リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のあると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
その他「人口動態」等による影響は以下の通りであります。
(1) 人口動態による業績の影響
総務省統計局「人口推計月報」(2023年11月確定値 2024年4月概算値より)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によりますと、全国の20歳~39歳の人口は、2023年の26,161千人から2045年には21,480千人となり4,681千人減少(17.9%減少)すると推測されております(表1)。一方、65歳以上の人口は、2023年の36,228千人(人口総数の29.1%)から、2045年には39,453千人(人口総数の36.3%)となり、3,226千人増加すると予想されております(表2)。
また、高齢者の人口増加とともに平均寿命も延びております。国立社会保障・人口問題研究所の「平均寿命の推移」によれば、2023年の男性平均寿命81.75歳、女性平均寿命87.82歳と予測され、2045年では男性平均寿命84.03歳(2.28歳の延び)、女性平均寿命90.08歳(2.26歳の延び)となっております。また、2070年には男性平均寿命85.89歳(2045年に対して1.86歳の延び)、女性平均寿命91.94歳(2040年に対して1.86歳の延び)と予測されております(表3)。
冠婚事業における利用者の年齢層は20歳~39歳が中心となっており、上記の通り、今後利用者総数の減少が予
想されます。一方で、葬祭事業における利用者の中心となる高齢者総数は増加傾向にあります。
このように当社の事業は、冠婚事業・葬祭事業共に、将来の人口動態により、業績に影響を受ける可能性があり
ます。
(表1)全国の20歳~39歳の人口
(表2)全国の65歳以上の人口
(注) 2023年は総務省統計局「人口推計月報」(2023年11月確定値 2024年4月概算値)より11月1日現在の確定値を抜粋、2045年は国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(2023年改訂版)より抜粋。
(表3)仮定された平均寿命推移
(注) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(令和5年推計)より抜粋。
(2) 冠婚部門・葬祭部門における施行受注件数の季節的変動について
結婚式は利用者にとっていわゆるシーズン意識のある儀式であります。一般的には、春・秋のシーズンといわれております。また、葬儀式では、月々の死亡者数の変化により、施行件数に影響があります。
令和3年神奈川県衛生統計年報表データ 人口動態の婚姻(表4)によりますと、各月の神奈川県内市町村への婚姻届件数(この内、全てが結婚式を挙げるわけではありませんので、参考母数として)の中では11月が最も多く4,613件となっており、年間婚姻届件数の11.9%を占めており、次に3月が多く年間婚礼件数の11.6%となっております。また、同データの人口動態の死亡(表5)の各月の神奈川県内市町村死亡者数の中では、1月が8,684人となっており、これは年間死亡者数の9.7%を占めており、次に12月が多く年間死亡者数の9.0%となっております。
したがって、上記のような人口動態婚姻・死亡の推移は、月々の冠婚事業、葬祭事業の施行受注件数の増減及び各部門の収益に影響いたします。
(3) 高齢単身世帯数の変動による業績の影響
総務省統計局令和2年国勢調査 年齢(5階級)、男女別高齢単身世帯(表6)によれば、神奈川県の65歳以上の単身世帯数割合は1990年の2.6%でありましたが、30年後の2020年には10.9%と増加しております。これは核家族化の進行に伴い家族単位が変化し、高齢者との同居率が低下していることによるものであると推定されます。
また、他人との関係の希薄化、晩婚化・非婚化による独身者の増加、子供を持たないという選択などのライフスタイルの変化を考え合わせますと、今後も高齢単身世帯数割合が増加し続ける可能性があります。このような事態に至った場合、葬儀の会葬者数の激減あるいは火葬のみといった事態が予想され、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(表6)年別神奈川県65歳以上単身世帯数の推移
(4) 当社施設の立地・開発による業績の影響
当社の葬祭事業は、葬祭ホールを建築する土地等の資産の確保が必要となります。新規店舗投資の前提条件は、原則として、お客様の利便性を重視したアクセス好条件と効率的な資本の回収のため、主に定期借地形態としております。以上の前提や駐車場確保等の諸条件に合う候補物件の検索に多くの時間を要する他、土地オーナーとの交渉の際、双方の採算問題以外に葬儀イメージに抵抗感がある場合には、それを払拭する交渉にも時間を要します。このように、オーナー及びその後の周辺住民への交渉や説明会が難航する場合、施設建設進捗の遅れ等から当社の業績に影響を与える可能性があります。
(5) 法的規制について
① 割賦販売法等による規制について
当社の連結子会社である株式会社へいあんは、冠婚葬祭互助会事業を主業務としております。
冠婚葬祭互助会による互助会加入者への役務提供は、割賦販売法に定められた前払式特定取引にあたります。
同法は前払式特定取引の営業を経済産業大臣による許可制としている他、事業者は同法の定めにより営業保証金の供託、前払式特定取引前受金の保全義務、財産及び収支に関する報告書の提出、契約約款を変更した場合の届出等をしなければなりません。主な規制内容は次のとおりであります。
イ.営業所等に関する規制及び営業地域
事業者は新たに営業所又は代理店(以下、「営業所等」という)を設置し、営業を開始するにあたり、新たな営業所等ごとに一定の営業保証金を供託し、これを経済産業大臣に届出なければなりません。また、同社の営業地域は、神奈川県及び東京都内の17市13町(注1)としております。
ロ.前払式特定取引前受金の保全義務
事業者は、消費者から受け入れた前払式特定取引前受金(連結貸借対照表の前払式特定取引前受金に、掛金中断後一定年数を経過したため雑収入に計上した前受金の累計額等を加えたもの)の2分の1に相当する金額を金銭及び有価証券による供託又は金融機関、指定受託機関との保証金供託委託契約により保全しなければなりません。
同社は前払式特定取引前受金の2分の1に相当する金額について、金銭・有価証券の供託及び指定受託機関と前受業務保証金供託委託契約を結ぶことにより、保全措置を講じております。
ハ.財産、収支の状況に関する規制
経済産業大臣は事業の健全な推進と消費者保護の観点から、事業者の純資産比率(注2)が90%未満となった場合に、事業者に対し前払式特定取引の契約締結の禁止命令を出さなければならないこととなっております。
同様に経済産業大臣は事業者の財産及び収支の状況が著しく悪化した場合に、事業者に対し必要な改善命令を出すことができることとなっております。割賦販売法施行規則は改善命令の目安である経常収支率、流動比率、純資産比率(注2)が定められております。また、「この法律の運用にあたっては、割賦販売等を行う中小商業者の事業の安定及び振興に留意しなければならない(法第1条第2項)。」とされており、実際には割賦販売法上の法的規制の運用は所管官庁である経済産業省により行われております。しかし、所管官庁による法的規制の運用は、諸般の事情により随時変更・撤廃される可能性があります。
現時点において、株式会社へいあんは割賦販売法上の改善命令を受けた事実はありませんが、仮に現在の法的規制及びその運用が変更され、それによって収支率等の改善を図る必要性が生じた場合、当社グループの経営成績及び財産の状態に影響を与える可能性があります。
(注1) 藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市、南足柄市、小田原市、厚木市、海老名市、座間市、鎌倉市、綾瀬市、秦野市、伊勢原市、相模原市(南区、中央区、緑区の橋本・大沢地域)、逗子市、川崎市(麻生区・多摩区)、大和市、東京都町田市、寒川町、大磯町、二宮町、中井町、大井町、開成町、真鶴町、湯河原町、松田町、山北町、愛川町、箱根町、葉山町
(注2) 経常収支率、流動比率、純資産比率は割賦販売法施行規則に定められた算出方法によるものです。
② 霊柩運送に関する規制について
当社の葬祭事業の一部である霊柩運送に関しては、「一般貨物自動車運送事業(霊柩)」として、貨物自動車運送事業法の規制を受けております。霊柩運送事業に関する規制の内容は、運送の客体、その方法等が他の貨物運送と異なるため、営業区域、霊柩車の保有台数等に制約があります。このため当社の霊柩運送の営業区域は、東京都及び神奈川県となっております。
③ 介護保険制度について
当社の連結子会社である株式会社へいあんは、介護保険法に基づく介護事業を業務としており、介護保険制度の改正等により、当グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、同法および関係政省令等において、介護保険事業所の設置は指定制、更新制とされており、詳細な運営基準が規定されています。したがって当社が指定介護サービス事業者として適正な運営体制を維持できなかった場合、事業所指定の取消、あるいは更新の不許可等の行政処分を受け、業績に影響を与える可能性があります。
(6) 顧客情報の管理について
当社グループの事業にとって、顧客情報流出や破壊による被害防止は極めて重要であります。
現在までのところ、重要な顧客データの漏洩・改ざんあるいは破壊等の発生は認識しておりませんが、今後、顧客情報の流出により問題が発生した場合には、当社グループの事業運営、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社グループの利益配分の基本方針は、株主を重視した経営を実現するため、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しております。
株主の皆様への利益還元は、業績に応じた安定的な配当を維持することを最優先として、その上で、企業体質の強化と株主資本利益率の向上に努めております。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
以上の基本方針に基づき、2024年3月期は中間配当金14円、利益配当金16円とし、年間配当金を30円とすることを決定致しました。また、次期の配当につきましては、中間配当金16円、利益配当金17円とし、通年33円を予定しております。
内部留保につきましては、長期的展望に立った経営の効率化、競争激化に対応するため、経営基盤の強化、積極的な事業展開、企業価値向上のために有効に投資していくことを基本方針としております。
当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。