リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループでは、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」のもと、新たな価値創造へ積極的に挑戦していく観点から、「全社的リスクマネジメント体制」を構築し、当社グループにおける経営上の重要リスクとその管理状況をモニタリングしております。具体的には、当社内(コーポレート)の各部門及びグループ各社(カンパニー・その他グループ会社)が抽出・選定したリスクのうち、経営上対処すべき重要リスクについて、代表取締役社長を委員長とする「グループリスクマネジメント委員会」において集約・一覧化し、モニタリングしていく取り組みを行っております。
特に経営環境に関する重要リスクの抽出・選定にあたっては、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」に関するPDCAサイクルの一環として、未来の社会像に関する洞察を行い、バックキャストの視点から採るべき戦略の方向性の確認・検証を行っております。
また、同委員会を通じて確認したリスク管理状況や議論等を踏まえ、必要な改善措置に繋げるための総括として、「リスクマネジメントレビュー」を発信し、次年度のリスク管理の取り組みに反映するとともに、委員会の議論状況を取締役会へ報告することとしております。
なお、鉄道安全、気候変動、人権等のリスクは、専門的な個別の委員会等を設置し、より具体的かつ実効性向上を目的とした議論をしております。
これらの委員会等での議論のもと、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」の実現に大きな影響を及ぼすリスクを以下に記載します。
なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものであります。
(1) 安全の確保
鉄道事業においては、事故が発生した場合、お客様の生命・財産に大きな被害をもたらすことがあり、これに伴うお客様への補償及び事故後の事業中断等により経営に対しても甚大な影響を及ぼすことがあります。鉄道を基幹事業とする当社グループにおいては、安全で安心され信頼される質の高い輸送サービスを提供していくことが最重要課題であると考えております。
当社グループは、「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という確固たる決意のもと、福知山線列車事故の教訓である「安全の実現に欠かせない視点」に照らしてこれまでの取り組みについて確認した上で、「安全考動計画2027」を2023年3月に策定し、より一層の安全性向上をめざし、重大な事故や労働災害の未然防止に向けて取り組んでおります。
具体的には、ホームの安全対策として、バリアフリー料金制度対象駅のうち、乗降10万人以上の駅にはホーム柵を整備し、乗降10万人未満の駅にはホーム柵又はホーム安全スクリーンを整備する方針としており、10年以内の完了をめざします。なお、このうち2027年度までの5年間で約400億円の整備費を見込んでおります。
踏切の安全対策として、関係行政機関と協議・連携の上、立体交差事業等による踏切の解消を実施しているほか、大型車の通行が多い踏切を対象に重点的にハード整備を実施します。踏切内に自動車が停滞している場合、運転士に音声で知らせる装置を新たに追加し、10年以内の完了をめざします。また、第4種踏切においては、恒久対策(廃止や格上げ)に加えて、踏切ゲートの設置を進めております。
こうしたハード対策に加えて、ソフト対策として「組織全体で安全を確保する仕組み」を充実させ、その仕組みのもとで「一人ひとりの安全考動」を積み重ねていきます。これらの営みを通じて「安全最優先の風土」を育み、さらなる「仕組み」の構築・改善や「一人ひとりの安全考動」につながり、このサイクルを回し続けることで、継続的な安全性の向上を実現します。
(2) 自然災害等の発生
地震、台風、地すべり、洪水等の自然災害によって、当社グループの事業及び輸送網インフラは大きな被害を受ける可能性があります。
これに対し当社グループは、将来においても事業にもたらす影響の大きな自然災害等による被害を最小限のものとするよう、防災や減災に努めております。
具体的には、地震対策として、阪神・淡路大震災以降、地震発生確率や活断層の観点から優先順位をつけて構造物の耐震補強対策や逸脱防止ガードの整備等の地震対策を進めてきたところですが、近年、大規模地震が複数発生していることを踏まえ、地震対策を山陽新幹線全線に拡大し、30年以内の対策完了をめざします。なお、30年間で約3,000億円の整備費を見込んでおり、在来線についても、計画に基づき着実に整備を進めております。
津波対策としては、避難誘導標等を整備し、「津波避難誘導心得」を制定するなど、速やかな避難・誘導等に向けた取り組みを進めるとともに、実践的訓練を行っております。
また、近年、短期間に集中化する豪雨等の激甚化する災害に対して、防護設備等を整備するなど、重大な被害の発生を可能な限り回避するための取り組みを推進していきます。
なお、当社ではこれらの自然災害等に備えるため、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能なコミットメントラインを金融機関から導入するとともに、主な鉄道施設を対象とする地震保険を含めた損害保険に加入しております。
(3) 経営環境の激変
当社グループは、日本経済の情勢の中でも、主な営業エリアである西日本地域における景気動向の影響を特に受けており、人口減少・少子高齢化や新型コロナウイルス感染症がもたらした社会行動変容、円安・物価高騰等が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
とりわけ人口減少・少子高齢化の進展は最大の経営上のリスクと考えており、中長期的なお客様のご利用の減少に加え、当社グループの事業の運営、事業領域の拡大、新しい分野への挑戦に必要な人財の確保が一層困難となることで、当社グループの事業継続性や戦略遂行に支障をきたす可能性があります。なお、人財確保に関するリスク認識の詳細については、後述の「(4)人財の確保」に記載のとおりであります。
また、円安・物価高騰、金利上昇等が長期化し、インフレーションが進展すれば、事業に係る費用の増加が見込まれますが、後述の「(10)特有の法的規制」の影響等も相俟って、適正な価格転嫁が行えない場合、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。
さらに、海外の景気動向や政治情勢等が訪日外国人の動向、サプライチェーン等に影響を及ぼす可能性があるほか、感染症等さまざまな要因により鉄道のご利用に影響を及ぼす事象が発生した場合、これに連動してグループ全体の経営成績に影響を与える可能性があります。
一方で、当社グループは、鉄道事業においては対抗輸送機関と、鉄道以外の事業においても各業種業態の事業者と競合関係にありますが、近年ますます競争が激化しており、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。
さらに、デジタル化の加速等に伴う革新的な技術の発達や、新たなビジネス・価値提供の仕組みの普及が、当社グループの収益に極めて大きな影響を与える可能性があります。
加えて、地球環境保護や気候変動問題対応への社会的な要請の高まりや、気候変動による災害激甚化が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
今後の社会構造等を中長期的に見据えると、過疎化の進展や都市構造の変容により都市や地域間の格差が拡大していくこと、個人の価値観や消費行動の多様化に加え、格差の拡大により消費活動の二極化が進展していくことが想定されます。これらが顕在化した場合、大量輸送を特長とする鉄道事業が中心となる当社グループの収益に大きな影響を与える可能性があります。
以上のような経営環境に関するリスクも踏まえ、「私たちの志」、「長期ビジョン」の実現を加速させるべく、「中期経営計画2025」をアップデートし、重点戦略の施策の具体化・追加を行いました。引き続き安全性の向上を最優先としつつ、鉄道を中心としたモビリティサービス分野の活性化と、ライフデザイン分野の拡大を通じて事業ポートフォリオを最適化し、未来社会においても価値を創造し続ける企業グループとなるよう、取り組みを推進しております。
・「中期経営計画2025」
(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/info/plan/pdf/plan_2025.pdf)
・「中期経営計画2025アップデート」
(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/info/plan/pdf/plan_2025_update.pdf)
(4) 人財の確保
当社グループの営業エリアである西日本地域においても、今後生産年齢人口の減少が進展することが予測されており、当社グループの事業運営を支える人財の確保が困難になる可能性があります。
「長期ビジョン」をはじめとした経営戦略を実現していく上で、事業領域の拡大、新しい分野への挑戦に必要な人財を確保、育成することが不可欠であり、こうした取り組みが停滞することがあれば、当社グループの事業継続性や戦略遂行に支障をきたす可能性があります。
これに対し当社グループでは、人財確保のチャネル拡大と人財戦略の推進により、人財の確保及びリテンションに努めております。
人財確保のチャネル拡大については、新卒採用以外にも、社会人採用やカムバック採用の拡充、65歳以上の再雇用制度の新設等に取り組んでおります。また、グループ全体の人財を確保する観点から、グループ合同での応募窓口の設定等、効率的かつ効果的な採用活動を進めるほか、特に変化対応・創出力を備えた人財については、「株式会社TRAILBLAZER」を設立し、JR西日本グループのデジタル変革を推進する専門人財の確保等に努めております。
人財戦略の推進については、多様性の確保やさまざまな挑戦の機会を用意することが重要との認識のもと、「人財育成」、「ダイバーシティ&インクルージョン」及び「ワークエンゲージメント」の取り組みを中心に進めております。詳細は「2[サステナビリティに関する考え方及び取組](4)人的資本」に記載のとおりであります。
(5) サプライチェーンの確保
当社グループは、鉄道の持続的な運行に必要な工事・保守関係業務を委託する協力会社をはじめ、多種多様な部品・材料等を製造・調達する取引先等、さまざまなパートナー企業に支えられてサプライチェーンを構築し、事業を推進しております。当社グループのサプライチェーンを支えるパートナー企業の操業停止や少子化に伴う労働力の減少、部品・材料等の調達ルートの寸断、需要急増等による資材調達の停滞等があった場合、鉄道運行に必要な技術力や部品・材料の提供が円滑に得られず、事業の継続に支障をきたす可能性があります。
当社グループでは、工事・保守関係業務に係る施工の平準化や労働環境の更なる向上を通じてパートナー企業への安定的な業務委託に努めるとともに、中長期的な老朽取替計画に基づく前広な予備品の発注や代替品への置換等を進めております。
また、ビジネスにおける人権、環境問題への関心が世界的に高まっており、当社グループは、取引先の皆様とともに相互に遵守していきたい基本的な考え方と行動原則をまとめた「JR西日本グループサプライチェーン方針」を制定し、取引先の皆様に周知しております。
(6) 情報セキュリティ、情報管理
当社グループでは、列車運行や乗車券販売等の鉄道に関わるシステムに始まり、流通、不動産、旅行・地域ソリューション等の各事業分野全般にわたってコンピュータシステムを用いております。また、当社グループと密接な取引関係にある他の会社ともコンピュータシステムを連携しており、それぞれ重要な役割を果たしております。昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組んでおり、これによりコンピュータシステムが当社グループの事業運営において益々重要な役割を果たすようになっております。
このようなコンピュータシステムにおいて、当社及び相互に連携するシステムへのサイバー攻撃や自然災害、停電・通信障害、人的ミス等の要因によりシステム障害が生じた場合、事業の遂行に支障をきたす可能性があります。
また、情報管理不備等により個人情報、営業秘密等の機密情報が流出し、第三者や競合事業者に利用又は悪用された場合、お客様や取引先への被害はもとより、競争優位性の喪失や当社グループの社会的な信用低下等、収益に影響を与える可能性があります。
これらのリスクに備えるため、当社グループでは、情報セキュリティ対策状況を定期的に点検し、自社システムへの継続的な対策の見直しを行うとともに、研修の実施等による役員・従業員のITリテラシー向上を進めております。また、システム障害や情報漏えい事故及びサイバー攻撃被害が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、初動体制の整備と平時における訓練に努めております。
加えて、個人情報の取得・利活用や機密情報管理に関するデータガバナンス体制等を整備し、適正な業務執行と法令遵守に努めております。
(7) 重大な犯罪行為・テロ等の発生
重大な犯罪行為やテロ活動、武力攻撃等により当社グループの施設・設備等が被害を受けた場合、事業の継続に支障をきたす可能性があります。
当社では、これらに備え、不審者及び不審物への警戒警備の強化や防犯対策訓練の実施、防護装備品の配備等の各種対策を行っております。特に大規模イベント時においては、当社グループ全体で警戒警備体制の強化を図り、駅・列車・重要施設における巡回強化や、最新技術を取り入れたセキュリティ対策等を実施しております。
また、国民保護法に基づく、武力攻撃事態等における対処については、的確かつ迅速な体制の確立等、具体的な取り扱いを定めているほか、自治体からの要請に基づき、緊急避難を目的とした利用に当社グループ施設の一部を供することとしております。
(8) 感染症の発生・流行
感染症が発生・流行した場合において、お客様の外出自粛や社員の感染等により、鉄道運行をはじめとした当社グループの事業継続が脅かされ、経営成績に甚大な影響を与える可能性があります。
新型コロナウイルス感染症が発生・流行したコロナ禍において当社グループは、過去の感染症拡大に伴い整備したマスク等医療物資の備蓄や鉄道運行に関するBCPダイヤを活用し、事業継続の面においては、最小限の影響に止めることができました。
今後も重大な感染症の発生等のリスクに対しては、これまでの知見を活かしつつ、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく指定公共機関として、当社が定める「西日本旅客鉄道株式会社新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」に基づき、政府関係機関や各自治体等と緊密に連携しながら、社会インフラとしての鉄道輸送サービスの継続に万全を期していきます。
(9) コンプライアンス
コンプライアンスは、単に法令等を遵守するだけでなく、世の中の基準に照らして、その期待に誠実に応え、当社グループの事業に対して信頼をいただく取り組みであると認識しております。
当社グループは、事業活動を営む上で、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、下請法、景品表示法、個人情報保護法、不正競争防止法等、一般に適用される法令に加え、鉄道事業法等の業態ごとに適用される法令の規制を受けるほか、事業種別に応じた規制当局の監督を受けております。これらの法的規制等に違反があった場合、行政処分を受け当社グループの社会的な信用低下を招く可能性があるほか、関連諸法令の改正やガイドラインの制定等により、既存の規制が強化された場合、当社グループの事業運営や経営成績に影響を与える可能性があります。
また、法令等違反以外にも社会規範や企業倫理にもとる事象や人権を侵害する問題が発生した場合、当社グループの社会的な信用低下を招き、お客様のご利用や人財の確保に影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、グループ全体で法令遵守・コンプライアンスに関する教育・啓発を行うとともに、代表取締役社長を委員長とする「企業倫理・人権委員会」を開催し、法令等の遵守や人権に関する経営上重大な事項等について審議を行い、その議論状況を取締役会に報告することとしております。
また、内部通報窓口として設置している「JR西日本グループ倫理・人権ホットライン(倫理相談室)」や社外相談窓口の対応充実・信頼性向上を図り、グループ全体のコンプライアンス向上に取り組んでおります。
(10) 特有の法的規制
鉄道事業は公益的な性格を持つことから、公的サービスにおける官民の役割分担に対する政府の考え方によって、さまざまな影響を受ける可能性があります。
① 鉄道事業に対する法的規制
当社は、「鉄道事業法(1986年法律第92号)」の定めにより、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、運賃及び一定の料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。これらの手続きや許認可の基準が変更された場合、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。2024年4月には、鉄道運賃水準の算定の根拠となる「総括原価」の算定方法を定める「収入原価算定要領」について、持続可能な鉄道輸送サービスに資する設備投資の促進、人財確保、自然災害の激甚化等への対応を念頭に、鉄道事業の安定的・持続的な運営等を確保していく観点から見直しが行われました。
事業運営にあたっては、株主に対する配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする適正な利潤を確保することが必要であると考えており、収益の確保と経費削減を進め効率的な経営に努めていますが、「(3)経営環境の激変」で前述したように、人口減少による収益の減少、インフレによる費用の増加等により適正な利潤を確保できない場合は、「収入原価算定要領」の見直し内容も踏まえ、将来を見据えた安全やサービス向上の設備投資を行うなど、持続的な進化を図っていくために、適切な時期に運賃改定を実施する必要があるものと考えております。
なお、当社をJR会社法の適用対象から除外するJR会社法改正法が2001年12月1日に施行されました。すなわち、当社においては、JR会社法に定められる発行する株式等の募集及び長期借入金の認可(第5条)、重要な財産の譲渡等の認可(第8条)等の全ての規定の適用から除外されております。
一方で、本法附則により、国土交通大臣が指定するものがその事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針として以下の3点について定めることとされております。この指針は2001年11月7日に告示され、2001年12月1日から適用となっております。
〈指針に定められる事項〉
・会社間における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項
・日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項
・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項
② 整備新幹線
ア.整備新幹線の建設計画
1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法に基づき整備計画が決定された路線のうち、当社は北陸新幹線(上越市-大阪市)の営業主体となっており、建設主体である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設・保有する新幹線施設の貸付けを受けて営業することとなっております。
2015年3月:北陸新幹線(長野-金沢間)開業
2024年3月:北陸新幹線(金沢-敦賀間)開業
イ.整備新幹線建設の費用負担
整備新幹線の建設費は、全国新幹線鉄道整備法及び関連法令に基づいて「国、地方公共団体及び旅客会社が負担すること」、「旅客会社の負担は、整備新幹線の営業主体となる旅客会社が支払う受益の範囲を限度とした貸付料等をあてること」と定められております。
なお、整備新幹線の営業主体である旅客会社が支払う貸付料の額については、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令」第6条において、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額(定額部分)に、貸付けを受けた鉄道施設に関して同機構が支払う租税及び同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされております。
北陸新幹線上越妙高-金沢間の貸付料につきましては、同機構により算定された定額部分の年額80億円が当該新幹線開業に伴う当社の受益の範囲内にあると判断し、2015年3月に同機構との合意に至るとともに、当該貸付料の額について、同機構は2015年3月に国土交通大臣の認可を受けております。北陸新幹線金沢-敦賀間の貸付料につきましては、同様の手続きにて年額93億円とし同機構は2024年3月に国土交通大臣の認可を受けております。
ウ.北陸新幹線に対する当社の考え方
敦賀以西区間については、新幹線整備により大幅な時間短縮効果が見込まれることから、早期の大阪までの全線開業が望ましいと考えております。現在、2017年3月に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームより出された結論に基づき、「小浜京都ルート」(敦賀駅-小浜市(東小浜)附近-京都駅-京田辺市(松井山手)附近-新大阪駅)の環境影響評価の手続きが進められております。
なお、全線開業に向けた着工区間の延伸に際しても「当社の負担は受益の範囲内であること」や「並行在来線の経営分離」という従前からの基本原則が守られる必要があると考えております。
当社としては、引き続き今後の動向を注視していきます。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、2023年4月に公表した「中期経営計画2025」において、長期安定的な株主還元と持続的な企業価値・株主価値向上の推進を基本方針に、配当性向を35%以上とする安定的な配当、機会を捉えた資本政策を実施することとしてきました。
2024年4月に公表した「中期経営計画2025アップデート」においても、株主還元に関する基本方針は変更しておりません。
この方針に基づき、当事業年度の配当金につきましては、1株当たり年間142円(うち中間配当金57円50銭)としました。
内部留保資金の使途につきましては、上記の株主還元に加え、「長期ビジョン」「中期経営計画2025アップデート」に掲げる各施策の推進や経営基盤強化等のために投入することとしております。今後、これらの施策の実現を通じて企業価値の向上、ひいてはステークホルダーの皆様に提供する価値の向上を図っていきます。
なお、当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。また、当社は、取締役会の決議によって中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
2023年10月31日 |
14,020 |
57.5 |
取締役会決議 |
||
2024年6月19日 |
20,604 |
84.5 |
定時株主総会決議 |