退職給付債務及び費用については、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、具体的には、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
企業年金基金の年金資産運用にあたっては、代議員会・理事会などを設けて重要事項の審議、決定執行が行われ、外部の運用コンサルタント会社の助言なども仰ぎながら、定期的に「資産運用管理委員会」を開催するなど適切に管理運用を行っております。
(知的財産に係るリスク)
当社グループは、特許権、商標権等の知的財産権の取得により自社の知的財産権保護を行っておりますが、他社からの知的財産権侵害等により競争優位性が損なわれるなど当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社が開発する製品及び技術については当社が保有する知的財産権による保護に努めているほか、他社の知的財産権に対する侵害のないよう細心の注意を払い、リスク管理を徹底しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主への利益還元を最重要課題と認識して、連結ベースでの配当性向、業績の見通し、内部留保の水準等を総合的に判断しながら、長期にわたり安定して株主に報いることを基本方針としております。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
上記の基本方針に基づき、当事業年度の配当金は、1株当たり5円の中間配当と合わせ、1株につき年間58円としました。
また、内部留保資金については、将来の収益基盤の拡大を図るため、合理化等設備投資や研究開発などの先行投資に活用する考えであります。
当社は「取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
なお、当事業年度の剰余金の配当は次のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年8月7日 |
1,315 |
5 |
取締役会決議 |
||
2024年3月28日 |
13,940 |
53 |
定時株主総会決議 |