2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

これらの想定されるリスク発生の可能性を認識したうえで、リスク発生の回避や軽減及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えています。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)法的規制、制度・行政について

当社グループの製品の多くは人々の生命と健康に関わるものであることから、日本及び海外各国の規制当局による医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保するため等の法的規制を受けています。これらの関連法規の改正や、薬価基準の改定を含む医療制度及び行政施策の動向等によっては、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。法的規制の改正等に起因するリスクについては、その動向を常にモニターすることにより改正内容を早期に把握し、的確に対応していく方針です。しかしながら、その改正の内容や時期等は当社グループが決定できるものではなく、その影響度を事前に見積もることは困難であると認識しています。

(2)新製品開発について

当社の事業の中核をなす医療用医薬品の開発には、基礎研究から製造承認に至るまで、有効性及び安全性確認のための各種試験が必要であり、長期間にわたり多額の研究開発費を負担しても発売に至らないリスクがあります。このような場合、過去に計上された研究開発費に見合う収益が回収できない可能性があります。当社としては、複数の開発パイプラインを推進することにより、リスクの分散に努めています。しかしながら、これにより全てのリスクが回避されるわけではなく、このような新製品開発の不確実性が業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3)特定販売先への依存について

主力製品である医療用医薬品・医療機器は販売提携先と独占販売契約を締結し、販売先を限定しています。状況の変化によりこれらの販売提携先との取引内容に変更があった場合、その内容によっては、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクが顕在化した場合の影響度を見積もることは困難であると認識しています。

(4)副作用に関するリスクについて

医療用医薬品・医療機器は、臨床試験段階から市販後に至るまで、予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。当該リスクが顕在化した場合、開発品においては臨床試験の遅れや開発中止等に至る可能性があります。また、既承認品においても、予期せぬ副作用等で発売中止、製品回収等の事態に発展し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに備え、日頃より安全監視活動を継続して有害事象の収集と分析を進め、予期せぬ副作用が発現した場合は、迅速に回収等の措置を講じる方針です。しかしながら、顕在化した副作用の程度等に応じた影響を受ける可能性があり、その影響度を定量的に見積もることは困難であると認識しています。なお、関節機能改善剤ジョイクルについては、投与後にショック、アナフィラキシーの発現が複数報告されたことから、医療関係者向けに安全性速報を発出し、有害事象の収集と分析を進め、安全監視活動を強化しています。今後、予期せぬ副作用や副作用の重篤化が確認された場合には、更なる対策強化等の措置を講じることがあります。その場合、ジョイクルの販売収益が当初の見込みを達成できない可能性があります。

(5)特定仕入先への依存について

医療用医薬品・医療機器の製造には様々な規制があり、原材料の中には規制当局の承認が必要とされるものもあるため、原材料の仕入先を限定し、往訪監査を行い、品質の確保と安定供給体制の確立に努めています。原材料の一部は単一の供給源に依存しているため、調達が困難になるような状況変化が生じたときは、製品の製造に支障をきたすリスクがあります。原材料及び製品在庫を適切に保有することにより、業績への影響を最小限に留める対策を講じていますが、当該リスクが顕在化した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。顕在化した場合の影響度は、該当製品や代替品調達の可否、調達に要する時間等により大きく異なることから、その影響度を事前に見積もることは困難であると認識しています。

(6)動物由来成分の原料について

当社グループの製品の多くは、ニワトリ、サメ、カブトガニといった動物に由来する成分を原料としています。そのため、原料とする動物由来成分の使用が制限された場合や調達が困難になった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、可能な限り調達先を分散させることに加え、当該原料及び製品在庫を適切に保有することで業績への影響を最小限に留める対策を講じています。また、発酵原料を用いた製品や、遺伝子組換え体を用いた製品の上市や開発も進め、リスクの最小化に努めています。しかしながら、これらにより全てのリスクが回避されるわけではなく、実際に顕在化した場合には一定程度の影響を受けることは不可避であると認識しています。また、2022年11月に開催されたワシントン条約国際会議にて、当社が原料としているサメの一種が規制対象となり、輸出時に許可証が必要となることが決定しました。日本政府は当規制対象種について「留保」の姿勢を表明しており、国内における取引では当規制は適用されません。一方、海外輸出においては同許可証が必要となる可能性が高く、サプライヤーと協働で対応を進めており、現時点では既存顧客との取引に影響はないと考えております。ただし、今後当条約の対象生物や批准国が拡大した場合は影響を受ける可能性があります。

(7)為替相場の変動について

当連結会計年度における海外売上高比率は60.3%(ロイヤリティー除く)であり、その取引通貨の多くは米ドル等の外貨で行われているため、急激な為替相場の変動は業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では海外で実施する臨床試験等の研究開発費の支払いに売上の外貨を充当することや為替予約を行うことにより、為替相場の変動リスクの軽減を図っていますが、これらにより全てのリスクを回避することは困難であると認識しています。また、連結財務諸表作成時に海外連結子会社の現地通貨建財務諸表を円換算していることから、為替相場の動向によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)保有有価証券等の価格変動について

将来の研究開発や設備投資に充当するために、手元資金を有価証券で運用しています。投資対象の分散などリスクの軽減を図っていますが、有価証券等の価格変動等によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。金融市場や金融政策の動向等に起因する外部リスクに関しては、当社独自のリスク軽減対策により軽減・排除することが難しいことから、顕在化した場合にはその時期、規模に応じて影響を受けるものと考えており、顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しています。

(9)知的財産権について

製品や事業の優位性を確保するために特許権、その他知的財産権の取得に向けた様々な出願をしていますが、特許権等が取得できなかった場合や、特許権等が取得できたとしてもその有効性や排他性が否定された場合、特許権等の期間が満了した場合等には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、第三者の知的財産権の侵害を未然に防止するために調査をし、その可能性を最小化していますが、知的財産権の侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、現段階において、将来的な顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しています。

(10)大規模災害等の発生について

地震、台風等の自然災害や火災等の事故、感染症のまん延などにより、当社グループの事業所等が大規模な被害を受け、事業活動が停滞し、または製品供給に支障が生じた場合や、災害により損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループとしては、各種災害リスクに対応するためのマニュアルの整備等を含め事前の対策を講じていますが、当該リスクは当社グループのみのリスク管理施策では回避できるものではなく、顕在化した場合の規模や期間等に応じた影響を受ける可能性があり、その影響度を定量的に見積もることは困難であると認識しています。

(11)気候変動について

気候変動に伴う気象災害が頻発・激甚化した場合には、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。さらに、平均気温の上昇による将来的な炭素税等の導入により、原材料コストが増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社としては、気候変動リスクの特定とその対応策に加え、その影響度について、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)に基づき評価し、その情報を開示しています。

配当政策

3【配当政策】

当社は、持続的な利益成長と企業価値の向上が、株主の皆さまとの共同の利益に資すると考えています。重要な経営課題のひとつである株主の皆さまへの利益還元につきましては、1株当たり年間26円を基本としつつ、業績動向及び財務状況等を勘案のうえ、増配を検討してまいります。なお、今後の事業展開や総還元性向を考慮しながら、自己株式の取得を適宜検討いたします。

また、収益基盤の強化や資本効率の向上を図るために、新たな価値創出に向けた研究開発、生産体制の整備及びサステナブルな活動に対する効率的かつ積極的な事業投資のほか、将来の成長やシナジー効果が見込める戦略投資にも機動的に取り組んでまいります。

当社は、会社法第454条第5項の規定により、取締役会の決議によって毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会としております。

当期の期末配当金につきましては、1株当たり13円となり、これにより1株当たりの年間配当金は、中間配当金13円(2023年11月8日開催の取締役会において決議済み)と合わせて1株当たり26円となりました。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額

1株当たり配当額

2023年11月8日

取締役会決議

709百万円

13円

2024年6月21日

定時株主総会決議

709百万円

13円