2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループは、経営戦略、経営環境の変化に対するリスクを始め、日々の事業活動において想定される様々なリスクの正しい認識・評価とリスク低減のため、各リスクに対応する委員会を定期的に開催するなどリスク管理体制の強化・充実に努めております。なお、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ビジネスチャンスの「選択と集中」について

 当社グループは、時代の要求を敏感に捉え、未来を見据えた技術開発力の基盤を強化し、新市場の開拓と共に、事業領域及び製品群の選択と集中を積極的に進め、時代の流れに対応する経営を目指しております。

 特に当社の得意とする界面コントロール技術及び機能性素材の製造、販売を日本を含めグローバルに展開することで成長を図る戦略を推進しております。事業領域の縮小リスクにつきましては、事業部間の相互連携と販売地域の拡大及び深耕により回避する戦略を実施しております。

 

(2)競合等による収益の圧迫について

 緑茶抽出物、機能性アミノ酸のテアニン、水溶性食物繊維、鉄補給製剤など機能性素材は、飲料・健康食品などへの利用拡大が進み、また、海外においてもアメリカのサプリメント市場などで評価され、順調な成長を示しております。しかしながら成長分野である機能性素材については、大手資本による参入も予測され、そのため関係各社との生産、販売の協業をグローバルに展開し、競争優位を保つ施策を講じております。

 

(3)原料変動のリスクについて

 当社製品の原料は、天然産物の占める割合が高く、また、世界各国より原料を調達している為、天候・商品相場・地域情勢に影響を受ける可能性があります。当社グループでは、生産者との直接契約による購買、購買地域の分散、複数社購買などリスク分散を考慮した購買システムの構築を行っております。しかしながら、広範な地域の天候不順や地域紛争などにより、生産地が壊滅的な被害を被った場合、原料調達に支障をきたしたり、原料価格高騰の可能性があります。

 

(4)情報管理について

 情報システムに関するリスク低減を目的として、IT委員会を設置し、情報の消失、情報の漏洩、通信回線障害、システム障害、コンピューターウィルスによる障害等への対策を全社的に進めております。

 現時点において下記の仕組みを構築しております。

① 通信回線障害に対する回線の二重化

② 情報の消失、システム障害対策としてデータの日々のバックアップと保管及び重要データの遠隔地へのバックアップ

③ 外部からの攻撃を防ぐ対策としてファイアーウォールの設置

④ 外部、内部からのコンピューターウィルス侵入対策としてウィルス対策ソフトの導入

⑤ 「社内ネットワーク及び情報管理規程」の制定、及び情報管理に関する従業員教育の徹底

 

(5)品質保証について

 当社製品の品質に問題が発生して製品回収や廃棄が必要になる可能性があります。また、当社製品を利用されたお客様で商品回収や廃棄が必要になりその損害賠償を受ける可能性があります。これらの品質リスクを排除するため、太陽化学グループにおける品質保証体制は以下の図の通りとなっております。原材料仕入れから顧客への製品納入にいたるサプライチェーン全体に対する品質保証を実現するために、各事業部の研究開発部門には設計品質担当を、生産部門には品質管理担当を配置し、安全安心な製品作りの体制を構築しております。又、品質保証部は事業部やその他関係部門の活動を品質保証の視点でサポートし、品質に関するマネジメントを行なっております。

 

 

(6)特許について

 他社の当社事業に影響する関係特許につきましては、定期的調査を行い担当研究員が調査結果に基づき検討しております。当社事業に影響する関係特許が発見された場合、担当研究員は事業部長に報告するとともに、知財担当部署と対応を協議し、必要に応じて顧問弁理士又は弁護士と連携して適切な対応ができる体制を構築しております。

 また、職務発明に関する発明者に対する報奨金制度につきましては、発明者に対し出願報奨、登録報奨を支給しております。また、特許権の実施により一定の利益を得た時には、知的財産権管理規程に準じて発明者に対して実施報奨金を支給しております。因みに、2024年3月期における公開特許は12件、登録特許は10件となっております。

 なお、第三者の特許等に抵触する場合、当社グループの事業継続ができなくなるリスクがあります。

 

(7)債権管理について

 当社の直接の販売先は約1,300社に渉り、販売金額も小口分散化しております。また、回収サイトの長い販売先もあることから債権管理に注力し、信用状態を継続的に把握し、与信設定や限度額設定を行うなど不良債権の発生を極力抑えるよう努めております。

 貸倒引当金の計上に関しては、一般債権については貸倒実績率により、また、貸倒懸念債権等特定の債権については、民間信用調査機関の評点により個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額を計上しております。

 昨今の経済情勢によっては不測の事態が生じる可能性は否定できませんが、2024年3月期においては、破産、倒産等による貸倒債権額は発生しておりません。

 

(8)自然災害等のリスクについて

 地震等の自然災害によって、当社グループの拠点等が損害を受ける可能性があります。当社グループは、災害対策として、工場設備・建物の耐震対策、危機管理マニュアルの作成、緊急連絡網の作成、国内事業所間でのデータの相互バックアップ体制などの対応を行っております。

 しかしながら、幹線道路や原料供給先などが壊滅的な損害を被った場合、納期の遅延が発生することがあり、お客さまへ提供するサービスの低下、さらに拠点等の修復又は代替原料の検討のために費用を要することとなる可能性があります。

 災害リスクの転嫁としては、相当額の地震保険並びに火災保険に加入しておりますが、保険でカバーできない大規模災害によるリスクが発生する可能性があります。

 加えて、新型コロナウイルスなどの感染症の拡大により、供給先、納入先、当社グループの工場などのサプライチェーンに影響が生じた場合や、当社グループの従業員に影響が生じた場合にも、同様の影響が生じる可能性があります。

 

(9)リスク管理に係わる委員会等の現状

① リスク管理委員会

 会社が事業を継続するにあたり、想定される事業リスクの抽出を行うとともに基本方針の策定を行うこととしております。また、事業リスクを事前に予測することにより、その発生を可能な限り回避するとともに、仮に事象が生じた場合でも、迅速に対応・処理をすることで、会社への被害や損害を最小限に抑えることを目論んでおります。そのため、下部組織として個別の委員会を設置し、統括的に管理をすることとしております。(主管部署はコーポレート本部)

 

② SQFマネジメント委員会

 品質リスク防止に関する会議体として、SQFマネジメント委員会を設置しております。SQFマネジメント委員会では、世界的な食品安全管理標準規格であるGFSI認証スキーム(国内工場:SQF、海外工場:FSSC22000)に基づく品質マネジメント活動をレビューし、活動を活性化することを目的として実施しております。

(主管部署は品質保証部)

 

③ 中央安全衛生委員会

 労働災害の防止や安全衛生に取り組んでおります。毎月開催する委員会活動を通じて、関係法令への対応、労働安全衛生に関する各部署からの報告に基づいた指導を行っております。(主管部署はコーポレート本部)

 

④ IT委員会

 ITに関するハード/ソフト面におけるリスクの低減に取り組んでおります。各部署のIT委員を中心に、セキュリティ管理の充実、システム信頼性の向上を図っております。(主管部署はコーポレート本部)

 

⑤ コンプライアンス委員会

 法令遵守、社内規則遵守、行動規範遵守に関するリスクについて、全社的なコンプライアンス体制の推進を図るために、「従業員行動規範」を掲示して周知に努めるとともに、従業員が個人的にコンプライアンスに関する相談ができるシステムとして内部通報制度を設けております。(主管部署はコーポレート本部)

 

⑥ 環境管理委員会

 当社環境マネジメントシステムの運用管理を中心に、温室効果ガス及び廃棄物削減の推進、関係法令遵守のための課題解決に向けての協議の場としております。(主管部署はコーポレート本部)

 

 これらの他にも、環境関連、労務関連等に関し訴訟を提起される可能性、不祥事を巡るトラブルなど潜在的リスクが存在します。また、事業のグローバル化に伴う通貨リスク、異文化理解度によるリスク、政治的混乱、暴動、テロなどリスクは多岐にわたり、完全に把握することは不可能であり、ここに記載されたリスクが全てのものではありません。当社グループとしましては、さまざまな事業等リスクを認識し適切な対応策を構築しておくことが企業価値を損なわず経営目標を達成させるために必要な手段であり、全社のリスクを統括的に管理することを目的にリスク管理委員会において、予防対策の強化に努めてまいります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主への利益還元を経営の最も重要な課題のひとつに位置付けております。利益配分は、安定的な基準配当年間20円に業績に応じた利益還元分を加え、配当性向30%を目処として継続的に行うこと、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な将来に備えた内部留保の充実を図ることを基本方針としております。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

 これらの剰余金の配当の決定機関は取締役会であります。

 当社は「会社法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議をもって剰余金の配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 当事業年度の剰余金の配当につきましては、上記の方針に基づき1株当たり55円(中間配当10円、期末配当45円)の配当を実施することを決定いたしました。

 内部留保した資金の使途については、長期的な視点に立って、グローバルに事業を拡大するための設備投資、競争力のある製品を開発するための研究投資などの資金需要に備えます。

 当社は「会社法第454条第5項の規定に基づき中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 なお、当該事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年11月6日

取締役会決議

169

10

2024年5月7日

取締役会決議

763

45