2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクならびにリスクの管理体制および管理手法を記載しています。なお、主要なリスクは、当社グループが事業を遂行する上で発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。また、文中における将来に関する事項は別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

1.リスク管理体制

当社では、さまざまな角度から全社的なリスクを特定し、リスクの顕在化を防止するため、「3ラインモデル」の考え方に基づく管理体制を整えています。第1線として、本社各部門が現場で各種施策を立案する際にリスクを含めた検討を実施するとともに、自部門におけるリスク管理を遂行しています。第2線として、リスク管理の責任者であるリスク管理室長のもと、事業部門から独立した組織であるリスク管理室が、全社的・網羅的にリスクの把握と対策状況を確認し(年2回実施)、リスク管理委員会に報告しており、社長、副社長、CFOなどを委員とし、監査役や関係部門長が参加するリスク管理委員会では、リスクの重要度や対応する責任者(リスクオーナー)を定め、対策指示などを行い、リスク管理室長を通じて状況を取締役会に報告しています。なお、リスク管理委員会では、情報セキュリティ経験を有する取締役(代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一)が中心となり当社グループに重要な影響を与えるリスクを監督しています。

内部監査室は第3線として、第1線と第2線から独立した立場から、これら全体のリスク管理体制・状況を監査しています。

また、これとあわせて、リスク抽出プロセス等を含むリスク管理委員会における検討の内容を、リスク管理室長より会社業務の執行を監督する社外取締役および監査役に報告し、リスク管理手法や改善点等に関する意見を得て、リスク管理の対策等に反映しています。

なお、グループ全体のリスク管理の観点から、子会社・関連会社からの報告体制を整備するとともに、それぞれが抽出した事業に関連するリスクとその対策状況の定期的なチェックを実施しています。

 


 

※1 リスクトレンド分析:最新のニュースや公開情報をもとにした分析を行い、新しい視点でのリスク抽出の材料とする手法

※2 KRI(Key Risk Indicators):重要リスク評価指標

※リスク管理と監査について、それぞれの責任者であるリスク管理室長と内部監査室長が、それぞれの職責に基づき独立して取締役会に報告しています。

※当社では、外部からのリスク管理に関する評価として、金融商品取引法で定められている内部統制報告制度及びSSAE18に準拠した第三者機関による内部統制の評価(年に1回)を受け、リスク体制の更なる精度向上に努めています。

 

2.リスク管理手法

当社は、各種施策の立案時にビジネスの機会とあわせて潜在するリスクも検討することに加え、当社グループのリスクを幅広く抽出、選定、評価するため、リスクの見直しを含めて、年度ごとに以下のようなPDCAサイクルを回すことにより、 複雑化・多様化するリスクの発見、低減、顕在化の未然防止に取り組んでいます。

 


 

(1) Plan:リスク管理室は、リスク分類表(当社と当社の子会社・関連会社の事業遂行に関わりのあるリスクシナリオから構成)を用いたリスクアセスメントや、当社の各本部長および主要子会社・関連会社の経営陣へのヒアリングを実施することに加え、当該年度のリスクオーナー(リスクの責任者)等へのインタビューを行っています。リスク管理委員会においては、現場と経営の双方の目線に基づき抽出したリスクを対象に、当社に重要な影響を与えるリスクを選定し、リスクオーナーを指名しています。その際、さまざまな観点からリスクを抽出するために、事前にリスクおよび機会を含めた外部環境レポート等の情報提供や、短期/中長期の観点も含めた質問を通じ、情報を収集することで、より多面的なリスク分析を行っています。

(2) Do:リスクオーナーは、リスク管理委員会が選定した当社に重要な影響を与えるリスクに基づき、リスクの対策等を検討し、実施しています。

(3) Check:リスク管理室は、リスクオーナーによる対策状況を月次でモニタリングし、経営陣に報告するとともに、リスク管理委員会に対策状況等を報告し、リスク管理委員会は、報告に基づき、対策の実施状況等の確認やリスクの見直しおよび追加対策の必要性等を確認しています。

(4) Action:リスクオーナーは、リスク管理委員会で追加対策が必要と判断された場合には、改善策や追加対策等を検討し、実施しています。

 

 


※「取締役会」には、社外取締役・監査役への事前説明会を含みます。

 

研修等の実施

新入社員を含む当社の全社員に向けては、取り組むべきリスクの社内周知やリスク管理に関する研修(eラーニングなど)等を実施し、加えて社内からの相談窓口を設置しているほか、子会社・関連会社に対しては当社と共通の研修資料を共有し、必要に応じて研修を実施しています。加えて、リスク管理は管理職を含めた従業員の能力評価に組み込まれるとともに、報酬に関する評価に反映されています。

また、取締役・監査役に向けては、定期的に、リスク管理、コンプライアンスなどに関する社内外の研修等を実施しており、社外取締役や社外監査役に対しても、リスク管理に関する適切な助言を得るため、就任時、また就任後も定期的に、リスクの選定と対策状況、リスクの見直し結果をはじめ、当社グループの事業内容、直近のリスク動向・技術動向を含めた最新のリスク関連情報などを説明し、理解する機会を設けています。

 

 

3.事業等のリスク

(1) 経営戦略上のリスク

当社グループは、スマートフォンやブロードバンド契約数の拡大、および5Gの取り組みを通じ、通信事業のさらなる成長を目指しています。そのため、安全性と信頼性の高い通信ネットワークを構築し、継続して安定的に運用していくことや、特長の異なる3つのブランドを提供するマルチブランド戦略の推進などが重要であると考えています。また、「Yahoo! JAPAN」、「LINE」といったインターネットサービスや、キャッシュレス決済サービス「PayPay」などAI、IoT、FinTechなどの最先端テクノロジーを活用したビジネスの立ち上げを通じ、引き続き通信以外の領域の拡大を目指します。

係る戦略に関連して経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。

 

a. 経済情勢、規制環境および市場環境の変化、他社との競合について

 

(a)市場環境の変化

 日本の人口は高齢化と少子化が進むなか減少に向かっており、国内の通信関連市場、インターネット関連市場および金融関連市場等の拡大の継続性には、不透明な要素があります。

・通信関連市場

 近年、日本の通信関連市場においては、競争促進政策の強化や異業種からの新規参入などによって経営環境が大きく変化し、利用者からはより低廉で多様なサービスを求める動きが高まっています。しかし、これらの市場環境に対応するため、当社グループは、例えば、特長の異なる3つのブランド(「ソフトバンク」、「ワイモバイル」、「LINEMO」)を提供するマルチブランド戦略の推進など、消費者の志向に合ったサービス・商品・販売方法を導入していますが、当社グループが料金プランや通話・データ通信の品質等の面で消費者の期待に沿えない場合や当社グループが提供するサービス・商品に重大な瑕疵が存在した場合、既存の契約者数を維持できない可能性があります。また、法令・規制・制度などの制定、改正または解釈・適用の変更等により、当社グループが顧客に提供できるサービス・商品・販売方法および料金プラン等が実質的な制約を受け、収入の減少や金銭的負担の発生・増加が起きることにより、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。その他にも、予期せぬ市場環境の変化によりコストが増大する、または想定しているコスト効率化が実現できない可能性があります。

・DX/ソリューション関連市場

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の動きがますます加速しており、急速に拡大する企業のデジタル化ニーズに応えたDX/ソリューション商材の販売等や、パートナーとの「共創」を通じ、社会課題の解決に取り組んでいます。しかし、当社の提供する商品またはサービスが企業のニーズを捉えることができなかった場合、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

・インターネット関連市場

 日本のインターネット全体の利用規模、景気の動向、有料会員数、有料サービスの利用状況などに影響を受ける可能性があります。当社グループでは、利用者にとって正確で有益なサービスの提供、安心、安全な利用体験、広告媒体としての価値を向上させる活動、啓発、有料会員向けの魅力的な特典、コンテンツの提供などを通じ、利用者の維持拡大に努めていますが、これらの施策が十分に奏功せず、市場環境の変化等が当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

・金融関連市場

 政府や自治体の経済対策の進展を受け、日本ではキャッシュレス化が進んでいます。利用者にとって利便性の高いサービスを提供するために、キャッシュレス決済サービスの機能の見直し、拡充に取り組むとともに、当社グループのキャッシュレス決済サービスが利用可能な加盟店の拡大にも努めています。しかし、市場環境や規制の変化に当社グループが適時かつ適切に対応できず、または何らかの事由により当社グループの期待通りにサービスを提供できないもしくは顧客を維持・獲得できない状況が生じた場合、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

・新規事業関連市場

 当社グループは、当社グループが有する通信、eコマース、決済、SNSといった異なる複数の分野における顧客基盤を強みに、AI、FinTech、モビリティ、ヘルスケア、再生可能エネルギーなどの領域で、最先端テクノロジーを活用した革新的な新規事業の創出・拡大を目指します。しかし、経済情勢、規制環境および市場環境の変化等により、当社グループの事業が想定どおりに進展せず、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(b)他社との競合

 日本の市場において、当社グループの競合他社は、その資本力、サービス・商品、技術開発力、価格競争力、顧客基盤、営業力、ブランド、知名度およびこれらの総合力などにおいて、当社グループより優れている場合があります。競合他社がその優位性を現状以上に活用してサービスや商品の販売に取り組んだ場合、当社グループが価格競争を含む販売競争で劣勢に立たされ、当社グループの期待通りにサービス・商品を提供できない、顧客を維持・獲得できない、またはARPU(注)が低下することも考えられます。その結果として、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、通信、インターネット、キャッシュレス決済に係る市場では、設立間もない新興企業や新規参入者によるサービス・商品がユーザーの支持を集め、急速に広まることがあります。当社グループでは、ユーザーの意見や動向を捉え、ユーザーの支持を集めることができるサービス・商品の提供を追求していきますが、設立間もない新興企業や新規参入者のサービス・商品が当社グループのサービス・商品に対する競合となる可能性、または当社グループが競争優位性を発揮するための新規サービス・商品の開発に費用がかかり、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(注) ARPU(Average Revenue Per User):1契約当たりの月間平均収入

b. 技術・ビジネスモデルへの対応について

 当社グループは、技術やビジネスモデルの移り変わりが早い情報産業を主な事業領域としています。情報産業においては、AI、IoT、ビッグデータの活用が急速に進展し、DXの動きが加速するに連れて、業界を超えたより多様かつ高度なサービスの提供が求められるようになってきています。特に生成AIの分野の発展はめざましく、既存のビジネスモデルに大きな影響を与えています。当社グループは、常に最新の技術動向や市場動向の調査、技術的優位性の高いサービスの導入に向けた実証実験、および他社とのアライアンスの検討などの施策を講じていますが、新たな技術への対応が想定通りの時間軸に沿って進むこと、想定通りの効果を上げること、共通の基準や仕様が確立すること、および商用性を持つようになることについての保証もなく、また、これらの施策を行ったとしても、新たな技術やビジネスモデルの出現を含む市場環境の変化に当社グループが適時かつ適切に対応できず、または迅速かつ効率的に設備を配備できないことにより、市場変化に適した優れたサービス、技術やビジネスモデルを創出または導入できない可能性があります。その場合、当社グループのサービスが市場での競争力を失い、当社グループが維持・獲得できる契約数が抑制される、またはARPUが低下することにより、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

c. 情報の流出や不適切な取り扱いおよび当社グループの提供する商品やサービスの不適切な利用について

 当社グループは、事業を展開する上で、顧客情報(個人情報を含みます。)やその他の機密情報を取り扱っています。当社グループは、チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)および最高情報セキュリティ責任者であるチーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO)が主導し、顧客情報やその他の機密情報に関する作業場所を所定のエリアに限定し、当該エリア専用の入退室管理ルールを設けるなど徹底した物理的管理を行っています。技術的管理としても、当該エリア内にあるセキュリティ・オペレーション・センター(SOC)などにおいて、AIを活用した内部不正の予兆検知(ふるまい検知)を強化し、役職員による業務パソコンの使用状況、社内ネットワークの利用状況、社内の各サーバーへのアクセス状況等を監視するとともに、社外からのサイバー攻撃による不正アクセスを監視・防御することで、セキュリティレベルの維持・管理を行っています。また、情報のセキュリティレベルに応じて、当該情報に対するアクセス権限や使用するネットワークなどの分離・独立を実施しています。さらに、チーフ・データ・オフィサー(CDO)およびCDO室が主導し、社内外データの管理・戦略的利活用の方針およびルールを整備し、通信の秘密・個人情報等の取り扱いに関する社内管理体制を強化しています。加えて、国内外で事業を展開する上で必要となる各国の個人情報保護等に関する法令への対応も行っています。対策の実施にあたり、役職員にセキュリティ教育・訓練を徹底し、当社の情報資産にかかわる全員が、情報セキュリティリテラシーを持って業務を遂行できる体制の構築や、OA環境および業務用スマートフォンの管理の強化を行っています。これらの取り組みにもかかわらず、当社グループ(役職員や委託先の関係者を含みます。)の故意・過失、または悪意を持った第三者によるサイバー攻撃、ハッキング、コンピューターウイルス感染、その他不正アクセスなどにより、これらの情報の流出や消失などが発生する可能性があります。

 また、当社グループの提供する商品やサービスが詐欺等の犯罪等に不正に利用された場合、当社グループの信用および信頼の低下を招く可能性があります。

 こうした事態が生じた場合、当社グループの信頼性や企業イメージが低下し顧客の維持・獲得が困難になるほか、競争力の低下や、損害賠償やセキュリティシステム改修のために多額の費用負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、LINEヤフー㈱については、2023年10月1日付でZホールディングス㈱を存続会社とし、同社ならびにLINE㈱およびヤフー㈱を中心としたグループ内再編に関する手続きが完了し、Zホールディングス㈱からLINEヤフー㈱に商号変更されました。LINEヤフー㈱においては、LINEヤフー㈱のグループ会社全体のデータガバナンスが円滑かつ適切に機能するよう体制を整え、その強化に取り組んでいます。今後もこうした取り組みを継続していきますが、係る対策やガバナンス強化の施策が有効に機能しないことによる当局から当社グループへの行政処分、当社グループの信用の毀損、当社グループのサービスへの需要の減少、追加の対策の策定・実施、また、データの漏洩やその恐れとなる事象の発生等により、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、LINEヤフー㈱は、同社が2023年11月27日に公表した不正アクセスの事案に関し、総務省および個人情報保護委員会へ報告を行い、2024年3月5日および4月16日に総務省より行政指導を、同年3月28日に個人情報保護委員会より勧告および報告等の求めを受けました。現在、LINEヤフー㈱はこれらの行政指導および勧告を踏まえた対応等を進めており、総務省に対しては2024年4月1日に再発防止等に向けた取組に関する報告書、個人情報保護委員会に対しては同年4月26日に再発防止策の実施状況等をまとめた報告書を提出し、対応を進めています。しかし、LINEヤフー㈱および当社の取り組みが適切ではない、または十分ではないと判断された場合、当社グループの信用の毀損、当社グループのサービスへの需要の減少等により、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

d. 国際情勢の不安定化について

 当社グループは、通信機器・設備、顧客向け商品や開発資材などを国内外の取引先からも調達しています。また、通信サービスを提供する上では、基地局やネットワーク設備、データセンターなどで多くの電力を使用しています。当社グループは、サービス・商品の提供を安定的に行うため、国際情勢に関する情報収集やサプライヤーの分散化・多様化などによりサプライチェーンの強化に努めています。また、中長期的には環境負荷の少ない通信インフラや次世代電池の実用化に向けた研究開発のほか、政府や業界団体との連携により、電力価格の変動による事業運営への影響を最小限に抑えるよう取り組んでいます。これらの対策にも関わらず、国際社会における国家間の対立、地域紛争や武力行使等により、世界的な輸送遅延、半導体などの不足、サイバー攻撃などに起因する取引先の事業停滞・停止によるサプライチェーンの分断などが起こった場合には、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。また、原油価格の高騰による輸送費等の増加や、国際情勢の変化による国家の政策や法規制などの変更により、基地局やネットワーク設備などに関する取引先の変更や設備の切り替えのための費用が発生する可能性があります。さらに、継続的に電力価格が上昇する場合や、エネルギー調達に支障が生じてサービス・商品の安定的な供給が困難となる場合には、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(以下、経済安全保障推進法)に基づき、2023年11月16日に当社およびLINEヤフー㈱は電気通信事業における特定社会基盤事業者(基幹インフラ事業者)に指定されました。2024年5月17日から本制度の規律が適用されていますが、当社またはLINEヤフー㈱が経済安全保障推進法が定める国による審査に適切に対応できなかった場合、当局からの当社またはLINEヤフー㈱に対する事業の是正や中止の勧告、命令等の行政措置、それに伴う事業の一時停止、遅延、追加の設備投資並びに追加の対策やコスト、当社グループの信用の毀損が生じる可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

e. 安定的なネットワークの提供について

(a) 通信ネットワークの増強について

 当社グループは、競争力の維持および顧客基盤の維持・拡大を目的として通信サービスの品質を維持・向上させるために、将来のトラフィック(通信量)を予測し、その予測に基づいて継続的に通信ネットワークを増強していく必要があります。これらの増強は計画的に行っていく方針ですが、実際のトラフィックが予測を大幅に上回った場合、または通信ネットワークの増強(例えば、必要な周波数の確保を含みますが、これに限りません。)を適時に行えなかった場合、サービスの品質および信頼性や企業イメージの低下を招き顧客の維持・獲得に影響を及ぼすほか、追加の設備投資が必要となり、その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの通信サービスの提供はネットワークシステムのパフォーマンスおよび十分な周波数帯の確保に依存しています。将来において、必要な周波数帯を確保できなかった場合、競合他社と比べてサービスの品質が低下し、または計画通りにネットワークを拡大することができなくなり、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。さらに、周波数帯の割当てにオークション制度が導入されたり、割当ての要件として一定の費用負担を行うことが求められるようになる場合など、多額の資金拠出が必要になる可能性があり、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があるとともに、新規事業者の参入が容易になる可能性があります。

(b) 自然災害など予測困難な事情について

 当社グループは、インターネットや通信などの各種サービスの提供に必要な通信ネットワークや情報システムなどを構築・整備しています。近年、南海トラフ地震や首都圏直下型地震の発生確率の高まりや気候変動の進行等から、地震や台風など大型の自然災害の被害を受けるリスクが増加しています。地震・

 

 

 

 

(b) 自然災害など予測困難な事情について

台風・洪水・津波・竜巻・豪雨・大雪・火山活動などの自然災害および近年の気候変動に伴うこれら災害の大規模化、火災や停電・電力不足、テロ行為、新型コロナウイルスなどの感染症の流行などにより、通信ネットワークや情報システムなどが正常に稼働しなくなった場合、当社グループの各種サービスの提供に支障を来す可能性があります。当社グループは、こうした事態が発生した場合においても安定した通信環境を確保できるようにネットワークの冗長化、応急復旧体制の構築、ネットワークセンターおよび基地局での停電対策等を導入しているほか、ネットワークセンターやデータセンター等の重要拠点やIT監視体制の拠点を全国に分散することでサービス提供への影響の低減を図る対策を講じています。

 もっとも、係る対策はあらゆる障害を回避できるものではなく、実際に各種サービスの提供に支障を来す場合、およびこれらの影響が広範囲にわたり、復旧に相当時間を要した場合、信頼性や企業イメージが低下し、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。また、通信ネットワークや情報システムなどを復旧・改修するために多額の費用負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

f. 他社の買収、業務提携、合弁会社設立、グループ内組織再編等について

 当社グループは、戦略を実行していく上で、合弁企業の設立や子会社化を行うなど、他社の買収やその他の株式投資を行う可能性があります。また、当社グループの事業、財務、業績にとって戦略的に重要と思われる他の資産を買収する可能性があります。加えて、当社グループの内部においても戦略上の必要に応じて株式や資産の移動を伴う再編を実施する可能性があります。

 当社グループは、各投資の実行の検討に際し、必要十分なデュー・ディリジェンスを実施した上で、定められた承認プロセスを経て投資判断を行っていますが、当社グループの投資先会社が見込み通りの業績を上げることができない場合、当社グループが投資時の企業価値算定を過大に見積もっていた場合、または既存事業への新規事業の統合や統合後の内部管理体制の構築が奏功しない場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが将来的な買収や投資のために資金を借り入れた場合、または買収した企業に未払いの負債があることが判明した場合、当社グループの債務負担が増加し、キャッシュ・フローを悪化させ、事業運営資金の不足に陥る可能性があります。これらのリスクの顕在化は当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの業務提携先や合弁先と共同事業を行う場合には、一般的に当局の許認可の取得や、当該業務提携先や合弁先と共同事業の内容についての合意が前提となります。また、当社グループの業務提携先や合弁先に対して当社グループが支配権を有するとは限らず、これらの会社が、当社グループの意向にかかわらず、事業戦略を大幅に変更する可能性があります。さらに、第三者割当増資や当社グループ以外の株主がコールオプションを行使したことによる当社グループの持株比率の低下や、その経営成績や財政状態の大幅な悪化の可能性もあります。これらの場合、その業務提携、合弁事業などが期待通りの成果を生まない可能性や、継続が困難となる可能性があります。また、特定の第三者との業務提携や合弁事業などを実施したことにより、他の者との業務提携や合弁事業などが制約される可能性もあります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループ内部における再編を行う場合には、重複する経営資源の効率化、意思決定の迅速化や事業間におけるより大きなシナジーの創出などを目的としています。しかし、期待した再編の効果を十分に発揮できない場合、展開するサービスの連携の不調・遅れ、戦略やシナジーへの悪影響、再編に伴う混乱などの問題の発生などにより、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

g. 他社経営資源への依存について

(a) 業務の委託

 当社グループは、提供する各種サービス・商品に係る販売、顧客の維持・獲得、通信ネットワークの構築およびメンテナンス、ならびにそれらに付随する業務の全部または一部について、他社に委託しているほか、情報検索サービスにおいて他社の検索エンジンおよび検索連動型広告配信システムを利用しています。

 当社グループは、業務委託先を含むサプライヤーの選定時には購買規程に則った評価・選定を行うとともに、新規取引開始時には、当社の「サプライヤー倫理行動規範」を遵守することを盛り込んだ取引基本契約書を締結した上で、取引開始後もサステナビリティ調達調査を通じたリスクアセスメントの実施、サプライヤー評価および課題の抽出、サプライヤーへのヒアリング実施などPDCAサイクルの構築によって、サプライチェーン上のリスクの低減に努めています。しかし、これらの対策にも関わらず、業務委託先(役職員や関係者を含みます。)が当社グループの期待通りに業務を行うことができない場合や、顧客に関する情報の不正取得や人権侵害等に関連する問題を起こした場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 また、上述のような事象により当該業務委託先の信頼性や企業イメージが低下した場合には、当社グループの信頼性や企業イメージも低下し、事業展開や顧客の維持・獲得に影響を及ぼす可能性があり、その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 このほか、当該業務委託先において法令などに違反する行為があった場合、当社グループが監督官庁から警告・指導を受けるなど監督責任を追及される可能性があるほか、当社グループの信頼性や企業イメージが低下し顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(b) 他社設備などの利用

 当社グループは、通信サービスの提供に必要な通信ネットワークを構築する上で、他の事業者が保有する通信回線設備などを一部利用しています。当社グループでは、原則として、複数の事業者の通信回線設備などを利用していく方針を採用していますが、今後、複数の事業者の当該設備などを継続して利用することができなくなった場合、または使用料や接続料などが引き上げられるなど利用契約が当社グループにとって不利な内容に変更された場合、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(c) 各種機器の調達

 当社グループは、通信機器やネットワーク関連機器など(例えば、携帯端末や携帯電話基地局の無線機を含みますが、これらに限りません。)を調達しています。当社グループでは、原則として複数のサプライヤーから機器を調達してネットワークを構築していく方針を採用していますが、それでもなお特定のサプライヤーへの依存度が高い機器が残ることも予想されます。特定のサプライヤーへの依存度が高い機器の調達において、供給停止、納入遅延、数量不足、不具合などの問題が発生しサプライヤーや機器の切り替えが適時に多額のコストを要さずに行うことができない場合、または性能維持のために必要な保守・点検が打ち切られた場合、当社グループのサービスの提供に支障を来し、顧客の維持・獲得が困難になる可能性やサプライヤーの変更のために追加のコストが生じる可能性のほか、通信機器の売上が減少する可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

h. 「ソフトバンク」ブランドの使用および侵害について

 当社は、2018年3月にソフトバンクグループ㈱との間で締結した、ライセンス料一括支払いによる同年3月31日から原則無期限のブランド使用権および再許諾権が付与される旨の契約に基づき、社名、社標、商標およびドメインネームとして「ソフトバンク」ブランドを使用(移動体通信における通信サービスおよび携帯端末などに関する商標使用は専用的使用)すること、また当社の子会社に対して当該使用を再許諾(サブライセンス)することができます。

 当社グループは、「ソフトバンク」ブランドのイメージの維持・向上を図り、顧客からの信頼を守るため、各種ブランド保護施策を推進しています。しかし、当社または再許諾を受けた当社の子会社が、当該契約への違反を一定期間継続した場合やソフトバンクグループ㈱の信用または利益を害する行為をした場合などには、ソフトバンクグループ㈱は、当該契約を解約することができます。これにより当社は「ソフトバンク」ブランドの使用および再許諾を継続できなくなり、関連して資産計上している商標利用権の減損損失が発生する可能性があります。また、ソフトバンクグループ㈱が保有している「ソフトバンク」ブランドなどの知的財産権が第三者により侵害された場合には、当社グループの信頼性や企業イメージが低下する可能性があります。

i. 関連システムの障害などによるサービスの中断・品質低下について

 当社グループでは、通信ネットワークや顧客向けのシステム、「Yahoo! JAPAN」、「LINE」、「PayPay」をはじめとする各種サービスを提供しています。これらサービスにおいて人為的なミスや設備・システム上の問題、第三者によるサイバー攻撃、ハッキングその他不正アクセスなどに起因して各種サービスを継続的に提供できなくなること、または各種サービスの品質が低下することなどの重大なトラブルが発生する可能性があります。当社グループは、提供サービスに応じた責任者(CTO、チーフ・ネットワーク・オフィサー(CNO)、およびチーフ・インフォメーション・オフィサー(CIO)など)を設置しており、それらの者が主導し、ネットワークを冗長化するとともに、障害やその他事故が発生した場合に備え、復旧手順を明確にしています。また、障害やその他事故が発生した場合、規模に応じて事故対策本部を設置するなど、適切な体制を構築して復旧にあたっています。これらの対策にもかかわらず、サービスの中断や品質低下を回避できず、サービスの中断・品質低下による影響が広範囲にわたり、復旧に相当時間を要した場合、信頼性や企業イメージが低下し、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

j. 人材の育成・確保について

 当社グループは、技術革新に即応できる人材の育成・確保が重要であるとの考えから、人材育成に注力していますが、期待通りの効果が出るまで一定の期間を要することがあります。また、人材の育成・確保のための人材投資コストが将来的に増加する可能性があります。当社グループでは、チーフ・ヒューマン・リソーシズ・オフィサー(CHRO)および人事部門長などの責任者が主導し、高市場価値の人材に対し、その専門性の高さを踏まえた報酬制度を導入することで人材の確保を図っています。加えて、各社員の職場への適応状況や今後のキャリアについての定期的な面談や調査等の実施により、事業の持続的な成長を支える優秀な人材の定着を図っています。これらの取り組みにもかかわらず、事業運営に必要な技術者等の人材を予定通り確保できない場合、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループはダイバーシティの推進に力を入れており、多様な人材が活躍できる環境整備や社内周知の徹底、研修実施等に取り組んでいますが、多様性を認め合い、生かすことに関する社会的要求に応えられなかった場合、当社グループの信頼性や企業イメージの低下、人材を予定通りに確保できないことなどにより、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

k.  気候変動について

 当社グループは、基地局設備を始めとして多くの電力を使用する通信事業を行っていることから、気候変動への対応が不可欠と捉えています。そのため、当社グループでは、温室効果ガス排出量をサプライチェーン全体で実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現に向けて、当社グループの事業活動で使用する電力などによる温室効果ガスの排出量を2030年度までに実質ゼロにする(注1)「カーボンニュートラル2030宣言」に加え、2050年度までに取引先などで排出される温室効果ガスの排出量も含めた「サプライチェーン排出量」を実質ゼロ(注2)とすることに取り組んでいます。また、当社は、2020年4月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、TCFDの提言に基づきシナリオ分析など気候変動の影響の評価を実施しています。これ

 

 

 

ら評価結果や温室効果ガス排出量等の環境負荷データについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 気候変動 c.戦略」および「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 気候変動 d.指標と目標」に記載しています。

 これらの対策にもかかわらず、気候変動の進行に伴い、自然災害による甚大な被害が発生した場合や、脱炭素化社会の実現に向けた新たな法令・規制の導入や強化がなされた場合等には、当社グループの所有する通信ネットワークや情報システム設備に係る費用の負担が増加するなど、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの気候変動に関する取り組みや開示が不十分と判断された場合や、顧客、従業員、サプライヤー、投資家、地域社会、国・行政機関等からの理解が十分に得られなかった場合、事業運営に支障を来す可能性があります。

(注1) ソフトバンク㈱単体のスコープ1(自らによる温室効果ガスの直接排出)とスコープ2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)が対象

(注2) スコープ、スコープに加え、スコープ3(事業者の活動に関連する他社の排出)が対象

 

 

(2) 法令・コンプライアンスに関するリスク

a. 法令・規制・制度などについて

 当社グループは、電気通信事業法、電波法、金融、電力、デジタルプラットフォームなどの事業固有の法令はもとより、企業活動に関わる各種法令・規制・制度(環境、公正な競争・取引の透明性、消費者保護、個人情報・プライバシー保護、贈収賄禁止、労務、知的財産権、租税、為替、輸出入に関するものを含みますが、これらに限りません。)の規制を受けています。また、事業を営むために必要な許認可等の多くには、さまざまな条件が付されることがあり、その遵守が求められます。

 当社グループ(役職員を含みます。)がこれらの法令・規制・制度などに違反する行為を行った場合、違反の意図の有無にかかわらず、行政機関から行政指導や行政処分(登録・免許の取消や罰金を含みますが、これらに限りません。)を受けたり、取引先から取引契約を解除されたりする可能性があります。

 当社グループは、法務部門主導で、各種法令および法令に基づくガイドラインの改正のモニタリングを行うとともに、改正がある場合には必要に応じて業務の運用方法の変更などの対策を講じているほか、必要に応じて弁護士等の外部専門家への相談を行っていますが、すべての違反行為を未然に防ぐことは困難な場合があります。その結果、当社グループの信頼性や企業イメージが低下したり、事業展開に支障が生じたりする可能性があるほか、金銭を含む経営資源に係る負担の発生等により、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。ただし、当連結会計年度末現在において、これらの免許および登録の取消事由および更新拒否事由は存在していません。

 また、当社グループは、各子会社・関連会社からの報告体制の整備やコミュニケーション強化、リスクアセスメント等による子会社・関連会社のリスク把握に努めていますが、不正等を未然に防止することができなかった場合には、当社グループの信用の毀損、当社グループのサービスへの需要の減少等により、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、将来、当社グループの事業に不利な影響を与え得る法令・規制・制度の導入や改正が実施される可能性があります。当社グループの展開する移動通信事業は、無線周波数の割当てを行政機関より受けており、その意向による直接的・間接的な影響を受けやすい事業です。今後、当社グループの事業に不利な影響を与え得る法令・規制・制度が導入されるかどうか、および、その導入による当社グループ事業への影響を正確に予測することは困難ですが、仮に導入された場合には、当社グループが顧客に提供できるサービス・商品および料金プラン等が実質的な制約を受け、収入の減少や金銭的負担の発生・増加が起きることにより、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

b. 訴訟などについて

 当社グループは、事業活動を行うにあたり、適用のある法令・規則・制度や契約書等に記載されている契約条件を確認し、これに違反することのないよう十分留意していますが、顧客、取引先、株主(子会社・関連会社・投資先の株主を含みます。)および従業員等を含む第三者の権利(知的財産権を含みます。)および法的に保護されている利益を侵害した場合、権利侵害の差止め、損害賠償、対価等の請求を受ける、または行政機関による調査等の対象となる可能性があります。その結果、当社グループの企業イメージが低下する可能性があるほか、サービス・商品および事業上の慣行について変更を余儀なくされたり、金銭を含む経営資源に係る負担の発生等により、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) 財務・経理に関するリスク

a. 資金調達について

 当社グループは、銀行借入や社債発行、債権流動化、リース等による資金調達を行っています。よって、金利が上昇した場合、または当社および子会社の信用力が低下した場合、これらの調達コストが増加し、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは、財務部門長が主導し、資金調達手段(銀行借入や社債発行、債権流動化による借入、リースを含みますが、これらに限りません。)の多様化等を通じて十分な資金および融資枠を保持する財務基盤を構築するとともに、手元流動性を考慮しつつ、資金調達のコントロールを行っていますが、金融市場の環境によっては、資金調達が当社グループの想定通り行えず、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの金融機関からの借入に際しては財務制限条項が付帯されています。内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 24.有利子負債」をご参照ください。

 当社グループでは、財務制限条項に抵触しないよう、財務部門において各事業部門の事業計画を横断的にモニタリングするとともに、債務保証や貸付等の財務制限条項に抵触する可能性のある取引の実行は、財務部門の事前の承認があることを前提条件としています。これらの対応策にもかかわらず、財務制限条項を遵守することができない場合、当社グループは期限の利益を失い、借入金の一部または全額の返済を求められ、または新規借入が制限される可能性があります。

b. 会計制度・税制の変更などについて

 当社グループでは、研修などを通じて従業員に会計制度や税制の変更などについて周知徹底するとともに、必要に応じて顧問税理士等の外部専門家への相談を行っていますが、会計基準や税制が新たに導入・変更された場合や、税務当局との見解の相違により追加の税負担が生じた場合、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

c. 減損損失について

 当社グループは、事業を遂行する過程で、資金をさまざまな資産に投資します。その結果、例えば、通信ネットワークの構築に必要な無線設備、交換機、鉄塔、アンテナ、その他ネットワーク機器、建物、備品などの有形固定資産や、ソフトウエア、商標利用権、周波数関連費用、のれんなどの無形資産、他社との業務提携や合弁会社設立にあたり出資した関連会社株式等の金融資産を含む資産を保有しています。

 当社グループではこれらの資産につき定期的にモニタリングする体制を構築し、IFRSに基づき、適切に減損の判定を実施していますが、その結果、投資金額を回収するのに十分な将来の経済的便益が見込めないと判断した場合には、減損損失が発生し、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当該判断には当社グループによる見積りの要素が大きく、また減損損失の発生時期および金額を正確に予測することはできません。

 

 

 (4) 上記以外に、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項

a. 経営陣について

 当社グループの重要な経営陣に不測の事態が発生した場合に備え、他の役員による職務の代行が可能な体制を構築していますが、代行が十分に機能しない場合、当社グループの事業に支障が生じる可能性があります。

 

b. 親会社との関係について

(a) 親会社が株主総会の決議事項に関する支配権または重大な影響力を有することについて

 当社の親会社であるソフトバンクグループ㈱は、当連結会計年度末において、当社の議決権のうち40.68%をソフトバンクグループジャパン㈱を介して実質保有しています。ソフトバンクグループ㈱の当社株式の所有割合および当社に対する議決権保有割合は、当社による自己株式の取得や新株予約権の保有者による行使などの状況により変動しますが、ソフトバンクグループ㈱は、株主総会の特別決議を要する事項(例えば、吸収合併、事業譲渡、定款変更等を含みますが、これらに限りません。)および普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関して、その時々の議決権保有割合に応じて特別決議を要する事項についての拒否権を含む重大な影響力を有することになります。当社は、独立社外取締役およびCEOで構成され独立社外取締役が議長を務める指名委員会および報酬委員会の2つの委員会を任意に設けることで独立性の担保を図っています(注)。しかし、それでもなお株主総会の承認を必要とする事項に関し、ソフトバンクグループ㈱が影響を及ぼす可能性があります。なお、事前承認事項等はありません。

 また、ソフトバンクグループ㈱との良好な関係は当社グループの事業の核であり、何らかの理由により関係が現実に悪化した場合または悪化したと受け取られた場合には、当社グループの事業、財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社とソフトバンクグループ㈱との間の主な関係等についての詳細は、下記「(b)役員の兼任について」から「(e)ソフトバンクグループとの取引関係について」に記載の通りです。

(注)特別委員会については、当社の取締役の過半数が独立社外取締役となったことにともない、2024年6月20日付で廃止しました。

(b) 役員の兼任について

 当社の取締役のうち、孫正義氏がソフトバンクグループ㈱の役員を兼任しています。孫氏は、親会社であるソフトバンクグループ㈱の代表取締役会長 兼 社長執行役員を兼任しています。これは、孫氏がソフトバンクグループを率いてきた豊富な実績と経験が、当社取締役会の機能強化に資すると考えているためです。

 また、当社の監査役のうち、君和田和子氏はソフトバンクグループ㈱の常務執行役員を兼任しています。これは当社の監査体制強化を目的とするものです。

(c) 従業員の出向および兼任について

 ソフトバンクグループでは、業務の効率性、事業上の必要性、人材育成および各職員の将来像を踏まえたキャリアパス形成の観点から、積極的なグループ内での人材交流が行われており、当社においてもソフトバンクグループ㈱を含めたグループ内他社から出向社員を受け入れています。

 ただし、この場合には業務分掌を受けた組織体の責任者であるライン長(各組織体における組織長)以上については、親会社からの独立性および経営の安定性の観点から、グループ内他社との兼務はしない方針です。また、ソフトバンクグループ㈱との間の出向については、当社の事業上必要と判断するものを除きライン長以外の社員の兼務も解消しています。

 当社からソフトバンクグループ㈱を含めたグループ内他社への出向については、当社の事業上必要と判断するもののみ実施しており、その範囲において、今後も継続する方針です。

 

 

 

(d) ソフトバンクグループ内の他社との競合について

 現在当社グループの方針決定および事業展開の決定については、当社グループ独自に決定しており、また、ソフトバンクグループ内の他社との競合関係はありません。しかし、ソフトバンクグループ㈱およびその子会社は世界中でさまざまな事業の運営に関わっており、また、新たな事業や投資の検討を日々行っていることから、今後、当社グループは投資機会の追求にあたりグループ内他社と競合する可能性があります。当社グループとしては、それらの会社との連携を検討するなどの対応を行っていきますが、当社グループの事業に何らかの影響を及ぼす可能性があります。

(e) ソフトバンクグループとの取引関係について

 当社グループは、ソフトバンクグループ内の各社と取引を行っています。

 当社は、独立性の観点を踏まえ、ソフトバンクグループ㈱も含めた関連当事者との取引について「関連当事者規程」および「関連当事者取引管理マニュアル」を定めており、特に重要な取引については、これらの規程やマニュアルに基づき、その取引が当社グループの経営上合理的なものであるか、取引条件が外部取引と比較して適正であるかなどの観点から、都度取締役会の承認を得ることとしています。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、中長期的に企業価値を高めるとともに、株主の皆さまに利益を還元していくことを重要な経営課題の一つとして位置付けています。配当については、業績動向、財政状態、キャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案して安定性、継続性に配慮しながら実施していく方針です。

内部留保資金については、今後の企業としての成長と、財務基盤の安定のバランスを鑑みながら、有利子負債の返済、設備投資、M&A等の投資等に充当していきます。企業価値の向上のために、5Gのさらなる高度化のための設備投資を効率的に行うことに加え、新規事業への投資も継続して取り組んでいきます。

当社の剰余金の配当は、中間配当および期末配当の年2回を基本的な方針としています。当社は、中間配当および期末配当のほか、基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨、および剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨を定款に定めています。

また、次期の配当については、普通株式1株当たり年間86円(うち中間配当金43円、期末配当金43円(注))を予定しており、第1回社債型種類株式については所定の金額の配当を実施していきます。

 

(注) 2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき10株の割合をもって分割する予定です。 

   次期の期末配当金については、当該株式分割を考慮しない金額を記載しています。

   当該株式分割を考慮した場合は、4円30銭となります。

 

 

基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下の通りです。

 

決議年月日

株式の種類

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

2023年10月23日

取締役会決議

普通株式

203,478

43円00銭

2024年5月17日

取締役会決議

普通株式

第1回社債型種類株式

202,461

1,246

43円00銭

41円53銭