リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性を、以下に記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
① AIソリューション市場について
当社グループが属する国内のAIビジネス市場は、2022-2027年の間に1.3兆円から2.0兆円に拡大すると予想されております(出典:株式会社富士キメラ総研「2022 人工知能ビジネス総調査」)。市場拡大のペースの急速な鈍化や、当社グループのAIソリューションの競争優位性が発揮されないシナリオにおいては、市場が拡大した場合においても成長ペースが市場拡大と相関しない可能性があります。また、AIソリューション市場の歴史は浅く、成熟した市場でないため、市場動向が大きく変動する可能性もありますが、その時期は想定されるものではなく顕在化するリスクは低いと想定しております。当該リスクへの対応として、単一の業界や顧客に依存しないよう、AIソリューションのラインナップの拡充や、顧客の属する業界の拡充を行っております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② マクロ経済について
当社グループがサービスやソリューションを提供する主要顧客は、各産業の大手企業であり、国内外に事業を展開する大企業が中心であります。国内外の景気後退時において多くの主要顧客の経営状態や業績に大きな影響を及ぼす状況となった場合には、プロジェクトの新規獲得や横展開、既存契約の継続に影響を及ぼす可能性はありますが、主要顧客の属する業界は様々であるため、そのリスクは分散されているものと認識しております。また、フィナンシャル・アドバイザリー事業においては、国内外の経済情勢や景気動向の悪化、地政学リスク、金融資本市場の変動の影響等により、スタートアップ企業数やスタートアップ企業に対する資金供給が著しく減少等のリスクがあり得ます。当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 競合他社について
当社グループは、AI関連領域において事業展開しておりますが、当該分野はその成長性から注目されており、多くの企業が参入しております。そのため、当社グループの競争力が低下する可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく顕在化するリスクは低いと想定しております。また、技術とビジネスの双方の知見を用いてAIによる定量的な改善効果の創出に注力し、個別企業の課題解決ではなく産業全体のSDGsテーマに取り組むというアプローチは他AI企業とは異なる当社の特徴となっております。当該リスクへの対応として、これまでのプロジェクトで蓄積された知見やデータで学習・強化されたAIアルゴリズムを活用することで、事業の拡大及び競争力の維持に努めてまいります。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 技術革新について
当社グループは、各産業の大手企業とのプロジェクトにおいて蓄積されたAIに関する知見や独自のAIアルゴリズムをもとに、産業の共通課題の解決を目指しております。そのため、これらの技術やその周辺技術、またその技術を活用したソリューションが競争力の源泉となっており、急速な技術革新があった場合において、変化に対応する開発費や開発工数等が大幅に増加する可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。当該リスクへの対応や更なる競争力の向上のため、継続的な情報収集、優秀なエンジニアやデータサイエンティストの採用や教育にも注力しております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業進捗や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関するリスク
① 特定の取引先に対する売上比率について
当社グループは各産業の大手企業との連携を通じて新たなAIソリューションを創出するフェーズの取り組みが多いため、上位取引先の売上規模が大きくなる傾向にあり、当連結会計年度における売上比率は、上位取引先3社で全体の26.3%を占めております(前年度の同比率33.7%からは低下)。上位取引先との取引内容に変更の可能性はありますが、その時期は想定されるものではなく短期的に重大な変更が顕在化する可能性は低いと想定しております。創出されたAIソリューションの産業横展開が進行しており、新規取引先も増加していることから特定の取引先への売上比率は低下傾向にあるため、当該リスク顕在化の可能性も低下すると想定しております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② プロジェクトの進捗等について
当社グループでは、AIソリューション導入前のコンサルティングやアセスメントサービス、PoC実施、本導入のシステム開発、導入後の継続的な運用保守等のプロジェクトを実施しており、フェーズに応じて収益を獲得しております。多数のプロジェクトが早期のフェーズで終了するような場合や、各フェーズにおいて想定以上に工数がかかる可能性はありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。技術とビジネスの双方に精通していることや、顧客企業の現場担当者だけでなくトップマネジメント層とも密接に連携するケースが多いことから、当連結会計年度の継続顧客の割合(注:4四半期連続で売上が発生した顧客の割合)は6割を超えており、顧客の満足度は非常に高い状態にあります。当該リスクへの対応として引き続きプロジェクト管理の徹底等を行ってまいりますが、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 新規ソリューションの開発・提供について
当社グループでは産業共通の課題を解決する新規AIソリューションの開発を行っており、これらのAIソリューションを産業内外に横展開することで、事業規模拡大を見込んでおります。しかしながら、横展開が想定どおりに進まない場合や、横展開する際の導入工数が想定以上となる可能性があり、また、産業内外への横展開に際してAIソリューションにおけるアルゴリズムの精度向上のための産業固有のデータ蓄積が想定どおりに進まない可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 今後の非連続な成長のための投資等について
当社グループは今後も非連続な成長を続けるために、新規プロダクトの開発、戦略的な営業活動、新規事業への取り組み、人材の採用、M&A等の戦略的な投資が重要であると認識しております。また現時点において具体的な計画はありませんが、将来的には海外への事業展開も視野に入れており、その際には相応の投資が必要であると認識しております。
出資や買収においては、対象となる企業の財務や税務、法務等の契約関係及び事業の状況等について事前に社内外の専門家と詳細なデューデリジェンスを実施し、価値評価に関しては第三者評価機関の見解等も踏まえ、可能な限りリスクの低減に努めてまいります。しかしながら、出資・買収後に、事業環境に急激な変化が生じた場合やその他予期し得ない理由により当初の計画通りに事業が進展しない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、出資・買収後に予期せぬ偶発債務の発生や未認識債務が判明するリスクを完全に取り除くことは困難であり、かかるリスクが顕在化した場合には当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
買収に伴いのれんを計上した場合、対象会社の業績の悪化等により減損の兆候が生じ、その将来的な効果である回収可能価額がのれんの帳簿価額を下回る場合には、のれんの減損処理を行う可能性があり、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当連結会計年度において、メールカスタマーセンター株式会社を取得した際に発生したのれん644,940千円が計上されており、減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、事業計画や経営環境の変化等によって影響を受ける可能性があり、実際の業績が見積りと異なる場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において重要な影響を与える可能性があります。
買収を実施する際は自己資金、金融機関からの借入、社債及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。当社が資金需要に応じて適時かつ適切な条件で買収資金を調達できる保証はなく、必要な資金調達ができなかった場合、または当社にとって不利な条件での資金調達をせざるを得ない場合や、新たなファイナンスによる負担や株式価値の希薄化及び自己資本の変動のほか、新たな借入金を利用した場合、市場金利の変動の状況によっては、借入金利息の負担の増大等により、当社グループの業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
いずれの投資等も非連続な成長のために必要なものと認識しておりますが、安定的に収益を獲得できるまでには一定の期間が必要となることが想定され、短期的な利益率低下につながる可能性があります。また、外部環境の変化等により当初計画どおりに推移しない可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。当該リスクに対しては、リスクシナリオを慎重に検討し投資等を行うことで、そのリスクの低減に努める方針であります。
戦略的な投資に伴うリスクが短期的に顕在化する可能性は低いと認識しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の企業規模を勘案しつつ、株主への還元等の機動性確保の観点から、必要に応じて資本金の減少等も実施してまいります。
(3) コンプライアンスに関するリスク
① 訴訟について
本書提出日現在において、当社及び当社グループの事業、業績または財政状態に重要な影響を及ぼす当社に対する係属中の訴訟はありません。コンプライアンス規程を整備して役職員へ周知すること等により法令違反などの発生リスクの低減に努めておりますが、当社グループ又は当社グループ役職員を当事者とした訴訟が発生した場合には、その訴訟の内容や進行状況によっては、当該訴訟に対する金銭的な負担の発生や、レピュテーションが悪化して社会的信用が毀損されるなど、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、訴訟の発生についてはその時期及び顕在化の可能性を予見できるものではありません。
② 情報セキュリティ体制について
当社グループは、業務において顧客の機密情報及び顧客が保有する個人情報が含まれるデータを取扱う場合があります。人為的なミスや不正アクセスによる情報漏えいが発生する可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。当該リスクに対応するため、情報セキュリティ体制や情報管理体制を構築するとともに、2021年3月にはプライバシーマークを取得し、2023年5月には更なる体制強化のため情報セキュリティマネジメントシステム(ISO 27001、JIS Q 27001:2014)の認証取得を行っております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、顧客への損害賠償や当社の社会的信用の失墜等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 知的財産管理について
当社グループは知的財産権を重要な資産と捉えて、必要に応じて事業に関する知的財産権の保護に努めております。また、当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性についても、調査可能な範囲で対応を行っております。当社グループが認識せずに他社の特許を侵害した場合には、損害賠償請求、使用差止請求またはロイヤリティの支払要求が発生する可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。しかしながら、当社グループの事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当該リスクが顕在化した場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 事業運営に関するリスク
① 特定の人物への依存について
当社代表取締役社長である加藤聡志は、当社の創業者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。現状において、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難になった場合には次の代表取締役社長が就任するまでの期間やその後の定着までの期間において業務執行に支障をきたす可能性はありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。当該リスクに対応するため、当社は特定の人物に過度に依存しない体制を構築するべく、執行役員の設置や積極的な情報共有等により経営組織の強化を図っております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 人材の確保及び育成について
当社グループが今後も持続的な高成長を続けるためには、優秀な人材の確保・育成が必要不可欠であります。求める水準に合致する人材の確保及び育成が計画どおりに進まない可能性がありますが、当該リスクが短期的及び中長期的に顕在化する可能性は昨今の人材採用市場の動向に鑑みても高くないと想定しております。当該リスクに対応するため、積極的な採用活動を進めるとともに、人材の育成も進めており、また外部の業務委託者との連携を強化することでリソースの確保にも努めております。しかしながら、当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 小規模組織であることについて
当社は、当連結会計年度末現在において、取締役5名、監査役3名、従業員90名と小規模な組織となっており、内部管理体制は事業の拡大及び従業員の増加に合わせて整備を進めております。適切な人材確保や配置ができず組織的な対応が困難となる場合や、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない可能性はありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。当該リスクに対応するため今後もより一層の人員充実を図る予定ですが、当該リスクが顕在化した場合には当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 子会社管理について
当社グループでは、子会社を2社(株式会社ファイナンス・プロデュース、メールカスタマーセンター株式会社)有しております。当該子会社は、当社グループの連結子会社となってからの期間が短く、また、事業規模も小さいことから、今後の急速な事業成長に管理体制の整備が追い付かない可能性があります。当社の管理部門において内部統制を含め管理体制の強化に努めておりますが、管理体制が不十分であることにより、法令違反や許認可に関わる手続き不備等によって、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 大規模な災害等に関するリスク
当社グループは、テレワークが可能な体制を構築しており、大規模な地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、未知の感染症の拡大等が発生した場合でも事業継続が可能となっております。これらの災害等が長期間に及ぶ場合には、顧客企業や当社の顧客ターゲットとなる企業の経営判断・事業運営に大きな影響を与える可能性がありますが、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。当該リスクに対応するため、顧客及び顧客の属する業界の拡充を行っておりますが、当該リスクが顕在化した場合に、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) その他のリスク
① 配当政策について
当社グループは、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながるものと考え、創業以来配当を実施しておりません。今後においては、業績・財務状況及び事業環境等を勘案したうえで、株主への利益配当を検討していく方針でありますが、持続的な成長に向けた投資を戦略的に実行する場合や事業が計画どおり推移しない場合など、配当を実施できない可能性があります。なお、その時期は想定されるものではなく当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと想定しております。
② ストック・オプションによる株式価値希薄化について
当社グループは、役員、従業員に対するインセンティブ等を目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後もストック・オプション制度を活用していくことを予定しており、現在付与している新株予約権に加え、今後新たに付与される新株予約権について行使が行われた場合は、既存株主が有する株式価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。新たに付与される新株予約権について、その時期は想定されるものではありませんが、現在付与している新株予約権については短期及び中期において一定程度が行使され当該リスクが顕在化するものと想定しております。
③ AIサービスに関する収益認識について
当社グループが営むAIソリューション事業のAIサービスについては、取引ごとに履行義務の内容が異なっており、当社グループでは内部統制の整備及び運用を通じて、その契約形態や取引実態等に応じて履行義務を識別し収益認識を行っております。しかしながら、各取引の実態を反映した収益認識を行うにあたり、各契約における収益額が、収益認識基準に基づき履行義務の充足とともに適切に計上されているかの判断は複雑な会計上の判断を必要とすることから、この判断を適切に実施できなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態を正しく把握できない可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社グループは、株主に対する利益還元を経営上の重要課題と認識しておりますが、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益力強化のための投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながるものと考えております。
そのため、当連結会計年度においても、上記方針に沿って配当は実施しておりません。また、創業以来配当は実施しておらず、当面は機動的に有効投資ができるよう内部留保の充実を図る方針であります。
内部留保資金については、財務体質の強化や人材への投資・育成といった収益基盤の構築、新規AIソリューションの開発や新たな産業や企業との取り組みといった収益の多様化等に充当することを検討しております。
投資の結果、事業の成長、資本効率の改善等による中長期的な株式価値の向上を実現し、業績・財務状況及び事業環境等を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的に剰余金の配当を実施してまいりたいと考えておりますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期については未定であります。
定款において剰余金の配当を中間配当及び期末配当で行う旨を定めておりますが、配当を行う場合は期末配当にて年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。また、配当の決定機関は取締役会であります。