2024年2月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 感染症の拡大(顕在化の可能性:小、時期:特定時期なし、影響度:大)

① 主なリスクの内容

・感染拡大防止のため、営業店舗の休業等を含めた営業制限

・当社グループ及び取引先企業の従業員等の感染

・取引先メーカーからの仕入商品の入荷遅延、海外生産工場の操業停止、物流遅延

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの各社は、小売事業として多店舗展開を行っております。既存の感染症については、ワクチン、予防薬や治療薬の開発や普及により、感染拡大による営業制限のリスクは小さくなっておりますが、新たな感染症が発出し感染拡大により緊急事態宣言が発表される状況となった場合、売上高の著しい減少が想定されます。まず、世界的に感染拡大となった場合、インバウンド需要が見込めなくなります。2020年2月期決算における国内のインバウンド需要は、国内売上のおよそ1割程でした。店舗が一定期間一斉休業した場合を除き、特に大都市圏での移動制限や外出自粛により消費が1割から2割程減退すると予想します。特に、東京を含めた関東圏は全店舗の4割を占めるため、これらが一斉休業となった場合、国内売上高の過半に影響を与えると想定されます。海外については、連結売上高のおよそ2割を占める韓国において、ソウル特別市内及び京畿道において都市封鎖(ロックダウン)が生じた場合、過半の店舗で営業が困難な状況に陥ることから売上高の著しい減少が想定されます。利益については、国内外ともに、減収に応じて経費のうち人件費や地代家賃などの固定費に当たる部分が負担増となり減益の可能性があります。米国については、製造業であるため、サプライチェーンの混乱によるコンテナ不足や輸送費の上昇など仕入原価の増加が想定されます。

当社グループは、延べ人数で1万人を超える雇用をしております。感染症に限らず、これら不可抗力な事象の発生により、長期的に店舗運営が困難な状況となった場合、雇用の維持ができなくなる可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、感染状況に応じて感染防止策(マスク・消毒・密を避ける)を実行に移すとともに、オンライン販売の強化、関東以外の地域への出店強化、都心部のみならず生活圏への出店拡充などを行うで売上減少のリスクを軽減してまいります。

 

(2) 大規模災害等(顕在化の可能性:中、時期:特定時期なし、影響度:大)

① 主なリスクの内容

・大地震や台風・豪雨などの自然災害

・火災、停電

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの国内店舗は、全国各都道府県に1,000店舗以上あり、海外については、韓国に300店舗以上、台湾に60店舗以上あります。各社は、商品等を保管する倉庫を所有しております。また日本及び米国においては工場を所有しております。大規模な自然災害等により店舗・倉庫・工場が被災した場合、固定資産や商品等に損害が発生する可能性があります。日本における本社機能は東京、韓国においてはソウル特別市、台湾においては台北エリア(新北市)、ベトナムにおいてはホーチミン市、米国においてはオレゴン州にあります。自然災害等、不可抗力な事象の発生により本社機能が麻痺した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。中長期的には首都圏直下型地震や南海トラフ地震が予測されており、相当程度のリスクがあります。具体的な発生時期や影響の程度は不明です。

当社グループの主な取り組みといたしましては、予防的な措置として基幹業務を中心にクラウド運用を強化すること、事後対応としてSNS等を活用した緊急連絡網の整備、大型店にサテライトオフィスを設置するなど本社機能の一部分散等の対応をしてまいります。

 

(3) 海外情勢(顕在化の可能性:中、時期:短期・中長期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・政治・経済情勢の変動

・テロ・紛争等による治安状態の悪化や社会的な混乱

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの売上高のうちおよそ3割が海外売上高であり、そのうち韓国で2割を占めます。韓国においては、ソウル特別市内及び京畿道にドミナント出店しており、全体の過半の売上を占めております。新型コロナウイルス感染症の流行以外にも、過去においてSARSやMARSといった感染症の流行、日本製品の不買運動等により業績が悪化することがありましたが、政治・経済情勢の変動等により同様のことが起こる可能性があります。

当社グループの国内事業は売上の2割強を自社ブランドで占めておりますが、これらの商品は海外の委託工場で生産し、日本に輸入しております。主な生産地域は、東南アジア(約5割)、中国(約5割)であります。過去にミャンマーのクーデターや感染症によるベトナムのロックダウンなど、少なからず影響がありましたが、これらの地域において政治・経済情勢が著しく悪化した場合、商品供給が滞る可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、海外拠点を増やすこと、海外の他地域への進出を検討しております。海外生産においては生産国を分散することでリスク回避を行っております。

 

(4) 為替相場の変動(顕在化の可能性:大、時期:短期・中長期、影響度:中)

海外セグメントは、韓国、台湾、米国、ベトナムで構成されております。それぞれの現地通貨に対し円高になった場合、売上や利益が減少します。在外子会社の資産、負債は、当該子会社の決算日の直物為替相場により円貨に換算し、収益及び費用は、期中平均為替相場により円貨に換算しております。当社グループの売上のおよそ3割が海外売上のため、決算期末日時点の為替相場が大きく変動した場合、財務諸表に影響を与える可能性があります。

当社グループの国内売上の2割強が自社企画商品であり、その9割を海外から輸入しております。これら輸入商品の大半が米ドル決済であり、年間1.5億から2億ドル程の外貨需要があります。米ドルが1円円安になった場合、仕入原価が1.5億円から2億円増加します。輸入為替につきましては、仕入コストの安定化を図ることを目的として為替予約等を締結する場合がありますが、為替相場が大きく変動した場合、売上総利益に影響を与える可能性があります。なお、現在、為替予約の締結は行っておりません。

 

(5) サプライチェーン問題(顕在化の可能性:中、時期:短期・中長期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

 ・環境負荷や人権に関わる問題

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループは、当社及び国内外の子会社において海外の生産委託工場で靴を中心とした商品の製造と輸入を行っております。生産国において環境負荷や労働安全衛生上の問題、また人権に関わる問題が発生した場合、環境保護団体や人権保護団体等から事業活動の停止や中止の勧告、汚染除去・浄化費用の支出、被害・損害の補償、訴訟や損害賠償等の負担が発生するリスクがあります。また当社グループの社会的評価に悪影響を及ぼすリスクがあります。

当社グループのサプライチェーンの管理体制としては、全ての工場に対し、取引の基本条件として工場監査を義務づけております。品質基準、価格、法令遵守、労務管理、人権保護、環境への配慮などが工場選考基準となっております。BSCI、DTI、FLA、SA8000、WRAP、SLCP、SCANなどを推奨監査プログラムとして採用しており、半年から1年の周期で定期的に工場監査を実施しております。全ての評価項目が適正水準に達していることが取引開始(更新)の前提条件としております。

 

 

 

(6) 事業環境(顕在化の可能性:大、時期:短期・中長期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・シューズマーケットの縮小

・ファッショントレンドの変化

② 当社グループへの影響と主な取り組み

中長期的には、国内においては、人口減少と超高齢化社会によりシューズマーケットは縮小の可能性があります。シューズの需要が低下する場合、出店戦略や業績に影響を与える可能性があります。

世界的なカジュアル志向により、スニーカー需要が増し、レザーシューズやビジネスシューズの販売が低迷するなど、トレンドの変化により、商品の需要と供給が変わることから、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、シューズマーケットにおける国内シェアの拡大、またシューズ以外の分野、スポーツアパレル市場やアウトドア市場においてもシェア拡大を狙ってまいります。トレンドの変化への対応につきましては、商品カテゴリー毎の戦略を適宜見直してまいります。

 

(7) 季節変動(顕在化の可能性:大、時期:短期、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・販売動向の変化

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループが置かれているシューズ業界は、ファッション業界と同様、売上高に季節変動があります。3月から5月(第1四半期)は就職・就学需要と春休みやGW等の春商戦があり、12月と1月は年末年始商戦があるため、売上が最も大きくなります。また出店が多くなる第1四半期と第3四半期に経費が多く計上されることから、営業利益は四半期会計期間毎に変動する傾向にあります。キャッシュ・フローにつきましては、納税時期である4月と10月、配当支払い時期である5月と11月は、現預金の支出が多く、また新規出店や改装によるリニューアル出店が多い時期でもあることから、第1四半期と第3四半期の財務活動と投資活動によるキャッシュ・フローは支出が増加します。

当社グループの主な取り組みといたしましては、シーズン毎に販売戦略を構築し、きめ細かな商材設定を行い、旬な商品を適時適切なタイミングで販売することで販売機会のロスを低減し、在庫回転率を高めてまいります。また季節感のある店舗運営を心掛けることで、お客様の再来店を促す取り組みを実施してまいります。そしてお客様にご満足いただける商品・サービスの提案を継続的に行ってまいります。

 

(8) 人材の確保と育成(顕在化の可能性:中、時期:短、影響度:中)

① 主なリスクの内容

・採用状況の悪化

・離職率の上昇

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループの国内においては、毎年200名以上の新規採用を行っております。採用難や離職率が上昇した場合、出店戦略や店舗運営に影響を与える可能性があります。

当社グループの主な取り組みといたしましては、雇用形態の多様化(短時間労働正社員ほか)、地域密着型の人材登用を行い、人材の確保に努めております。また採用研修制度の充実を図り、人材の育成と能力開発を進めていくことで、将来を担う若手社員の離職を防ぐ取り組みを行っております。また様々な事情により退職した社員の再雇用を促す取り組みとして「ウェルカムバック制度」を活用しております。

 

 

(9) 情報セキュリティ(顕在化の可能性:中、時期:特定時期なし、影響度:大)

① 主なリスクの内容

 ・主要なシステム及びネットワークの大規模障害

 ・機密情報の流出・消失

② 当社グループへの影響と主な取り組み

当社グループは、デジタルコマースやサービス運営で情報システムや外部サービスを利用しております。大規模停電などのシステム障害に備え、主要なシステムやサーバーをクラウド化し、通信回線等のインフラ設備を冗長化する等リスクの分散を図っております。これらの情報システム等の可用性を高い状態で維持するため、定期・不定期のシステムメンテナンスやソフトウェアのアップデートを行っており、既知の脆弱性への対応と潜在的な脆弱性の発見及び対策に努めております。しかしながら大規模災害や未知のコンピューターウイルスの侵入・サイバー攻撃などによりシステム障害が発生した場合、当社のサービス運営が困難な状況に陥る可能性があり、その場合当社グループの財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、デジタル事業を展開するうえで、顧客情報(個人情報を含む)や営業秘密等の機密情報を取り扱っております。万が一、機密情報の流出・消失が発生した場合、当該情報の回収や損害賠償の支払等の対処を要し、業績への悪影響や顧客の信用低下を招く可能性があります。

 

(10) 減損損失(顕在化の可能性:小、時期:短期・中長期、影響度:小)

当社グループは、原則として各店舗を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位と捉え、減損会計を適用し、投資の回収可能性を適時に判断しております。事業環境の変化等により収益性が低下した場合や所有不動産の土地の価格が著しく下落した場合、土地や建物などの有形固定資産や、企業買収に伴い取得したのれんや商標権などの無形固定資産について減損損失を計上する可能性があります。

 

(11) 金融商品評価損(顕在化の可能性:小、時期:短期・中長期、影響度:中)

当社グループは、現在、純投資目的である投資株式を保有しております。これらは市場価格(時価)により価格が変動するため、時価が下落した場合は、損失を被る可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を重要政策と位置付け、収益性の向上や財務体質の強化を図りながら、業績を加味した利益還元を実施していくことを基本方針としております。また、当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

この基本方針に基づき、当事業年度の配当金につきましては、1株当たり中間配当金を普通配当85円、期末配当金を普通配当37円とさせていただきました。なお、2023年9月1日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っておりますので、分割前基準による換算では期末配当金は111円になります。これにより、2024年2月期の年間配当金は前期と比べ26円増配の1株当たり196円となりました。

内部留保金につきましては、販売体制を強化するためのITを含めた設備投資や店舗用不動産の投資、海外事業の拡大への投資、また将来の企業買収や企業提携などの資金需要に充当していく所存であります。

 

当社は、「取締役会の決議によって、毎年8月31日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める剰余金の配当(以下「中間配当金」)をすることができる。」旨を定款に定めております。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年10月11日

取締役会決議

7,015

85.00

2024年5月28日

定時株主総会決議

9,161

37.00