2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業上のリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①委託販売制度について

当社グループにおける出版事業においては、業界の慣行に従い、取次会社及び書店に配本した出版物(書籍等)のほとんどについては、配本後、約定期間(委託期間)内に限り、返品を受け入れることを販売条件とする委託販売制度を採用しております。当社グループにおいては、返品抑制対策として、販売予測の精査による製造・出荷部数の適正化、マーケティングデータに基づいた書店への配本調整、オンライン直販・電子書籍販売など返品のない出版物流ルート経由の書籍販売強化などを行っております。会計上も、返品されると見込まれる出版物については、変動対価に関する定めに従って、販売時に収益を認識せず、当該出版物について受け取った又は受け取る対価の額で返金負債を認識しております。また、返品の際の梱包料・運送費を負担している取次会社も、物流費高騰の現況下、返品のない物流ルート拡大に動くなど業界を挙げて返品抑制に動いておりますが、想定以上の返品の増加は売上高の減少を通じて、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②再販売価格維持制度について

当社グループにおける出版事業において発行・販売する出版物については、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下、独占禁止法という)第24条の2の規定により、再販売価格維持制度(以下「再販制度」という)が認められる特定品目に該当適用しております。独占禁止法は、再販制度を不公正な取引方法として原則禁止しておりますが、公正取引委員会の指定する書籍・雑誌等の著作物の小売価格については、例外的に再販制度が認められております。なお、当社グループにおいては、取次会社との取引価格の決定は、定価に対する掛け率によっております。公正取引委員会が2001年3月23日に発表した「著作物再販制度の取扱いについて」によると、当面の間、再販売制度は維持・存続される見通しですが、一方で再販制度を維持しながらも、消費者利益のため現行制度の弾力的運用を業界に求めていく方針を発表しております。また、業界動向としても、ネット販売増加、電子書籍増加等で同制度は揺らぎつつある現況にあります。当社グループとしては、このような現況を踏まえ、また、多様化する顧客ニーズへ対応するため、オンライン直販・電子書籍販売等を強化しておりますが、同制度の弾力的運用又は廃止は出版競争の激化、売上高の減少などを通じ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③出版事業環境について

2023年の出版市場(紙+電子出版の合計。推定販売金額)の規模は1兆5,963億円、前年比2.1%減と2年連続のマイナス成長となりました。内訳は、紙の市場が同6.0%減、電子出版が同6.7%増。紙の出版は、書籍・雑誌ともにマイナス。電子出版は、電子コミックはプラスでしたがそれ以外は減少しました(公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所2024年1月公表)。

当社グループにおいては、最新のITテクノロジーを中軸に、エデュケーション、ビジネス・カルチャー、パーソナルコンピューティング・デザイン等、将来にわたって需要が予想される質の高い実用コンテンツの制作、提供に特化しており、綿密な刊行計画を基に、これらのコンテンツをペーパーメディア、電子書籍及びセミナー等様々なメディアで提供しておりますが、編集者・著者の出版意図と読者ニーズの乖離や人気の高い分野での他社との競争激化、コロナ禍収束や物価高に起因する消費者の書籍購買力・購買需要の減少、更なる書店の休業・廃業、及び書籍制作の原材料である用紙代や書籍の物流コストの価格高騰等の諸要因が、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④Webサービス事業環境について

当社グループにおいては、ゲームアプリやその他のコンテンツ開発・運営、Web上のマッチングサービス提供、Webサイトの構築等、自社運営又は顧客からの業務受託の形で様々なWebサービス事業を展開しております。従来中核事業であったオンラインゲーム・モバイルゲーム業界は、2022年度のゲーム・ソーシャルゲーム等市場規模は前年度比91%の1兆4,542億円と縮小しており(一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム2023年7月公表)、ヒットタイトルが年々出現しにくくなる中で開発期間の長期化に伴うコスト増大といった課題もあり、有力なコンテンツを有するゲームメーカーの市場寡占化、成熟化が進んでおります。当社グループにおいては、このような背景の基に、提供するWebサービスの多角化・独創性の促進・強化に努めておりますが、Webサービス分野は、今後も多くの新規事業者参入が予想され、厳しい競争におかれるものと思われます。これら競合他社との競合において、サービス内容がユーザーニーズに対応できず、利用者増加が見込めない場合、又は利用者が減少した場合は、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤法的規制等について

出版事業における「再販制度」以外の当社グループの事業を推進するうえで影響のある法律として、「不当景品類及び不当表示防止法」、「個人情報の保護に関する法律」、「資金決済に関する法律」、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」、「職業安定法」、「特定商取引に関する法律」、「消費税法」、「電子帳簿保存法」、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、「下請代金支払遅延等防止法」等様々な法律・条例等があり、当社グループにおいてはコンプライアンス経営の確立に努め、契約書のリーガルチェック、全社員向け研修等を通じて法的規制を遵守する体制を強化しております。今後において、当社グループの事業を規制する法令等の制定・改定があった場合は、当該規制対応のため、サービス内容変更、契約書内容見直し又は設備投資等に伴うコスト増加等を通じて、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑥組織再編等について

当社グループは、当社を純粋持株会社とする分社経営体制を採用しております。今後共、機動的な組織再編、M&Aの活用等により企業グループ総体の価値向上に努めていく方針ですが、組織再編等の進捗状況によっては追加コストが発生し当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦投融資に係るリスクについて

当社グループは、連結子会社への投融資の他、日本国内外のスタートアップ企業・大手金融機関・大手一般事業法人等に対して投資を実施しております。これらの投資に際しては、投資先のリスク要因、経営計画及び市場動向等を慎重に検討した上で実施しておりますが、諸要因により必ずしも投資先が当初期待した通りの業績をあげることは保証されておりません。その場合、投資先の評価の見直しによる損失や投資回収遅延、又は、急激な市場動向の変動等により、貸倒引当金の計上や減損処理等を通じて当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧個人情報管理について

当社グループは、各種事業展開及び顧客サービス提供のため、多くの個人情報をお預かりしています。そのため当社グループ各社は、個人情報漏洩防止のための社員教育や内部監査の徹底、関連規程の整備等により個人情報管理体制を一層強化しておりますが、万が一個人情報が流出し損害賠償責任を問われた場合や再発防止策実施のために多額のコストが発生した場合等においては、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑨市場環境の変化や他社との競争について

当社グループが運営する事業においては、ユーザーの志向の変化、マクロ経済情勢の変化、技術の進歩や革新による新たな競争相手の出現又は同業他社との価格競争等により、利益を確保し難い状況になる可能性があります。

⑩人材確保に係るリスクについて

当社グループが運営する事業においては、総じて、企画力、編集力、マネジメント能力及びプログラミング技術力等の高い専門性及び経験が要求されることから、事業の成長にはそのような要求水準に合う優秀な人材の確保が不可欠であり、当社グループでは継続的に人材育成と確保に注力しておりますが、必要な人材確保ができない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪情報セキュリティについて

当社グループが運営する事業においては、情報システムが極めて重要な役割をもっております。当社グループでは、情報システムの安定稼動を業務運営上の重要課題と認識してセキュリティ対策等必要な対策を講じておりますが、当社グループ本社・事業所・書籍倉庫が集中している首都圏を震源とする地震等の大規模広域災害、火災等の地域災害、コンピュータウイルス、サイバー攻撃、電力供給の停止、人的ミス、及び通信事業者に起因するサービスの中断・停止等により、情報システムが機能しなくなったり機密情報が漏洩する可能性が皆無ではなく、その場合には当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑫資金調達について

当社グループは、銀行借入や資本市場からの資金調達をおこなっておりますが、資金需給、金利動向等金融市場環境の影響を受けるため、これらの環境の変化が、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

⑬知的財産権について

当社グループでは、自らの知的財産権を確保し、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めておりますが、万が一、当社グループが知的財産権に関し第三者から訴訟を提起され、又は自らの知的財産権を保全するために訴訟を提起せざるを得なくなった場合には、時間・費用等多額の経営資源が費やされたり、訴訟結果によっては、多額の損害賠償責任を負ったりする可能性があり、その場合には当社グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

⑭コロナ禍収束の影響について

当社グループは、新型コロナウイルス感染症拡大・蔓延に対応して、対面サービスからオンラインサービスへの切り替え等、顧客へのオンラインサービス提供等を積極的に進めてまいりましたが、コロナ禍収束に伴って当社グループが提供するオンラインサービス等と顧客ニーズにミスマッチが生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑮特定取引先への依存度について

当社グループは、大手取次等の取引先3社によって連結売上高の25%が占められております。当社グループにおきましては、出版物流ルートの多様化、事業ポートフォリオの多角化など多面的な事業展開を図ることで、当該リスクへの対応を図っております。しかしながら、当該取引先の経営方針に大きな変更などがあった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、長期的な視野に立ち、企業体質の強化を図りながら安定的配当を実施していくことを基本方針としております。当社の剰余金の配当は、期末配当の1回を基本的な方針としております。当社は会社法第459条の規定に基づき、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって剰余金の配当を行う旨を定款に定めております。当事業年度の配当については、上記の基本方針、足許の業績推移、今後の事業展開や内部留保の状況等を総合的に勘案し、前事業年度より50銭増配の1株につき年間3円50銭としております。内部留保資金につきましては、現在の各事業内における基盤拡大のための安定的且つ効率的な投資のために役立てる所存であります。

 

(注)  基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下の通りであります。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年5月28日

取締役会決議

62

3.50