リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループは事業等のリスクに関し、諸規程を整備し、各種リスクに対する予防および発生時の対処等について研修、訓練を実施し、リスク管理の実効性を向上させております。また定期的に「リスク管理委員会」を開催し、事業運営に伴う各種リスクの適正な分析・評価、リスクの予防措置、発生時の対応等を検討し、総合的なリスク管理体制を整備しております。
これらの体制を踏まえ、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。
(1)自然災害及び火災等の事故の発生
大規模な地震や台風等の自然災害や火災等の事故の発生は、当社グループの所有する建物、施設等に損害を及ぼし、一時的な営業停止による売上減や修復のための費用負担が発生する可能性があります。
また、特に近年頻発する台風・集中豪雨の規模・範囲によっては、当社グループに直接的な損害が無い場合でも、消費マインドの減退や、国内交通機関への影響による来客数の減少等が予想され、当社グループの収益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、事業継続計画(BCP)、各種災害対策マニュアルに基づき、備蓄資材・食料等の管理、全事業所での年間約80回の総合・部分訓練等により、対応力を強化するとともに、定期的なマニュアル見直しによりその実効性を高め、災害時のお客様・従業員の安全を守り、速やかに事業再開に向けた活動に移行できるよう、体制を整備しております。
(2)感染症の発生、まん延
新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症の発生やまん延は、海外からの入国規制や渡航自粛による訪日外国人利用客の減少、国内での不要不急の外出自粛要請や消費マインドの減退などによる経済活動の減速、停滞が引続き予想されます。
当社グループにおいては、全事業所の宿泊需要の低下に伴う売上げの減少に加え、会食や宴会利用が低調となり、当社グループの収益確保に大きく影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、マスク、消毒液の備蓄やサーマルカメラの常備、在宅勤務体制の整備などを推進し、お客様・従業員の安全・安心を守るべく防疫体制を整備しております。
(3)テロ、戦争の勃発
テロ行為や戦争、紛争等の勃発による世界情勢の変化により、海外渡航制限や自粛による外国人利用客の減少、観光、レジャーや慶事に対する消費マインドの減退、加えて原材料・建築資材等の調達コスト上昇の長期化が予想されます。
当社グループにおいては、平常時の宿泊客外国人比率が約5割の東京本社、大阪事業所の売上げ回復の遅れに加え、自粛要請等による宿泊、各種会議・宴会の取り消しなどにより当社グループの収益確保に影響するとともに、調達コスト上昇により利益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、テロ対策マニュアルを整備し、行政の指導に基づく訓練等による対応力と実効性を高め、お客様・従業員の安全を確保する取り組みを推進しております。
また、宿泊者構成の多様性にも留意し、国内外の均衡のとれた営業活動を展開し、業績への影響を最小限に留めるよう努めております。
(4)食の安全に関わる問題
当社グループは、食に関わる全社横断的な組織として「食の安全と信頼委員会」を設置し、食中毒対策、食品衛生、食品表示、アレルギー対策、防除等に取り組むなど、食の安全管理には細心の注意を払っておりますが、ノロウイルス等による食中毒やアレルギー事故の発生等食品衛生や食の安全、安心に関する問題が発生した場合、当社グループ全体への信用の失墜とブランドの低下ならびに損害賠償等の費用負担に加え、各種宴会の取消しならびに受注減、レストランの来客数減等により、当社グループの収益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、食品安全管理運用書を整備し、全事業所の飲食関連施設・従業者に対する定期的な衛生管理点検、腸内検査、アレルギー対応シミュレーション、メニュー表示チェック等を実施し、定期的な運用書の見直しによりその実効性を高め、食に対するお客様の安心・安全の確保に努めております。
(5)個人情報や営業上の機密情報の漏洩
顧客の個人情報や営業上の機密情報の管理は、社内の情報管理、監視部門が中心になり、外部への流出防止を行っておりますが、情報の漏洩が発生した場合、当社グループ全体への信用の失墜とブランドの低下ならびに損害賠償等の費用負担により、当社グループの収益確保に影響する可能性があります。
これらのリスクに対し、各種規程に基づき、定期的な個人情報保護状況の確認、サイバー攻撃対策、SNSモニタリング等を実施し、漏洩の防止に努めております。
(6)労務関連(労働契約・労働力不足等)
当社グループは、接客業を主としており、人材育成の強化を通じてさらなるサービスの向上に努めるとともに、人材の確保ならびに従業員満足の向上にも努めております。
今後、関係法令・社会保険や労働条件・処遇等の労務環境の変化に対応する場合、人件費や業務委託費の増加となり、また人手不足の深刻化により商品提供が滞る場合、当社グループの収益確保に影響を与える可能性があります。
これらのリスクに対し、ハラスメント対策、メンタル疾患防止、時間外就労の管理の徹底および多様な働き方に対応する制度の整備等、従業員のケアに重点を置いた取り組みを進め、また雇用においては、正社員の計画的な採用、中途採用の通年実施に加え、非正規雇用市場の動向も注視し、適正な要員確保に努めております。
(7)固定資産の減損
当社グループは、ホテル建物等の固定資産を保有しておりますが、今後一定規模を上回る不動産価額の下落や事業収支が悪化した場合、固定資産の一部について減損損失が発生する可能性があります。
これらのリスクに対し、設備投資計画時に当該事業用固定資産から生成される将来キャッシュ・フローが十分に見込まれるか、投資回収可能性を慎重に精査した上で意思決定を行うと共に、定期的に進捗及び達成度評価を実施しております。
(8)賃借した不動産の継続利用又は中途解約
ホテル事業においては、ホテル設備や土地を長期に賃借しているものがあり、当該不動産の継続利用が困難となった場合や契約期限が到来した際に更新されない場合は業績に影響が生じる可能性があります。また、長期賃貸借契約の途中で、何らかの事情に基づき契約が中途解約されることがあった場合、残存期間分の未経過賃料のうちの一部について、賃料の支払又は補填の義務が生じる可能性があります。
これらのリスクに対し、不動産の所有者の信用度等を勘案した上で、継続利用の蓋然性が高いと判断されるホテル不動産に対してのみ契約を締結するよう努めるとともに、新規の契約にあたっては賃借期間を可能な限り長期とできるよう交渉を行うように努めております。
(9)帝国ホテル東京建て替え計画に関するリスク
当社は帝国ホテル東京の本館、タワー館及び駐車場ビルの建て替え計画の実施方針を決定しております。本建て替え計画の実施時期はタワー館が2024年度~2030年度、本館が2031年度~2036年度を予定しており、帝国ホテル東京としてのホテルの営業は継続することを計画しておりますが、建て替えに伴う一部事業規模の縮小による一時的な収益力低下などにより当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。
また、建て替えに伴う総事業規模は約2,000億円から約2,500億円程度を見込んでおりますが、物価上昇による資材の高騰や労務費の上昇などが生じた場合、想定していた費用を上回る負担が発生する可能性があります。加えて、本建て替え計画の実施資金に係る財務計画は、今後の関係諸機関との協議等を経た上で策定する予定ですが、その内容によっては、今後、本建て替え計画の実施資金の調達コストが当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、タワー館の建て替えについては、三井不動産株式会社(以下「三井不動産」といいます。)との共同事業として行うことを目指しており、現タワー館を解体後、当社が敷地を分筆したうえで、その土地の共有持分の一部を三井不動産に有償譲渡することとしております。当社と三井不動産は、協議の上、本譲渡にかかる売買契約の締結を行う予定ですが、その締結時期及び譲渡の実行時期については未定であり、当該売買契約の締結が予定通り実施されない場合には、本譲渡が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
なお、本計画の最終的な実施にあたっては、都市計画法、建築基準法その他の関連諸法令に従った許認可等が得られること、及び近隣の権利者等の関係諸機関との合意が成立することが前提となります。そのため、必要な許認可等が得られない場合や、関係諸機関との合意が成立しない場合等には、当社は最終的に本計画を実施しない又は建築工事の遅れ等で本計画が計画通りに進捗しない可能性があります。
(10)関係会社等に関する重要事項
その他の関係会社である三井不動産は、当連結会計年度末現在、当社の発行済株式総数の33.2%を保有しております。2007年に同社の資本参加を受けた際に基本協定書を締結し、以降、当社経営の自主性等を最大限尊重する友好的なパートナーとして将来的な再開発計画、ホテル・リゾート分野等での協力・提携等をともに検討しており、三井不動産の意向は当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、業務・資本提携の強化を図る人的交流の一環として、当社は三井不動産より役員を兼務する人材を受け入れておりますが、三井不動産との取引条件については、第三者と比較検討を実施した上で公正な取引条件で実施しており、当社の独立性に影響を及ぼすリスクはないと考えております。ただし、何らかの要因により三井不動産との関係に変化があった場合や、三井不動産の出資方針や取引方針等の変更が生じた場合には、出資関係、人的関係及び取引関係が見直される可能性があり、その結果当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(11)スタンダード市場上場維持基準
当社は、株式会社東京証券取引所の定めるスタンダード市場の上場維持基準のうち、流通株式比率について、2024年3月31日時点において25.0%となっており、同社が上場維持基準として定める流通株式比率25%以上に近接していることから、何らかの事情により流動性が低下した場合には、上場維持基準に抵触する可能性があります。
今後もIRの充実や株主との対話など、引き続き各種取組を継続、基準への適合維持に努めてまいります。
(12)その他の包括的なリスク
当社グループの売上高の約8割が東京本社であり、特に上記事項が東京本社にて発生した場合、その他予期し得ない問題等が発生した場合、当社グループ全体の収益確保に大きく影響する可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
配当につきましては、長期に亘る安定的な経営基盤の確保による安定配当の継続を基本方針とし、株主への利益還元に努めてまいりました。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。
当事業年度の配当金は、中間配当金としてすでに1株当たり4円を実施いたしました。期末配当金につきましては、上記の基本方針に基づき、当期業績や今後の業績見通しを総合的に勘案し、4円とすることに決定いたしました。
なお、当社は2023年10月1日を効力日として1株に2株の割合で株式分割を実施しており、期末配当金は、株式分割の影響を考慮しております。株式分割の影響を考慮しない場合の期末配当金は8円となり、既に実施済の中間配当金を合わせると、当期の1株当たり配当金は12円となります。
また、内部留保資金につきましては、施設環境の充実、競争力のある新商品の開発など安定した成長を継続するため有効に投資する方針であります。
なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
(注)1株当たり配当額については、2023年10月1日付の株式分割(1:2)を考慮した額を
記載しております。