リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクを洗い出し、それらについて、経営者の目線から事業計画への影響度と発生可能性を考慮した上でリスク評価を行った結果を列記しております。また、リスクの洗い出しに際して、以下の定義のとおり、リスクを「戦略リスク」と「オペレーションリスク」に分類しております。
(リスク区分)
戦略リスク |
事業戦略の策定及び遂行により獲得を企図する成果が予定通り獲得できない程度及びその発生可能性であり、健全な範囲で事業成果を獲得するために敢えて選択して取るリスク |
オペレーションリスク |
戦略遂行を支えるオペレーション上の事象による損失額及び事象発生可能性であり、事業遂行上一定以下に抑制すべきリスク |
(リスクテーブル)
リスク区分 |
リスクの種類 |
|
戦略リスク |
環境横断的リスク |
(1)景気変動の影響 |
(2)為替リスク |
||
(3)地政学的リスク |
||
(4)自然災害、事故等による影響 |
||
事業特有のリスク |
(5)商品の需給動向の変動 |
|
(6)主要仕入先(メーカ)への高依存 |
||
(7)主要販売先への高依存 |
||
オペレーションリスク |
(8)資金調達 |
|
(9)借入金及び支払承諾の財務制限条項 |
||
(10)顧客情報管理 |
||
(11)棚卸資産廃棄及び棚卸資産評価の影響 |
||
(12)売掛債権回収リスク |
当社グループは、これらリスクの発生の可能性及び影響度を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて検討した上で行われる必要があると考えております。また、以下の記載は、当社株式への投資に関連するリスクを全て網羅するものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)景気変動の影響
当社グループの取扱商品は、半導体製品、ディスプレイ、システム製品及びバッテリ&電力機器等であり、顧客は、日本(日系)のセットメーカ向けが中心となり、その製品の一部として組み込まれております。したがって、景気の変動が、顧客の属する市場の需給動向に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしましては、既存の顧客への供給責任を果たす一方、成長性の高い市場への販路の拡大や付加価値の高い商品の拡販に努めております。足元では世界的な景気後退懸念もあり、当社グループの施策のみで当該リスクを完全に回避できるものではありません。よって、景気の変動による市場及び顧客の需要の変化により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
(2)為替リスク
当社グループは外貨建販売比率が高く(2023年3月期73.4%、2024年3月期65.0%)、その主な決済通貨は米ドルであります。当社グループの経営成績は、為替相場の動向により売上高及び利益が変動し易い構造にある上、決算処理に係る外貨建資産、外貨建負債及び連結子会社の円換算額の評価等からも影響を受ける可能性があります。また、買掛債務の支払いサイトに比べ、売掛債権回収サイトが長く、売掛債権高が買掛債務高を上回る傾向があるため、外貨建借入金にて外貨建債権債務のバランス化を図る等により、為替相場の変動の影響を避け、抑制するように努めております。しかしながら想定以上に為替相場が変動した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「中」程度であると認識しております。
当社グループの外貨建て売掛債権・買掛債務の金額及び割合 |
前連結会計年度 (2023年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年3月31日) |
売掛債権金額(千円)(A) |
6,351,695 |
7,131,784 |
内外貨建て売掛債権(千円)(B) |
5,375,980 |
6,093,077 |
外貨建て比率(%)(B/A) |
84.6 |
85.4 |
買掛債務金額(千円)(C) |
2,364,026 |
2,827,113 |
内外貨建て買掛債務(千円)(D) |
1,354,791 |
1,813,751 |
外貨建て比率(%)(D/C) |
57.3 |
64.2 |
(3)地政学的リスク
当社グループは、主要販売先である日本(日系)のセットメーカ等の海外生産拠点の事業活動をサポートすることを主な目的として、日本のみならず、アジアを中心とした海外でも事業活動を展開しております。また、当社グループの仕入先の大部分は海外のメーカであります。引続き、積極的に世界の優れた製品の拡販に努め、収益の拡大を図ってまいりますが、以下の要因により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
① テロ及び戦争等。
② 各国または当事国間における政治的、社会的、経済的状況の変化。
③ 各国における法律・輸出入規制・税制等に関する法的規制の改変、並びに商慣習及び労使関係の変化。
④ 上記①から③、またはそれら以外の予見できない地政学的要因により、サプライチェーンが寸断され商品の供給が停滞した場合。
当社グループの事業を遂行するうえで、当該リスクも当社グループの施策のみで完全に回避できるものではありませんが、「(6) 主要仕入先(メーカ)への高依存」の項目に記載の施策をとりつつ、これらの影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
(4)自然災害、事故等による影響
地震や津波、台風等の自然災害、感染症の蔓延、事故、火災等により人的・物的な被害が生じた場合、あるいはそれらの自然災害及び事故等に起因する電力・ガス・水道・交通網の遮断等により、正常な事業活動が阻害された場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
あわせて、取引先の生産機能、物流機能が著しく低下し、それに伴い、需要及び供給が停滞する可能性があります。
また、当社グループが部品、資材等の供給が可能であっても、他の必要部品や資材が調達できず取引先が生産を見合わせる事態も想定され、これらの状況によっては、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
最後に、当社グループの事業活動におきまして、コンピュータシステム及びそのネットワークを活用しており、そのためセキュリティの強化やデータのバックアップ体制の構築、ハードウエアの増強等、システムトラブル対策を講じていますが、これらの対策にも関わらず、自然災害、事故等によりシステムトラブルが発生した場合には当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「中」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
(5)商品の需給動向の変動
当社グループの主な取扱商品である半導体製品は、メモリ及びメモリモジュール等の汎用品が主体でありますが、これらは技術革新が早いため、次世代製品への世代交代時期に需要と供給のバランスが崩れ、半導体市場特有の循環的な市況変動により、これまでも深刻な低迷期を繰り返してきた経緯があります。また、当連結会計年度は、メモリやディスプレイ市況の悪化のため汎用品ボリュームビジネスが減少しました。今後、市況の好転が遅れ、商品価格が下落した場合や、供給数量の減少が長期化した場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業を遂行するうえで、当該リスクも完全に回避できるものではありませんが、これらの影響を最小限に抑えるよう、以下のとおり努めてまいります。
① 半導体製品においては、SоCをはじめとするASIC、CPU、通信用半導体、メモリモジュール及びSSD等の高付加価値商品の拡販。
② 販売先及び仕入先との関係を密にし、生産計画等の情報の取得による精度向上に注力するとともに、汎用品の適切な受発注管理を行う。
③ 半導体製品以外に、ディスプレイ、システム製品、バッテリ&電力機器等、他の品目分野の商品の拡販を実施し、全体最適化を図る。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
(6)主要仕入先(メーカ)への高依存
当社グループの取扱商品は、半導体製品、ディスプレイ、システム製品及びバッテリ&電力機器等であり、当社グループの主要販売先の厳密な納入基準を満たすため、一部の主要仕入先(メーカ)に高く依存しております。
当社グループとしましては、主要仕入先(メーカ)との良好な関係の維持に努めておりますが、それらの経営方針の変更等の要因で、代理店政策の見直しが行われた場合、代理店契約の解除または変更のおそれがあります。代理店契約の解除に際しては、当社グループに現在割り当てられている商権の喪失のおそれがあり、代理店契約の変更に際しては、一部商権の喪失、または仕入にかかるマージン率が引き下げられるおそれがあります。これらの場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、代理店政策の見直し以外にも、主要仕入先(メーカ)の市場における競争力が著しく低下した場合等にも、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしましては、当該リスクは、「(3) 地政学的リスク」と関連性を有することを認識し、主要仕入先(メーカ)の取扱商品の維持拡大のみならず、世界的視点で仕入先(メーカ)の新規開拓により、高付加価値商品をシステムソリューションとして顧客に提供することで、取扱商品の多角化を図り、主要仕入先(メーカ)に対する過度の偏重を抑制し、これらの影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
当社グループの連結仕入高に占める主要仕入先(メーカ)の仕入高割合(上位3社)
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
割合(%) |
割合(%) |
61.2 |
49.5 |
(7)主要販売先への高依存
当社グループの販売先は、主に日本(日系)の大手セットメーカであります。何らかの理由により主要販売先が経営戦略を変更した場合、主要販売先からの販売価格の値引き要請を適時適切に仕入価格に転嫁できなかった場合、さらには、主要販売先の最終製品の販売動向により、生産計画の変更・延期・取消等が発生した場合、もしくは主要販売先が自社生産から外部委託生産へ生産方式を転換した場合等には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしましては、主要販売先と緊密な関係を維持し、長期安定取引の継続に努めるとともに、成長性の高い市場への販路の拡大や付加価値の高い商品の発掘・拡販により、これらの影響を最小限に抑えるよう努めてまいります。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
当社グループの連結売上高に占める主要販売先の売上高割合(上位3グループ企業)
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
割合(%) |
割合(%) |
35.9 |
33.8 |
(8)資金調達
当社グループは、買掛債務の支払いサイトに比較して売掛債権回収サイトが長く、売掛債権高が買掛債務高を上回る傾向があるため、売上高が増加する局面等においては、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスになり易い財務体質にあり、その場合には相応の増加運転資金が必要となります。不足する運転資金は金融機関からの借入金等により調達しております。2023年3月期におきましては、内部留保金額の増加と売掛債権の減少等により営業キャッシュ・フローがプラスとなり、現預金も充当して借入金を返済した結果、有利子負債は大幅に減少いたしました。2024年3月期におきましては、売掛債権は増加しましたが、運転資金を確保するため借入金を増やした結果、現預金も増加しております。当社グループは、今後とも自己資本の充実を図るとともに、引続き金融機関との良好な関係の構築に努めてまいりますが、資金調達環境が悪化した場合、もしくは金利水準が大幅に変動した場合等には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「中」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
|
前連結会計年度 (2023年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年3月31日) |
有利子負債残高(千円)(A)(注) |
6,354,955 |
8,090,139 |
内長期(a) |
858,864 |
290,343 |
総資産額(千円)(B) |
16,856,890 |
18,579,091 |
有利子負債依存度(%)(A/B) |
37.7 |
43.5 |
長期有利子負債比率(%)(a/A) |
13.5 |
3.6 |
(注)有利子負債=コマーシャルペーパー+短期借入金+1年内返済予定の長期借入金+1年内償還予定の社債+長期借入金+社債
(9)借入金及び支払承諾の財務制限条項
当社グループの借入金の一部には、財務制限条項が付されており、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)※2 財務制限条項」の条項のいずれかに抵触した場合、期限の利益を喪失し、該当する借入先に対して借入金を一括して返済することになっております。その場合、当社グループの資金繰りに支障をきたし、運転資金の不足により売上高の伸長が阻害され、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「低」程度、影響度は「高」程度であると認識しております。
(10)顧客情報管理
当社グループは、顧客ニーズを的確に把握するために、仕入先及び販売先の製品開発及び生産計画等の重要情報を早期に入手し得る立場にあります。当社グループは、これら取引先との間において守秘義務を盛り込んだ契約を締結し、重要情報の取り扱いに際しては当社グループのコンプライアンス関連規程・マニュアル等に則り厳格に運用し、当社グループ内部からの情報漏洩を未然に防ぐ措置を講じております。
これらの取組みにより、前連結会計年度及び当連結会計年度において重要な情報セキュリティ事故は発生しておりませんが、不測の事態により当社グループから情報漏洩が発生した場合には、当社グループが刑事責任や損害賠償責任を負うおそれがあるほか、信用低下等による間接的損害により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「低」程度、影響度は「中」程度であると認識しております。
(11)棚卸資産廃棄及び棚卸資産評価の影響
当社グループは、顧客からの所要数量、納期などの要求に適切に対応し、顧客に対する供給責任を果たすために必要な棚卸資産を確保しております。しかしながら市場の変動等に伴い、顧客の所要数量に変動が生じた場合は、廃棄、または資産価値評価の見直しを必要とする等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業を遂行するうえで、当該リスクも完全に回避できるものではなく、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性がありますが、これらの影響を最小限に抑えるよう、顧客の所要数量及び受注状況や取扱商品が搭載される製品の需要動向を考慮し、仕入先への発注数を調整する等、棚卸資産の適正管理に努めてまいります。
当該リスクの発生可能性は「高」程度、影響度は「中」程度であると認識しております。
(12)売掛債権回収リスク
当社グループでは、与信管理規程に則り取引先別に与信限度額を設定し、信用状態の継続的な把握をすることにより不良債権の発生防止に努めております。また、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率による計算額を、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。しかしながら、事業環境の急激な変化等により取引先の財政状態が悪化し、支払遅延や売掛債権等の回収が行えない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの発生可能性は「中」程度、影響度は「中」程度であると認識しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営政策のひとつとして位置づけ、財政状態や経営環境等を総合的に勘案し、必要な内部留保を確保しつつ、配当を実施していくことを基本方針としております。
当社は、期末配当として年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。期末配当の決定機関は、株主総会であります。なお、株主への機動的な利益還元を可能とするため、会社法第454条第5項の規定により、取締役会の決議によって毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる旨定款に定めております。
当期の配当としましては、1株当たり60円00銭の配当を実施することを決定しております。この結果、当期の連結配当性向は、40.5%となります。
内部留保資金につきましては、商社としての金融機能を果たすための資金として、事業規模の拡大に伴い増加する運転資金に充当し、事業成長のために有効活用してまいります。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(千円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年6月25日 |
119,133 |
60 |
定時株主総会決議 |