リスク
3【事業等のリスク】
当社グループでは、「リスク管理基本規定」を制定し、事業運営上において発生しうるあらゆるリスクの予防、発見、是正、及び再発防止に係る管理体制の整備と発生したリスクへの対応方針を示すことで円滑な経営を行うことを目的に、管理本部長を委員長とした「リスク管理委員会」を設置しております。事業等に関するリスクについては、四半期に1回開催される同委員会において、リスクの洗い出しやその評価、対策を立案し、推進状況についてもモニタリングを行う体制としております。同委員会は、委員長である管理本部長の他、役付取締役、各本部長及び関連部門長等を委員とし構成されています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在における当社判断に基づいております。
(1) 市況変動に関するリスク
当社グループは、船舶を中心としてコンテナ、その他工業用塗料などの分野を対象とした塗料の製造販売を行っております。売上高の8割以上は比較的市況の影響を受けやすい船舶用塗料とコンテナ用塗料分野が占めており、特にコンテナ用塗料分野においては、市況の影響を大きく受ける傾向にあります。こうした環境下においても、船舶、コンテナの両分野について、市況を見極め採算性を重視することで、その影響が最小限に止まるよう対策を講じております。また、これらの分野への依存を軽減すべく、海外を中心に比較的収益が安定している工業用塗料分野やその他分野の拡販にも努めておりますが、世界経済の停滞、ひいては新造船建造量またはコンテナ生産量の減少や公共・民間建設投資の低迷などが、塗料販売量の減少を引き起こし、売上高・利益の減少等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 原材料調達に関するリスク
当社グループにおける原材料の調達は、世界のネットワークを活用し安定的な数量での仕入れに努めておりますが、当社が使用する原材料需要の高まりや、サプライヤーの予期せぬトラブル等により、調達に支障を来す可能性があります。また、価格面においても原材料価格が上昇する局面では、不断の原価低減への取り組みや販売価格への転嫁等の施策により、その影響を最小限に止めるよう対策を講じておりますが、塗料製造における主要原材料の一つとなる樹脂や溶剤の仕入れ値は、ナフサ価格の影響を大きく受け、銅や亜鉛等の非鉄金属価格についても国際市況に影響され大きく変動します。これらの主要原材料価格が想定以上に高騰した場合には、調達コストの上昇により利益率が低下し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 海外事業活動に関するリスク
当社グループの売上高における海外の売上割合は、国内の売上割合を上回っております。
今後も海外での売上・生産の規模は増大するものと思われ、それと同時に海外事業活動におけるリスクの高まりを伴うため、営業、技術、生産、管理の各側面から考え得るリスクを洗い出し、事象発生時への対策を立案しております。しかしながら、海外における現地経済・市場動向の悪化やテロ・紛争の発生等に係るリスクを見通すことは困難であり、また事業を展開している国や地域の政治体制、法環境または税制の変化などの予期せぬ事象が生じた場合には、当該地域における塗料販売に支障を来し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 競争に関するリスク
当社グループは、国内外での各種塗料販売において、競合他社との間で価格や性能面等の様々な要素での競争関係に晒されております。より一層のコスト削減や技術力向上による製品差別化等に努めておりますが、価格競争の激化により市場における販売価格が著しく低下し、このような取り組みを踏まえても価格競争を克服できない場合には、採算性の悪化を招く恐れがあります。また、性能面においても、当社に先駆けた画期的な他社製品の出現により、当社の競争力が低下する場合には、売上高・利益の減少等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 債権管理に関するリスク
当社グループは、世界各国の様々な顧客に製品を供給しております。こうした取引において、常に顧客情報の収集に努める等、与信管理を徹底しており、債権管理については、回収可能性を慎重に検討した上で一定の繰入額に到達した場合、四半期毎にその状況を経営会議へ報告する体制を取るとともに、顧客の財務状況などに注意し債権回収に努めております。しかしながら、何らかの事情により予想できない多大な貸倒が発生した場合には利益が減少し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 金利変動に関するリスク
当社グループは、各種設備投資や運転資金等、必要な資金の一部について借入を行っておりますが、これらは主に短期借入であります。
長短借入のバランスについては絶えず金利動向を勘案しながら決定しておりますが、急激な金利変動により支払利息が増加する場合には利益が減少し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 為替変動に関するリスク
当社グループの海外売上比率は増加するものと予想されますが、海外売上の大半は現地生産・現地販売によるものであるため、為替による損益への影響はグループ各社ベースでは限定的と思われます。しかしながら、連結財務諸表の作成に当たっては、海外グループ各社の財務諸表等を各国通貨から円貨に換算しており、為替相場の変動が円換算後の連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 気候変動に関するリスク
当社グループは、気候変動対応を重要課題と位置づけ、TCFD提言に賛同を表明するとともに、TCFD提言のフレームワークに沿ったシナリオ分析を実施し、抽出されたリスクに対する対応策の検討を行っております。また、気候変動対応はリスクだけでなく機会としても捉え、当社グループにおける事業活動を通じて環境、社会課題の解決につながるビジネスに注力しております。しかしながら、世界的な脱炭素社会への移行に向けた各種規制強化が急速に進み大幅なコスト増となる場合や、異常気象の発生が頻発し操業度の低下が広範囲に及ぶ場合等には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 災害・事故・感染症等に関するリスク
当社グループは、自然災害や不慮の事故、または新型コロナウイルス等の感染症の流行により、主要工場が生産不能に陥った場合を想定し、グループ会社間での供給補完等様々なシミュレーションを行い万一に備えております。しかしながら、当社グループは化学品を製造販売する企業であるため、火災をはじめとする不慮の事故が発生する可能性があり、また災害による工場設備の被害状況等により操業停止が相当期間に及ぶ場合や、感染症の大規模な流行等により操業停止が複数拠点に及ぶ場合には、塗料供給に支障を来し、販売量が減少することから、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 安全・環境規制に関するリスク
当社グループは、製造、輸送、使用の過程における製品安全性の向上と環境負荷の低減を重要課題と認識し、さまざまな取り組みを進めておりますが、安全・環境に関する社会的要求は厳しさを増し、規制も次第に強化されています。
今後、日本をはじめ進出先国における安全・環境規制の強化に伴い、工場の操業制限もしくは停止の処分がされ、または環境投資の大幅な増加や租税、賦課金その他公課の負担が増すこと等により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 法令違反に関するリスク
当社グループは、業務の適法性を確保すべく、法令遵守を行動基準に掲げるとともに、コンプライアンスマニュアルを策定しており、国内外でコンプライアンス研修を実施するなど、グループ各社従業員に対して定期的に社内教育を実施し、コンプライアンス体制の構築及び維持に努めております。しかしながら、このような対策を講じても法令違反に関するリスクを完全に排除できない可能性があり、当該事象が発生した場合には、各規制当局からの処分、取引先等からの損害賠償請求、社会的信用の低下等により、損失の発生や塗料販売の減少等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 知的財産権に関するリスク
当社グループは、他社製品との差別化を図った多様な知的財産権を保有しており、その独自の技術や製品の保護は専門部署により厳正に管理されております。また他社が有する知的財産権についても、権利侵害とならないよう十分な調査を実施しておりますが、第三者が当社グループの知的財産を使用し類似品を販売することや、知的財産に係る紛争が発生し、当社に不利な判断がなされる場合には、販売量の減少や費用の増加等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 品質に関するリスク
当社グループは、国内外の主要工場で品質マネジメントシステム(ISO9001)の認証取得をしており、高度な品質マネジメントシステムの構築と継続的改善に努めておりますが、製品の不具合や塗装方法または塗装環境等の外的要因により本来の製品性能を発揮できない場合には、多大な補償負担や信用の低下に繋がる恐れがあり、収益の悪化等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 減損処理や繰延税金資産に関するリスク
当社グループは、事業用の様々な有形固定資産・無形固定資産や繰延税金資産を計上しております。これらの資産については、業績計画との乖離や時価の下落等によって、期待される将来キャッシュ・フローを生み出すことが出来ない場合には、減損処理や繰延税金資産の取崩しにより財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 投資有価証券の評価損に関するリスク
当社グループは、取引先や金融機関等の市場性のある株式を保有しております。当該株式保有の合理性については、毎年1回以上、取締役会において保有に伴う便宜やリスクが資本コストに見合っているかを検証しており、保有意義が希薄であると判断される場合は、原則として縮減対象とし、時価の趨勢と取得原価、市場への影響等を勘案しつつ、売却を検討しております。しかしながら、株式相場の大幅な下落が生じた場合、評価損を計上する恐れがあり、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 退職給付に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率、長期期待運用収益率、将来の給与水準、退職率、死亡率等の数理計算上の仮定に基づいて算定しております。これらの仮定が実際の結果と異なる場合、又は仮定が変更された場合、退職給付費用や退職給付制度への必要拠出額に影響を与えることにより、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 訴訟の提起に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業展開をしており、国内に止まらず海外を含め様々な訴訟を受ける可能性があります。当社事業に係る各種法令の遵守に加え、製品品質の維持や相手方との事前協議等を実施することで訴訟の未然防止に努めておりますが、実際に訴訟が提起された場合には、結果によっては社会的信用の低下を招く恐れや損害賠償が命じられる恐れがあり、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 事業買収・業務提携・合弁事業に関するリスク
当社グループは、事業拡大や収益力の向上を目的とし、事業買収、業務提携、合弁事業等を行う可能性があります。事前に経済的価値等の観点から入念な調査を実施したうえで決定しますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く環境の変化により、様々な不確実性を伴うため、当初の期待していたシナジー効果やキャッシュ・フローを生み出すことが出来ない場合には、当該目的のために計上された固定資産やのれんの減損処理等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(19) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業活動において顧客情報や技術情報など様々な機密情報を保有しております。当社グループでは、サステナビリティ委員会傘下に情報セキュリティ部会を設置し情報管理体制を整備しているほか、従業員教育や啓蒙活動を定期的に実施する等の対策を講じ情報セキュリティ強化に努めております。しかしながら、従業員等による故意または過失、第三者による不正アクセスやコンピューターウイルスの感染、災害等不測の事態により当社グループが保有する情報の漏洩、消失や改ざん等が発生した場合には、事業活動への支障や信用の低下等により、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は株主に対する利益還元を経営の重要課題として位置付け、1953年以来配当を継続しております。また、当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
2021年4月~2026年3月の中期経営計画では、積極的な株主還元を実施すべく、株主還元の基準として、連結自己資本総還元率(自己資本に対する配当金額と自己株式取得額の合計の比率)を中計期間平均で5%以上とした上で、連結配当性向を40%以上かつ1株当たり年間配当額の下限を35円と設定いたしました。当事業年度においては、上記の株主還元方針に基づいて、1株当たり46円の期末配当を実施いたしました。2023年12月4日付で1株当たり34円の中間配当を実施しておりますので、年間配当は1株当たり80円となりました。
当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年10月31日 |
1,685 |
34.00 |
取締役会決議 |
||
2024年6月26日 |
2,280 |
46.00 |
定時株主総会決議 |