リスク
3【事業等のリスク】
本項では、当社グループ(当社及び連結子会社)の事業展開上のリスク要因となりうる事項を記載しております。なお、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項でも、投資者の投資判断において当社が重要であると考える事項については、積極的に開示しております。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。本項における記載は当社グループの事業又は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありませんので、ご注意ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 事業内容に関するリスクについて
(a)アセットマネジメント事業及び不動産事業の収益構造について
当社子会社であるリシェス・マネジメント株式会社では不動産及び不動産関連金融商品への投資に関するアセットマネジメント業務(投資助言・代理)を行っており、当該事業で得られる主な収益は、受託資産(不動産)に係る管理報酬からなるアセットマネジメント収益と仲介手数料や成功報酬等からなるリアルエステートアドバイザリー収益であります。しかしながら、安定した収益源であるアセットマネジメント契約が解約または終了する場合には、当社グループの業績等に影響を与えることが考えられます。また、当社及びリシェス・マネジメント株式会社の収益の中では、一時的な収益であるリアルエステートアドバイザリー収益及び不動産等の売却収入の占める割合が高いことから、不動産市場の環境悪化等により当該一時的な収益が著しく減少した場合、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(b)ホテル運営事業の収益構造について
当社子会社であるワールド・ブランズ・コレクションホテルズ&リゾーツ株式会社及び株式会社堂島ホテルオペレーションズではホテル運営の受託を行っており、当該事業から得られるホテル運営事業収益が景気動向・経済情勢の変動、感染症の蔓延、競合他社の動向、自然災害・事故等により変動することを通じて、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(c)金融及び不動産市場の情勢、景気動向の影響について
当社グループでは、不動産への投資、外部投資家との共同投資や不動産投資に関連する助言の提供及び不動産の管理等を行っておりますが、景気動向、金融情勢(金利動向を含む)や不動産に係る地価や需給動向等の影響を受けやすい傾向にあります。
国内外の金融・政治等に起因する経済情勢の変化に伴い、景気の悪化や大幅な金利上昇、建設コストの大幅な増加、不動産への投資意欲の低下、不動産価格の下落、空室率の上昇や賃料の下落といったような様々な形で金融及び不動産市況が低迷、開発中の建設コスト及び資金調達コストの増加に伴う追加の資金拠出等により、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(d)外部委託について
当社グループは、情報管理等に使用するサーバー、システムの運用・保守、不動産や会計税務に係る調査や鑑定等について、外部委託しております。このため、当社グループの事業運営においては、これらの外部委託先との連携と適切な取引関係の継続が不可欠であります。何らかの事由により、外部委託先において業務運営に重大なトラブルが発生し長期化したとき、又は外部委託先との取引関係の継続が困難となったとき、当社グループがその代替策をすみやかに実施できない事態となった場合は、当社グループの事業運営及び業績等に影響を与える可能性があります。
(e)外注工事について
当社グループのホテル建設においては、建築工事をゼネコンに外注しております。外注先の建設業界では、現状の人手不足に加えて2024年問題、急激なコスト増といった課題を抱えており、工事請負契約の締結遅れや工期の遅延が懸念されております。当社グループにおきましては、ゼネコン業者との連携を強化し、速やかな契約締結及び徹底した工期・コスト管理に進めてまいりますが、工事請負契約の締結や工期の遅れが発生した場合は、当社グループの資金調達、事業運営及び業績等に影響を与える可能性があります。
(f)競合関係について
アセットマネジメント事業では、金融機関系の投資助言会社、不動産投資顧問会社、不動産投資ファンド、その他不動産や有価証券への投資に関する助言を行う会社等と競合関係にあり、ホテル運営事業では他のホテル運営会社と競合関係にあると認識しております。また、市場への参入者の増加や法的規制が強化された場合は、当社グループの事業運営及び業績等に影響を与える可能性があります。
(g)不動産市場の流動性について
当社グループでは、単独及び外部投資家との共同で不動産への投資を行っておりますが、経済環境や不動産市場が不安定な場合は、不動産の流動性が低下する可能性があり、投資対象の不動産を当社グループの希望する条件で売却できなくなる可能性があります。このような場合、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(h)投資不動産に係るマスターリース契約について
当社グループが共同投資を行っているホテルを用途とする不動産について、当社及び当社子会社は当該ホテルの法的所有者である信託銀行等とマスターリース契約を締結し、一定期間、固定賃料を支払うことを約す一方で、ホテル運営会社との間で賃貸借契約を締結しております。今後、経済環境の変化、感染症の影響及びホテル運営会社の営業の巧拙等によりホテルの稼働が想定を超えて悪化した場合には、賃貸借契約による賃料がマスターリース契約の賃料を下回り収支が逆鞘になることで、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(i)ホテル運営会社及びテナントとの賃貸借契約について
当社グループが共同投資を行っているホテルに係るホテル運営会社(当社グループ外の運営会社に委託した場合)及びテナントとの賃貸借契約の期間満了時に契約が更改される保証はないこと、またホテル運営会社(当社グループ外の運営会社に委託した場合)及びテナントが一定期間前の通知を行うことにより賃貸借期間中であっても賃貸借契約を解約できることとされている場合もあるため、賃貸借契約の解約が増加した場合、後継テナントが見つかるまでの間、賃貸収入が減少する等、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。一方、当社グループが外部の不動産所有者と締結した賃貸借契約又は運営委託契約が解約された場合も、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(j)特定の不動産取引に対する依存度について
当社グループの業績は、特定の不動産取引に対する依存度が高いと考えられます。当連結会計年度におきましても、数件の取引が売上の大部分を占めており、特定の不動産取引の成否が当社グループの業績等に大きな影響を及ぼしております。今後につきましても、同様の状況が続くことが予想されますが、取引件数の増加、ホテル運営事業の売上の増加により、特定の不動産取引に偏らない収益構造の構築に努めてまいります。
(k)不動産の価値の毀損リスク及び瑕疵等に関するリスクについて
当社グループでは、リシェス・マネジメント株式会社がアセットマネジメントを受託している一部の不動産または信託受益権について共同投資を行っているため、当該不動産に地震、戦争、テロ、火災等の災害が発生した場合には、当該不動産の価値が毀損する可能性があり、当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、リシェス・マネジメント株式会社では、当該不動産の取得前に十分なデューディリジェンスを実施しておりますが、当該不動産の取得後に構造計算書偽装や瑕疵等の存在が判明し、顧客である投資家においてこれを治癒するための想定外の費用負担が発生した場合、リシェス・マネジメント株式会社においても費用負担が生じる可能性があるため、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(l)借入金の財務制限条項について
当社グループが取引金融機関と締結しております一部の借入契約には、財務制限条項が付されており、当社グループは事業活動をするうえでこれらを遵守する必要があります。
なお、今後万一財務制限条項に抵触することとなった場合には、借入先金融機関からの請求により、当該借入についての期限の利益を喪失する可能性があり、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(m)M&A、資本提携等について
当社グループは、アセットマネジメント受託残高の拡大や投資対象不動産の多様化に結び付き、また当社グループ間のシナジー効果が認められる場合には、M&Aや資本提携等も事業拡大の有力な手段と位置付けております。M&Aや資本提携を実行する場合には、事前に十分な調査を実施し、各種リスクの低減に努める所存ですが、これらを実施した後に、偶発債務等が発見される等、相手先及び当社グループが期待通りの成果を上げられない可能性があり、この場合には当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(n)連結の範囲決定に関する事項について
当社子会社であるリシェス・マネジメント株式会社がアセットマネジメント契約を締結している特別目的会社の一部は、匿名組合契約を用いたストラクチャーによっており、この匿名組合の営業者の社員持分は一般社団法人が保有する形で倒産隔離を図っております。リシェス・マネジメント株式会社が属する不動産ファンド業界においては、連結の範囲決定に関して、当該ストラクチャーにおけるアセットマネジメント契約等に対する支配力及び影響力の判定について、未だ会計方法が定まっていない状態であると認識しております。当社では、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準委員会企業会計基準第22号)、並びに「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会実務対応報告第20号)にしたがい、現状、特別目的会社ごとに、アセットマネジメント契約や匿名組合契約、その他関連契約等を考慮し、個別に支配力及び影響力の有無を判定した上で、子会社及び関連会社を判定し、連結の範囲を決定しております。今後、新たな会計基準の施行や、実務指針等の公表により、特別目的会社に関する連結範囲の決定方針について、当社が採用している方針と大きく異なるルールが確立された場合には、当社の連結範囲決定方針においても大きな変更が生じ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(o)情報管理について
当社グループの事業運営上、厳正な情報管理が重要であります。当社グループは、個人情報及び取引先との間で守秘義務を負う取引先の情報について、厳格な情報管理を継続的に行う体制の構築・維持に努めております。また、当社グループ各社の営業活動を通して上場会社のインサイダー情報に該当する情報を知り得る機会があることから、インサイダー情報の不適切な伝達や不公正な利用が行われないよう、法令・社規の遵守について役職員への周知・徹底に努めております。また、当社子会社においてもテナントなどの個人情報の取り扱いがあり、その重大性を十分に認識しており適切な方法により保管しております。
しかしながら、管理体制の構築・維持にもかかわらず、これらの情報の流出、不適切な伝達、又は不公正な利用が発生した場合、当社グループに法的責任が及ぶこと、当社グループの信用の低下及びブランド力の劣化等、当社グループの事業運営及び業績等に影響を与える可能性があります。
(p)法的規制について
現在、当社グループの事業を推進する上で、当社子会社であるリシェス・マネジメント株式会社は、宅地建物取引業法、金融商品取引法(第二種金融商品取引業、投資助言業・代理業)、貸金業法等のライセンスを、株式会社ワールド・ブランズ・コレクションホテルズ&リゾーツ株式会社及び堂島ホテルオペレーションズでは旅館業法等のライセンスを有するため、これらの関係法令による法的規制を受けることとなります。現時点の各種規制に従って、また、規制上のリスクを伴って業務を遂行しておりますが、将来において各種規制が変更された場合には、当社グループの事業推進に悪影響を及ぼす可能性があります。
その他、今後、現行法令の解釈の変更や改正並びに新法令の制定等、現時点で法的規制の対象となっていない当社グループの事業が新たに法的規制の対象となる可能性、もしくは今後の当社グループの事業展開において新たな事業分野への進出に伴い法的規制の対象となる可能性があります。そうした場合に、当該規制に対応するための新たな費用等が発生することにより、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
(q)自然災害や感染症の流行について
不動産事業においては、自然災害や感染症の流行に伴う景気低迷により、不動産に対する投資マインドの低下、金融機関の融資の引き締め、当社グループが保有又はマスターリースする物件で多額の賃料減額等が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
ホテル運営事業においては、自然災害や感染症の流行に伴う景気低迷又は移動制限及び移動の自粛等により宿泊客の著しい減少が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループにおいては、感染の予防対策を徹底しておりますが、万が一当社グループの従業員が感染した場合、健康被害や施設の一時的な閉鎖等により営業活動に支障が生じ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(r)訴訟等について
当連結会計年度末において、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性のある訴訟事件等はありません。しかし、当社グループが事業活動を行う上で、取引先または顧客等から何らかの要因により訴訟等を提起された場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(s)会計上の見積りについて
連結財務諸表及び財務諸表の作成において、会計上の見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、見積り金額の変更等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、重要な会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(t)コスト増加について
物価上昇、円安及び実質金利の引き上げにより、物件取得費用、開発コスト及びホテル運営費用等は急激に増加しており、当面は継続して上昇することが見込まれております。コストの増加につきましては、物件の売却価格及び宿泊価格への適切な反映、徹底したコスト管理及び資金調達の多様化によって対応してまいりますが、コストの増加がコスト削減を上回る場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(u)新規事業について
不動産のデジタル証券化による資金調達(STO)やホテル宿泊権のトークン化(NFT)による客室販売の多様化といったブロックチェーンを活用した事業、幹細胞を用いた再生医療を軸とするメディカル事業、ラグジュアリーホテルで取り扱う高級食材や食料品の販売事業等の新規事業に取り組んでおります。事業性の可否については慎重に検討してまいりますが、不確実性も高いため、新規事業の状況によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、検討している新規事業については、関連する法令、会計・税務処理が未整備の部分も多く、今後の法令等の整備状況によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 経営体制に関するリスクについて
(a)業務運営体制の適正性の確保について
当社グループは、当社と連結子会社及び関連会社とともに事業活動を行っております。
グループ内でアセットマネジメント事業、不動産事業及びホテル運営事業を営む上で、徹底した管理体制を維持する必要があると認識しております。しかしながら、今後予測し得ない事態や何らかの理由により、当社グループの業務運営体制及び内部統制が有効に機能しない状況となった場合、当社グループの信用の低下を招き、事業運営、業績及び財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
(b)人材の確保について
アセットマネジメント事業及び全社セグメントは、小規模な組織体制で各業務を遂行しており、役職員一人一人が担う業務の質及び貢献度は相応に高くなっております。現在、一時的な不在・欠員が生じても、業務手順の共有や代行体制等により業務遂行に支障がないよう努めておりますが、何らかの理由により大量の欠員が同時に生じた場合や新型コロナウイルス感染症の罹患等により役職員に就業が困難な事態が生じた場合には、業務遂行に著しい支障を来たす可能性があります。
当社グループの事業上、不動産の投資、投資助言・代理及び媒介及び管理部門に必要なスキルを有する優秀な人材の確保が必要不可欠であります。とりわけ不動産投資に関しては金融取引、不動産取引、税務会計等における高度な知識と経験に基づく競争力のあるサービスを提供していくことが重要であります。また、管理においても、上場会社として、適切かつ十分な財務報告や情報開示を行う体制を構築する必要性があります。現状、当該職種の転職市場は需要過多の状況であり、人材の採用遅れ及び人材流出のリスクは高い状況にあります。当社グループにおきましては、積極的な採用及び賃金の引き上げ等の対応をすすめておりますが、何らかの理由により、急激な人材の流出が生じ、補充が困難となった場合は、当社グループの提供する情報その他のサービスの質の維持、経営管理、財務報告や情報開示の機能に重大な支障が生じる可能性があり、当社グループの事業運営及び業績等に重要な影響を与える可能性があります。
ホテル運営事業においてもホテル業界の人手不足は深刻であります。今後、賃金の上昇による運営コストの増加または人手不足によるホテルの売上の逸失により、当社グループの事業運営及び業績等に重要な影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を最重要課題の一つとして位置付け、『中期経営計画2022』において、配当戦略として「利益水準に応じた安定的な配当の実施」「トータル・シェアホルダーズリターン等の指標の検討」を掲げております。
配当に関しては、長期安定的な経営基盤の確立に必要な内部留保水準、事業環境や業績動向、財務体質、資本効率などを総合的に勘案し決定しております。なお、当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本方針としており、配当の決定機関は、中間配当は定款の定めにより取締役会、期末配当は定時株主総会です。
2024年3月期の業績については、『中期経営計画2024』の最終年度の目標として掲げた計数計画のうち幾つかが未達となりましたが、好調なホテル業界の影響により運営ホテルの業績及びホテル不動産の販売が堅調に推移し、売上高は前連結会計年度を上回りました。一方、運営ホテルの人件費等のコスト及びホテルの開発費用等の上昇を吸収するまでには至らず、利益は減少致しました。しかしながら、当社の持続的成長をご支援いただく多くの株主の皆様のご期待にもお応えすべく、長期安定的な経営基盤の確立に必要な内部留保水準、事業環境や業績動向、財務体質、資本効率などを総合的に勘案し、2024年3月31日を基準日とする期末配当については、前期比増配の1株当たり19円00銭とする事といたしました。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日:2024年6月25日 定時株主総会決議
配当金の総額:362百万円
1株当たり配当額:19円00銭
なお、2025年3月期にかかる配当予想につきましては、予算達成の進捗やキャッシュ・フローの状況等も考慮する必要があるため、現時点では未定とさせていただきます。