2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を以下に記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、特段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)事業環境について

①インターネットの普及について

 当社グループが展開しているクラウドソリューション事業は、主にインターネットを利用する不動産業界の顧客を対象としており、顧客基盤拡大のためには、不動産の物件情報検索等においてインターネットを利用する消費者が増える必要があります。故にインターネットの更なる普及は当社が成長するための基本的な前提条件であると考えております。

 これまでのところ、日本国内におけるインターネット利用状況は安定的に高水準で推移しておりますが、インターネットの普及に伴う弊害の発生及び利用に関する新たな規制の導入その他予期せぬ要因によって、今後インターネット利用者の減少及び利用コストの高騰等が起こった場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 また、インターネット上の情報通信、又は電子商取引が今後も広く普及し、インターネットの利用者にとって快適な利用環境が実現されることも当社の成長のための基本条件となります。こうした通信インフラ環境の向上が一般的な予測を大きく下回る場合、当社の事業環境及び前提条件に一定の制約が生じることとなり、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

②クラウド事業について

 クラウドとは、システム・アプリケーションをインターネット経由で提供するサービスで、ソフトウェアの提供における新しい方法・概念として認知され、従来から「SaaS」とも呼ばれ、浸透が進んでまいりました。その一方で今後クラウドを扱う企業レベルの競争も激化する可能性があります。このような事業環境のもとで、サービスにおいて新技術への対応が思いどおりの成果をあげられない場合、顧客ニーズを正確に把握することができなかった場合、他社においてより画期的なコンセプトをもった商品・サービスが出現した場合、又はクラウド自体の需要が当社の予測を大きく下回る場合、当社グループの財政状態及び経営成績は悪影響を受ける可能性があります。

③競合による業績への影響について

 当社グループは不動産業界のニーズに合ったシステム・アプリケーションを開発し、不動産業界向けにクラウド・SaaSとして提供しております。第三者が新たに不動産業界の業務ノウハウに精通した技術者、営業担当者を集め、当社グループと同様の事業モデルを構築するには時間的、資金的な障壁があるものと考えておりますが、当社グループと同等のシステムを再構築することは技術的に不可能とは言い切れず、また、資金力、ブランド力を有する大手企業の参入や全く新しいコンセプト及び技術を活用した画期的なシステムを開発した企業が出現した場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。さらに、インターネット業界の技術革新や新規参入等により、競争が一層激化した場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

④技術革新への対応等について

 当社グループはインターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、インターネット関連分野は、新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われ、非常に変化の激しい業界となっております。このため、技術革新に対する当社の対応が遅れた場合、当社グループの競争力が低下する可能性があります。

⑤不動産業界の動向について

 当社グループは、不動産業界の顧客向けに不動産業務支援システム等のシステム・アプリケーションを開発しSaaSとして提供する事業を展開しており、販売先も不動産業界の顧客に集中している状況にあります。不動産業界の中でも賃貸仲介、賃貸管理、売買仲介等、それぞれの業態にあったサービスを提供しておりますが、不動産業界全般の景気や、不動産業界におけるシステム投資の状況によって、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。

 また、今後において、不動産業界に対する規制環境の変化や業界各社の対応に何らかの変化が生じた場合には、当社グループの事業にも影響が生じる可能性があります。

⑥法的規制について

 現在、日本国内においてインターネットに関連する主要な法規制には電気通信事業法があります。当社は、顧客企業に対し「メール配信機能」を提供している事から、電気通信事業者の届出をしております。

 その他、インターネット上の情報流通や電子商取引のあり方について現在も様々な議論がなされている段階であります。上記以外に当社が営む事業そのものを規制する法令はありませんが、今後、インターネットの利用者や関連するサービス及び事業者を規制対象とする法令等が制定されたり、既存の法令等の解釈が変更されたりした場合、当社グループの事業が制約される可能性があります。

 また、不動産に関わる分野におけるインターネット上の情報流通や表示項目等が規制の対象になる可能性もあり、その場合には当社グループの事業が制約される可能性があります。

 

(2)当社のシステム等に係るリスクについて

 当社では、ネットワークのセキュリティに関してしかるべき方策を施し、更には個人情報漏洩に関する保険等に加入しておりますが、それらの対策を施してもコンピュータウィルス等の侵入やハッカー等による様々な妨害を原因とした損失発生の際に、それらをすべて補填できない場合があります。その場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

①顧客サービス用システムの不具合(バグ等)発生の可能性について

 一般的に、高度なソフトウェアにおいては不具合発生を完全に排除することは不可能であると言われており、当社グループが提供するSaaSにおいても、各種不具合が発生する可能性があります。今後とも信頼度の高いシステムの開発に努め、また契約において原則として免責事項を定めてはいるものの、特にインターネットを通じて提供される当社のサービスに運用上支障をきたす致命的な不具合が発見され、その不具合を適切に解決できない場合、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

②自然災害、事故及びシステム等にかかるリスクについて

 当社グループでは、顧客向けSaaS提供用のシステムインフラ基盤をIaaS環境上に構築、運用しております。当該IaaSについては外部IaaS事業者から調達しており、当該事業者が保守を行っておりますが、現時点において世界トップクラスの安定性・堅牢性を持つと考えられる事業者を選定しているものの、当該事業者の想定を超えるような地震・台風・津波又は火山活動等の自然災害や、事故・火災・テロ等により、設備の損壊や電力供給の制限等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障をきたす可能性があります。

 なお、新型コロナウイルス感染症拡大に見られるような伝染病・感染症の世界的流行(パンデミック)によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても、当社グループの全従業員を対象とした在宅勤務(リモートワーク)の体制を構築済みであり、お客様からのお問い合わせ、サポートセンターに関しましても、従前と変わらないサービスレベルを維持できる体制が整っております。また、お客様へのご訪問やご商談につきましても、Web会議等の活用により、従前と変わらない営業活動を展開できる体制を整えております。

 しかしながら、想定を超えるような流行により業務を適切に遂行できないような事態が発生した場合には、同様に当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③特定の外部IaaS事業者への依存にかかるリスクについて

 当連結会計年度末時点で当社SaaSのサービスインフラ基盤につきましては、主として米国Amazon社の提供するIaaSであるAWS(Amazon Web Services)上での運用を行っております。なお同社とは良好な関係を保っており、今後の契約関係も安定して継続する見込みでありますが、今後何らかの理由により、同社とのIaaS利用に関する契約の解消や、契約内容の重大な部分に変更がある場合などには、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また同社とは米ドル建てでの取引を行っていることから、今後急激な為替変動があった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお為替リスクの低減手段につきましては、主として為替予約を中心としております。

 

(3)情報セキュリティ管理について

 当社グループは顧客向けに顧客情報管理システムを提供しており、そのシステムの運用を通じて蓄積される個人情報等の管理に関して、顧客から委託を受けております。また自社運営サイトを通じて、顧客情報を取得することがあります。当社グループでは、社内基準に従い個人情報をはじめとする顧客の重要情報を管理し、その情報の外部漏洩防止に関して、情報資産に対するセキュリティ管理、情報管理に関する従業員への教育、外部委託先との機密保持契約などを行い、また、当社においては2009年5月に情報セキュリティマネジメントシステムの国際標準規格である「ISO/IEC27001」認証を、並びに2017年9月にクラウドサービス情報セキュリティマネジメントシステムの国際標準規格である「ISO/IEC27017」認証を東京本社、大阪支店、福岡支店及び名古屋支店において取得しており、現時点までにおいて情報管理に関する重大な事故やトラブルの発生は認識しておりません。

 しかし、これら顧客重要情報等が何らかの形で外部漏洩したり、不正使用されたりする可能性が完全に排除されているとは言えません。また、これらの事態に備え、個人情報漏洩に対応する保険等に加入しておりますが、全ての損失を完全に補填するものではありません。従いまして、これらの事態が起こった場合、当社グループへの損害賠償請求や当社の信用の低下等によって当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループは個人情報保護法における個人情報取扱事業者に該当しており、同法の適用を受けております。

 

(4)事業体制について

①人的資本の確保について

 当社グループは、サービスの開発業務において自社開発を基本原則としております。今後においても、現在の事業領域を中心に事業拡大を図っていく方針であり、当社グループのサービス戦略及び開発戦略等の業務遂行にあたり専門的な知識・技術を有した優秀な人財の確保が必要となります。当社において、これらの人的資本を拡充できない場合は、当社グループの考えるスピードでの効率的な事業展開に支障をきたす可能性があります。

②事業拡大に対する組織的な対応について

 当社グループはまだ小規模な組織であり、内部管理体制もこれに応じたものになっております。今後、企業規模が拡大していくに従って、内部管理体制の更なる充実を図る方針でありますが、当社グループの事業拡大に即応して、適切かつ十分な組織対応が出来ない可能性があります。

 今後の急速な事業拡大に備え、既存従業員の育成、採用活動による人員増強などの施策を講じるとともに、管理業務の効率化を図り、組織的効率を維持・向上させることが重要な課題となってまいります。これらの施策が計画どおりに進行しない場合、事業機会の逸失、業務品質の低下などを招き、当社グループの事業拡大及び事業運営に悪影響を与える可能性があります。

 また、小規模な組織であるため、業務プロセスを特定の個人に依存している場合があります。今後、業務の定型化、形式化、代替人員の確保などを随時進める予定でありますが、特定の役職員に依存している業務の遂行が当該役職員の退職その他何らかの理由により困難になった場合、一時的に当社グループの業務運営に支障をきたす恐れがあります。

③知的所有権に関する訴訟の可能性について

 当社グループで開発・設計しているソフトウェアやプログラムは、いわゆる「公知の基礎技術」を改良又は組み合わせることにより当社が独自で開発・設計しておりますが、意図せずに第三者の知的所有権を侵害している可能性があります。特に「ビジネスモデル特許」については、米国等において既に一般化していることや今後国内においても当該特許の認定が進むと予想されることから、これら知的所有権等への対応の重要性は増大すると考えております。

 現在のIT分野における技術の進歩やビジネス・アイデアの拡大のスピードは非常に速く、予想が困難であり、また、現在の特許制度のもとでは調査の限界もあるものと考えられます。

 過去もしくは現時点におきましては、当社グループが第三者の知的所有権を侵害したことによる損害賠償等の訴訟が発生している事実はありませんが、今後、当社グループの事業分野で当社の認識していない特許等が成立していた場合、又は新たに成立し第三者の知的所有権を侵害した場合には、損害賠償やロイヤリティの支払い要求、差止請求等により、当社グループの事業に何らかの悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)商標権の管理について

 当社グループは、新たなサービスを開始する際には、サービスの名称等について商標の出願、登録を行うか、又は商標登録には馴染まない一般的な名称を使用する等、第三者の商標権を侵害しないように留意しております。

 過去において提供したサービスの名称の一部においては、第三者が類似商標を登録している等の理由により、商標の登録が承認されていないもの、又は登録未申請のものがありますが、これらについては当社グループとして適切な対応を行っているものと認識しております。

 過去もしくは現時点におきましては、当社グループが第三者の商標権を侵害したことによる損害賠償等の訴訟が発生している事実はありませんが、当社グループの調査内容が十分である保証はなく、当社グループの見解が常に法的に正当であるとは保証できません。万一、当社グループが第三者の商標権等の知的財産権を侵害していると認定され、その結果、損害賠償請求、差止請求などがなされた場合、又は、当該事項により当社の信用力が低下した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、成長を実現するための投資(サービスの開発)及び今後の成長を支える財務基盤の強化に加えて、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして位置付けております。株主の皆様への利益還元の基本方針としては、当該期の業績及びフリー・キャッシュフローの水準を十分に勘案した上で、利益配当の継続的実施並びに配当額の継続的成長の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

2024年3月期の期末配当につきましては、1株当たり5円の配当を実施する予定であります。

当社は、「取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる」旨を定款に定めておりますが、当面の間につきましては、期末配当として年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。なお、当社における剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

1株当たり配当額

2024年6月26日

34,507千円

5円

定時株主総会決議予定

 

当社は、自己株式の取得につきましても、株主の皆様に対する有効な利益還元の一つと考えており、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行を可能にするものと考えております。今後におきましても、株価の動向や財務状況等を考慮しながら適切に対応してまいります。

2024年3月末現在の保有自己株式数は379,299株、発行済株式総数の5.2%となっております。

(配当に関する数値情報)

(連結ベース)

2020年3月期

(実績)

2021年3月期

(実績)

2022年3月期

(実績)

2023年3月期

(実績)

2024年3月期

(予定)

①1株当たり配当額

5円

5円

5円

5円

5円

②配当金総額

34,507千円

34,507千円

34,507千円

34,507千円

34,507千円

③親会社株主に帰属する当期純利益

72,730千円

20,329千円

106,959千円

158,150千円

146,131千円

④1株当たり当期純利益

10円54銭

2円95銭

15円50銭

22円92銭

21円17銭

⑤配当性向(=①/④)

47.4%

169.7%

32.3%

21.8%

23.6%

(注)1株当たり当期純利益は、自己株式を控除した期中平均発行済株式総数により算出しております。