リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、本項における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業計画について
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、AIを主体としたビジネスモデルへのポートフォリオ・トランスフォーメーションをさらに加速させるべく、技術開発及び人材投資を進めてまいりました。事業計画の策定に際しては、当社グループが入手可能な情報や一定の前提に基づいているため、以下に掲げる各リスク等を含む様々な要因により、当社グループの事業及び経営成績が想定した目標を達成できない可能性があります。
当社グループは事業計画、研究開発の進捗、市場環境の変化、内部リソースの状況などを随時レビューしており、重要事項については取締役会、経営会議で適切にモニタリングし、管理をしていきます。
(2) 技術革新について
当社グループは、他社に先駆けてユーザーのビジネスにAIを実装してきたフロントランナーであります。近年、当社グループが属する市場においては、急速な技術変化とサービス水準の向上が進んでおり、これに伴いクライアントのニーズも著しく変化しております。今後、クライアントのニーズの変化及び技術革新への対応が遅れた場合、当社グループの事業並びに経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
一方で、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する投資が加速され、人が行う作業をデジタル化することで業務を効率化、高度化することができるAI製品の需要が増加いたしました。当社グループは、AIを主体としたビジネスモデルへのポートフォリオ・トランスフォーメーションを進めておりますが、これをさらに加速させ、AIソリューションを展開している各分野において事業領域の拡大・開拓、業務提携先との共同開発を積極的に推進しております。
(3) 情報の管理について
当社グループの事業では、事業の特性上、ITシステムを使った調査の際に顧客企業の重要な情報を保有することとなるため、高度な情報の管理が求められておりますが、災害、機器・ソフトウェアの欠陥などに乗じた外部からの不正アクセス、社員の不正等により、機密情報の喪失、個人情報の漏洩などが発生する可能性があります。
このような予期せぬリスクが顕在化した場合、事業の中断や損害賠償請求、信用の低下等により、当社グループの事業及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。AIソリューション事業のライフサイエンスAI分野では、医療機器の製造販売承認申請のための治験を進めており、診断に関わる医療情報、創薬に関わる製薬企業の重要機密情報を取り扱っております。またビジネスインテリジェンス分野では、金融や知財、サプライチェーンなどの機密性の高い情報を取り扱っており、同様に高度な情報の管理が求められております。
当社グループでは、データ処理センターを分散配置し、静脈認証や入退室管理の徹底、耐火金庫による調査データの保管、外部と隔絶されたネットワークの構築等により安全な作業環境の確保に努めております。また、そのサービス運用において、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格である「ISO27001」、並びに国内規格である「JISQ27001」の認証を取得し、認証に基づく規定類により各種オペレーションを管理するとともに、社員教育及び継続的な情報セキュリティ改善活動を実施し、リスクを未然に防ぐよう取り組んでおります。
なお、米国子会社のFRONTEO USA,Inc.において、2022年5月にサイバー攻撃による不正アクセスが発覚しております。当社では再発防止・改善のため、セキュリティシステムを全面的に見直し、外部の専門機関の協力も得ながら①侵入防止、②侵入時の早期検知、③侵入された場合の被害の最小化対策を講じております。
(4) 人材の確保について
当社グループでの事業展開においては、専門的な情報技術や業務知識を有する有能な人材を確保する事が重要であります。しかしながら、人材需要が旺盛なAIソリューション事業及びリーガルテックAI事業を対象とした、専門性を有する人材は限られております。
そのため、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、AIソリューション事業及びリーガルテックAI事業における人材需要の増加及び要求されるスキルレベルの高度化により、有能な経営幹部並びに一般社員の必要数を確保できない場合、または既存の有能な人材が社外に流出した場合には、当社グループの経営活動に支障が生じ、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、積極的な採用活動を継続して行っており、これを更に強化いたします。加えて、開発、営業推進、サービスの実装というユーザーのニーズや導入フェーズに合わせて必要となる人材の育成を進めてまいります。また、当社独自の技術と実績をアピールすることで、認知向上と人材の確保に取り組んでまいります。
(5) 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、単体及び連結損益計算書において2期連続経常損失を計上しております。
また、米国子会社に関する顧客関連資産及びのれんの減損による特別損失2,475,459千円を計上したことに伴い、当社が保有する当該米国子会社株式の評価損6,895,040千円を計上した結果、単体及び連結の株主資本または純資産の合計額が低下いたしました。
このことから、取引金融機関との間で締結しているタームローン契約並びにコミットメントライン契約の財務制限条項に抵触し、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
しかしながら、該当するすべての取引金融機関とは緊密な関係を維持しており、当該抵触を理由とする期限の利益喪失請求を行わないことについて、該当する全ての金融機関よりこれを認める方針である旨の回答を得ていること、また営業キャッシュ・フローの改善により現金及び預金が前連結会計年度比、1,568,090千円増加し、当連結会計年度末に3,043,671千円となったことから、事業運営に必要な資金は十分に確保されており、資金繰りに懸念はありません。
また、翌連結会計年度において、AIソリューション事業のライフサイエンスAI分野では、塩野義製薬との業務提携契約による中長期的な収益基盤の確立に加え、他疾患を対象とした新規アライアンスによる非連続な成長を目指してまいります。
ビジネスインテリジェンス分野では、「KIBIT Eye」を基幹サービスとして、リカーリング収益が積みあがっており、翌期以降の収益の安定性とリニアな成長に貢献する見込みであります。
経済安全保障分野では、「KIBIT Seizu Analysis」を中心としたリカーリング収益の拡大によるリニアな成長と、官公庁や企業の意識の高まりによる、経済安全保障関連投資予算の拡大を背景に、包括契約等による非連続な成長を目指します。
リーガルテックAI事業においては、当期に実施したコスト構造改革及び減損による償却費の減少の効果により大幅な収益改善が見込まれます。
以上のことから、AIソリューション事業の成長とリーガルテックAI事業の収支改善による収益貢献が引き続き見込まれること、且つ事業運営に十分な資金が既に確保されていることから、当社グループには継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
(6) その他
① 法的規制について
AIソリューション事業におけるライフサイエンスAI分野では医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に準拠する必要があります。今後、他分野においても、新たに法律や規制が制定された場合や、業界内で自主規制が求められた場合には、当社グループの事業上の計画等の見直しが必要となる可能性があります。その結果、これらに対応するための支出が増加する等、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
リーガルテックAI事業において、当社グループは米国における訴訟制度に基づくディスカバリ(証拠開示)支援サービスを行っておりますが、現在のところ、当社グループが事業を展開するにあたり、法的な制約は受けておりません。しかしながら、今後、米国における訴訟関係の法律、法令が変更された場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、日本国内において新たな法規制が制定された場合にも、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 知的財産等について
当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性については、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社グループの事業領域に対する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識をせずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。
③ 為替相場の変動について
当社は、日本円を価格決定のベースとした外貨建て(米ドル)の取引を継続する予定であります。このため、為替相場の変動は外貨取引の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与えます。また、為替相場の変動は、海外の連結子会社の収益や財務諸表の円貨換算額に影響を与える可能性があります。
当社では、為替変動リスクの主な要因である親子会社間の債権債務の減少、債権回収の早期化により、リスクを低下させる方針を取っております。また、並行して為替動向を注視し、必要に応じて為替予約等により、リスクを最小化しております。
④ 感染症、自然災害等について
新型インフルエンザ、新型コロナウイルス等の感染症の世界的拡大、地震や風水害などの大規模災害が発生した場合、当社グループでは、事業継続計画に基づき、速やかにかつ適切に全社的対応を行うよう努めてまいりますが、事前の想定をはるかに越えた規模に影響を与える事象により、事故発生後の業務継続、復旧がうまくいかなかった場合、当社グループの事業及び業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 気候変動について
気候変動に伴う自然災害や異常気象等によって当社関連施設等に物理的な被害を被った場合、または、当社の気候変動への対応が不十分と評価された場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態に影響が現れる可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
株主に対する利益還元は、当社グループ経営の重要課題のひとつと位置付けた上で、財務体質の強化と積極的な事業展開と経営基盤の強化に必要な内部留保の充実に努めつつ、業績に応じた配当を継続的に行う事を基本方針としております。当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。当事業年度におきましては、財務基盤の強化と将来の事業拡大のための内部留保の蓄積を図ることを最優先とし無配当とさせていただきます。なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(配当制限)
借入金のうち、2020年12月21日に締結したタームローン契約、2022年1月24日及び2022年3月11日に締結したコミットメントライン契約については、次のとおり財務制限条項が付されております。
① 2020年12月21日締結 タームローン契約
イ. 各年度の決算期の末日における単体及び連結の貸借対照表において、株主資本の合計額を、2015年3月決算期の末日における株主資本の合計額又は前年度決算期の末日における株主資本の合計額のいずれか大きい方の75%以上に維持すること。
ロ. 各年度の決算期に係る単体及び連結の損益計算書において、2期連続して経常損失を計上しないこと。
② 2022年1月24日締結 コミットメントライン契約
イ. 各年度の決算期の末日における単体及び連結の貸借対照表において、純資産の部の金額を、2021年3月決算期の末日における純資産の部の金額又は前年度決算期の末日における純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%以上に維持すること。
ロ. 各年度の決算期に係る単体及び連結の損益計算書において、2期連続して経常損失を計上しないこと。
③ 2022年3月11日締結 コミットメントライン契約
イ. 各年度の決算期の末日における単体及び連結の貸借対照表において、純資産の部の金額を、前年度決算期の末日における純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
ロ. 各年度の決算期に係る単体及び連結の損益計算書において、2期連続して経常損失を計上しないこと。