リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する項目は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境について
① EC市場の動向
当社グループが属する通販物流業界は、EC市場の拡大、ネットショッピング利用者の増加、スマートデバイスの普及等により成長を続けてまいりました。このような傾向は今後も継続していくものと考えておりますが、セキュリティの脅威や法規制、その他の予期せぬ要因等によってEC市場の成長が阻害される状況が生じた場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 他社との競合
当社グループが属する通販物流業界は、EC市場の拡大に伴い、それを好機として競合他社は増加しつつあります。当社の提供する物流代行サービスや運営代行サービスは、通販事業者が満足する品質や価格の提供を維持することに努めており、競合他社が増加しつつあるものの、当社事業は順調に拡大しております。
しかしながら、競合他社との品質や価格等の競争が激化した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ 宅配事業者による影響
当社グループが属するBPOサービス事業は、宅配事業者に宅配サービスを委託し、購入者に商品を届けることができることでサービスの提供が成り立っております。現在、宅配事業者を取り巻く市場環境は、重労働問題や雇用情勢改善による人手不足もあり、労働者の賃金値上げにより、当社も運賃値上げ等の影響を受けております。当社の宅配サービスの外注先については、大手宅配事業者に委託する割合が相対的に大きく、これらの会社が何らかの事情で宅配事業が行えなくなることやこれらの会社との取引ができなくなる可能性はゼロではありません。
このようなリスクを踏まえ、当社は既存の大手宅配事業者との継続的な交渉、他の大手宅配事業者や地域宅配事業者の新規開拓等に努めておりますが、これらの施策にも係わらず、運賃値上げや宅配個数制限の影響を回避できなかった場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ FCの賃貸借契約及び賃借料上昇に関するリスク
当社グループは拠点であるFCを賃借しております。何らかの事情により当該FCの継続使用が困難になった場合、又は契約更新時等に賃借料が上昇した場合、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2)法的規制について
当社グループのBPOサービス事業は、「倉庫業法」、「貨物利用運送事業法」、「個人情報保護法」等の法的規制が存在します。当社では、上記を含む各種法的規制について、法令遵守体制の整備・強化及び社員教育を行っております。
本書提出日現在において各種許認可等の取消事由は発生しておりませんが、今後新たな法令の制定や既存法令等の改正又は解釈の変更が行われ、当社が新たな規制に適時適切に対応することができない場合、許認可等の取消を受けた場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
許認可事業 |
法律 |
監督官庁 |
許認可等の内容 |
有効期限 |
取消事由 |
倉庫業 |
倉庫業法 |
国土交通省 |
登録 |
なし |
同法第21条 |
第一種貨物利用運送事業 |
貨物利用運送事業法 |
国土交通省 |
登録 |
なし |
同法第16条 |
(3)設備投資について
当社グループは今後のEC市場に伴う当社グループ事業の需要拡大に備え、FCの新設等を目的とした設備投資を行っております。FCの新規開設を行った場合には、新規投資に見合う水準までFCの稼働率が上昇するまでに一定の期間を要するほか、借入面積の増加に伴う賃借料負担の増加や新FC立上げに伴う人員増強のための労務費増加等の先行投資が発生するため、一時的に営業損益の低下要因となる傾向があります。
さらに、事業環境の予期せぬ変化等により、計画した成果や資金回収が得られない場合又は資産が陳腐化した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4)人材の確保について
当社グループ事業が持続的な成長を達成するためには、人材の確保及び育成が重要であると考えております。現在、労働人口の減少や雇用情勢の改善による人手不足の影響もあり、従業員の採用は厳しい状況であります。今後、雇用情勢がさらに悪化し、従業員の採用や育成した従業員の定着が順調に進まなかった場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(5)情報セキュリティについて
当社グループは顧客である通販事業者の商品の配送に関して、購入者の個人情報を含む膨大な注文に関する情報を保有しております。そのため、システム設計、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定等、情報の取り扱いには十分な注意を払っており、ISMS認証(ISO27001)及びプライバシーマークを取得の上、個人情報保護方針及び社内規程を整備し、情報管理体制の運用を強化しております。
しかしながら、不測の事態による個人情報の喪失や外部への漏洩事故が発生した場合には、当社への損害賠償請求や信用失墜による顧客喪失等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(6)システム障害について
当社グループの事業運営は、倉庫管理システムであるWMS(Warehouse Management System)等、主にインターネットを経由して処理されるよう設計されております。したがって、想定外の自然災害又は事故、コンピューターウィルスによる不正侵入もしくは誤操作等による大規模なシステム障害の発生により業務が停滞した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7)コンプライアンスに関するリスクについて
当社グループはリスク管理規程及びコンプライアンス規程に基づき、リスクコンプライアンス委員会を設置し、法令違反等のリスク低減について協議し、その結果を役職員の法令遵守体制の整備・強化及び社員教育に役立てております。
しかしながら、上記に反し当社の役職員が法令違反行為等を行うことや、情報管理体制の不備による個人情報の喪失や外部への漏洩事故が発生した場合には、当社への損害賠償請求や社会的信用の失墜等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(8)感染症に関するリスクについて
新型コロナウイルス感染症をはじめその他の感染症の流行、拡大により、終息期間が長期化した場合もしくは想定以上の事態が発生した場合、従業員への感染によるFCの稼働低下、顧客の業績悪化による債権回収の停滞等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(9)自然災害等によるリスクについて
当社グループはFCを運営し顧客の商品の保管・発送業務を行っております。そのため、大規模な地震、風水害、火災による事故等によりFCが被害を受け、又は輸送経路が遮断される等の事態が発生した場合、物流業務が停滞し当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)採用単価の高騰及び人件費の高騰
全体的な賃上げ圧力がかかる環境下においては、採用単価、派遣労働者単価、有資格者人件費高騰が予想されることから、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)法改正による原価変動
定期的に見直される建築基準法、建設業法の改正による、労務管理等の変更等により、工期の長期化や、配置人員の増加等で原価が高騰する可能性があります。原価の高騰分を請負金額に反映できない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12)品質管理について
品質管理には万全を期しておりますが、契約不適合責任等による損害賠償が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(13)労働災害及び事故の発生について
工事施工にあたっては、労働災害および事故の発生を防ぐべく対策を講じておりますが、万が一、人身や施工物にかかわる重大な事故が発生した場合は、売上高・利益の減少、採算性の悪化等、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14)取引先の信用リスクについて
建設業界では、一契約における請負金額が大きく、また支払条件によっては工事代金の回収に期間を要する場合があります。当社グループでは、与信管理の徹底により貸倒れ防止に努めておりますが、取引先の急激な経営状況の悪化等により資金の回収不能や工期の遅延等が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(15)継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、前事業年度まで2期連続して営業損失を計上し、当連結会計年度において重要な営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上した結果、当連結会計年度末において債務超過になるとともに現金及び預金が大幅に減少いたしました。このような状況から、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。当社グループは、安定的な黒字基盤を確立し健全な財務体質を確保することを最優先課題として、以下の対応策を実施してまいります。
1.売上高・売上総利益の向上及びFCの自動化による収益性の向上
当社グループの主要な事業であるBPOサービス事業において、デジタルマーケティング及びコンタクトセンターの領域に精通する企業との連携を強化し、当社グループが得意とするEコマース分野におけるフルフィルメントサービスを掛け合わせ、Eコマース領域におけるサービスをワンストップで提供することで収益性の向上を図ります。また、当社FCの生産性及びサービス品質向上のため、FCの自動化を進め、自動倉庫システム「RENATUS」の導入や、他のマテハン機器等の自動化設備の導入を推進し、自動化・省人化による大量出荷時の人件費抑制、生産性及び設備稼働率の向上を図ることで収益性の向上に努めます。
さらに、他社との連携やFC自動化と並行して、大型新規案件の受注及び新規案件の大量出荷に耐えうるオペレーションの確立を構築してまいります。
2.新たなビジネスモデルの構築
上記1.で記載した自動倉庫システム「RENATUS」の当社FCでの稼働に加え、当社FCを「RENATUS」ショールームとして活用することで、当社グループの顧客企業等への「RENATUS」の販売・保守を推進し、フルフィルメントサービス以外の新たなビジネスモデルの構築を図ってまいります。
3.固定費の大幅な削減
当社グループでは、FCの坪数の適正化を検討し3拠点を閉鎖することにいたしました。これにより、固定費の中でも特に比率の大きい賃借料の削減を図ることができ、また既存の他のFCに経営資源を集約することにより業務効率の一層の改善と経費削減に努め、早期の収益性の改善を目指してまいります。
4.財務基盤の安定化
2023年10月30日に発行した第6回新株予約権の行使が2023年11月に複数回行われ142,200千円を調達いたしました。また、当社の財務状態に鑑み、当社フルフィルメントセンターの閉鎖費用及び運転資金を機動的に調達するため、2024年6月25日開催の取締役会において当社と豊田Holdings株式会社との間で総額500,000千円の借入枠を設定することを決議し、契約を締結いたしました。詳細は、「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。今後も引き続き、経営基盤の再構築と債務超過の早期解消による経営安定化を目的として、増資を含めた資金調達を検討してまいります。
しかしながら、上記の対応策が計画通り実現できるとは限らないことにより、現時点においては継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして捉えており、経済動向、経営成績及び財務状況等を総合的に勘案し、安定した配当政策を実施することを基本方針としています。
また、当社は成長過程にあるため、事業規模の拡大には新規のFCの賃貸借や設備の購入等の先行投資が必要であるため、内部留保を充実させていくことも必要であると認識しております。加えて、経営基盤の安定化のための財務体質を強化するとともに事業規模を拡大させることによって、企業価値の拡大を目指してまいります。
今後も経済動向、経営成績及び財務状況等を総合的に勘案し、株主還元策として適切に実施してまいります。
当社の剰余金の配当は期末配当の年1回を基本としており、配当の決定機関は取締役会であります。また、当社は会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款に定めております。なお剰余金の配当基準日は、期末配当は毎年3月31日、中間配当は毎年9月30日とする旨を定款に定めております。
当事業年度の期末配当金につきましては、当事業年度において当期純損失を計上したことから、誠に遺憾ながら無配とさせていただきました。