2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)競合他社の影響について

 電子書籍販売事業には、特許等による特別な参入障壁が存在していないため、多数の企業が参入しています。

 競合他社が、当社グループに比べて、ユーザーに支持されるサービス提供や効果的な集客施策を実施した場合は、当社グループの収入及び収益が減少するリスクがあります。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 当連結会計年度以前から、競合他社との競争は激化しており、リスクは既に顕在化しています。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 競合他社に比べて、当社グループが運営する電子書籍販売サイトがユーザーに支持されない、または、有効な集客施策を実施することができない場合は、当社グループの収入が減少し、収益も減少します。

③ リスクへの対策

 当社グループは、以下のリスクへの対策を実施しています。

ⅰ.広告宣伝、販売促進の集客施策の積極的な実施

ⅱ.広告宣伝施策において、継続的な効果測定を行うとともに、AIの導入を進め、効果の向上に努める

ⅲ.ユーザーニーズを調査し、ユーザビリティの向上を目的とした、恒常的なサイト改良の実施

ⅳ.コンテンツ検索機能の向上を目的としたAIの導入の促進

ⅴ.既存の電子書籍の販売強化を行うと同時に、デバイス、通信インフラ環境の発展・普及に合わせて、ユーザーにとって魅力的な次世代コンテンツの開発

ⅵ.国内市場だけでなく、海外市場への積極的な進出

④ リスクの重要性・水準の変化

 参入障壁が存在しない電子書籍市場では、2010年の電子書籍元年以前から、競合他社との激しい競争が続いています。そのため、リスクの重要性・水準は、当連結会計年度末現在においても大きな変化はありません。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 当社グループの経営方針・経営戦略は、当該リスクを踏まえて決定されています。また、経営戦略と整合したリスク対策が実施されています。

 

(2)海賊版サイトについて

 電子書籍は、電子データであるため、違法配信リスクが存在しています。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 リスクが顕在化する可能性や時期については、予測することが困難です。国内外を含めて海賊版対策の強化を図ることで、将来的にはリスクが低下する可能性があります。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 リスクが顕在化した場合の影響を想定することは困難です。過去に影響があった「漫画村」による電子書籍業界に与えた被害額は3,200億円(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構による試算)と推定されています。

③ リスクへの対策

 海賊版サイトをはじめとしたさまざまな電子書籍事業に関する問題に対応するため、読者への正規版購入と著者への収益還流を推進することを目的とし、電子書店5社(株式会社アムタス、株式会社イーブックイニシアティブジャパン、エヌ・ティ・ティ・ソルマーレ株式会社、株式会社パピレス、株式会社ビーグリー)が発起人となり、「日本電子書店連合」を発足し、運営しています。

 「日本電子書店連合」は、正規の電子書店の公認マーク(「ABJマーク」)の策定や海賊版対策及びSTOP!海賊版の啓発活動等を行っている、一般社団法人ABJに協力しています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 リスクの重要性・水準は、電子書籍の市場規模に比例して大きくなっていると判断しています。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 経営方針・経営戦略と直接的な関連性はありませんが、その前提である電子書籍市場の健全な発展に悪影響を与えるリスクとして認識しています。

 

(3)システム障害について

 当社グループが行っている電子書籍事業を営むためには、コンピューターネットワークシステムの構築及び運用が不可欠なものとなっています。

 当社グループが構築・運用しているコンピューターネットワークシステムに障害が発生した場合は、障害の規模に応じて当社グループの収入及び収益が減少するリスクがあります。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 リスクの顕在化を防止するため、当社グループで予測可能なリスクについて、対応策を実施しています。

 ただし、予測不可能な、ハードウェアの不具合、通信回線の障害、新たなコンピューターウィルスのほか、自然災害、火災、停電等によるリスクが顕在化する可能性の程度や時期を推定することは非常に困難です。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 リスクが顕在化した場合の影響を推定することは困難です。システム障害の規模に応じて、当社グループの事業運営が阻害されるため、収入及び収益が減少します。

③ リスクへの対策

 当社グループ内に、コンピュータネットワークシステムの構築及び運用の専門部署を設けて、障害発生の抑止に努めています。

 社外データセンターへのサーバ分割設置、無停電電源装置の導入、回線の二重化等の冗長化を継続的に実施し、不慮の事故を想定したシステム対策を行っています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 コンピュータネットワークシステムに障害が発生した場合は、その程度によっては当社グループの営業活動が停止する可能性があり、リスクの重要性は高いものとなっています。

 当該リスクの水準については、コンピュータネットワークシステムの冗長化を強化し、低減に努めています。

 

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 コンピュータネットワークシステムの構築及び運用は、当社グループの経営方針の達成及び経営戦略の実行のための前提要件となっています。

 

(4)著作権利用料について

 当社グループは、掲載コンテンツに関して、出版社等と著作権利用契約を締結し、著作権利用料を支払っています。

 著作権利用料は、契約によって支払料率が決定されていますが、契約支払料率が変動した場合や契約の更新に支障をきたす何らかの事情が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 当社グループは、電子書籍販売事業を長年営んでおり、出版社等のコンテンツホルダーと長年直接取引を行ってきました。

 電子書籍業界の発展を第一に考え、電子書籍書店と出版社等のコンテンツホルダーの双方にメリットがある著作権利用契約を締結して、協力して事業を行っています。

 ただし、一部の大手出版社とは、紙書籍事業との兼ね合い等の外的要因もあり、厳しい契約交渉を続けています。

 一部の大手出版社との間の著作権利用契約については、支払料率の上昇や契約が継続できない事態が発生する可能性があります。

 当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期を予測することは困難です。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 著作権利用に対する支払料率が上昇した場合は、売上原価の売上高比率が上昇し、収益が減少します。

 著作権利用契約が継続できない場合は、収入は減少しますが、収益は増加する可能性があります。

③ リスクへの対策

 出版社等コンテンツホルダーと、電子書籍業界の発展のために、協力して事業を行うことで、良好な関係の構築に努めています。

 同時に、既存の紙書籍を電子化するのではなく、当社グループで、デジタルボーンコンテンツを制作する体制を強化しています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 出版社等のコンテンツホルダーとの著作権利用契約は、当社グループの事業にとって重要です。

 ただし、当社グループは、多くの出版社等のコンテンツホルダーと直接取引を行っており、一部取引先との間でリスクが顕在化した場合でも、経営に与える影響は限定的なものであると判断しています。

 当該リスクの水準については、出版社等のコンテンツホルダーの電子書籍事業に対する依存度の上昇に伴い低下する可能性があります。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 経営方針及び経営戦略のデジタルコンテンツのアグリゲーションと、特に密接な関連性があります。

 また、リスクへの対策は、オリジナルコンテンツの制作体制の構築及び、次世代コンテンツの開発と関連しています。

 

(5)広告宣伝費について

 当社グループが営むイーコマース事業にとって、広告宣伝費は、集客を図り、売上高を増加させるための重要な費用です。

 広告宣伝費の費用対効果は、当社グループの収入及び収益に大きな影響を与えます。

① リスクが顕在化する可能性の程度や時期

 広告宣伝費の支出に関しては、広告効果を継続的に検証し、最適な広告宣伝を実施するように努めていますが、広告戦略が想定した効果をあげることが出来ないリスクがあります。

 当社グループの広告戦略の費用対効果が低下するリスクが顕在化する可能性の程度や時期については、広告施策を、当社グループの最重要施策として位置づけ、十分な効果検証を行い、その顕在化を防ぐことに努めています。

② リスクが顕在化した場合に経営に与える影響

 費用対効果が低下した場合は、当社グループの収入及び収益が減少します。その影響は、費用対効果の低下に比例します。

③ リスクへの対策

 広告効果について、その分析を広告代理店に任せるのではなく、当社グループにおいてデータを収集し、継続的に効果分析を実施しています。

 広告施策は、社会情勢の変化等及び広告技術の進化により、常に最適な施策が変化するため、広告戦略に則して、様々な広告施策をトライアンドエラーで試験的に実施し、その効果検証を行ってきました。

 過去からの効果検証データの積み上げによって獲得した、広告施策に関するノウハウに基づき、広告戦略を立案し、実施することで、最適な広告施策が行える体制を構築しています。

④ リスクの重要性・水準の変化

 当社グループが営むイーコマース事業にとって、広告宣伝費は、事業の発展と継続に欠くことが出来ない費用です。

 その費用対効果は、収入及び収益に直接的な影響を与えるため、リスクの重要性は非常に高いものとなっています。

 リスクの水準は、基本的には変化はありませんが、事業規模の拡大に伴い、広告宣伝に依拠しないユーザーからの収入が積み上がるため、収入及び収益に与える影響は低減します。

⑤ 経営方針・経営戦略等との関連性

 経営方針及び経営戦略のデジタルコンテンツのディストリビューションと、特に密接な関連性があります。

 国内におけるデジタルコンテンツの販売高についての戦略及び国外でのグローバルなデジタルコンテンツ販売プラットフォームの発展についての戦略の達成に、重要な関連性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、期末配当の年1回の剰余金の配当を、継続して実施していくことを基本方針としています。

 剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。

 当事業年度の配当については、上記方針に基づき当期は1株当たり10円の配当を実施することを決定しました。

 内部留保資金については、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、今まで以上にコスト競争力を高め、市場ニーズに応えるコンテンツ開発・制作体制を強化し、さらには、海外展開を図るために有効投資していきたいと考えています。

 当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めています。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年6月26日

99

10

定時株主総会決議