2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

 当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあり、当社グループは、当該リスクの発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応には最大限努力してまいります。

 なお、文中にある将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

(1)国内外の政治・経済・景気動向に関するリスク

 当社グループは、化学品の製造販売事業をグローバルに展開しており、海外売上収益は売上収益の約56%を占めております。さらに製品は主に中間原料として様々な国・地域において多様な用途製品に使用されていることから、特定の国・地域や用途製品市場に大きく依存せず、それらの動向が経営成績及び財政状態に与える影響を抑えられる反面、各国・地域の政治・経済・景気の悪化及びそれに伴う製品需要の減少によって様々な製品の販売に影響が波及する可能性があります。また、当社グループは、日本・アジア・欧州・北米にアクリル酸、アクリル酸エステル及び高吸水性樹脂(SAP)などの生産拠点を有しているため、当該地域では販売に加えて設備稼働にも影響を及ぼす可能性があり、結果として経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)原油・ナフサの市場変動に関するリスク

 当社グループが調達している主原料は原油・ナフサ価格との連動性が高いため、中東地域やウクライナ情勢などの地政学リスク、米国シェールオイルの生産状況及び為替の変動等により原油・ナフサ価格が急激に変動した場合、原料価格の上昇分全てを製品価格に転嫁できない、又は遅れる可能性があります。一部の製品や取引先との間では、国産ナフサ価格の変動を製品価格に反映させるフォーミュラ方式による製品価格を設定すること等により当該リスクを7~8割程度軽減しておりますが、全ての製品及び取引先に設定していないため、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)財務に関するリスク

① 在外連結子会社等の業績

 当社グループでは、在外連結子会社等の資産及び負債は期末日レート、収益及び費用は期中平均為替レートにより円換算しているため、為替レートの変動により経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 外貨建債権・債務

 当社グループでは、グローバルに事業を展開しているため、米ドルやユーロ等の外貨建の債権・債務があり、短期的な為替レート変動に対して為替予約によるリスクヘッジを行っておりますが、為替レートの変動により円換算額が影響を受けることで、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 外貨ベースの円貨建債権・債務

 当社グループでは、一部の主原料調達において、米ドル建の原油・ナフサ価格の円換算値を指標として主原料価格(円貨建)を決定しているため、為替レートの変動により当該調達原料価格が変動し、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 詳細は、「第5 経理の状況1(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 29.金融商品」をご参照ください。

 

(4)海外展開に関するリスク

 当社グループは、最適地での生産・販売を目的とした海外展開により、アジア・欧州・北米に生産・販売拠点を有しており、アクリル酸、高吸水性樹脂(SAP)の海外拠点生産能力はグループ全体の約5割を占めております。海外事業においては、通常では予期し得ない法律や規則の変更、自然災害、産業基盤の脆弱性及び人材の採用・確保難、並びにテロ、戦争その他の社会的又は政治的混乱といったリスクが存在しております。これらのリスクに対して、専門家や政府関係機関等から情報を収集した上で適宜対策を講じておりますが、これらのリスクが顕在化することによって、海外の事業活動に支障が生じ、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)事業ポートフォリオ変革に関するリスク

 当社グループは、酸化エチレン、アクリル酸及び高吸水性樹脂(SAP)などの製品を中心に事業を拡大してまいりましたが、近年はこれらマテリアルズ事業の競争激化により市況変動の影響を受けやすくなってきたため、より安定した収益と成長が見込めるソリューションズ事業へのポートフォリオの変革を掲げ、中長期的な成長を目指しております。しかしながら、事業ポートフォリオ変革の遅れや市場ニーズの急変などによりソリューションズ事業で十分な収益が得られないなどのリスクが顕在化した場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

※各事業の内容については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載しております。

 

(6)研究開発に関するリスク

 当社グループは、シーズを創出する基礎研究から顧客の真のニーズに迅速かつ的確に応える応用研究まで多層的な研究開発を行っております。また、国内外の大学を含めた第三者パートナーとの研究開発や事業提携等のオープンイノベーションも積極活用して研究開発を促進しております。しかしながら、研究開発の失敗、あるいは予測の範囲を超えた市場ニーズの急変といった予期し得ない事象が発生する恐れが常にあり、投資に見合う収益を得られない場合や収益性の高い製品を創出することができない場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)知的財産権に関するリスク

 当社グループは、他社が当社グループの特許を侵害している場合には、警告・訴訟提起等の対策を講じておりますが、他社が当社グループの特許や製品を調査解析して類似の技術や製品を開発することを完全には防止できない可能性があります。一方、当社グループの新たな事業展開を目指した新規製品分野においては、他社の知的財産権を十分に調査解析した上で独自の技術や新製品を開発しておりますが、将来的に他社の知的財産権について紛争が生じた際に当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。上記のようなリスクが顕在化した場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、これまでの研究開発活動で培った独自の技術・ノウハウ、販売製品・顧客等の営業情報、製造活動で蓄積した生産データ及び会計データ等の機密情報を電子データなどとして保有しております。これらの機密情報は当社グループの事業活動の基礎であると共に競争力の源泉でもあることから、情報セキュリティポリシーを定めた上で、情報システムおよびインフラ・サイバーセキュリティの高度化、データセンターの複数化、アクセス権の設定、機密情報の表示、運用マニュアルの整備等の対策に加えて、従業員のモラルやセキュリティに対する意識を高める教育も実施しながら情報管理の徹底に努めております。しかしながら、外部への情報漏洩や情報の喪失等が生じた場合には、競合他社に対する事業の優位性低下や類似品の出現等当社グループの事業活動に大きな支障が生じる可能性があり、リスクが顕在化した場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)DXに関するリスク

 当社グループは、基幹システムの刷新、研究開発・製造におけるデータ及びデジタル技術活用や新規顧客開拓へのデジタルツールの活用など、専門部署を中心に組織横断的に取り組んでおります。しかしながら、急速に進歩するITやデジタル技術に適応できず、それらを研究開発、製造、販売等の事業活動に有効に活用できない場合、将来的に競合他社に対する事業の優位性が低下する可能性があり、リスクが顕在化した場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害・事故等の発生に関するリスク

 当社グループは、レスポンシブル・ケアの推進を公約し、グループ全社で環境保全、化学品安全、保安防災等の活動を積極的に展開し、顧客や地域社会からの高い信頼を獲得するよう努力しております。また、大災害を想定した事業継続計画(BCP)を立て対策を適宜講じております。しかしながら、自然災害や停電・電力不足、感染症の流行、製造所における事故災害等により、生産活動の継続が困難となる可能性を完全に解消することは不可能であります。

 例えば当社の基幹工場である姫路製造所及び川崎製造所の所在地区において、大規模な地震や津波、事故その他操業を中断せざるを得ない事象が発生した場合には、主要製品の生産能力が著しく低下する可能性があります。また、感染症の拡大により、経済活動の制限、出社制限による事業活動の停滞などが発生し、経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)気候変動に関するリスク

 当社グループは、気候変動を解決すべき重要な社会課題と認識し、事業活動に伴って発生する温室効果ガスを継続的に削減するだけでなく、事業を通してサプライチェーン全体の温室効果ガス削減に貢献する取り組みを推進しております。また、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しており、情報開示にも努めております。しかしながら、気候変動に伴う天災リスクや脱炭素社会への移行などに適切に対応できない場合には事業活動に悪影響を及ぼし、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)環境に関するリスク

 当社グループは、化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費を経て廃棄・リサイクルに至る全ての過程において、自主的に「環境・安全・健康」を確保することを目的に、レスポンシブル・ケア活動を積極的に展開しております。また、環境に関する法規制を遵守するとともに、化学物質の排出抑制、省エネ活動の推進、廃棄物削減や資源有効利用など、環境負荷低減に向け取り組んでおります。しかしながら、環境規制の強化や新たな法的・社会的責任の発生、法整備以前の行為に起因する環境汚染の発生などが生じた場合は、法令遵守等の対策費用増加や行政の指導などによる製造販売の制限により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)人財に関するリスク

 当社グループは、多様な価値観を持ち、自律した人財を確保・育成するために、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する組織を中心に、リーダー人財の育成、シニア人財及び女性活躍の推進などの施策に取り組んでおります。しかしながら、人財育成計画の遅れや人財の定着が進まなかった場合には、中長期的な成長を達成することができず、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)資産の減損損失に関するリスク

 当社グループは、製造設備等の有形固定資産を多数所有しており、資産合計の約35%を占めております。また、棚卸資産については、資産合計の約16%に相当します。そのため、急激な需給バランスの悪化等により製品市況が著しく下落した場合には、固定資産の減損損失や棚卸資産の評価減により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)企業買収、資本提携等に関するリスク

 当社グループは、事業の拡大や競争力の強化等を目的として、国内外において企業買収や資本提携などを実施することがあります。これらを行う際には、対象企業の調査を十分に行い、リスクを検討することとしておりますが、当社グループや対象企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー効果や新規事業創出その他のメリットを得られない場合や出資先企業の業績不振により「のれん」や「株式簿価」等の減損損失を計上する場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

 当社は、株主の皆様への利益配分を経営の最重要課題と位置付け、企業価値向上に向けた事業拡大や企業体質強化などを総合的に勘案しつつ、安定的な利益配分を実施することを基本方針としております。配当については、配当性向等を考慮しつつ中長期的な水準向上を目指しており、また、1株当たりの価値を上げる為の自己株式取得も選択肢の一つとしております。

 当期の期末配当金は、2022年3月策定の中期経営計画「TechnoAmenity for the future-Ⅰ」で掲げた総還元性向50%(配当性向40%、自己株式取得10%)とする方針のもと、1株当たり90円といたしました。この結果、年間配当金は1株当たり180円となり、連結での配当性向は63.9%となりました。また、当期は40億円(700,000株)の自己株式の取得を行い、本自己株式の取得を含めた総還元性向は99.7%となりました。

 また、長期ビジョン「TechnoAmenity for the future」で定めた2030年の目指す姿の達成に向け、現在推進中の事業の変革、環境対応への変革、組織の変革の3つの変革の加速に加え、資本効率性をより一層重視した財務戦略への転換、レバレッジ水準の最適化が必要不可欠との結論に至り、2027年度末までに株主資本比率を60%近傍まで引き下げる目標を新たに定めております。

 この目標達成に向け株主資本の更なる積み増しを抑制するとともに、十分な成長投資、競争力維持投資の財源を確保しつつ株主還元の一層の拡大と安定化を図ることを目的に、2025年3月期から2028年3月期の4期間においては、配当性向100%またはDOE(株主資本配当率)2.0%のいずれか大きい金額を目安に配当を実施いたします。

 なお、配当基準日は、中間期末日、期末日とし、配当は年2回としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

 内部留保資金については、一層の競争力強化のため、生産能力増強および合理化工事に対する資金需要に備えるとともに、戦略投資や研究開発投資等に充当し、事業の着実な成長に努める所存であります。

 なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めております。

 

 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月7日

3,543

90.00

取締役会決議

2024年6月20日

3,479

90.00

定時株主総会決議

(注)1.2023年11月7日開催の取締役会決議の配当金の総額には、当社の取締役および執行役員を対象とした業績連動型株式報酬制度に係る信託口が保有する当社株式に対する配当金4百万円が含まれております。

2.2024年6月20日開催の定時株主総会決議の配当金の総額には、当社の取締役および執行役員を対象とした業績連動型株式報酬制度に係る信託口が保有する当社株式に対する配当金4百万円が含まれております。