リスク
3 【事業等のリスク】
当社の事業に係るリスクとして、投資者の判断に影響を与える可能性のある事項は以下のとおりです。
これらは、当社が推定したリスクのうち代表的なものを表示したものであり、実際に起こり得るリスクを網羅したものではありません。また、文中の将来に関する事項は、2024年6月期末現在において当社が判断したものです。
なお、各項目に分類される潜在的なリスク事案については、個別に取締役会及びリスク管理委員会において報告され、検討が加えられており、重大なリスクの具現を未然に防止する体制は確保されています。
1.業界の動向について
電子マネーの普及、ネットショッピングやモバイル端末によるクレジットカード決済の普及と拡大等の社会的な変化に伴って、クレジットカード会社以外の事業会社がカード決済業務に参入する事例もあり、当社にとっては新規の事業機会となりますが、当社の主要な事業領域であるクレジットカード業界は、メガバンクが主導する業界再編を経て、長期的には更なる業界再編等によって当社の市場は収縮する可能性があります。
業界再編によって当社の顧客が統合されることにより、当社の顧客数が減少し、長期的には、顧客からのシステム開発の発注が減少、当社の売上高が減少する可能性があります。反面、顧客の統合によってシステムが大型化することによって、顧客の発注の規模が拡大する可能性もあります。
また、当社の業績は、多くの部分がクレジットカード業界各社からの発注で成立っており、各社の業績の推移や法規制等による動向によっては、一時的に当社への発注が減少する等により、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
2.システム開発について
当社はシステム開発業務の受注時点において、特に長期間に及ぶプロジェクトにおいては、工程を複数の期間に分割して段階的に契約を締結するほか、見積金額の精度向上及びリスク管理の徹底並びに開発手法の管理等によるプロジェクト管理体制を整備強化することにより不採算プロジェクトの発生をなくすよう日々研鑽を重ねています。
受注時点では利益が見込まれるプロジェクトであっても、諸要件の変更や当初の見積を超える作業工数の発生、または納期の遅延等の理由から不採算プロジェクトが発生する場合があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
受注の規模や業務の内容からより重要性の高いプロジェクトについては、当社の品質管理部門が状況の評価を継続的に行っており、その結果をリスク管理委員会に報告しているほか、当初の計画より採算が著しく悪化しているプロジェクトについては、取締役会において状況が報告され、改善の対策が討議検討されています。
一般に、システム開発業務においては、システムの企画、要件定義工程における仕様の曖昧さがその後の工程の混乱を招き、システムの品質の低下や開発作業の遅延等の結果を生じさせることがあり、受注額を超える費用が発生し、開発プロジェクトの採算が悪化する可能性があります。
開発工程の進行に伴って曖昧であった事項が確定したり、想定していなかった事項が発生したりして、後工程の前提条件に影響が生じ、開発費用が増加することがあります。
テスト工程において発見されたプログラムの瑕疵(バグ)等を修正しつつ、顧客と約束した納期を守るために見積を超える工数や人員の投入による経費が増加し、プロジェクトが不採算化する可能性があります。
受注額が相対的に大きいプロジェクトが不採算化した場合は、当社の利益予想に影響が生じる可能性があります。
また、システム開発の過程において、故意にまたは誤って第三者の知的財産権を侵害する等の事案が発生した場合は、第三者から損害賠償請求を受ける可能性がある等、業務の遂行と当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
3.人財確保について
当社の事業を推進するためには、専門的、技術的な能力や知見を有する人財の確保が重要であるため、採用活動や教育を通じて人財の確保に努め、また外部企業への委託も活用しています。しかし、こうした人財の確保が当社の計画どおり進まず、また、外部企業による協力を得られない場合には、当社の事業遂行や業績に影響を及ぼす可能性があります。より具体的には、人財の確保に問題が生じ、開発プロジェクトを推進する体制を構築できない場合は、計画どおりに開発案件を受注できない事態が生じ、結果的に売上高が減少する等の影響が及ぶ可能性があります。
また、固有の技術や知識を豊富に蓄えた技術者が大量に離職、退職する等により、従来どおりの体制で開発業務が行えない事態に至った場合は、当社の事業や業績に影響が及ぶ可能性があります。開発業務の成果物の品質が低下し、当社に対する顧客の長期的な信頼と評価が失われ、企業価値が減少する等の影響が生じる可能性があります。
4.労働環境について
当社の主な事業であるシステム開発業務は、業務の遂行と成果の品質について、社員の能力や専門性及び知見に少なからず依存する特性があり、前述のとおり、人財の確保は事業の継続性にとって、重要な課題のひとつです。
こうした認識に基づいて、当社は、社員の多様性に配慮しつつ、過重な労働を防止する取組みや職場の環境改善を不断に進めていますが、なんらかの事情で労働環境が悪化した場合、労働生産性の低下や人財の流出を通じて、業績が悪化する可能性があります。
人財が流出した結果、開発プロジェクトを推進する体制を構築できない等の問題が生じた場合は、受注高の減少や売上高が減少する等の影響が生じる可能性があります。より長期的には、開発業務の成果物やサービスの品質が低下することにより顧客の信頼が失われ、長期的に当社の企業価値が毀損する等の影響が生じる可能性があります。
当社は、従業員の安全衛生管理や超過勤務の削減等、労働環境の改善整備の状況について定期的にリスク管理委員会に報告し、個別の事案について検討を加えることで、重大なリスクの具現化を防いでいます。
5.クラウドサービス事業について
顧客の業務を担うために個別にシステムを開発して納入するのではなく、当社が用意したシステムやインフラ(ハードウェアやネットワークなど)を複数の顧客が利用することで、顧客が業務を運用することができる共同利用型のクラウドサービス事業は、顧客にサービスを提供するためのシステム開発や、インフラの整備等に係る初期投資が必要な事業であり、相対的に大規模な金額の投資が短期間に行われ、当社の業績や資金繰りが一時的に影響を受ける可能性があります。
また、当社がシステムやインフラを運用するための費用は、顧客が当社に支払う月額のサービス利用料によって賄われ、事業の売上として計上されますが、顧客の数が少ない間は初期投資によって生じる減価償却費の負担等により、事業の単年度の損益は悪化する可能性があります。同様に、初期投資の回収は、サービスの開始後数年間かかることが予見できるため、顧客と複数年間のサービス提供契約を締結する等により、投資回収をより確実なものにするための施策を講じて運用を開始しますが、顧客の事情や不慮の事情等によりサービス提供が中断し、収益が途絶える可能性もあります。そのような場合、事業の損益が悪化するほか資金繰りも悪化する可能性があり、併せてクラウドサービス事業用資産の減損評価によって、業績が悪化する可能性があります。
また、当社が、顧客に代わってクラウドサービスのシステムを運用する場合、運用上の失敗が起きた場合には、顧客の業務に何らかの損害を与える可能性があり、その損害について顧客から賠償を請求される可能性があります。損害賠償の金額が大きい場合には、当社の業績に影響が及ぶほか、顧客の信頼を失うことで中期的に売上高が減少する等、業績に影響が生じる可能性があります。
6.価格競争について
一般的に、システム開発業務においては、顧客のシステム投資に対する慎重な姿勢と、受注獲得のための事業者間の競争によって、また、既存の技術を代替する効率的な新技術の台頭によって、従来どおりのシステム開発業務やサービスの提供価格を上昇させることは難しくなっています。
当社は、特定の機能分野のシステム構築に強みを持っており、当社の専門的な知見と実績によって、多くの顧客から信頼と評価を得ています。取引が開始した顧客とは長期的に安定した関係を構築することができており、この事実は当社の事業基盤の重要な要素になっていますが、顧客にとって望ましい付加価値を提供し続けることができなければ、競合他社との価格競争に敗れ、受注高、売上高の減少につながる可能性があります。
7.技術革新について
当社は、主にクレジットカード業界を中心に、オンラインの取引を完遂するために必要なネットワークへの接続や、データの受渡し等、固有の技術や機能分野に知見を蓄積し、事業上の強みとしています。
将来、いわゆる破壊的な技術革新によって、決済業務を支える社会インフラとしてのネットワークで利用される既存の技術体系が完全に置換えられる等の事態が惹起した場合は、当社の事業体系や業績に大きな影響が及ぶ可能性があります。この結果、当社が強みを持つFEPシステムの市場でシェアを喪失することになれば、長期的に当社の業績が悪化する等の悪影響が生じる可能性があります。
8.製品開発について
当社は、顧客にとって最適なサービスやソリューションを提供するために、新製品や既存の製品の改良や機能強化等の研究開発を行っています。
研究開発の開始に際しては必要経費や販売計画等を総合的に事業計画として検討したうえ決定していますが、こうした無形資産(販売用ソフトウェア)としての先行投資の回収可能性に疑義が生じた場合は、減損評価によって損失を計上する等当社の業績が影響を受ける可能性があります。
9.社会インフラの大規模な損壊等の影響について
当社は、クレジットカード決済に不可欠な機能を提供するシステムの開発や運用を担っており、その社会的な使命を正しく認識し、業務を継続するために必要な設備や体制を整備しつつ業務を推進しています。
当社の事業所は、本社(東京都中央区)と函館事業所(函館市)にあり、全従業員と当社の開発プロジェクト等に従事する外部協力者が勤務しています。一部の従業員は、顧客の運営する事業所で勤務しています。
システム開発業務については、業務遂行において顧客から預かった情報やデータ、作業中または完成したプログラムデータ、テストツール等の情報資産についてバックアップ体制を保持運用することで、業務の継続性を確保しています。また、業務に従事する全員が在宅勤務を行えるよう、従業員と外部協力者を含む約1,000名が在宅勤務できる環境を整備し、各種保険によるリスク移転も図っています。
しかし、甚大な自然災害や新型コロナウイルス等感染症の流行が発生し、予想を超える社会インフラの大規模な損壊、停止、機能低下が発生し長期に及んだ場合は、営業活動と生産活動の停滞、情報資産の毀損によって、当社の業績が一時的に減少する可能性があります。また、各企業の設備投資が減退する等によって、より中長期的に当社の業績が減少する可能性があります。
システムの運用業務については、事業所が被災した場合を想定した代替策の確保や人員の確保と配置についての事業継続計画を策定していますが、大規模な災害等によって社員が事業所に到達できない場合、通信ネットワークの毀損等により、社員がシステムにアクセスできない場合には、一時的に運用業務が停止することで顧客の信頼を失い、中期的に業績に影響が生じる可能性があります。当社では、事業継続計画の定期的見直し及び訓練の実施、被災時の訓練、リモートワーク体制の構築等により、事業継続力を一層強化してまいります。
10.情報セキュリティについて
PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)とは、クレジットカード会員の情報を保護することを目的として定められた、クレジットカード業界の情報セキュリティ基準です。当社は、審査機関の審査を経てPCI DSS認証を取得しており、基準に準拠した業務運用を行っています。また、業務遂行の一環として当社が取り扱う個人情報や機密情報については、プライバシーマークの付与認定を得て、適正な管理と運営を行っていますが、こうした情報について紛失や漏えい等が発生した場合、顧客からの損害賠償請求や信頼失墜により、当社の業績が影響を受ける可能性があります。また、外部からのサイバー攻撃等により情報漏えいが発生した場合等、同様に顧客からの損害賠償や信頼失墜により、当社の事業と業績が影響を受ける可能性があります。
当社は、情報セキュリティの確保に係る業務上の基準や規程の体系を整備し運用しており、情報セキュリティ対策についての定期的な社員研修も実施しています。
セキュリティ委員会を設置して、社内のシステム、ネットワーク全般の情報セキュリティ対策の検討評価を行うほか、関係企業のセキュリティ対策について情報を集約し評価しています。より重要な事案や事象については、リスク管理委員会に報告し検討しています。このような取組みによって、情報セキュリティに係るリスクの未然防止に努めています。
11.法令、規制について
当社の事業遂行上の全ての局面において、国内外の法令や規制に違反する等の事案が発生した場合は、当社の事業と業績が影響を受ける可能性があります。当社の名声は失墜し、顧客の信頼を喪失することで、中長期的に売上高が減少する等の影響が生じる可能性があります。
当社は、社員が各種法制度に係る理解を深めリスクについての認識を高めることで、コンプライアンス違反を未然に防ぐことを目的として、定期的に社内研修を実施しており、全ての社員に受講を義務付けています。受講の実績を管理して徹底しています。業務運用管理委員会において研修内容について評価するほか、法制度の改正等についても業務に正しく反映されるよう管理しています。業務運用管理委員会で潜在的なコンプライアンスリスクの評価を行っており、発見した場合は速やかに対応策を導入し、リスク管理委員会に報告することとしています。
12.投資有価証券等の評価損の計上
当社は、事業戦略上必要と判断された会社には投資を行いつつ、金融商品会計基準、また社内管理規程等に基づき決算期毎に投資に対する適切な評価を行っています。
今後、一定の規模を超える投資を実行した会社の業績が悪化し、その純資産が著しく毀損、減少した場合には、評価損が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
13. 国際情勢の影響について
ウクライナをめぐる国際情勢は、社会情勢の不安定化、世界経済の減速、対ロシア制裁によるサプライチェーンの混乱のほか、予見困難なリスクも潜在しています。急激な円安の進行、原材料費、エネルギー費、輸送費等の高騰の影響、半導体等の部材の需給関係の乱れにより、ハードウェア、ソフトウェアの仕入価格高騰や納期遅延が当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
14. サステナビリティへの対応について
気候変動への取組みは地球レベルでの社会課題となっており、製品・サービスの環境配慮につながる取組みが求められています。気候変動対応や環境政策に関する法規制、それらへの取組みの開示強化等、社会全体から脱炭素への取組みに対する要求が加速しています。エネルギー価格の上昇や省エネ・再エネ対応の追加設備投資、炭素税導入の影響により事業コストが増加する可能性があります。また、顧客からの要求や法規制への対応が十分に取れない場合、事業機会の損失が生じる可能性があります。
そのほか、サプライチェーン等における人権尊重の取組み等、社会的責任の観点から企業に求められる対応が増えています。こうした取組みへの対応が不十分な場合、当社の社会的な信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
15.親会社の影響力について
当社は、継続的な業績の向上を目的として、親会社である大日本印刷株式会社と業務上の協力関係を維持しつつ、独立した経営と業務を遂行しています。
大日本印刷株式会社とは、定常的に一定規模の取引が発生しており、当社からみて大日本印刷株式会社は重要な顧客のひとつといえます。大日本印刷株式会社は、クレジットカードやプリペイドカードの印刷業務だけでなく、これらのカードの決済や運営業務を担うクラウドサービス事業を行っており、ネットワーク接続機能等、当社が得意な分野のシステムの一部の開発や運用を当社に委託しています。キャッシュレス社会の進展に伴って、この事業は規模を拡大していくことが予想され、当社と親会社との事業上の関係はより深くなる方向にあるといえます。金融業界向けの業務に限らず、サイバーセキュリティ対策の製品販売の分野においても当社と親会社とは協力関係にあり、この分野においても関係は深くなるものと思われます。
大日本印刷株式会社は、こうした関係と影響力とを背景に、自らの利益にとって最善ながら他の株主にとってはそうはならない行動をとる可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題と位置付け、経営基盤強化のための内部留保に留意しながら、安定的な配当を維持することを基本方針としています。当事業年度から株主還元策を充実させることの一環として、配当性向を4割程度から5割程度へと引き上げ、中間配当を実施しました。
この基本方針のもと、当事業年度の期末配当については、創立40周年の記念配当10円を加え、1株につき25円となります。中間配当1株につき15円を含めた年間配当は1株につき40円となり、前期に比べ20円の増配となります。
当社の剰余金配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会としています。当社定款に、「取締役会の決議によって、毎年12月31日を基準日として中間配当をすることができる」旨を定めています。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。