2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

 

1.当社グループのリスク管理について

(1)リスクに対する考え方

 当社グループにおいては、複雑さと不安定さが増していく経営環境に対応するため、リスクを「目標の達成に好ましい、好ましくないまたはその両方の影響をもたらす不確かな事象」と定義し、全社的かつ総合的なリスク管理体制を整備、運用することで、先を見越したリスク管理と適切なリスクテイクを伴う経営を推進しています。

 

(2)リスク管理体制

当社グループは、執行役社長を当社グループにおけるリスク管理を統括する最高責任者とし、執行役社長と各執行役・執行役員から構成されるERM委員会を設置しています。ERM委員会においては、グループのリスク管理の基本方針等重要事項を審議し、またグループ全体に大きな影響を及ぼしうる重大リスクを識別・特定し、その管理状況をモニタリングします。また、リスク管理の状況は、取締役会に報告し、その監督を受けています。各組織においては、ビジネスグループ、コーポレートファンクションの長がERM部門責任者となり、その下で実務を担うERM部門管理者及びERM部門担当者を配置して、組織レベルでのリスク管理を推進しています。

 


 

(3)リスク管理の推進

当社は、事業ポートフォリオ戦略や事業基盤、環境や社会への影響など、当社グループにとっての課題を分類、整理し、社外有識者へのヒアリング、社外取締役連絡会での討議などを通じて多角的な観点から確認したうえで、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。リスク管理におけるリスクカテゴリーについては、このマテリアリティに基づき、当社グループの経営に影響を与えうるリスクを抽出、分類し、31個のリスクカテゴリーを定めています。

 

 

マテリアリティ

マテリアリティから分類された31個のリスクカテゴリー(2023年度)


 

 

当社グループにおけるリスク管理は、経営層が当社グループの経営に影響を与えるリスクを予め特定し、グループをあげて全社的に取り組む活動(全社視点リスク)と、各組織においてリスクを特定し、組織毎に対応を行う活動(組織独自視点リスク)とを両輪とした活動になっています。全社視点リスクについては、リスク主管役員がリスク主管部門を指揮し、組織独自視点リスクについては、各組織が自ら自組織の保有するリスクを特定・評価し、それぞれ対応策を検討・実行します。各組織で実施しているリスク対応策の実施状況については、リスク主管部門がモニタリングし、ERM委員会に報告するとともに、必要に応じて各組織に対して追加対応策実行の要請をします。この全社視点リスクの一連の活動は、ERM委員会での審議・報告が行われます。

 


 

(4)重大リスクへの対応

ERM委員会では、国際情勢や事業環境に照らして、近い将来にグループ全体に影響を与えうる重大なリスクを特定し、重大リスクとして対応を進めています。重大リスクについては、定期的にERM委員会において対応状況の報告がなされ、リスク対応策の有効性を評価し、必要に応じて各組織に対し追加対応策の要請を出すなど、適切にリスク管理が実行されるよう努めています。なお、2023年度は、地政学リスク、サプライチェーンリスク、情報セキュリティリスクなど9つのリスクを重大リスクとして特定し、個別事情に応じた対応策を講じ、当社の経営成績及び財政状態に与える影響の回避・低減に取り組んでおります。

 

(5)戦略リスクへの対応

中長期の戦略、事業目標や計画、投資など経営判断に起因して顕在化しうる戦略リスクは、機会の側面と脅威の側面の両方を有します。当社は、戦略立案から投資の意思決定に至るまでの成長機会と脅威双方の把握と可視化を行い、将来の期待利益だけでなく、脅威に関する評価を視点に加えた適切なリスクテイクを伴う経営を推進しています。

 

(6)クライシス(危機)への対応

 当社では、グループの役職員等の生命及び安全、並びに事業継続、社会的信用、企業価値等に多大な影響を与えるリスクが顕在化またはそのおそれがある事態が生じた場合に、損害の拡大抑止と早急な復旧を行うための危機管理体制の整備を進めています。対象とする危機事象には、大規模自然災害、大規模情報システム障害・情報セキュリティインシデント、パンデミック、保安及び環境上の重大事故、戦争・大規模テロを含みます。各組織は、危機事象の発生に備え、平時から事前対策の実行、BCPの整備、訓練の実施などの活動を行うとともに、危機事象の発生時には、有事の危機管理体制の下、人命・安全確保を最優先として、当社グループの財産・資産並びに社会に与える影響の最小化、社会的信用の保護を基本方針として、事態の収束に向けて最善を尽くします。

 

2.事業活動における個別リスク

 当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。なお、以下の事項は有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断した記載となっています。

 

(1)事業分野ごとのリスク

 当社グループの製品の多くは、国内外の需要や製品市況、原油・ナフサ・ユーティリティ等の原燃料・材料の価格や調達数量、為替、関連法規制等によって影響を受ける可能性があります。事業分野ごとに想定されるリスクとその対応策は以下のとおりです。なお、現時点における想定・予測を超えて事業環境が変化した場合、また当社の講じるリスク対応策が有効に機能しない場合には、当社の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

①機能商品分野

事業分野

機能商品分野(スペシャリティマテリアルズセグメント)

想定されるリスク及び影響

機能商品分野の製品は、品質・性能面で絶えず高度化が求められており、市場ニーズに合致した製品を適時に開発・提供する必要があります。市場ニーズが当社グループの予想を超えて大きく変化した場合または市場ニーズに合致した製品を適時に提供できない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、特定の地域やサプライヤーに依存している原材料もあり、必要な原材料を適時に確保できない場合は、業績に影響を与える可能性があります。

情報電子関連製品の中には、アジア等海外のメーカーから原材料を購入しているものも多く、その生産拠点で災害その他の要因により生産が停滞するなど、供給体制に不測の事態が生じた場合は、業績に影響を与える可能性があります。また、各種フィルム、シート製品については液晶パネル等の需要に負うところが大きく、需要動向が予測以上に変化した場合は、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

このような事業の特性を踏まえ、当社グループにおいては業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・製品の品質・性能面での継続的な高度化

・原材料の複数購買化及び代替原料の検討

・販売動向予測に基づく生産計画の調整及び在庫管理の徹底

・製造コストダウンによる競争力の確保

・新規顧客の獲得及び新規用途の開発

これらの対策により、急激な価格変動や需給バランスの変化、特定地域・サプライヤーの供給体制の変動に備えています。

 

 

②素材分野

事業分野

素材分野(ベーシックマテリアルズセグメント、MMAセグメント、産業ガスセグメント)

想定される

リスク及び

影響

 素材分野では、ナフサ等の原料を大量に消費するとともに、製造プロセスにおいて相当量の電気や蒸気を使用しております。そのため、原油価格、原燃料またはナフサの需給バランス、為替レート等の影響による急激なナフサ・燃料等の価格変動に対し、製品価格の是正を十分に行うことができない場合または製品価格の是正が遅れた場合は、業績に影響を与える可能性があります。また、特定の地域やサプライヤーに依存している原燃料もあり、必要な原燃料を適時に確保できない場合は、業績に影響を与える可能性があります。さらに、世界的な景気後退や他社による生産能力増強等により、各製品の需給バランスが崩れ、設備投資に見合う収益、成果を上げられない場合などには、業績に影響を与える可能性があります。

 また、素材分野の製品には特定の取引先への依存度が高いものがあり、例えば、特定の鉄鋼メーカーへの依存度が高いコークス事業は、粗鋼の需給状況の大きな変動等により当該鉄鋼メーカーの粗鋼生産量が減少した場合はその影響を受けるなど、特定の取引先における需要等が、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

このような事業の特性を踏まえ、当社グループにおいては業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・原燃料価格動向の早期の情報収集

・販売動向予測に基づく生産計画の調整及び在庫管理の徹底

・原燃料の複数購買化の実施

・製造コストダウンによる競争力の確保

・特許対応による知的財産の保護

・コークス炉の高効率化による競争力の強化

・輸出販売拡大のための出荷設備の増強など、最適な生産及び販売体制構築に向けた構造改革

これらの対策により、急激な価格変動や需給バランスの変化、特定の取引先の需要変動に備えています。

 

 

③ヘルスケア分野

事業分野

ヘルスケア分野(ヘルスケアセグメント)

想定される

リスク及び

影響

一般的に新薬の研究開発期間は他業種に比べて長期にわたる上、新薬が承認取得に至る確率も高くないことから、製品化の確度及び時期について正確な予測が困難な状況にあり、計画どおりに新薬を製品化できなかった場合には、業績に影響を与える可能性があります。新薬が製品化した場合においても、新薬が広く普及した段階で新たな副作用等が報告されたことにより販売数量が減少した場合、または承認が取り消された場合などは、業績に影響を与える可能性があります。

 医療用医薬品事業は、診療報酬や薬価基準等の各種医療保険制度による影響を強く受けることから、各国の医療費抑制策の動向等によっては、業績に影響を与える可能性があります。

 共同研究・開発、製品導出入、製造、販売など各種業務に関する委受託を行っております。提携先との契約の変更・解消、提携先の経営環境の悪化及び経営方針の変更並びにこれら企業からの医薬品供給の遅延または停滞が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

このような事業の特性を踏まえ、当社グループにおいては業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・中枢神経・免疫炎症・がんを注力領域に研究資源の集中

・外部からの導入によるパイプラインの充実

・パイプラインの定期的な評価を通じた成功確度の向上

・開発段階から市販後における安全性情報の収集・分析を行うグローバルな安全性管理体制の構築

・製品の品質管理の厳格化、原料調達体制の多様化・分散化による安定供給

・提携先やサプライヤーとの信頼できるパートナーシップの構築

これらの対策により、計画通りに新薬が製品化できない影響及び医薬品の供給遅延・欠品、副作用の発生による影響に備えています。

 

 

④サービス業務(その他)

事業分野

サービス業務(その他)

想定されるリスク及び影響

エンジニアリングや物流といった当社グループのサービス業務を担う会社において、これらの会社は当社グループ外からの受注もあります。これらの顧客とは、日常的にコミュニケーションをとり、顧客要望の的確な把握、提案型営業の強化に努めていますが、グループ内外の需要や市況等の大幅な変動があった場合には、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

エンジニアリングや物流等のサービス業については、各事業の特性を踏まえ、業績に影響を及ぼす機会の追求とリスクの最小化を図るべく、以下の対策を講じております。

・DX(デジタルトランスフォーメーション)ツールの導入による各種管理活動の自動化、効率化の推進

・市場動向の早期情報収集

・物流業界や建設業界における、いわゆる2024年問題を踏まえた適切な労働環境の整備や従事者の処遇改善

これらの対策により、市場環境の変化、特定の取引先の需要変動に備えています。

 

 

 

(2)グループ全体に影響のあるリスク

①サプライチェーン・地政学に関連するリスク

リスク項目

サプライチェーン(地政学リスク・経済安全保障リスクを含む)

想定されるリスク及び影響

・当社グループの事業に関連する国・地域における大規模な自然災害、パンデミック、事故、ユーティリティ供給不足等インフラの未整備、貿易摩擦などの経済や金融環境の変動等、国・地域固有のリスクなどにより、サプライチェーンが寸断され、業績に影響を与える可能性があります。

・原材料ソースが偏在している部分について当該原材料の調達が困難な事態が発生した場合には、当社グループの生産・供給体制に影響が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

・昨今のグローバルな物価上昇に伴う原材料価格の高騰の影響で、業績に影響を与える可能性があります。

・当社グループ製品が、法令違反を含むサプライチェーンにおける人権侵害や環境問題等に起因する経済安全保障にかかわる問題に関係した場合、または、経済安全保障に関し他国・地域から経済的威圧を被るなどした場合に、原材料の調達や製品の販売に影響が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

・原材料の調達及び製品の販売における物流サービスに関する委託先の人材不足の影響により、調達コストの増加や製品納入遅延などが生じ、業績に影響を与える可能性があります。

・当社グループの事業に関連する国・地域における紛争、テロリズム、内乱、暴動、デモ、治安悪化等の地政学的問題、法規則、税務、労働環境や慣習等に起因する予測不可能な事態の発生等のカントリーリスクにより、原材料調達の困難や遅延、または、政府により海外送金規制が課されることなどで、当社グループ製品の供給遅延や販売代金回収不能等の事業環境の悪化などが生じて、業績に影響を与える可能性があります。

・特に、地政学リスクの増大が更に他の地域・事業に波及するだけでなく、原燃料の価格上昇及び輸送コストの上昇などによって経済活動にも影響を及ぼしており、また、経済安全保障をめぐる国際情勢の変化によるサプライチェーンの途絶などの可能性も孕んでおり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性のある重要度の高いリスクと考えています。

リスク対策

・調達先の分散や代替原材料の検討、また、安全操業による製品の生産や製品の品質の維持・向上に努め、安定的な調達・生産・供給体制を構築していくとともに、売上債権についても保険等の活用により、保全に努めています。

・取引先への人権デューデリジェンスを実施することで、事業活動を持続可能なものとするよう努めています。

・経済安全保障にかかるリスク対応推進体制を構築し、国際情勢や法令の制定・改正、規制動向などの情報収集・分析・提供をするなど、経済安全保障関連法令リスクについて適切な対応を行っています。

・当社グループ会社での情報収集や外部機関等を通じて事業を展開している国・地域のカントリーリスクの調査・情報収集・評価を行い、リスク対応のアクションプランの高度化を推進しています。

有事に備えた安全管理体制の整備・運用、事業継続計画(BCP)の強化などを行っています。

 

 

 

②情報セキュリティに関連するリスク

リスク項目

情報セキュリティ

想定されるリスク及び影響

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・サイバー犯罪者集団や利用するハードウェア・ソフトウェアの脆弱性、利用者の情報セキュリティに関するリテラシー不足等の要因により、自社システムもしくは自社利用クラウドサービスがサイバー攻撃を受けることで、企業活動(生産、販売、出荷、決済、開発等)が停止し、その結果、取引先に多大な影響を与え、その補償や活動再開のための対策などに追加費用が生じるだけでなく、社会的信用の失墜、ブランド価値が低下する可能性があります。

・自社または第三者が利用する技術情報、個人情報が社外に漏洩することで、競合他社や他国に機密情報が渡ってしまう、またそれらを技術転用されることで競争力の低下、契約相手から秘密保持契約違反を問われる可能性があります。

・個人情報については犯罪に利用されることにより、個人から損害賠償請求を受ける可能性、個人情報保護委員会など各国監督当局から指導・制裁を受ける可能性、刑事罰(個人情報保護法など)を受ける可能性があります。

また、自然災害や事故等による大規模システム障害が発生することにより、自社の技術情報、個人情報が漏洩・消失する可能性があります。

リスク対策

 

・情報セキュリティ実行委員会を設置し、情報セキュリティに関するポリシーや規則の制定、各種セキュリティ施策をグローバルで進めています。

・セキュリティインシデント対応チーム(CSIRT)やセキュリティオペレーションセンター(SOC)を設置し、日々社内ネットワークやインターネット通信の監視、アンチウイルスソフト(NGAV)やふるまい検知(EDR)機能を利用したPCの挙動監視により、不正侵入の兆候の早期検知、対処に努めています。また、継続的にインシデント対応訓練を実施して対応強化を図っています。

・サイバー攻撃は日々変化し巧妙化しているため、対策は継続して実施するとともにそのレベルを向上させていく必要があります。

・IT資産の脆弱性管理強化

IT資産(ハードウェア、ソフトウェア等)の脆弱性を定期的にチェックし、必要に応じパッチやその他の対策を講じることで、セキュリティレベルを維持・向上させています。

・サイバー脅威情報収集・活用

サイバー攻撃を早期に、未然に対処することができるよう、最新のサイバー脅威情報を収集し、それを基にセキュリティ対策の更新・強化に努めています。

・データの管理強化

情報資産管理レベル毎に保管区分や持ち出し/閲覧の手続きを厳格化するとともに、PCの管理者権限の制限やデータの読み取り/書き出しの制限等を通じて、容易に情報の持ち出しができないよう管理を強化しています。

・情報セキュリティ教育の実施

情報セキュリティに関する知識と意識を向上させるために、全従業員を対象に、E-learning(情報セキュリティ、情報管理等)や標的型攻撃メール訓練を継続的に実施しています。

・ITインフラ基盤(ネットワーク、データセンターなど)や情報資産の冗長化

自然災害や事故による情報システム障害に備え、システムや情報資産の重要度に応じて冗長化を実施し、一部のシステムが停止しても情報の消失リスクを低減、業務を継続できるような環境を構築します。

 

 

 

③DXに関連するリスク

リスク項目

デジタルトランスフォーメーション(DX)

想定されるリスク及び影響

 

・レガシーシステムの残存により、旧式のシステムやプロセスが適切にアップグレードされず、業務の円滑な運営やプロセス改革が効率的に行われない、また、進化するデジタル技術を効果的に活用することができず、競合他社に対して競争力で後れを取ることにより、新たな市場機会を失うだけでなく、既存の製品についても市場ニーズを適切に反映できず売上収益を失うことにつながり、将来における当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

・優秀なデジタル人材の確保及び育成が継続的になされないことにより、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が遅れる可能性があります。

・DX投資が計画的かつ適切な投資が行われないことにより、将来に過大な投資が必要になるなど財務的な悪影響が生じるだけでなく、必要な改革プロジェクトの進行が遅れ、将来のビジネス機会を失う可能性があります。

リスク対策

 

・当社グループの業績改善に貢献するプロセス改革や効率化につながるデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することで、「デジタルケミカルカンパニー」となることをめざしています。

・従業員一人ひとりがデジタル技術やデジタルビジネスモデルを活用した働き方を実現する「スマート人材」となることをめざした教育体系の整備を進めています。

・事業部門でのDX推進(市民開発)とそのための教育・サポート、ガイドラインの整備(DXツール、生成AI利用等)を進めています。

・ビジネスプロセスの標準化・自動化の加速に取り組んでいます。

・データ戦略をもとにした全社データ基盤整備と利活用の推進に取り組んでいます。

・基幹システムの統合をはじめ、DXツールやソリューションの標準化によるグローバルでの全体最適化を推進しています。

・デジタルインフラの整備・更新のための計画的かつ継続的な投資を行っています。

 

 

④法規制対応/コンプライアンスに関連するリスク

リスク項目

法規制対応/コンプライアンス

想定されるリスク及び影響

・法令・社内規則違反等のコンプライアンス違反が発生した場合、違反の内容によっては、業務停止・許認可の取消・課徴金の支払等の行政処分、取引停止・取引先への損害の賠償、刑事罰等が課せられる可能性があります。これらの場合、当社グループに多額の損失が発生するだけでなく、当社グループのブランドイメージ・社会的信用力が著しく低下することも予想され、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

・上記の違反に対しては、是正及び再発防止措置をとる必要があり、その程度によっては業務負荷が大幅にかかることになり、従業員の疲弊、モチベーションの低下、離職率の増加につながるおそれがあります。

・当社グループが事業活動を進めるなかで影響し得る国内外の各種法規制の変更や強化、新たな法制度の整備等により、事業活動の機会も影響を受け、法規制への対応のために投資や労務負荷などの追加コストが発生する可能性があります。

・法規制に違反することにより、課徴金・罰金、取引先からの損害賠償請求等の金銭的な損失のみならず、刑事罰が下される、許認可等を取り消されるなど法律上、契約上の責任が問われ、レピュテーションやブランド価値が毀損され、取引先から取引を停止されるなど、当社グループの経営成績に多大な影響が生じ、事業の継続にも影響する可能性があります。

リスク対策

・コンプライアンス違反を起こさせない取組みとして、「不正のトライアングル」を意識して、①内部統制の仕組みの文書化等によるプロセス上の統制の強化を図るとともに、②コンプライアンス遵守の企業風土を醸成するために、コンプライアンスガイドブックやメールマガジン、イントラネット等、各種ツールを用いた情報の提供・発信や定期的な各種のコンプライアンス研修を実施し、③内部通報制度の整備・運用を含め、従業員の「声をあげる」環境の整備に努めています。

・上記の様々な取組みを効果的・効率的に実施するために、チーフコンプライアンスオフィサーを頂点とする「コンプライアンス推進体制」を整備するとともに、グループワイドに適用される「コンプライアンスプログラム」を制定しています。

・上記コンプライアンスプログラムに沿って、先に述べた各種の啓発・教育活動や内部通報制度の整備・運用に加えて、経営トップによるコンプライアンスメッセージの発信や必要な規則類の整備、従業員のコンプライアンス意識に係る定期的なモニタリングを実施しています

・コンプライアンス違反が発生した場合には、その迅速な是正対応や適切な社内処分を行う体制を整備しています。

・各法分野、各地域に担当の部門を設置し、現地法律事務所などを活用しながら各国の法規制動向をモニタリングしています。

・法令遵守のために各種社内規則を整備し、国内外を含めた従業員に社内周知を行っています。

・事業活動に関係する各種法規制に関する従業員教育を定期的に実施し、遵法意識を高める活動を行っています。

 

 

⑤人権に関連するリスク

リスク項目

人権

想定されるリスク及び影響

・近年欧米を中心とした児童労働や強制労働などを禁止する人権に関する法規制の強化がなされるなか、当社グループだけでなく、当社グループと取引のあるサプライチェーン先において、人権侵害に関与する事案が発生することにより、社会的信頼やブランド力の低下、取引停止などに繋がり、業績に影響を与える可能性があります。

・職場で差別やハラスメント行為が発生した場合には、従業員の健康の悪化やモチベーションの低下、離職率の増加などに繋がるだけでなく、当該行為が悪質だった場合、または、その対応が遅れたり、対応を誤った場合には、当事者による訴訟の提起やマスメディアによる批判など社会的な信用度の低下を招くおそれがあります。

リスク対策

・世界人権宣言、国連グローバル・コンパクト、国連のビジネスと人権に関する指導原則、及びISO26000などの国際規範に準拠した具体的な指針として「人権の尊重並びに雇用・労働に関するグローバルポリシー」を定めて、従業員への啓発や教育への取組みを行い、また、人権侵害の是正・救済体制の整備も実施しております。

・各国で適用される法令や人権に関する最善の慣行の遵守、従業員満足度の向上に努めています。

・適切なサプライチェーンを運営しながらグローバルな事業活動を持続的に展開していけるよう、社内や取引先等への人権デューデリジェンスを進めております。

 

 

 

⑥大規模自然災害に関連するリスク

リスク項目

大規模自然災害

想定される

リスク及び

影響

・地震、津波、台風、洪水、山火事等の大規模な自然災害が発生することにより、従業員とその家族への人的な被害の発生、事業所、製造所等における建屋や設備の損壊、道路、公共交通機関や社会インフラ(電気・ガス・水道)の寸断が生じ、当社グループにおける開発・製造・販売等の事業活動が一時的に停止する可能性があります。

・当社グループに対する自然災害の直接の影響が軽微であったとしても、サプライチェーンや物流関係が被害を受けることで、原材料の調達不足、輸送手段の確保困難により製造や出荷等の遅延、停止が想定され、市場への製品供給に支障がでるおそれがあります。

・自然災害の被害が広範囲に及び、その復旧・復興が長期にわたる場合には、製造設備等の復旧費用の増大、事業計画の大幅な見直し、消費マインドの冷え込みによる需要減少など、当社グループの業績に多大な影響を与える可能性があります。 

リスク対策

・大規模自然災害が発生した場合に備え、BCM(Business Continuity Management)ガイドラインや災害対策本部マニュアル等を策定するとともに、いち早く従業員とその家族の安否確認を行う仕組みを導入しています。

・各製造所において事業継続計画(BCP)を策定するとともに、有事発生時の情報収集体制を整備し、平時から製造所間及び本社との情報共有にも力を入れています

・平時より緊急時に備えた訓練を各事業所において実施するとともに、想定される最大規模の被害を基準として、これに耐え得る設備の防災性能強化を継続的に図り、対策の改善に努めています。

・万一大規模自然災害が発生した場合には多大な損害が生じることが想定されるため、損害を軽減させるために損害保険へ加入するなどの対策を講じております。 

 

 

⑦事故・事業活動に起因する災害に関連するリスク

リスク項目

事故・事業活動に起因する災害

想定される

リスク及び

影響

・製造プラントにおいて火災爆発などの事故が発生した場合、設備復旧の費用だけでなく、製造、販売などの事業活動の停止による影響も想定され、当社グループの事業目標や業績に多大な影響を与える可能性があります。また、死傷者などの人的被害や地域社会へ影響を与えた場合、補償や復旧のための費用だけでなく、社会的信頼性の低下を招く可能性があります。

・製造プラントにおいては様々な化学物質を取り扱っており、これらの化学物質が製造所外に漏洩した場合、人的被害や環境汚染などの地域社会に影響を生じさせるだけでなく、これを解決、解消するための費用やレピュテーションによる社会的信頼性の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

・製造プラントの運転管理、設備管理、プロセス安全評価、変更管理等の安全活動を継続的かつ確実に実施することで、事故・災害等の未然防止、被害・影響の拡大防止、再発防止に努めています。

・DX技術(ビッグデータやAI等)を使用した類似災害防止システムの構築等の災害防止のためのシステム開発にも取り組んでいます。

・万一事故が発生した場合には多大な損害が生じることが想定されるため、損害保険への加入や事業継続計画(BCP)に基づく情報収集体制を整え、中核となる事業の継続や事業の早期復旧への取組みを進めています。

 

 

 

⑧品質・安全性に関連するリスク

リスク項目

製品の品質・安全性

想定されるリスク及び影響

・当社グループで製造・販売している各種製品において品質・安全性上の問題が発生した場合には、製品の出荷停止や回収のための追加費用が発生する可能性があります。さらに、品質や安全性上の問題に起因して人的被害が発生した場合には、その補償を含め多大な損害が発生することになります。また、取引先や社会からの信頼も失墜し、当社ブランドの価値が著しく低下する可能性があります。

・当社グループで製造・販売している各種製品の品質・安全性上の問題が製造物責任(PL)問題に発展した場合は、業績に多大な影響を与える可能性があります。

・当社グループで製造・販売している医薬品において、安全対策を講じてはいるものの、予期せぬ副作用が発現した場合には、製造・販売中止や製品回収を行う可能性もあり、業績に影響を与える可能性があります。

リスク対策

・国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO9001等に従って各種製品を製造・販売しており、また、各国・地域の法規制にも対応したそれぞれの事業特性に最適な品質保証体制を構築しています。

・万が一重大な品質問題が発生した場合に備え、社内外の関係者と連携し、適切な対応を協議した上で、速やかに対応するとともに、再発防止に向けた対応を協議・実施する体制を整えています。

・新製品上市時や品質改善時には、事前に製造物責任(PL)のリスク検討を確実に実施することでPL問題の未然防止を図っております。

・製造物責任賠償については、PL保険に加入し、万一の事態に備えております。

・当社グループの医薬品については、規制当局や社外内の関係者と連携し、患者さんや医療機関への迅速かつ適切な情報提供体制を構築する等により、適正使用に向けた安全性情報提供活動を実施しております。

 

 

⑨知的財産権に関連するリスク

リスク項目

知的財産

想定されるリスク及び影響

・当社グループが製造・販売する各種製品が他社の知的財産権等を侵害していた場合、第三者から差止訴訟や損害賠償請求訴訟を提起され、その解決にともなう訴訟費用がかかるだけでなく、当社の主張が認められないときには、対象製品の販売停止や商標の使用禁止、賠償金や当該製品の販売継続のためのロイヤルティー等の支払いが発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

・第三者によって当社グループの知的財産権が侵害されることによって、当社製品の売上の減少、当社グループのブランドイメージの低下等の影響が考えられます。

リスク対策

・当社グループは、新商品の開発や既存製品の改良などに即して、第三者の知的財産権の監視、対策を継続的に実施しています。

・商標の使用可否判断を網羅的、継続的に実施しています。

・当社グループは、知的財産を適切に保護し、権利化を継続的に実施しています。

・第三者による当社グループの知的財産権の侵害を発見した場合には、適切かつ厳正な措置対応を実施しています。

 

 

 

⑩為替変動・金利変動に関連するリスク

リスク項目

為替レートの変動/有利子負債・金利変動

想定されるリスク及び影響

・当社グループは、海外において広く生産・販売活動を展開しており、輸出入を中心とした外貨建て取引に係る為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。また、連結財務諸表においては、各地域における外貨建の売上、費用、資産、負債等は日本円に換算して表示しているため、換算に使用する為替相場の変動が業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

・金融マーケットで金利が上昇した場合や当社グループの業績変動等に伴い格付けが低下した場合には、借入や社債発行等の財務活動において条件が悪化し、支払利息が増加するなど、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

リスク対策

・当社グループでは、為替予約等を使ったヘッジにより、為替相場の変動が業績や財政状態に与える影響を低減するように努めております。

・当社グループは、国内外における事業の資金需要や社債償還、長期資金の期限到来に伴う返済に対し、フリー・キャッシュ・フローの状況を見ながら、資金調達手段及びソースの多様化を図り、安定的な資金調達を行っています。また、長期資金調達を固定利率にて行うこと等により、金利変動リスクの抑制に努めるとともに、継続的に財務体質の強化に取り組み、資金調達力の維持、向上を図っています。

 

 

上記以外にも、サステナビリティに関連するリスク、気候変動等環境問題に関連するリスク、人的資本に関連するリスクを認識しており、当該リスクについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。

 本報告書に記載したリスクが発現して当社の事業に悪影響を及ぼした場合には、繰延税金資産の取り崩しや、非金融資産の減損損失が発生する可能性があります。また、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、対応策もこれらのリスクを完全に排除するものではありません。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、中間配当と期末配当の年2回、剰余金の配当を行っており、これらの剰余金の配当の決定は、定款の定めにより、取締役会決議をもって行うこととしております。また、企業価値の向上を通して株主価値の向上を図ることを株主還元の基本方針としております。配当につきましては、今後の事業展開の原資である内部留保の充実を考慮しつつ、経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づく2025年度までの実行計画において、前年度比での配当増加及び配当性向35%を目標としております。

上記の方針並びに、親会社の所有者に帰属する当期利益及び今後の事業展開等を総合的に勘案して、当事業年度の年間配当金は、1株につき16円の中間配当金と合わせ1株につき32円となります。

なお、当事業年度の剰余金の配当の詳細は以下のとおりです。

 

 

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当り配当額
(円)

中間配当

2023年11月1日

22,792

16.00

取締役会決議

期末配当

2024年5月20日

22,793

16.00

取締役会決議