リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループは、事業展開上のリスクになる可能性があると考えられる主な要因として、以下の記載事項を認識しています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の回避と予防に取り組んでいます。
なお、文中に記載している将来に関する事項は、本書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。
(1) 経済状況等の変動
当社グループは、2024年6月末現在、日本を含む多数の国と地域において、多様な業種の企業・官公庁を顧客として事業を展開しています。そのため、当社グループが行うマーケティングリサーチの需要は、日本国内外の経済状況、各業界の動向、各企業の経営成績やマーケティング予算、広告代理店の広告取扱高の変動等による影響を受ける可能性があります。
特に、当社グループの売上収益の大部分を占める日本では、政府・日本銀行の政策・世界経済の動向等によって、個人消費の減速や企業活動の停滞が発生する可能性があり、当社グループの顧客の商品・サービスの市場規模や活動が縮小し又は停滞する場合には、当社グループのサービスに対する需要が減退する等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 他社との競合
マーケティングリサーチ業界はインサイト産業への再定義が進む中、従来よりも、より多数の競合他社が国内外に存在し、各市場において当社グループと競合している状況にあります。当社グループの競合他社は、知名度、リサーチの信頼性、営業力、提供するサービスの価格やラインアップ、納期までの期間、ノウハウ、利用可能なパネル数、顧客のニーズへの対応力等の点において当社グループより高い競争力を有する可能性があり、また、当社グループに先駆けてより先進的なサービスや完成度の高いサービスの提供を開始する可能性があります。
さらに、スマートフォンの普及やソーシャルメディアの浸透等に伴うインターネット利用者の拡大等により、例えばシステム開発会社や膨大なビッグデータを保有するソーシャルメディアやインターネット検索サービスを提供する企業によるネット履歴データの分析事業への進出等、新たにオンラインリサーチ関連事業に参入する企業が増加しており、また、競合他社が他社との提携や経営統合等を行う場合には、競争が更に激化する可能性もあります。
これらの要因により、当社グループの国内外の市場シェア又は主要顧客ごとのシェアが低下する場合や、業界競争の激化に伴う価格下落圧力等が生じる場合は、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) パネルの維持・拡充
当社グループでは、迅速かつ適切なリサーチを行う上で、多様な属性を有する十分な数のパネルを維持・拡充することが重要であると認識しています。当社グループは、パネルに対して適切なポイント付与を行うこと等により、2024年6月末現在で90ヶ国においておよそ1億3,000万人のパネルを利用可能ですが、今後競合他社による付与ポイント等の魅力の向上、外部パネル提供会社との関係の悪化、提携パネルの利用に係る費用の増加、パネルの獲得方法の変化等によって、当社グループが利用可能なパネルの数や当社グループによる調査へのパネルの参加率が減少し、適切なリサーチを行うために必要なパネルの属性の多様性が失われる場合は、当社グループのサービスの品質が低下する可能性や、顧客の求めるニーズに合ったソリューションを提供できなくなる可能性、また、当社グループが利用可能なパネルを維持・拡充するための費用の増加が生じる可能性があり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 広告代理店との関係
日本においては、広告代理店がテレビを中心とする広告市場において重要な役割を果たしており、広告代理店は当社グループを含む外部のマーケティングリサーチ会社に対して広告効果測定等の調査を依頼することが多くあります。当社グループにおいても、広告代理店からの調査及び広告代理店を経由した調査に係る売上収益が連結売上収益の相当程度を占めているため、広告代理店との良好な関係を構築し、維持・継続することは重要な経営上の課題であり、当社グループは国内の主要な広告代理店の一部と合弁会社を運営しています。一方、一部広告代理店の中には、当社グループが提供するサービスと類似のサービスを提供するものもあり、当社グループの事業と競業する場合があります。
したがって、当社グループにおける不祥事等によるブランドイメージや社会的信用の低下、当社グループのサービスの品質低下や競争力の低下、広告代理店の経営方針の転換等により、広告代理店との関係が悪化する場合や合弁が解消される場合、広告代理店がマーケティングリサーチ業務を自社内部で行う比率を高める場合又は広告代理店が顧客に対し当社グループが提供するサービスと類似のサービスを直接提供する場合、広告代理店の広告市場における影響力が弱まる場合、広告代理店の不祥事等により企業から当該広告代理店への発注自体が減少する場合等においては、広告代理店からの当社グループへの発注や紹介が減少することにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) デジタルマーケティング市場の動向
当社グループは、従来のマーケティングリサーチの枠組みを越え、自ら開発したシステムや自社パネル基盤の活用を通じて顧客の広告効果を分析、その有効性をリアルタイムで把握することで、顧客のマーケティング活動の向上を支援するデジタルリサーチ及び広告配信サービスを提供しています。
デジタルマーケティング市場の動向は、オンライン広告市場の動向に大きく左右されるものと考えられますが、経済環境、技術水準、インターネット利用者数又は利用率の変化その他の要因によってオンライン広告市場の拡大が予想通りに進まない可能性があります。また、仮にオンライン広告市場の拡大が進んだ場合であっても、顧客のデジタルマーケティングの需要が予期せず変化する場合や、当社グループが顧客の求める品質のサービスを提供できない場合等においては、デジタルリサーチ及び広告配信サービスの拡大を実現できず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 新規サービス
オンラインリサーチ領域は、技術革新及び顧客のニーズの変化に応じて急速に進化を続けているため、当社グループは、かかる変化に対応してオンラインリサーチ事業の新たなサービス基盤を創出すべく、リサーチ領域における新しいマーケティングサービスの開発・展開を進めることが重要であると認識しています。
しかしながら、当社グループがかかる顧客ニーズの変化等に適切に対応できない場合や、競合他社が当社グループよりも早くかかる変化に対応したり、新しい技術によって当社グループよりもより安価にサービスの提供ができるようになること等によって当社グループの競争力が低下する場合のほか、新しい技術やサービスによって当社グループの既存のサービスの優位性や先進性が失われ、又は新技術に対応するための費用や競合他社の新規サービスに対抗するための費用が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 当社グループが提供する情報の正確性
当社グループのサービスにおいて、顧客に対して提供する情報又は分析の真実性、合理性及び正確性は非常に重要です。
したがって、当社グループが分析のために収集した情報に誤りが含まれていたこと等に起因して顧客に対して不正確な情報を提供する場合や、不正確な情報を提供していると誤認される場合には、当社グループの受注案件数の減少、ブランドイメージや社会的信用の低下、当社グループに対する損害賠償請求、当社グループのサービスに対する対価の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 情報漏洩
当社グループでは、パネルに係る情報など、大量の個人情報を保有しています。また、顧客が計画している新商品・新サービスの情報など、マーケティングリサーチ業務の過程で必要となる顧客の機密情報等も多く保有しています。
これらの情報に対する外部からの不正アクセスや、社内管理体制の瑕疵、当社グループ従業員の故意又は過失、コンピュータウイルス等による情報漏洩が発生した場合、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社に対する損害賠償請求等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、個人情報や機密情報の保護に関する国内外の法令等が改正される場合には、これに対応するためのシステムの改修や業務方法の変更に係る費用等の発生により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。
(9) アドホック調査の継続性
当社グループにおけるマーケティングリサーチは、顧客のブランドや商品・サービス等、特定のマーケティング上の課題の解決などに用いられ、データの回収・集計・分析等の調査プロセスが1回限りで完結する、いわゆる「アドホック調査」が中心となっています。実際には、アドホック調査の依頼の大部分が、調査データの継続性等の観点から複数年にわたる継続的な調査の依頼に至るものの、取引の継続性が契約により保証されているわけではないため、当社グループの顧客の多くは、個別の案件ごとに複数のリサーチ業者から発注先のマーケティングリサーチ会社を選択することや、発注先を当社グループ以外の競合他社に切り換えることも可能です。
したがって、当社グループの将来的な売上収益を正確に予想することが困難である場合があるほか、当社グループにおける不祥事等によってブランドイメージや社会的信用が低下し、又は当社グループのサービスの品質が低下する場合に、当社グループのアドホック調査に係る受注が減少し、又は既存の顧客からの継続的な依頼が打ち切られること等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) AIRsを利用したサービスへの依存
当社グループは、提供するサービスの多くにおいて、当社の基幹システムであるAIRsを利用しています。AIRsを利用した自動調査は、オンラインリサーチ工程の大部分を機械的に処理して高い作業効率を維持できることから、現時点において当社グループの売上収益及び利益に大きく貢献しています。
近時においては、クライアントニーズの多様化を受け、海外調査や定性調査等の自動調査以外のサービスに係る売上収益が増加する傾向にあります。この結果、AIRsを利用して行う自動調査に係る売上収益も増加しているにも関わらず、その売上収益が当社グループ全体の売上収益に占める比率は相対的に減少する傾向にあります。しかしながら、当社グループは自動調査以外のサービスにおいてもAIRsを利用することが多いため、AIRsへの依存は今後も比較的高い水準で推移する見込みです。
したがって、システム障害等の発生によりAIRsへの信頼性が低下する場合、AIRsに関するシステムの適時の標準化、最適化、更新、改修等を行えない場合等には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、今後顧客ニーズやインターネット利用者数又は利用率の変化等により自動調査への需要が減少した場合に、当社グループが自動調査以外のサービスで十分な収益を得られない場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) システム開発
当社グループがサービスの品質を更に高め、マーケティングリサーチ業界における競争力を維持・向上させるためには、技術革新や競争環境の変化に応じ、システムに関する投資を積極的かつ継続的に行っていく必要があると認識しています。システム開発の遅延・失敗やトラブル発生等により開発コストの増大や営業機会の逸失が発生する場合、システム開発に想定以上の費用又は時間が必要となった場合、システム開発に必要な技術者等を確保できない場合、開発したシステムによって想定通りの効果や効率化等が図られなかった場合、開発したシステムを適時に更新できない場合、既存システムを新システムに適合させるための追加費用が発生する場合等には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) システム障害
当社グループは、マーケティングリサーチ業務の過程で、情報の収集、分析、保管、加工等のために情報システムやインターネット等を利用しています。
そのため、自然災害、火災や停電等の事故、プログラムやハードの不具合、コンピュータウイルスやハッカー攻撃、外部からの不正アクセス等により、システム障害が発生した場合、当社グループの業務やサービス提供の停止、重要なデータの喪失、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社グループのサービスに対する対価の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 中期経営計画
当社が策定した中期経営計画では、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、データ利活用支援(コンサルティング)事業やマーケティング施策支援(広告配信等)事業などの新規事業を加速させ、「総合マーケティング支援企業」へと事業モデルの変革を進めることと、主力のオンライン及びデジタルリサーチへの再フォーカスを通じた利益率の着実な改善を、その目指す方向として掲げています。
その上で、日本事業においては、注力事業(オンラインリサーチ及びデジタルリサーチ)の高収益性と安定的な成長の追求、戦略投資事業(コンサルティング、グローバルリサーチ、その他の新規事業)の売上二桁成長と将来の利益貢献の実現、基盤強化事業(オフラインリサーチ、データベース、JV含むその他の子会社群)における競争優位性と参入障壁の確立と安定的な売上・利益貢献の継続、韓国事業においては、日本事業の成長プロセスの再現等の各施策を推し進め、更なる成長と収益性の向上を目指すこととしています。
しかし、これらの施策の実施については、マーケティングリサーチ市場が拡大しないリスク、データ利活用支援事業やマーケティング施策支援事業などの新規事業が進展しないリスク、他社との競合等により当社グループが国内外のシェアを拡大できないリスク、優秀な従業員を確保できないリスク、販売戦略やコスト削減策、成長戦略等が奏功しないリスク、技術革新等に対応できない、又は対応に多額の費用等を要するリスク等、多数のリスク要因が内在しているため、実施が困難となる可能性や、当社グループにとって当該施策が有効でなくなる可能性があります。
また、かかる中期経営計画を作成するにあたって前提としている多くの前提が想定通りとならない場合等には、当該計画における目標を達成できない可能性もあります。更に、当社グループが正確に認識又は分析していない要因又は効果により、当該計画の施策がかえって当社グループの競争力を阻害する可能性もあります。これらの結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 固定費
当社グループにおいては、その事業の特性上、人件費、賃借料及びシステム運用管理費など、当社グループの売上収益にかかわらず固定的に発生する費用が当社グループの費用の相当程度を占めています。その結果、当社グループの限界利益率は高く、特段の事象が発生しない限り、損益分岐点を超えた以降は売上収益の成長よりも高い利益成長を享受できる収益構造になっているものと認識しています。他方、当社グループの売上収益が何らかの理由により大幅に減少する場合等には、当該減少に比して費用の減少が生じにくく、当社グループの経営成績に相対的に大きな影響を与える可能性があります。
(15) 人材の確保及び育成
当社グループが今後も顧客にとって付加価値、満足度の高いサービスを提供し続け、事業の拡大を図るためには、マーケティングリサーチの高い技能やノウハウ等を有し、顧客の業界にも精通した優秀な人材を継続的に確保し、育成していくことが重要と考えています。
しかしながら、かかる優秀な人材はマーケティングリサーチ業界のみならず多くの業界において需要が高いため、今後人材採用競争の激化等の要因により、期待する資質を有する人材や優秀な人材を確保できない場合や、採用等に係るコストや人件費が増加する場合は、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 知的財産権
当社グループの事業分野における他社の知的財産権の保有や登録等の状況を完全に把握することは困難であり、当社グループが意図せず第三者の特許権等を侵害する可能性や、今後当社グループの事業分野において第三者の特許権等が新たに成立し、当社グループを当事者とする知的財産権の帰属等に関する紛争が生じたり、当社グループが知的財産権の侵害等に関する損害賠償や使用差止等の請求を受けたりする可能性があります。
また、当社グループが第三者と提携や合弁等を行うことにより、当該第三者が締結している契約に基づく知的財産権に係る制約を受けたり、第三者に対する新たな対価支払いを強いられたりする可能性もあります。
これらの結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 海外事業
当社グループの海外事業の展開にあたっては、各国の経済情勢及び政治情勢の悪化、法律・規則、税制、外資規制等の差異及び変更、商慣習や文化の相違、自然災害や感染症の発生等の可能性があり、これらの要因により特定の国での事業の遂行及び推進が困難になる場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 為替相場の変動
当社の連結子会社及び持分法適用会社を含む関連会社は、多数の海外拠点を有し、取引先及び取引地域も世界各地にわたっているため、外貨建てで取引されているサービス等のコスト及び価格のほか、企業買収等の対価が外貨建てとなる場合は、直接的又は間接的に為替の影響を受けます。
また、当社グループの海外子会社及び関連会社では、米ドル、ポンド、ウォン等日本円以外の外国通貨で財務諸表を作成しており、当社の連結財務諸表の作成時において日本円に換算され円建てで連結財務諸表に記載されるため、為替相場の変動により当社グループの海外子会社が所在する国の通貨の日本円に対する価値が著しく変動する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記に加えて、当社又はその国内子会社の保有又は負担する外貨建ての金銭債権又は金銭債務は連結財務諸表の作成時において日本円に換算されますが、当社グループでは、これらの影響の一部を最小限におさえるべく、適宜為替予約等によるヘッジを行っています。かかるヘッジにより為替相場の変動に係るリスクを全部又は完全に回避できるわけでないため、為替相場の変動状況によっては、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(19) 企業買収、戦略的提携等
当社グループは、事業拡大の手段の一つとして企業買収や戦略的提携を積極的に推進しています。これらの企業買収や戦略的提携は、システム等の統合上の問題の発生、事業上の問題の発生、買収先企業における人材の流出等により実施又は維持できなくなる可能性や、当初期待した成果をあげられない可能性があるほか、当社グループが実施した買収に伴い発生するのれんについて国際会計基準(IFRS)に従い減損損失を計上する可能性があり、これらによって当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(20) のれんの減損
当社グループは、2024年6月末現在、連結財政状態計算書にのれんを40,665百万円計上しており、のれんは連結総資産の45.6%を占めています。また、当社グループが今後M&A等を実施した場合に、新たなのれんを計上する可能性もあります。
当社グループの連結財務諸表はIFRSを採用していますので、これらののれんは非償却性資産であり毎期の定期的な償却は発生しませんが、今後いずれかの事業収益性が低下した場合等には減損損失が発生し、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(21) 顧客志向の変化
昨今、国内外を問わず、新たなテクノロジーの登場やサービスの進化等により、顧客を取り巻く事業環境が変化し、これを受けて顧客のニーズが変化するといった状況が続いています。これに対応するため、当社グループもまた、サービス内容の素早い進化や変化が求められています。具体的には、単一のサーベイデータに基づく調査よりも、モバイル、ソーシャルメディア、行動データ、ビッグデータなど、複数のデータソースに基づく調査を求められる傾向が強まっていること、単なるデータ提供に留まらずインサイトの抽出・分析等にも重点を置いたサービス提供を求められる傾向が強まっていること、今まで以上にリアルタイムでの効果測定や有効性の把握が求められるようになってきていること等が挙げられます。また、多国籍企業の顧客を中心として、よりグローバルなサービスを提供するリサーチ会社を好む傾向も強まっています。
今後も顧客のニーズは変化し続けることが予想されますが、かかる変化により当社グループが提供するサービスの需要が低下する場合や、ニーズの変化への対応に必要なサービス内容等の変更や新規サービスの開発等が成功せず、顧客の要求水準や要求内容に見合うサービスを提供できない場合、また、当社グループが顧客のニーズの変化を適切に把握できない場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(22) 季節変動
当社グループの顧客では、新商品販売のタイミングが各四半期末に、また、広告宣伝予算の消化が各顧客の主な決算期末である3月(海外の顧客については主に12月)に偏る傾向があり、当社グループの売上収益も当該時期に高くなる傾向があります。
このため、かかる時期において当社グループの経営成績が不調となる場合には、当社グループの通期の経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
(23) 多額の借入金、金利の変動及び財務制限条項への抵触
当社グループは、公募社債の発行と、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し、両者を合わせて多額の借入れを行っており、2024年6月期末時点での総資産額に占める有利子負債額は34.2%(注)となっています。当該借入金は、元本が変動金利も含まれるため、市場金利が上昇する場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、かかる契約の約定に基づく既存の借入れがあることから、新たな借入れ又は借換えが制約される可能性や、必要な運転資金等を確保できず景気の下降に脆弱となる可能性、財務的信用力が当社グループよりも強い競合他社と比較して競争力が劣る可能性があります。
さらに、当社グループが締結している借入契約の中には、財務制限条項が付されているものがあります。かかる財務制限条項については、純資産維持及び利益維持に関する数値基準が設けられており、これに抵触する場合、貸付人の請求があれば当該契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の弁済をするための資金の確保が必要となります。万が一何らかの事象によって当該財務制限条項への抵触が生じる場合は、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があるとともに、かかる資金の確保ができない場合は、当社グループの他の借入についても期限の利益を喪失することが予測され、当社グループの存続に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、財務制限条項は、後記の注記「18.社債及び借入金」に記載しています。
(注)財務レバレッジ水準を示す本指標の目的を考慮し、2024年6月期より、純有利子負債にリース負債を含め
ず、集計対象を借入金と社債のみとしています。
(24) 自然災害、事故、感染症の流行等
大規模な地震・風水害・津波・大雪・感染症の大流行等が発生した場合、当社グループの本社建物や設備等が被災し、又は従業員の出勤や業務遂行に支障が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、これらの自然災害等により、当社グループの業務に必要なシステムやインターネット等のネットワーク環境が使用できなくなる場合、当社グループの業務遂行等が極めて困難となる結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
実際、新型コロナウイルス感染症の拡大時においては、世界的な規模で消費行動の停滞や、営業活動の自粛が生じました。この結果、顧客のマーケティング活動のスケジュールや内容が変化し、予定されていたリサーチ案件の延期、規模の縮小、中止等といった影響が出ました。こうした、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は、2024年6月期末現在においてはかなり限定的なものとなっていますが、こうした感染症の流行の拡大や、自然災害等によって当社グループの顧客に被害等が生じる場合や、経済状況等の低迷が発生する場合にも、当社グループの受注案件数の減少等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(25) 訴訟その他の法的手続
当社グループは、その事業の過程で、各種契約違反や労働問題、知的財産権に関する問題、情報漏洩等に関する問題等に関し、顧客、取引先、従業員、競合他社等により提起される訴訟その他の法的手続の当事者となるリスクを有しています。当社グループが訴訟その他の法的手続の当事者となり、当社グループに対する敗訴判決が言い渡される又は当社グループにとって不利な内容の和解がなされる場合、当社グループの事業、経営成績、財政状態、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
(26) 財務報告に係る内部統制
当社グループでは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築及び運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでいますが、内部統制報告制度の運用により、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制を構築及び運用できる保証はありません。更に、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しない場合や、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生する場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営上の施策の一つとして認識しています。一方で、将来の成長投資に必要となる内部留保の充実と、財務基盤の確立、株主への利益還元を総合的に勘案することが大切だと考えています。すなわち、当社の資本コストを上回る投資案件がある場合には、企業価値向上につながる戦略的投資を実行し、持続的な売上高及び利益成長を実現することと、それを可能とする健全な財務基盤の確立を優先することが、株主の皆様との共通の利益の実現に資すると考えています。
このため、当社は、中期経営計画の最終年度である2026年6月期までの期間において、株式売却等の一過性損益を除く連結配当性向50%を目標とし、累進配当を実現する形で剰余金の配当を行う方針です。また、自己株式の取得についても、事業展開、投資計画、内部留保の水準、業績動向等を総合的に勘案しながら、利益還元策の一環として機動的な実施を検討していきます。
なお当社は、定款に「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって定める」旨を規定しており、機動的な配当及び自己株式の取得の実施が可能です。
これらの方針に従って、2024年6月期の配当については、一株当たり12円の中間配当に加えて、同15円の期末配当を行うことで1株当たり計27円とし、2025年6月期の配当については、1株当たり37円(中間配当17円、期末配当20円)とすることを予定しています。