2023年7月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社は、リスク管理に関して「リスク管理規程」を定め、代表取締役をリスク管理最高責任者、管理本部長を管理責任者とするリスク管理体制を整備しております。リスク管理最高責任者は全社的なリスクの統括実施管理にあたっております。また、リスク管理責任者はリスク管理を効果的かつ効率的に実施するため、当社グループのリスク管理に関する方針、体制及び対策に関する事項、リスクの洗い出しと評価及びリスク対策課題の策定と防止に関する事項等を検討し、経営会議における審議を経て、リスク管理最高責任者に報告しております。さらに、リスクが顕在化し、重大な事故等が発生した場合には、代表取締役を本部長とする対策本部を組織し、当該事故等の解決にあたることとしております。

 以下では、本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)DX投資の動向の影響について

 当社グループの事業は国内市場に依存しており、国内顧客企業のDX投資の動向に影響を受けます。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や為替相場の変動などにより、国内外の経済情勢の悪化や景気動向の減速等することで、顧客企業のDX投資意欲が減退した場合、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)新型コロナウイルス感染症の影響について

 2022年3月にまん延防止等重点措置が解除され、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行されるなど、経済活動の正常化に向けた動きは継続しており、新型コロナウイルス感染症拡大に関するリスクについては低減する傾向にあると考えています。

 一方で、ニューノーマルなど新型コロナウイルスがもたらした社会の変化は今後も継続すると想定され、このような変化に応じた対応が必要になるものと思われます。新しい社会の枠組みが業界や個社ごとにどのような影響を及ぼすかを見極めるなど、事業活動においてこれまでにはない価値判断や基準が必要になるものと想定されます。

 当社グループでは、テレワークの導入など就業場所に依存しない勤務形態を採用し、それを支えるICTインフラの整備を進めてまいりました。それにより当社の役職員が感染した場合においても、持続的な企業活動を維持できる社内体制を構築が完了しており、当社グループの業績及び財政状態におよぼす影響は限定的と考えております。

 

(3)優秀な人材の確保及び育成について

 当社グループが事業拡大を進めていくためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が最重要課題であると認識しております。当社グループでは、将来に向けた積極的な採用活動、人事評価制度の改善や研修の実施等の施策を通じ、新入社員及び中途入社社員の育成、定着に取り組んでいます。当社グループでは今後もこれらの施策を継続していく予定ではありますが、これらの施策が効果的である保証はなく、必要な人材が十分に確保・育成できなかった場合や、採用後の人材流出が進んだ場合には、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)技術革新への対応について

 当社グループが属している受託開発・パッケージ型のソフトウエア業界の特徴として、変動費となる原材料仕入が少なく人件費等の固定費水準が高いため、限界利益率が高いことがあげられます。そのため、売上高が増加した場合の増益額が他の産業に比べ大きい一方、売上高が減少した場合の減益額も他の産業に比べて大きく、利益の変動額が大きい傾向にあります。このような環境の中、急速な技術革新により、現在保有する技術・ノウハウなどが陳腐化した場合、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの主要な事業領域は、IT技術の進化及びそれに基づく新サービスの導入が頻繁に行われており変化の激しい業界となっております。そのため、継続的に新しい技術要素をITエンジニアに習得させてまいりますが、何らかの理由で技術革新への対応が遅れた場合、当社グループが提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また、予定していない技術要素への投資が必要となった場合、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)Tableau社との取り組みについて

 当社グループは、米国のTableau社より2015年4月にアライアンスパートナー(Tableau Alliance Partner Program)に認定され、同社製品の導入支援を顧客企業に対し行ってまいりました。また、2020年10月にはTableau委託先公式サプライヤーに認定されたことで、同社のプロフェッショナルサービスの一員として同社の顧客に対してサービスを提供しております。このような活動の中で、日本市場における同社の顧客への高品質な技術提供をより強力に推進するとともに、企業のDX推進に向けた様々なサービスを提供しております。今後もTableauに関する技術の研鑽を行い、Tableau関連のサービスの品質を高く維持することで同社と良好な取引関係を継続することや、同社以外のテックパートナーの開拓による同社に依存しない収益構造の構築に努めてまいりますが、仮に新規テックパートナーの開拓が進まないなか、同社の事業方針の変更等により、取引関係の解消又は取引条件の大幅な変更がなされた場合や、Tableauの競争力が低下し、市場規模が縮小した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)小規模組織による業務執行体制及び内部管理体制について

 当社グループの組織体制は小規模であり、業務執行体制及び内部管理体制もそれに応じたものになっております。今後の事業展開に応じて、採用・能力開発等によって業務執行体制及び内部管理体制の充実を図ってまいりますが、当初計画を超えて事業が成長し体制構築が追い付かない場合や、新たな人材の採用及び育成が順調に進まなかった場合、急な欠員等が発生した場合には、組織的対応が有効に機能しないことが考えられ、これにより当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)競合について

 当社グループのデジタルトランスフォーメーション事業は、既存の企業数は多く、高額な投資も不要であり許認可も必要としないことから、新規企業の参入障壁も低い業界であります。当社グループでは、市場環境の変化や同業他社の動向をタイムリーに把握することや特許や商標の出願・登録を積極的に進めるほか、価格だけでなく付加価値で対抗できるブランディングを図っておりますが、今後、同業他社による新商品や新サービスの出現等によって価格競争が激化する結果、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報セキュリティについて

 当社グループは業務遂行の一環として、個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。当社グループでは2013年6月に情報セキュリティマネジメントシステム(ISO270001)のISMS認証を取得しており、情報管理に取り組んでおります。しかしながら、これらの情報について、サイバー攻撃等による情報セキュリティ事故が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)為替の変動について

 当社は、タイに連結子会社を有しております。国内情勢及び経済情勢の変化、著しい為替変動により、現時点で想定している為替レートと実勢レートに大幅な乖離がある場合には、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)製品等の瑕疵及び不具合について

 当社グループが行うシステム開発案件においては、顧客による検収後、製品等の瑕疵が発見される場合や不具合(バグ)が発生する場合があります。このような不具合等の発生を防止するため、当社グループでは、システムの開発段階から納品までの間にわたり品質管理の徹底に努めておりますが、予期せぬ不具合等が発生した場合には、修正対応に伴う工数増加や解約返金等による採算性の悪化や、当社グループ製品への信頼性の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)借入金への依存について

 当社グループは必要に応じて資金を金融機関からの借入金により調達しております。当社グループの業績や財政状態の悪化、風説、風評の流布等が発生した場合、あるいは金融不安等が発生した場合には、必要な資金を合理的な条件で確保できず資金繰りが困難になる可能性があります。また、今後の金利動向に著しい変化が生じた場合には支払利息の増加等により、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)特定の仕入先への依存について

 当社グループは、株式会社PKSHA Associatesと販売パートナー契約を締結し、当社グループの商品である「ipaSロボ」に不可欠であるRPAエンジンの仕入を行っております。当社グループでは、同社との良好な取引関係の構築に引き続き取り組むとともに、取引基本契約を締結し、必要量を安定的に確保できる体制を整えておりますが、同社の事業方針の変更等により、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)特定の販売先への依存について

 当社グループの売上高のうちトランス・コスモス株式会社に対する当連結会計年度の売上が20.8%(前連結会計年度は17.4%)を占めております。当社グループと同社は良好な取引関係を維持しており、今後も継続的な取引を見込んでおりますが、同社の事業方針の変更等により、取引関係の解消又は取引条件の大幅な変更等があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)協力会社の活用について

 当社グループでは、必要に応じてシステムの設計、構築等について協力会社等に外注しております。現状では、協力会社と長期的かつ安定的な取引関係を保ち、エンジニアの確保に注力しておりますが、協力会社において技術力及び技術者数が確保できない場合及び外注コストが高騰した場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)不採算案件の発生について

 高度化、複雑化、短納期化するソフトウエア開発等の業務においては、開発途中での要件変更、品質の低下、納期遅延などの問題が発生するリスクがあります。当社グループでは、業務管理部門、品質管理部門は各プロジェクトの品質、コスト及び納期等の状況を見極め、異常を検知・予測し、早期に対策を講じて不採算案件の発生防止に努めております。しかしながら、このような取り組みにもかかわらず障害が防止できない場合、追加費用が発生して採算が悪化し、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)代表者依存度について

 創業以来、代表取締役を務めている阪口琢夫は、当社グループの経営方針や事業戦略構築等において重要な役割を果たしております。当社グループは、事業拡大に伴い代表者に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、現状においては何らかの理由により代表者が退任するような事態が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、当社グループの取締役及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。本書提出日の前月末日現在の新株予約権による潜在株式総数は857,600株であり、発行済株式総数4,680,600株の18.3%に相当します。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

(18)係争や訴訟について

 本書提出日現在において当社グループの業績に重要な影響を及ぼす係争や訴訟は提起されておりませんが、取引先とのトラブルの発生等、何らかの問題が生じた場合には係争や訴訟に発展する可能性があり、その内容及び結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)自然災害等の発生について

 当社グループでは、大規模な地震や台風等の自然災害に備えてテレワークの導入や事業継続計画(BCP)の策定による事業の復旧や継続を速やかに遂行する体制を構築しておりますが、自然災害の規模によっては事業活動が停止あるいは著しく制約される可能性があり、その内容によっては、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、将来的には、内部留保とのバランスを考慮して安定した配当を実施していくことを基本方針としております。しかしながら、現在、当社は事業も成長段階にあることから、財務体質の強化に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。このため、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であり、当事業年度においても配当を実施せず、内部留保の確保を優先いたしました。

内部留保資金につきましては、継続的な事業拡大を行うために、優秀な人材の採用及び高度な専門性を有する人材育成のため研修等教育制度の整備を図ることに投資してまいりたいと考えております。

なお、当社では、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本方針としており、期末配当の決定機関は株主総会となっております。また、当社は毎年1月31日を基準日として、取締役会の決議によって、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。