2023年12月期有価証券報告書より
  • 社員数
    7,705名(単体) 39,975名(連結)
  • 平均年齢
    40.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    14.8年(単体)
  • 平均年収
    6,333,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

(2023年12月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

タイヤ事業

33,031

[1,192]

スポーツ事業

3,526

[1,555]

産業品他事業

2,718

[187]

全社(共通)

700

[88]

合計

39,975

[3,022]

(注)1.従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は[ ]内に当期の平均人員を外数で記載しております。

2.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

 

 

 

(2023年12月31日現在)

従業員数

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与

 

 

 

 

千円

7,705

〔475〕

 

40.7

 

14.8

 

6,333

 

 

セグメントの名称

従業員数(人)

タイヤ事業

6,117

[299]

スポーツ事業

435

[27]

産業品他事業

604

[107]

全社(共通)

549

[42]

合計

7,705

[475]

(注)1.従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は[ ]内に当期の平均人員を外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

(3)労働組合の状況

 当社の労働組合は、住友ゴム労働組合と称しており、日本ゴム産業労働組合連合等に所属しております。

 2023年12月31日現在の当社組合員数は6,099名であります。組合とは円満に労使関係を保っており、特記すべき事項はありません。

 なお、組合組織をもつ連結子会社が一部ありますが、労使関係は良好であります。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)1

全労働者

正規雇用労働者

(注)3

非正規雇用労働者

(注)4

4.3

84.7

68.9

69.6

79.0

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。賞与や家族手当など、基準給与以外の賃金も含めた総賃金を元に算出しております。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

3.人事制度において性別による処遇差は設けていないものの、女性の管理職比率が低い点、短時間勤務制度や育児休業の利用者に女性比率が高いため基準賃金控除額や時間外手当に差が生まれる点、製造現場に勤務する女性が少なく休日勤務手当や交替勤務手当等の支給に差が出る点、また、家族扶養者に支払われる家族手当の支給対象者に男性が多い点、等が男女間での賃金差が生まれている主な要因です。これらの現状を踏まえ、女性のキャリア形成支援や積極的な採用・登用、仕事と家庭の両立支援に関する施策の推進、属人的な処遇のあり方について見直し等を行っており、男女間の賃金ギャップ縮小に努めております。

4.非正規雇用者労働者にはパートタイマー、産業医等が含まれ、契約時間や職種に起因する賃金差異が主に反映されています。

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)3

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)4

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)3

全労働者

正規雇用労働者

非正規雇用労働者

ダンロップタイヤ東北㈱(注)5

0.0

0.0

77.5

73.3

87.3

ダンロップタイヤ関東㈱(注)5

72.1

72.8

61.5

ダンロップタイヤ中央㈱(注)5

0.0

71.7

72.1

74.6

ダンロップタイヤ近畿㈱(注)5

20.0

67.8

65.9

98.6

ダンロップタイヤ中国㈱(注)5

0.0

ダンロップタイヤ四国㈱(注)5

5.3

ダンロップタイヤ九州㈱(注)5

0.0

76.1

78.5

74.5

中田エンヂニアリング㈱

100.0

SRIエンジニアリング㈱

100.0

 

 

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)3

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)4

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)3

全労働者

正規雇用労働者

非正規雇用労働者

㈱ダンロップスポーツマーケティング

1.7

33.3

73.9

71.5

40.7

㈱ダンロップゴルフクラブ

0.0

㈱ダンロップスポーツウェルネス

7.7

61.3

80.8

105.2

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではない連結子会社は記載を省略しております。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)に基づく情報公表を行っていない項目については「-」と記載しております。

3.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

4.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

5.2024年1月1日よりダンロップタイヤ東北㈱ほか国内タイヤ販売子会社10社および住友ゴム工業㈱タイヤ国内リプレイス営業本部の一部機能を組織再編により㈱ダンロップタイヤに統合しております。

 

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社グループの全ての事業活動には、住友400年の歴史のなかで受け継がれてきた「住友事業精神」が息づいています。当社グループではこの考えをベースに策定した企業理念体系「Our Philosophy」をあらゆる意思決定の拠り所とし、2050年を見越したサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」に基づいた持続可能な社会の実現に貢献する様々な活動を展開しています。

 「ESG経営の推進」は、当社のパーパス、すなわち「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」という存在意義そのものであり、気候変動や生物多様性、人権の尊重をはじめとする社会課題解決に積極的に取り組んでいます。気候変動への対応についてはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同を表明し、情報開示の拡充を行っています。生物多様性についてはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言を採用する意思を表明し、TNFD Adopterに登録しています。人権の尊重については、2023年12月に「住友ゴムグループ人権方針」を策定しており、人権尊重の取り組みをより一層強化していきます。

 

①ガバナンス

 ESG経営を推進するにあたり、ESG担当役員を委員長、各部門担当役員を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を年2回開催し、全社方針の徹底、重要課題の進捗確認等を実施しております。同委員会における経営層によるモニタリングやレビューを通じてサステナビリティの取組みを継続して強化し、持続的成長を支える強固な経営基盤を構築することで持続可能な社会の実現への貢献を目指しています。同委員会において審議・報告された事項は取締役会に報告されます。

 

 特に部門横断の組織で活動する必要のあるテーマについては、サステナビリティ推進委員会の承認のもと部会を設置しており、これらの部会をサステナビリティ推進WG(ワーキンググループ)と総称しています。各部会は主管部門と参画部門で構成され、活動の企画・推進やサステナビリティ推進委員会への報告、経営層への報告等を行います。

 

 

②戦略

 当社グループは「ESG経営の推進」を中期計画のバリュードライバーの1つに設定し、事業を通じた社会課題の解決を基本戦略として取り組んでいます。

 また「サステナビリティビジョン」である「わたしたちは、多様な力をひとつに、環境や社会にやさしい製品・サービスを提供することで、持続可能で「GENKI※」な未来を創造します」のもとサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を策定しています。E、S、Gそれぞれの領域で2050年を目標とした戦略・目標値を定めて活動を行っています。

※「GENKI」は、1988年に「みんなが元気になる活動」として開始した従業員による地域貢献・ボランティア活動プロジェクト「GENKI活動」が源流です。G、E、N、K、Iそれぞれに住友ゴムが目指すべき姿をテーマ付けしており、重要課題選定時にも活用しています。

GENKIは G :Governance E :Ecology N :Next K :Kindness I :Integrity の5つで構成しています。

 

(人権に関する取り組み)

 当社グループは、2023年に全グループ共通の人権に関する姿勢・考え方を明文化した「住友ゴムグループ人権方針」を策定し、社内外へコミットを行いました。2024年1月には、サステナビリティ推進委員会下のワーキンググループの一つとして「人権部会」を設立しました。各関係部門が参画し、全社で人権リスクに対し取り組める体制づくりを行っております。2024年は当該部会にて、グループ内の人権リスク特定を進め、人権デューディリジェンス実施のロードマップを作成していきます。2025年は取り組みをサプライヤーへ拡大し、バリューチェーン全体での人権尊重の取組みを目指します。実効性の高い人権マネジメント体制を構築し、人権デューディリジェンスを適切に実施することで、人権の保護・尊重を進めてまいります。

 

(TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応)

 気候変動問題は社会が直面する重要課題の一つと考えています。エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)や地球温暖化対策推進法(温対法)などの環境法令を支持し、創業以来培ってきた技術力を活かして温室効果ガスの削減などに積極的に取り組み、企業の社会的責任を果たしていきます。当社は2021年6月、TCFDへの賛同を表明しました。気候変動が事業に与えるリスクと機会の両面に関して、ガバナンス、戦略、リスク管理、目標と指標の4つの基礎項目に基づいて情報開示を進めています。詳細は「気候変動への対応(TCFD)」をご参照ください。

「気候変動への対応(TCFD)」ページ URL

https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/04_5.html

 

(自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)への賛同)

 当社グループは、重要課題特定の過程で「生物多様性の保全」を解決すべき課題の1つとして認識し、取り組みを行っています。2023年9月のTNFD提言の公開を受けて、当社グループは2023年11月にTNFD Adopterに登録しました。当社は2024年度の会計年度に関してTNFDに沿った開示を実施することを表明しており、2024年の世界経済フォーラム年次総会においてEarly Adopterとして発表されました。自然関連課題に関する分析及び関連開示の充実に取り組んでまいります。詳細は「TNFDへの対応」をご参照ください。

「TNFDへの対応」ページ URL

https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/TNFD/

 

(カーボンニュートラルに向けた取組み)

 当社グループの掲げる 2030年までのCO2排出削減目標について、科学的知見と整合した目標であるとして、SBTイニシアチブ※1よりSBT※2認定を受けました。SBT認定を受けた当社のCO2排出削減目標は次のとおりです。

区分

目標

スコープ1,2(自社の活動を通じた排出)

総排出量を55%削減(2017年比)

スコープ3(事業者の活動に関連する他社の排出)

カテゴリ1(購入した製品・サービス)

総排出量を25%削減(2021年比)

※1 CDP、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)により設立された共同イニシアチブ。企業に対して科学的知見と整合した目標(SBT: Science-based target)を設定することを支援し、適合していると認められる企業に対してSBT認定を与えている。

※2 パリ協定に沿った科学的知見と整合した温室効果ガス排出削減目標

 

<スコープ1、2>

 当社グループのスコープ1、2において、2030年に2017年比でCO2半減、2050年にカーボンニュートラル達成を目標に掲げていましたが、各拠点の積極的な取り組みにより目標に対して前倒しで削減計画が進捗していることを受けて、2023年11月に目標値を2030年に55%削減(2017年比)に引き上げました。今後もさらに省エネルギーの推進、コージェネレーションシステムの拡大、太陽光発電の導入、水素への燃料転換等の取り組みの推進を継続し2050年カーボンニュートラル達成を目指してまいります。CO2排出量等の詳細データは「グローバル環境データ」をご参照ください。

「グローバル環境データ」ページ URL

https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/04_4.html

 

<スコープ3>

 当社グループの温室効果ガス排出量はスコープ3が約9割を占めており、サプライチェーン全体におけるカーボンニュートラル達成のためにはスコープ3排出量の削減が重要な課題となります。そのため当社は2023年11月に、スコープ3排出量のほぼ全てをカバーした2030年目標を設定しました。「材料開発・調達」では、サステナブル原材料の活用等で2030年に排出量25%削減(2021年比)を、「物流」ではモーダルシフトの推進等で2030年に排出量10%削減(2021年比)を、「販売・使用」「回収・リサイクル」ではタイヤの転がり抵抗低減等をそれぞれ進める予定です。各プロセスで取り組みを推進することで、目標値の達成を目指してまいります。CO2排出量等の詳細データは「グローバル環境データ」をご参照ください。

「グローバル環境データ」ページ URL

https://www.srigroup.co.jp/sustainability/genki/ecology/04_4.html

 

 なお、上記の各プロセスは、温室効果ガス(GHG)プロトコルにおけるスコープ3カテゴリに対し、次のとおり相当します。

プロセス

材料開発・調達

物流

 販売・使用

回収・リサイクル

GHGプロトコルにおけるスコープ3

カテゴリ

カテゴリ1
(購入した製品・サービス)

カテゴリ4
(輸送、配送(上流))

カテゴリ11
(販売した製品の使用)

カテゴリ12
(販売した製品の廃棄)

 

 

 

(サステナブル原材料の取組み)

 当社は環境に関する取り組みの一環として、当社独自の循環型ビジネス(サーキュラーエコノミー)構想である「TOWANOWA」を策定しました。バリューチェーンの「材料開発・調達」プロセスにおいて、CO2削減と持続可能な調達の実現を目指し、2030年に製造するタイヤのサステナブル原材料比率を40%に、2050年には100%サステナブルタイヤを実現することを目標としています。

 

③リスク管理

 当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす恐れのあるサステナビリティ関連リスクを含めた全ての経営リスクについては、当社グループ全体のリスク管理について定めるリスク管理規定に基づき、それぞれの担当部署及び各子会社において事前にリスク分析、対応策を検討し、当社の経営会議等で審議しています。当社グループ横断的なリスクについては、当社管理部門の各部が、それぞれの所管業務に応じ関連部署及び各子会社と連携しながら、グループ全社としての対応を行います。リスク管理委員会は、住友ゴムグループ全体のリスク管理活動を統括し、リスク管理体制が有効に機能しているか適宜調査・確認します。また当社及びグローバルサプライチェーンにおける、社会や環境に与える負荷を低減していくために特に重要と考えるテーマについてはサステナビリティ推進委員会により経営層によるモニタリング・レビューを行い、取締役会に報告されています。

 

④指標及び目標

 当社グループはサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」で設定したカーボンニュートラル及び製品のサステナブル原材料比率100%達成を目指して活動を推進しています。

 またそのほかの重要な指標についても当社ウェブサイトに公開しています。

https://www.srigroup.co.jp/sustainability/search_index.html

項 目

2030年目標

2050年目標

カーボンニュートラルに向けた取組み

スコープ1、2

55%削減(2017年比)

カーボンニュートラル達成

スコープ3

カテゴリ1:25%削減

カテゴリ4:10%削減

(共に2021年比)

サステナブル原材料※比率向上に

向けた取組み

40%

100%

※サステナブル原材料とは例えば生物由来原材料やリサイクル原材料など、持続可能なリソースからなる原材料を指します。

 

(2)人的資本

 当社は、これまでも様々な技術革新から世界初・日本初の製品を生み出してきました。主力ビジネスでもあるタイヤ事業においては以前よりシミュレーション技術を駆使して開発したタイヤを「デジタイヤ」として数々市場に送り出してきました。2015年からはスーパーコンピューターを駆使して分子レベルで内部構造や分子運動を解析できるようになった「ADVANCED 4D NANO DESIGN」を活用した開発を手掛けてきました。これらからも分かるように当社においてデジタル技術はイノベーションを創出するために必要不可欠なものでした。これらの技術力や先進性は当社の基盤であり、タイヤ事業のみならずスポーツ事業・産業品事業・データビジネスの全ての分野で価値を生み出す源泉となっています。2020年に公表したOur Philosophyは、住友の事業精神をベースとしながら、当社のPurpose「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」を起点とした企業理念体系となっています。この体現のため、Visionとして組織としてのありたい姿「多様な力をひとつに、共に成長し、変化をのりこえる会社になる。」を実現すべく人的資本経営を進めています。多様な人材が総力を結集し、社員一人ひとりが持つ強みを活かして価値を生み出すことで、これからの新しい時代にもイノベーションを通じて最高の安心とヨロコビをステークホルダーの皆様に提供することができると確信しています。

 2023年に発表した中期経営計画で、2025年までは基盤強化活動・基幹システム刷新・既存事業の集中と選択・成長事業の基盤づくりに注力をすることを説明しております。2025年以降は事業ポートフォリオの最適化・成長事業のビジネス拡大をすることで、事業利益率・ROE・D/E Ratio・ROIC等の経営指標についても改善し、企業価値の向上に取り組んでまいります。

 当社は全ての事業の基盤となる「ゴム技術」をはじめとし、当社独自の工法「太陽」をさらに進化させた「NEO-T01」にも代表される「モノづくり技術」、ゴムの分子レベルの解析を可能にした「Advanced 4D Nano Design」に加えて、「市場に対応した開発力」「総力を結集できる一体感のある組織」を競争優位の源泉と位置付けています。

 これら競争優位の源泉をさらに強固なものにし、持続可能な経営を実現するため、当社は以下を人的資本経営における重要戦略としています。

 

 

①人的資本経営の考え方と戦略

(戦略1:経営人材の育成)

 変化の激しいVUCAな時代には、柔軟性と迅速な意思決定が求められます。そのため、不確実な状況下でも冷静に判断し、先見性を持って行動できる「経営人材」の育成が極めて重要です。あわせて、チームを効果的に率い、変化に柔軟に対応できるリーダーシップも必要不可欠となります。絶えず学び、自らを成長させることができる人材を育成できる仕組みを構築していきます。

 

(戦略2:イノベーション人材の育成)

 住友ゴムはゴム技術を基盤として社会に新しい価値を提供するイノベーションを起こしてきました。現在でも新しい技術として「Smart Tyre Concept」「水素エネルギーを活用したタイヤ製造」「高減衰ゴムを活用した制振技術」などを生み出し続けています。これからも新しい時代にイノベーションを起こし続けることができるよう、イノベーションに挑戦できる人材と風土を育てていきます。

 

(戦略3:DX人材の育成)

 デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本から変革し、より高度で効率的な意思決定や業務推進をすることが求められています。この変革を成功させるためには、デジタル技術の知識だけでなく、ビジネスに応用し、新たな価値を創出できる能力や変化に柔軟に対応し、組織内でのデジタル化推進のリーダーシップを発揮することが求められます。こうしたDX人材を育成し、定着し、活躍できる仕組みを作り上げていきます。

 

(戦略4:全社員の多様性とパフォーマンスの向上)

 Visionにもあるとおり、「多様な力をひとつに」することで組織としてのパフォーマンスが向上すると考えています。特に人の持つ属性の多様性を高めることは年齢、性別、国籍、雇用形態など様々な社員が集まることで、異なる視点やアイデアが生まれ、イノベーションが促進されると考えます。多様なチームは、幅広い解決策を生み出し、より柔軟で包括的なアプローチによる問題解決を行うことができます。一方で、多様性のみではなく個々人のパフォーマンスを高めることも重要です。Our Philosophyに共感し、目的をひとつにして、共に歩む人材が、エンゲージメント高く、心身共に健康で、高い知識・スキルや豊富な経験を身に着け、ステークホルダーの皆様に高い価値を提供できるような仕組みや風土を築き上げます。

 

②具体的取組みと目標・指標

(経営人材育成のための取り組み)

 イ.役員層へのエグゼクティブコーチング

 役員層のリーダーシップ向上と一枚岩化を目的として、社外のプロのエグゼクティブコーチを招き、執行役員以上(及び一部の海外ナショナルスタッフCEO)に対して定期的なコーチングを実施しています。月に一度、定例でのコーチングを実施して経営課題や組織課題についてのディスカッションを行っています。これに加えて、毎週エグゼクティブコーチから役員全員へリーダーシップに関するメールマガジンが配信され、それに対しての各々の回答を見ながらリーダーシップに関する認識を深めていくこととともに役員間での連携を強化しています。

 

 ロ.役員・管理職層及び課長代理へのリーダーシップ向上サイクル

 経営人材を育成するにあたり、リーダーシップは重要な要素となります。リーダーシップを向上させるために、知識のインプット・行動としてのアウトプット・他社からのフィードバックというサイクルを年単位で回しています。インプットとしてはリーダーシップやフォロワーシップやコミュニケーションについての研修も整備しており、e-Learningや通信教育に加えて、選択式のオンライン研修も受講することができます。そしてフィードバックとして、個人のリーダーシップの癖に関しては360度フィードバックを通じて客観的に自身の状態を見つめることができます。あわせて、組織の状態としては毎年実施している組織風土調査により自身の所属する組織の状態を計測しています。これらを通じて継続的にリーダーシップを向上し続けています。

 

 <実績と目標>

 組織体質アンケート「私の部署には、ミスやトラブルがあった際に感情的に叱責する人はいない。」

 (2023年度ポジティブ回答率69.2%、目標80%以上)

 

(イノベーション人材育成のための取り組み)

 イ.イノベーション人材育成プログラム

 イノベーションを作るためには仕組みや風土が大切なことは言わずもがなですが、生み出すための人材育成が重要な要素と考えています。2023年からイノベーション人材育成プログラムとして開始し、初年度は17名が参加しました。初年度は3つの大学にも企画から開催までの協力をいただき、アントレプレナーシップマインドの醸成のための講義から、グループ毎の最終プレゼンテーションの実施を2か月程度で集中的に実施をしました。

 

 ロ.スペシャリストコースの適用

 2021年に管理職の人事制度を従来の職能資格制度に基づく処遇体系からより仕事基準に移行し、新たに役割等級制度として開始をしました。それにあわせて、単線的であった管理職の制度をマネジメントコースとスペシャリストコースに分けて専門人材がより活躍できる枠組みの運用を始めています。今後、管理職以外への拡大についても検討しているところです。

 

 ハ.副業・兼業の規制緩和

 2023年には副業や兼業についての就業規則上の記載文言を変更し、副業・兼業を行いたい社員を後押ししています。社外の仕事に触れることで新たな視点を持って当社の業務にもあたることができるようになり、より効率的な働き方やイノベーションの創出に貢献するものと考えています。

 

 ニ.Challenge Awards Day

 毎年年末に年間の取り組みを表彰するイベントを実施しています。表彰としてはテクノサイエンス賞・BTC年間表彰・サステナビリティ表彰の3つの部門があります。

 テクノサイエンス賞として、次世代への創造の芽を生み出していく基礎研究・技術開発・設備開発・生産技術などにおける革新的な内容に対して表彰を行います。BTC(Be the Change)年間表彰としては、組織体質と利益基盤のいずれかもしくは双方において大きな改善があった内容に対して表彰を行います。サステナビリティ表彰は活動ガイドラインGENKI(G:Governance、E:Ecology、N:Next、K:Kindness、I:Integrity)の各部門において、サステナビリティビジョンである「わたしたちは、多様な力をひとつに、環境や社会にやさしい製品・サービスを提供することで、持続可能で「GENKI」な未来を創造します」において優秀な活動を表彰します。2023年度のテクノサイエンス賞の最優秀賞は「アクティブトレッド開発」が選ばれ実際のビジネスにおけるイノベーションとも大きく結びつく内容となっています。

 <実績>

  テクノサイエンス賞 最優秀賞1件、優秀賞6件

  BTC年間表彰 7件

  サステナビリティ表彰 最優秀賞2件、優秀賞4件、特別功労賞3件、奨励賞11件

 

(DX人材育成のための取り組み)

 イ.DX人材育成プログラム

 間接部門の全社員約3,500人を対象に2022年10月からDX人材育成研修プログラムを開始しました。全員が共通して持つべきスキルをDXリテラシーと定義すると共に、より高度なスキルを持つ人材をビジネスコア人材、プロ人材、データエンジニア人材と定義して育成しています。さまざまなDXの施策が具体化する2025年までに、人員の育成を完了させ、データに基づく意思決定や行動(データドリブン)が全社で可能となる土台づくりを進めています。2023年末時点ですでに2,220名が受講しており当初目標値を上回る育成を行うことができています。また、プロコースについてはProject-Based Learning(PBL、課題解決型学習)を行っており、学習しながら実際の職場の課題解決を進めるなど、知識の定着や職場の理解促進にも力を入れています。

 <実績と目標>

  DXリテラシー受講完了人数2023年末 2,220人(目標 2025年末 3,500人)

 

 

 ロ.Tableauの活用

 当社ではデータの可視化により素早く・高度な意思決定を行う文化醸成のために広くセルフBIツールとしてTableauを2018年より本格導入しました。製造部門・SCM部門・販売部門・ソリューション部門など幅広く実際のビジネスにも活用しており、2023年に新たに導入した3拠点を合わせて、全世界14拠点に展開が完了しています。これにより各部門のデータリテラシーの向上を図り、高度な情報分析をできることとともに、データドリブンな人材育成を目指しています。

 

 ハ.RPA(Robotic Process Automation)ユーザー開発

 当社では定型的な事務作業の効率化を行い、より付加価値の高い業務にリソースシフトを図るため、RPAの活用を進めています。以前は担当者が入力していたデータ登録作業などを開発したRPAロボットで対応することにより、2023年末には取り組みを開始した2018年と比較して75,000時間以上の効率化を図ることができました。この結果には、IT部門が開発したRPAロボットのみならず、各部門の担当者が自ら開発(市民開発)したRPAロボットによる効率化が年間44,000時間以上含まれており、事務効率向上とあわせて社員のデジタルリテラシーの向上に寄与しています。

 

 ニ.Digital Innovation Day

 社内でDXを推し進めていくための重要な要素のひとつがコミュニティ(つながり)の存在であると考えています。コミュニティはナレッジを共有し、コミュニケーションを活性化させ、シナジーを生み出すことに寄与します。このつながりを作るために毎年Digital Innovation Dayとしてイベントを開催しています。各部門でのDXの取り組みや社外から講師を招いて最新の他社事例の共有などを行っています。(2023年は11月28日開催、参加者539人)

 

(全社員の多様性とパフォーマンス向上の取り組み)

 イ.ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組み

 

  a.アンコンシャスバイアス理解促進

 アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)は特に社員や求職者への公平な評価や成長機会の付与において影響を与えることになります。時にはD&Iを損なう原因になることもあります。アンコンシャスバイアスを取り除くことはできないと考えているため、自身のアンコンシャスバイアスに気付き、理解を深めるための取り組みを行っています。オンラインでのセミナー開催から始まり、社内報や食堂での動画配信など広く理解促進に努めています。

 

  b.女性活躍推進

 2019年にプロジェクトとしてスタートしたD&I活動は、2022年に人事部内に専任部署を設立しました。トップコミットメント発信をはじめ、アンコンシャスバイアスに関する教育、女性のキャリア形成を支援するメンター制度設立、育児や介護と仕事の両立支援など、各施策を急速に推し進めてきました。

 2023年は当社代表取締役社長の山本悟が「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」(事務局:内閣府)に参加し、全国各地の様々な業種の男性リーダーとのネットワークを深めており、当社におけるジェンダー平等と女性活躍の取組みをさらに加速していきます。

 特に女性管理職を拡大していくための施策としては、京都大学の女性エグゼクティブリーダー育成プログラムへの参画の機会を得たため、当社からは女性部長を2名派遣し、管理職比率向上とあわせて、次期経営層の育成にも取り組み始めました。

 また、自身のキャリアパスについて悩んでいる女性社員が向上心を持って社内でキャリアビジョンを描けるように2021年よりメンター制度を導入しています。メンターは半年間の研修期間を経て、メンティを受け持つことになりますが、すでにメンターは51人(2024年2月時点)に拡大しており、すでにメンタリングを受けたことのあるメンティも80人(2024年2月時点)になりました。

 社内のロールモデルだけではなく、企業の枠を越えて女性社員の悩みを共有したり、視野を広げたりする目的もあり、当社本社のある神戸地区の企業と協力して女性技術者向けの交流会を開催しました。2023年に開始した「神戸モノづくり企業 技術系女性交流会」は2024年2月に第二回目を迎え、3社及びその関係会社の女性エンジニアが96名参加する活況なイベントとなりました。

 女性管理職比率に関しては、2025年末に7%以上の目標を設定していますが、現時点で4.3%と到達のために解決しなければならない課題が多くあります。現在、両立支援に加えて、育成施策についてもスピードを上げて実行しています。

<社外からの認定等>

 ・女性活躍企業への認証「えるぼし認定(三つ星)」取得(2022年、厚生労働大臣)

 ・「ひょうご仕事と生活のバランス企業表彰」(2023年、兵庫県)

 ・「ひょうご・こうべ女性活躍推進企業(ミモザ企業)認定」(2023年、兵庫県・神戸市合同認定)

<実績と目標>

 女性管理職比2023年末 4.3%(目標 2025年末 7%)

 男性育休取得率2023年 84.8%(目標 2024年 100%)

 ※会社独自制度の利用含む

 

  c.障がい者活躍推進

 当社では従来、特例子会社である㈱SRIウィズにて障がい者を雇用し、主に当社の業務を委託することで人材の確保を行ってきました。昨今の法定雇用率水準の高まりにも表れるように企業における雇用責任も高まってきております。この状況下で、従来当社内で実施していた業務の再整理と標準化を進めることで、㈱SRIウィズに委託する業務の拡大を行うとともに、当社内においても管理部門を中心に雇用拡大を図っています。従来の採用方法を見直し、定期的に障がい者雇用を行う(2月、6月、10月入社)ことで支援機関やハローワークとも連携強化を図っています。

<実績と目標>

 障がい者雇用率2024年2月 2.54%(目標 2026年7月 2.70%以上)

 

 ロ.シニア人材活躍推進

 従来の再雇用制度においては、再雇用後の処遇は一律に引き下がるものでありましたが、2021年4月に管理職に仕事基準の役割等級制度を導入し、それに倣う形で翌年2022年から再雇用人材に対しても役割等級制度を導入しました。これにより、ラインマネジメントを継続して行っている人材や専門性を活かして活躍する人材に関しては定年退職前の水準と同程度の処遇で活躍する人材も出てきています。

 

  a.性的マイノリティへの理解促進

 性的指向や性自認に基づく差別を排除し、全ての人が尊重され、平等に扱われる社会を構築することは、個人の尊厳を守り、人々が自分らしく生きる権利を保障するために重要です。企業や組織においても、LGBTに対する理解と支援を深めることで、従業員の満足度やモチベーションを高め、創造性や生産性の向上につながります。

 当社としても以下のような取り組みで各社員の理解促進を図り、全ての人材が生き生きと働くことができる環境を整備していきました。

〇理解促進・啓発活動

 まずは全社員やグループ会社での理解が重要であるため、LGBTQ+に関する理解向上研修を実施いたしました。毎年6月には、プライド月間とし定期的にLGBTQ+について考える機会を設け、映画を使った勉強会を実施してきました。また、社外窓口として提携している「㈱アウト・ジャパン」が主催するAlly プロジェクトへの参画をすることで、他社との連携も強化しています。

 

〇環境づくり

 社内のAllyコミュニティを発足し、メンバー間での情報交換や社内への情報発信を行っております。あわせて、Allyステッカーの配布を行い社内で頻繁にAllyの可視化を行っています。また、LGBTQ+の理解促進ハンドブックを整備し、基本的な知識に加えて、人事担当向けの労務実務マニュアルを作成配布しています。

<社外からの認定等>

 ・「PRIDE指標2023」での「ゴールド認定」(2023年、任意団体work with Pride)

 

  b.多様な働き方を支援する仕組み

 コロナ禍において開始した在宅勤務制度を2022年12月に正式に制度化しました。在宅での勤務を併用することで、生産性の向上やプライベートとの両立をサポートしています。2023年4月には短時間勤務に関する規定を見直し、フルタイム勤務と時短勤務を柔軟に行き来できる制度へと変更しました。そのほか、時間単位での年次有給休暇の取得を年5日まで認めることや、契約社員等へ有給公休の拡大、フレックスタイム勤務制度利用推進等、多様な方が使いやすい仕組みづくりに取り組んでいます。

<社外からの認定等>

 ・「D&I AWARD」での最高位「ベストワークプレイス賞」認定取得(2023年 83点/100点、Job Rainbow)

 

 ハ.社員のパフォーマンス向上の取り組み

 

  a.Our Philosophy浸透

 2020年にOur Philosophyを策定して以来、様々な方法で浸透を試みてきています。2021年からは毎年1回のオンライン研修を実施し、色々な角度から企業理念体系を意識し続けられるように仕組み化しています。評価制度に用いられている年1回の行動評価については、「住友ゴムWAY(住友ゴムグループ社員一人ひとりが大切にする価値観)」の3つの価値観である「信用と確実を旨としよう」「挑戦しよう」「お互いを尊重しよう」という考え方がベースになった項目により評価されます。また同様に360度フィードバックの設問についてもこれらが基盤となっており、フィードバックをする側も受ける側も常にどのような行動が求められるかを意識するようになっています。

 海外の事業所への浸透活動としては、イントラネット内に多言語対応しているOur Philosophy Book(解説書)を公開していることに加えて、本社の担当者が現地とのオンライン研修を通じて解説するワークショップを開くなどコミュニケーションを行っています。

 また、これらの取り組みがどのように浸透しているかということを毎年浸透度調査としてアンケートを実施しており、浸透度80%以上を目標として活動を進めています。

<実績と目標>

 Our Philosophy浸透度調査「共感」または「実践」 2023年 44.7%(目標 2030年度 80.0%)

 (Purpose、Vision、住友ゴムWAYそれぞれに関する自身の認識を聞く設問に対し、回答水準に応じ「認知」「理解」「共感」

  実践」の4段階で浸透度が高まるとしており、「共感」または「実践」のスコアをつけた割合)

 

  b.タレントマネジメント

 サステナブルな人材・組織のマネジメントを行うため、社内取締役で構成される人事委員会(2022年より開始)では部長級以上の人材配置について毎月議論を行っています。また、全社の主要ポストを特定し、ポストと人材を定量的に可視化することで人材プールを確保する取り組みを一部の部門を皮切りに実施しています。

 今後、経営戦略・部門戦略に連動した人材ポートフォリオを満たすように、段階的に全社に拡大していきデジタルツール(人事情報管理システム)を使い可視化することで、早期から計画的に経営人材を育成するプラットフォームが構築される計画です。

 

  c.キャリア支援

 キャリア支援施策として、キャリアマッチング制度・プロジェクト公募制度・交換留職制度の3つの支援施策を2021年より開始しています。キャリアマッチング制度は毎年1月と7月に社内通達されたタイミングで、社員が任意で自身の中長期的なキャリア志向をデータベースに登録することができます。登録されたデータは人事部内で確認された後、自身が所属する部門の担当役員と希望している職種がある部門の担当役員に情報が共有されます。その後、自身の上司とキャリアに関する面談を行い、場合によっては早期に人事異動につながるケースも出てきています。プロジェクト公募制度は、各部門にてプロジェクトを立ち上げたいもしくは増強したいが人員が不足している際などに、全社向けにメンバーの公募を行います。公募に対して立候補した社員を一定期間プロジェクト参加させることができる制度です。現在、大阪・関西万博の企画運営を行っている公益社団法人2025年日本国際博覧会協会から人材の募集があった際には社内で公募を行い、立候補した2名を同協会へ2022年より派遣しています。

 また、2023年からは人事総務本部人材組織開発部内にキャリア支援機能を追加し、キャリアコンサルタントの有資格者が社員のキャリア相談を受ける体制を構築しています。

<実績と目標>

 組織体質アンケート「私の直属の上司は、私のキャリア、成長について話を聴き、一緒に考えてくれている。」(2023年度ポジティブ回答率69.9%、目標80%以上)

 組織体質アンケート「私の直属の上司は、私の成長を考え、成長のための機会や高い目標を与えてくれている。」(2023年度ポジティブ回答率74.5%、目標80%以上)

 

  d.研修体系

 階層別研修としては、将来のありたい姿を描くことができるようなキャリアデザイン教育も取り入れており社員一人ひとりのキャリア自律を促しています。キャリアを描いた際には、将来のありたい姿と現状とのギャップを理解することになりますので、その実現に向けた能力開発として、選択型のスキルアップ研修やeラーニング、通信教育など、主体的に学ぶ機会を多く提供しています。また、リーダーシップ開発などの社員全体に必要な教育については広く実施し、組織内での共通言語化を図るとともに組織体質の向上に貢献しています。

 技能系社員については特に工場の生産現場で働く社員が多くいます。生産現場でより安全により品質の高いものをより生産性高く作っていくためには職長のマネジメント力が職場運営の鍵になります。監督職から上級監督職(職長の有資格者)に昇格する前には約1か月間の監督職能力向上研修を実施し、職長として必要なマネジメント力(考え方・知識等)を高めています。

 

  e.組織風土向上とワークエンゲージメント

 2019年より組織体質強化のプロジェクトを進めており、4つの骨太方針「挑戦を後押しする環境」「部門・役職間の壁がなくオープンな職場」「一人ひとりがリーダーシップを発揮できる環境」「全社戦略とひもづいた生産性の高い仕事」の実現を目指し変革活動を進めています。組織体質アンケート等を通し定期的に全社の状況を把握し、組織風土改革に向けた各種施策に取り組んでいます。

 プロジェクト開始当初、組織風土の中に感じていた大きな課題は「挑戦を後押しする環境」「部門・役職間の壁がなくオープンな職場」「一人ひとりがリーダーシップを発揮できる環境」でしたが多くの取り組みを実施してきました。前述しているリーダーシップ向上の取り組みやキャリア支援の取り組みに加えて、以下のような取り組みも多く展開してきました。

 「さん付け」(役職呼び不要):従来、会話で呼ぶ際やメールでの記載について、原則として役職呼称をおこなっていましたが、フラットなコミュニケーションを目的として、さん付けでのコミュニケーションを原則としました。

 「1on1」:現時点で公式な制度化はしていませんが、上司部下のコミュニケーションが業務の進捗管理のみにならないよう、キャリアビジョンや雑談なども含めて幅広いコミュニケーションが必要であることを浸透しています。

 「いいねポスト」:普段、面と向かって感謝の気持ちを伝えにくい場合にもオンラインのポストに感謝の気持ちを投函することで数日後に対象者に感謝のメッセージがメールで届く仕組みです。

 そして、現在の大きな課題として残っているのが、生産性の高い業務遂行に関する内容です。特に間接業務について取捨選択し、さらに効率的な仕事の進め方を行わなければなりません。2024年1月に発足した業務改革準備室は、この課題解決も含めてさらに効率的かつ高度な間接業務を担うことになります。

 また、当社では毎年一度、ストレスチェックとあわせてワークエンゲージメントに関する内容も聴取しており、上記の組織体質向上を行うことで個々人のワークエンゲージメントの向上に取り組んでいます。

<実績と目標>

 組織体質アンケート「私の部署では、BadNewsFast/First(悪い情報を早く報告すること)が徹底できるようになっている。」(2023年度ポジティブ回答率83.2%、目標80%以上)

 組織体質アンケート「私の部署ではやめるべき業務を明確にして、断捨離の活動が進んでいる。」(2023年度ポジティブ回答率51.1%、目標80%以上)

 ストレスチェック関連設問:「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」(2023年度ポジティブ回答率33.5%)

 ストレスチェック関連設問:「自分の仕事に誇りを感じる」(2023年度ポジティブ回答率66.3%)

 

  f.健康経営の推進(心身の健康維持・増進)

   〇健康文化の醸成

 2022年7月に全社の「健康経営宣言」を改訂し、Our Philosophyに基づいた健康経営を実現するための宣言として発出し健康経営に力強く取り組んでおります。また、2022年には健康経営銘柄取得、2023年には7年連続ホワイト500(健康優良法人)認定をいただきました。

   <社外からの認定等>

    ・「健康経営銘柄」取得(2022年)

    ・「ホワイト500(健康優良法人)」認定(2023年、7年連続認定)

    ・「スポーツエールカンパニー2023」認定(2023年、スポーツ庁)

 

   〇メンタルヘルスケア

 社員の生産性とひとりひとりの幸せを向上させるためにもメンタルヘルスケアに取り組んでいます。毎年のストレスチェックを全社員向けにオンライン実施しており(回答率2023年度 89%)、集団分析結果をもとに産業保健スタッフが高ストレス職場にはヒアリングを行い、各職場で職場改善活動に取り組んでおります。また、個人のセルフケア能力を高めるためにセルフケアセミナーを毎年実施するとともに、管理監督者向けにラインケアセミナーを毎年実施しています。(オンラインセミナー実施と録画のオンデマンド配信)

 

   〇禁煙推進

 受動喫煙防止として、国内全事業所にて敷地内就業時間内全面禁煙を2024年1月から開始しました。また、就業時間外についても毎年の定期健康診断にて、喫煙率の問診を行っており、2025年度の喫煙率目標を30%未満と設定しています。2023年度時点では全社平均36.6%のため、禁煙治療補助の拡充と健康保険組合によるオンライン禁煙治療とニコチンパッチトライアル等の事業を実施しています。

<実績と目標>

 喫煙率実績2023年度 36.6%(目標 2025年度 30%未満)

 

   〇プレゼンティーイズム改善

 ストレスチェックと合わせてプレゼンティーイズム測定(WFun)を実施しています。個人の結果とともに事業所毎職場診断も行い、結果をフィードバックしており、各職場で改善活動に取り組んでいます。

 

  g.労働安全衛生の徹底

 当社グループは「労働災害ゼロ」を目指し、最も重要な要素と考えている「安全な人づくり」のために、階層別教育や体感教育を行い、技能と知識の習熟度を確認しながら定期的に安全衛生に対する教育活動を推進しています。

 2022年度に把握した各事業所の弱みを改善し続ける活動を展開するとともに、2023年度は各事業所の良い活動の情報展開を通じて改善活動を加速させてきました。

 また、安全衛生に関するリスクアセスメントを実施することで危険を排除し本質的に安全性を高める先取り型安全活動の推進も加速させ、前年の5倍の推進者を育成して危険源の排除を進めています。さらに現地現物を基本としながらもオンラインでのコミュニケーションを合わせて活用し、安全監査や管理監督者が現場作業者と寄り添う活動も積極的に実施しています。

 2023年度の安全目標は、「重大災害ゼロ」、「災害数を40件(2022年中計目標)」と設定し活動をしてきました。実績としては、重大災害は0件、災害数は56件となりました。

 いかなる状況でも安全ルールを守れる人づくり、お互いに影響し合える職場づくりを進め、安全文化を醸成して災害ゼロを目指します。

<社外からの認定等>

 ・国内外12工場にてISO45001認証取得(取得率44%(12/27工場))

<実績と目標>

 重大災害  0件(目標 2023年度ゼロ)

 災害数   56件(目標 2023年度40件)

 

なお、<実績と目標>に記載しております指標は、「g.労働安全衛生の徹底」のみ当社グループ全体での数値となります。