2023年9月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性を認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.事業環境、事業構造面

①市場認知

 「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境」に記載の通り、現在の日本社会は、深刻なIT人材不足の状況にあり、デジタル化の遅れが大きな社会問題となっていますが、それらは、当社グループがサービスを提供するDX推進市場の可能性を示しているとも考えられます。当社グループでは、ハイブリッド型サービスで実績を積み重ねるとともに、各種プロモーション活動等の啓蒙活動を積極的に展開し、日本におけるベトナムオフショア開発の市場認知度の向上を推し進める活動を実施していますが、これらの取組が想定通りに進展しなかった場合に、当社グループの成長シナリオに重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②競争激化

今後の事業の拡大を推し進める上で人材の確保・育成が重要な経営課題であり、べトナム子会社において新卒人材を受け入れて研修、育成する「Talent Academy」を運営するなど、日本とベトナムで様々な施策を実施しております。しかしながら、採用が計画通りに進まなかった場合、また人材の流出も含めて人材の育成が進まなかった場合に、当社グループの開発力やコスト競争力が相対的に低下することで、失注や利益率の悪化等を招き、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③特定顧客への依存

当社グループは、主にWeb/ECシステム、モバイルアプリ領域を中心にハイブリッド型サービスで実績をあげてまいりましたが、顧客のDX推進パートナーの採択にあたっては稼働運用実績が重視されることから、既存顧客の継続案件が多くなり、依存度が増す傾向にあります。その結果、2023年9月期で上位5社による売上収益比率が37.7%となっております。当社グループは、新規顧客の開拓を行うことで相対的な依存度を下げていく各種取組を進めておりますが、これらの取組が想定通りに進展せず、既存顧客の業績等の影響を受けた場合に、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④法的規則

当社は2023年4月に、人材派遣業を主要事業とする株式会社ハイブリッドテックエージェント(旧:キャスレーコンサルティング株式会社)を子会社化いたしました。その結果、現在、当社グループの事業には、日本においては「労働者派遣法」「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」や「下請代金支払遅延等防止法」等の関連業法や告示が存在します。また、ベトナムにおいても、各種関連法令が存在します。当社グループでは、顧問弁護士のアドバイスも受けながら、業務フローやマニュアルを整備するとともに、法務部が中心となって運用状況を適宜チェックしております。現時点では、事業の継続に大きく影響を及ぼすような法規制は無いものと認識しておりますが、今後の法整備の結果、新たな法規制が発生し、当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤移転価格税制

当社グループにおいて、国境を跨ぐ会社間の取引価格の設定においては、適用される移転価格税制の遵守に努めていますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受けた場合、追徴課税や二重課税が生じることにより、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ベトナムカントリーリスク

 当社グループの事業は、ベトナム子会社が開発業務の中核を担っております。ベトナムは同じIT技術大国であるインドや中国と共に、オフショア先として注目を浴びている国の一つです。長期的な観点ではオフショア先をベトナムに限定することなく、グローバルな視点からリスクを管理してまいりますが、今後ある程度の時間レンジでは、同国の人件費の高騰、法改正や税制面での優遇の見直し等でオフショア先としての優位性が無くなった場合に、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦為替相場の変動

 当社グループのベトナムを中心とした事業は、連結財務諸表を作成するにあたっては現地通貨を円換算する必要があり、換算時に使用する為替レートによっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、為替相場の変動は中長期的には平準化されるものと考え、為替予約は行っておりません。

 

⑧新規技術への対応遅れ

当社グループの事業は、インターネットを中心としたITシステムの利用を大前提としておりますが、技術革新等でIT環境に大きな変化が起こり、その変化に対応するための技術開発に多大な費用が発生した場合や、当社グループ側の対応が遅れた場合に、競争力が低下することが考えられます。また、インターネットの利用を制約するような新たな法的規制の導入等により、インターネット関連市場の発展が阻害され、当社グループの事業が低迷することが考えられます。以上のような場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨知的財産権

当社グループが提供するハイブリッド型サービスにおいては、ソフトウェア開発に関連する特許権や著作権等の知的財産権の確保が業務遂行上重要であり、独自の技術・ノウハウ等の保護・保全とともに、法務部び品質管理部門が中心となって、第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な注意を払っております。しかしながら、第三者より損害賠償及び使用差止め等の請求、並びに特許に関する対価(ロイヤリティ)の支払等が発生した場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩システムトラブル

当社グループは、自社サービスをサーバー上で提供していないものの、日本とベトナム両拠点においてインターネットを中心としたITシステムの環境下でソフトウェア開発を行っています。使用するハードウェア、ソフトウェア、通信回線等の不具合、人為的なミス、さらにはコンピュータウイルス、停電、自然災害等によって作業が中断し、当社グループ側の対応が適切に行われなかった場合に、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪情報セキュリティ

当社グループは、サービス提供の過程で、顧客のシステム上で直接開発作業を行うことがあり、各種機密情報にもアクセスすることがあります。そのため、顧客との間で責任範囲を明確にして、ベトナム子会社では情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得するとともに、グループの品質管理部門やITインフラ部門が中心となって、情報セキュリティソフトの導入や、各種社内規程や作業手順書の整備、社内教育・啓蒙活動を実施するなど、社員の情報管理には徹底して取組んでおります。しかしながら、不正アクセスや操作ミス等の発生、あるいはコンピュータウイルスによる被害等、不測の事態の結果、機密情報が外部に漏洩した場合には、信用低下や損害賠償請求等により、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ストックサービスの品質について

当社グループが提供するハイブリッド型サービスにおいては、その全体収益の大半を占める準委任契約であるストックサービスについては法的には作業結果に対する契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負いませんが、サービスの品質が顧客の求める水準を維持できなかった場合には、顧客からの信用低下により、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬不採算プロジェクトの発生について

ハイブリッド型サービスを計画通りに完了させることは、当社グループの業績向上にとって非常に重要であります。特に、当社グループの提供するフローサービスにおいては見積り精度が重要であり、プロジェクトごとの利益管理及び進捗管理を徹底しております。しかしながら、このような施策を講じたにも関わらず、不測の事態により想定を超える工数増加や納期遅延等が発生した場合には、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭自然災害による影響について

当社グループは、日本国内では東京に、ベトナム国内ではホーチミン、ハノイ、ダナンの3ケ所に拠点を設けておりますが、これらの地域で、地震等の自然災害やそれに伴う二次災害等の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの事業拠点で大規模な災害等が発生した場合でも、その他の拠点で業務を継続できる体制を取っておりますが、自然災害等の規模や状況によっては、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑮新型コロナウイルス感染症による影響について

新型コロナウイルス感染症への対応につきましては、2023年5月8日に感染症法上の位置づけが5類に移行され、各種制限が緩和されました。しかしながら、本書提出日現在において、新型コロナウイルスの将来的なリスクは完全に払しょくされたわけではなく、今後、事態がさらに深刻化、長期化した場合には、顧客企業の投資意欲の減退等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.組織、体制面

①特定人物への依存

当社の代表取締役社長チャン バン ミンは、当社設立以来の最高経営責任者であり、経営方針や戦略の決定、推進等に大きな役割を果たしておりますが、過度な依存からの脱却のために、経営幹部クラスの人材の育成、権限の移譲を進めております。しかしながら、現時点では、不測の事態によりチャン バン ミンの当社経営及び業務執行への関与が困難となった場合、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②人材獲得、育成

「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の通り、今後の事業の拡大を推し進める上で人材の確保や育成が重要な経営課題と認識しておりますが、当社グループの取組が想定通りに進展せず、人材の確保、育成が進まなかった場合には、当社グループの事業展開に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

③内部管理体制の整備

当社グループは、当社グループを取りまく事業環境の変化に柔軟に対応し、持続的に企業価値の増大を図っていくためには、日本とベトナムの両拠点で内部統制環境の整備、強化を重要な経営課題であると認識して取組んでまいりました。しかしながら、事業の急速な拡大の中で、内部統制環境の構築が追いつかない事態が生じた場合には、当社グループの事業展開及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

④投融資

当社グループでは、今後の事業展開の過程において、既存サービスの強化、グローバル展開の加速及び新たな事業領域への展開等を目的として引き続き、出資、設備投資、アライアンス、M&A等の投融資を実施する方針であります。投融資については、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言も得ながら投資リスクを十分に検討し、また、当社グループの財政状態等を総合的に勘案して決定しますが、予定していた投融資の回収ができない場合や、減損損失の対象となる事象が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.大株主との関係について

①大株主2社が支配権又は重大な影響力を有することに伴うリスク

 当連結会計年度末において、Soltec Investments Pte. Ltd.は、当社株式の議決権35.1%、株式会社エアトリは、当社株式の議決権30.7%(間接所有分3.1%を含む)を有しております。Soltec Investments Pte. Ltd.は投資会社であり、そのグループに属する企業から当社はシステム開発業務を受注しておりますが、当連結会計年度の当社連結売上収益に占める取引割合は0.3%と僅少です。また、当社は株式会社エアトリのグループ企業からも開発業務を受注しており、これについては、「3.大株主との関係について」の「②株式会社エアトリと当社の関係性について」及び「③株式会社エアトリグループへの取引依存」において記載の通りです。

 当社は、大株主2社から役員の受け入れは行っておらず、当社の経営上の決定事項について大株主による事前承認は必要ではなく、自ら経営責任を負って独立した事業経営を行っておりますが、大株主は当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社の経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、大株主の利益は当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。また、大株主の経営方針の変更や経営状態の悪化等が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②株式会社エアトリと当社の関係性について

 当社の大株主である株式会社エアトリは、総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を中心とした旅行コンテンツの提供を行う「オンライン旅行事業」、ベトナムにおけるソフトウェア開発などのオフショア関連事業を行う「ITオフショア開発事業」、戦略的なM&A及び成長企業に対する投資育成を推進する「投資事業」、及びその他事業からなり、当社は、株式会社エアトリから見て「持分法適用関連会社」に該当しております。

 現時点において、当社の事業と株式会社エアトリグループの事業の競合等が想定される事象は発生していないものの、将来において株式会社エアトリグループの事業戦略や当社の位置付け等に著しい変更が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③株式会社エアトリグループへの取引依存

 株式会社エアトリグループとの取引比率については、当社の連結売上収益に占める割合が、2022年9月期は21.2%、2023年9月期は21.6%と、事業年度によって変動はあるものの約2割程度となっております。同グループとの取引については、取引条件や各種業務フロー、関連当事者取引に対するチェック体制等の整備を行ってきたことから、当社グループの事業の独立性については確保できていると考えております。また、同グループ以外の顧客の新規開拓を積極的に進めることで、取引依存度を相対的に下げる取組を進めております。しかしながら、これらの取組が想定通りに進展せず、同グループ企業の影響が相対的に高まる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.その他

①潜在株式による希薄化

当社は、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権(ストック・オプション)を付与しております。これらのストック・オプションが権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、ストック・オプションによる潜在株式数は1,440,000株であり、発行済株式総数11,289,048株の12.8%に相当しております。

 

②配当政策

当社は、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、設立以来2023年9月期までは配当を行っておりません。しかしながら、株主に対する安定的な利益還元の実施は重要な経営課題であると認識しており、今後の利益配分については、業績動向を考慮しながら、将来の事業拡大や収益の向上を図るための資金需要や財務状態を総合的に勘案し、適切に実施していく方針であります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を目指す観点から、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、設立以来、配当を行っておりません。当事業年度においても、内部留保資金については、開発部門の人材強化を目的とした人件費や採用費など、成長のための資金として活用する方針です。一方で、株主に対する安定的な利益還元の実施は重要な経営課題であると認識しており、今後の利益配分につきましては、業績動向を考慮しながら、将来の事業拡大や収益の向上を図るための資金需要や財務状態を総合的に勘案し、適切に実施していく方針でありますが、現時点においては、配当実施の時期等は未定であります。

 なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の期末配当を基本方針としており、配当の決定機関は株主総会としております。また、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。