2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    30名(単体) 186名(連結)
  • 平均年齢
    51.4歳(単体)
  • 平均勤続年数
    10.0年(単体)
  • 平均年収
    14,759,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2024年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

投信投資顧問業

186

合計

186

 (注)従業員数は就業人員であり、当社グループの全連結会社の従業員数の合計を記載しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢

平均勤続年数

平均年間給与(千円)

30

51.4歳

10年

7ヶ月

14,759

 (注)1.従業員数は、契約社員を含み、派遣社員、子会社への出向者の他、当社を兼務する子会社従業員を除く就業人員であります。

    2.平均年間給与は、提出会社が費用負担する固定報酬の他、兼務先である事業子会社が費用負担する固定報酬・短期業績連動報酬(業績賞与)・中長期業績連動型株式報酬も含めて算出しております。

    3.平均勤続年数は、グループ各社における勤続年数を通算しております。

 

(3)労働組合の状況

 労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は良好であります。

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

連結グループ会社

当連結会計年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

男性労働者の育児休業取得率(%)

労働者の男女の賃金の差異(%)

全労働者

うち正規雇用

労働者

うちパート

・有期労働者

23.1

100.0

53.4

56.3

25.0

(注)1.当社及び当社グループ会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」による情報開示が必要

      な会社には該当いたしません。

 2.対象期間は2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)です。

 3.男性労働者の育児休業取得率は、当社及び国内グループ会社を対象としております。

    4.男性労働者の育児休業取得率は、育児休業の取得割合(2024年3月期において育児休業を取得した男性労働

      者の数/2024年3月期に配偶者が出産した男性労働者の数)で算出しております。

 5.労働者の男女の賃金の差異の算式に用いた人員数は、2024年3月期各月の給与支払日における労働者数の

   平均を用いております。なお、当社及び当社グループ会社外からの出向者は含んでおりません。

 6.賃金は通勤手当を除き、2024年3月期に支給された金額を元に算出しております。

 7.短時間勤務者については、正規雇用労働者の所定労働時間(1日8時間)で換算した人員数を元に平均年間

   賃金を算出しております。

 

  <男性労働者の育児休業取得率についての補足説明>

   2024年3月期において配偶者が出産した男性労働者は3名、そのうち育児休業を取得した男性労働者は3名です。

 

  <男女の賃金の差異についての補足説明>

 適用する人事処遇制度において性別による差異はありませんが、連結グループ会社における男女の賃金の差異(全労働者53.4%、社員56.3%)の主な要因は執行役員、上位の管理職および専門職に占める女性がいないことによるものです。それら執行役員、上位の管理職および専門職を除く女性が在籍する資格等級別の男女の賃金格差は下表の通りです。

 また、パート・有期労働者の差異については、比較的報酬水準の高い正社員の定年後再雇用者に占める男性比率が高く補助的業務担当者である契約社員に占める女性比率が高いという構成比率の違いにより乖離が生じています。

 尚、当社グループにおいては定量的な管理職比率等の目標を形式的に定めることは、現時点においては致しませんが、ライフステージに合わせた柔軟な支援や人事制度の改訂、管理職に期待する役割の更なる明確化を図り、その責任を認識させることで、主体的にリーダーとして役割を果たしたいと望む者を増やしてまいる他、管理職候補者層を構築するため、必要な経験の蓄積やキャリア意識の醸成等に意識的に取り組むことによって、結果的に経営の意思決定に関わる女性社員を、実質的に増やしてまいります。

 

職層

資格等級

男女の賃金差異

2022年度

2023年度

管理職

マネジメント職3

90.1%

95.4%

専門職

専門職3

77.3%

 

リーダー職1

88.6%

90.5%

一般社員

リーダー職2

94.3%

76.8%

 

スタッフ職1

94.7%

99.2%

 

スタッフ職2

98.3%

99.4%

  ※ 資格等級に記載している名称は、社内での使用呼称となります。

  ※ 2022年度の専門職には女性が在籍しておりません。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、1989年の創業以来、「世界で最も信頼、尊敬されるインベストメント・カンパニー」を目指し、顧客を初めとするステークホルダーに経済的豊かさ、健やかさ、幸せをもたらしたいという価値観を最も大切にしています。

 金融というフィールドで価値を生み出し続けていくために当社グループが大切にしていること、それは「投資を通じて価値という果実を生み出し、顧客にお返しするということ。また、その活動に対して顧客を初めとするステークホルダーに喜んで頂かなければ良い投資も長く続くことはない」ということです。このことを念頭に、当社グループのパーパス(企業の目的)である「(投資を通じて)世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」の実現に邁進してまいります。

 このパーパスに照らし、当社グループにおける「サステナビリティ」とは、『資本市場の構成員たるインベストメント・カンパニーとして、当社グループらしい投資を通じて、豊かさという経済的価値、健やかさ、幸せという社会的価値を、持続的に生み出し続けることを可能にしていくこと、合わせて、当社グループ自身も中長期的な成長を持続可能なものとしていくこと』であると考えております。この実現は、東証プライム市場に上場する日本初の独立系投資会社としての、健全な資本市場および持続可能な社会の実現に向けた、当社グループの責務であると考えております。

 市場経済の発展に伴い、社会、経済、企業などに多くの仕組みが生まれ、人類が目まぐるしい発展を遂げている中で、この仕組みがさらに複雑化し、市場経済が正しく機能していない事例が散見されます。このような状況下において、当社グループのパーパス実現に向けて、ESG課題を含むサステナビリティに係る課題への対応を最優先事項の1つとして当社グループ全体で取り組んでまいる他、当社グループ自身の経営において最も重要な要素であるガバナンスの強化にも努めてまいります。またその基盤として、当社グループに属する社員一人ひとりがこれらの価値観を共有し、受け継ぎ、守り続けてまいります。

 

   ガバナンス

 

 当社グループは、ESG課題を含むサステナビリティに係る課題への対応は、経営上、最重要課題の1つと認識しています。サステナビリティに係る課題に関しては、取締役会において議論・決議を行い、具体的な業務の執行にあたっては、その中心的な意思決定機関である経営会議において、少なくとも年に1回、かつ、必要に応じ適時に、具体的な活動方針や推進施策等の議論・決定し、取締役会に報告の上、実施内容について取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。

 取締役会は、その過半数が社外取締役から構成されており、具体的な活動方針や推進施策等に対し、進捗状況の検証や審議等を実施することにより、PDCAサイクルによって、適切にマネジメントを推進し、継続的に改善を図っています。また、経営会議には業務執行の中心メンバーである社内取締役及び執行役員が全員参加し、少なくとも毎月一度は開催され、その内容については適時に取締役会に報告されます。なお、経営会議におけるサステナビリティ経営に関する議論を具体的に進めるため、サステナビリティ企画室を設置しています。

 また、当社グループは、「(投資を通じて)世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」というパーパスを掲げ、この達成のため、顧客よりお預かりする全ての資産に関する顕在・潜在双方のリスクと機会を適切に把握、管理しております。具体的には、責任投資の監督責任、説明責任を果たすため、当社取締役会の諮問機関として、グループCIOを委員長とする責任投資委員会を設置しています。なお、責任投資委員会には、全ての社内取締役、グループ執行役員が委員として参加し、少なくとも四半期に一度は開催され、その内容について適時に取締役会に報告の上、実施内容について取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。また、責任投資委員会における責任投資原則の実践に関する議論を具体的に進めるため、責任投資推進室を設置しております。

 当該委員会においては、グループ各社の投資政策委員会(もしくは同等の組織)が、気候変動関連リスク・機会への対処ならびに人権尊重を含む責任投資の実施状況の報告を行う他、気候変動関連リスク・機会への対処ならびに人権尊重を含む責任投資ポリシーなどの変更承認、責任投資の実施に関する年次報告書の承認などを行っています。なお、当該委員会には外部アドバイザーが陪席し、独立した立場から、報告や審議内容に対する助言がなされ、責任投資に関する最新の動向が共有されています。

 当連結会計年度は責任投資委員会を計4回実施し、各投資政策委員会から、責任投資の実施状況の報告、責任投資方針の見直し、年次報告書が報告され、承認されました。

 

   リスク管理

 

 当社グループは、リスク管理の基本的事項を定めることにより、想定し得る個々のリスクを予め把握し、適切に管理することで、当社グループの保有するリスクを全体的に管理し、もって当社グループの健全性・適正性の確保に資することを目的として、グループリスク管理基本規程を制定しています。

 また、当社取締役会は、当社及び当社グループのリスク管理に係る事項を検討、審議することを目的として、グループリスク管理委員会を設置しています。グループリスク管理委員会は、業務執行の中心メンバーである社内取締役及び執行役員が全員参加のもと、原則として四半期に1度開催されます。グループリスク管理委員会においては、グループリスク管理基本規程に定めるリスク管理プロセスに沿って、重要な顕在化事象に加え、想定し得る潜在的なリスクを把握し、リスクの把握・評価、リスク対応策の設定、リスク対応状況のモニタリングなどを実施しています。

 また、グループリスク管理委員会の内容は、適時に取締役会に報告されます。取締役会は、その過半数が社外取締役から構成されており、リスクの所在・種類、対応策及びその実施状況、並びにリスク管理の状況について監督することで、当社グループを取り巻く経営環境や当社グループの経営戦略に鑑みて、適切なリスク管理態勢を確立し、継続的に改善を図っています。

 なお現在、気候関連リスクは、グループリスク管理基本規程において設定、管理するリスク区分としてではなく、それらリスク区分に横断的に影響を及ぼすリスクと捉えて管理しています。今後も気候変動問題のリスク管理態勢について、継続的に改善・強化を検討・実行していきます。

 このほか、人権侵害リスクに関しては、経営上の重要な課題であると認識し、2023年3月に人権尊重に関する基本方針を策定し公表し、2024年6月24日に改訂しました。当社グループでは「国際人権章典」 、国際労働機関(ILO)の定める「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」で示されている国際的に認められた人権を尊重し、強制労働や児童労働の他、人種、宗教、性別、性的指向、性自認、国籍、年齢、障害等いかなる理由による差別やハラスメントも容認しません。人権の尊重は当社グループの存立基盤であり、持続可能な事業の根幹をなすものとして、今後、適切な人権デューデリジェンスを行い、人権を侵害するリスクの特定やその防止・軽減に努めてまいります。

 

<スパークス・グループ 人権尊重に関する基本方針>

https://www.sparx.jp/sustainability/humanrights.html

 

 

   戦略

 

 当社グループは、パーパス実現に向け、様々なサステナビリティに係る課題の中でも、特に環境、社会、ガバナンスについて、下記の課題を認識しております。

 

サステナビリティに係る課題

(環境)

 当社グループは、顧客資産を中長期にわたり運用していくために、持続可能性のある生態系全体を含めた地球環境の維持は必須と認識しております。特に、気候変動問題の解決のための重要課題であると捉えています。

 

(社会)

 当社グループは、人間の活動が世界規模で複雑に絡んでおり、この結果、社会的課題の理解と解決の難易度は高まっていると認識しています。また、当社グループの事業を運営していく上で、従業員、顧客、取引先、地域社会等ステークホルダーとの良好な関係維持は重要であり、かつ課題であると認識しています。また、サプライチェーンが拡大する中で、直接的な課題である労働条件等の課題だけでなく、世界各国での児童労働、贈収賄、人権問題など社会課題がより重要になっているとの認識をしております。

 さらに、当社グループ自身の中長期的な成長を持続可能なものとしていくためにも、独立系の存在基盤を確固たるものとすべく、投資哲学を共有した「人財」の育成と、その「人財」を活かす仕組みを維持改善していくことが必須であると認識しています。

 

  (ガバナンス)

 当グループは、投資先に係るガバナンスを評価する際には、経営者の人間性や資質、経営判断基準や業務執行体制が合理的であるか否かが、最も重要な要素であり、かつ課題であると認識しています。また、当社グループ自身においても、より良いガバナンス体制の構築が必須であると認識しています。

 

 

サステナビリティに係る取組

 当社グループは、前述した環境・社会課題の解決に対し、投資活動を通じて寄与することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。具体的には、ESGの観点から、当該課題の解決に繋がる事業への投資活動や、既に投資を行っている投資先へのエンゲージメントを実施する他、株主として必要に応じて投資先企業のESG課題の改善の支援を行ってまいります。また、投資先企業の事業活動が環境・社会にもたらすインパクトに、より注目した投資活動も行ってまいります。

 

  (環境)

 当社グループは、企業活動や消費行動などの人類の活動が環境にもたらすマイナス面を減らし、プラス面を増やす活動に対して、投資を通じて積極的に関与してまいります。

 特に重要課題であるカーボンニュートラルの実現に向けて、ファンドスキームを活用した再生可能エネルギー発電施設の建設・運営すること等を通して貢献してまいりました。今後も投資運用サービスを通じた地球環境問題への対応を行ってまいります。

 

  (社会)

 当社グループは、創業当初より、企業の定性的評価を重視して投資を実行してまいりました。それは、「企業収益の質」「経営者の質」「市場成長性」という3つの評価軸での分析です。この分析を通じて常に当社グループは、企業の存続可能性として重要である、経営ビジョン、従業員のモチベーション、サプライヤーとの長期的関係などに注目しており、これらの要因はSDGs、ESGが掲げるものと多くのものが共通しています。このように創業当初から、当社グループは責任ある投資を実践してまいりました。この当社グループの伝統である責任投資に対する社会的な要請が高まる中、価値創出に資する責任投資の高度化・拡大・浸透は、健全な資本市場および持続可能な社会の実現に向けた、老舗投資会社としての当社グループの当然の責務であると考えております。この実現のため、やはり創業以来の一貫した基本姿勢である「ボトムアップ・アプローチ」を通じて、自分たちの目で現場を確認(現地現物)しながら、社会的課題の解決に取り組み、必要に応じて行政や地域コミュニティも交えて対話を行ってまいります。

 また、顧客を初めとするステークホルダーから選ばれ、結果的に高い収益力を維持すること、またこれらを支える「人財」を育成・擁することは、独立系の存在基盤を確固たるものとした上でパーパスを実現するために必須と考えております。具体的には、バフェット・クラブ等の社内勉強会における投資哲学の共有等から醸成される投資力、ユニークな投資アイデア創出力の他、フロント・バック部門一体となった顧客本位の業務運営や、社内に望ましい行動様式を明確化・浸透させるとともに、各部署・各階層一丸となって投資アイデアを具体的にパッケージング化すること等によって、継続的に他社比で高く、持続可能な収益性を実現するための仕組みが、様々な施策に落しこまれている経営体制を目指してまいります。

 さらに、上記を支える当社グループの基盤として、従業員等のダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)&インクルージョン(包括性)やウェルビーイング、当社グループが大切にする価値観をベースにした投資力の育成、継承などの人材開発にも注力してまいります。

 

  (ガバナンス)

 当社グループは、責任投資の一環として、環境や社会の課題のみならず、投資先のガバナンス課題にも着目しています。具体的には、2000 年代初頭から、ガバナンス投資により注目した投資の実践を行っております。

 また自ら、独立系の強みを生かした、効果的・効率的な、健全で透明性の高いガバナンス体制を構築してまいります。具体的には、高度のガバナンス態勢を構築・維持することで顧客からの支持を得るとともに、資本市場に対して範を示してまいります。特に、様々な投資戦略を展開する中でも、グループ会社間、投資戦略間、ファンド間の利益相反管理など、適切なリスク管理を行ってまいります。その他、適切な決算・開示や納税、日本の金融商品取引法を始めとする各国各種の法令や諸規則を遵守する透明性の高いプロセスを構築してまいります。

 

 当社グループは、ESGの重要性および環境・社会課題の解決に投資活動が貢献出来ることについて、当社グループのステークホルダーをはじめとする多くの関係者の理解を得ることも重要であると認識しています。今後も、こうした当社の考え方を発信するとともに、ステークホルダーとの対話を実施することにより、ESG課題を含むサステナビリティに関連する「リスク」を最小化し、「機会」を早期に発見することによって、本基本方針の目的を達成してまいります。具体的には、株主総会、IR説明会の他、当社グループのWebサイトやYouTubeチャンネル等を通じた情報発信を行っていく他、再生エネルギーに対する理解の促進に向けた「こどもエネルギーサミット」等を通じて、次世代への教育にも引き続き取り組んでまいります。

 

 当社グループは、「良き企業市民」としての社会的責任を果たすため、以下のイニシアティブを支持し、参画しています。今後も、サステナビリティに係る課題への対応を進めるに際し、真に有用なイニシアティブ等については、具体的に参画を検討し、必要に応じて参画してまいります。

 

・PRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)

・TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)

 

   指標及び目標

 

 以下の(1) 気候変動及び(2) 人的資本・多様性に関する方針及び取組において、記載しております。

 

 サステナビリティにおいて重要と考える(1) 気候変動及び(2) 人的資本・多様性に関する方針及び取組は以下のとおりです。なお、気候変動については、当社グループのビジネス上、上場会社としての気候変動への取り組みと、お客様からお預かりした資産を運用する投資会社としての投資先への取り組みの2つの側面をもっております。

 

  (1) 気候変動

  気候変動への取り組み (上場会社として)

 当社グループでは、私たちの投資を通じて地球環境と人間が共生できる社会の実現に積極的に関わることを目指し、2020年1月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD : Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が公表した提言に賛同の意を表明いたしました。

 

  ①ガバナンス

 当社グループでは、「サステナビリティに関する基本方針」を策定し、気候変動を含むサステナビリティに係る課題への対応を経営上の最重要課題の1つと認識しています。よって、気候関連の課題に関する基本方針に関しては、取締役会において議論・決議を行い、具体的な業務の執行にあたっては、その中心的な意思決定機関である経営会議において、少なくとも年に1回、かつ、必要に応じ適時に、具体的な活動方針や推進施策等の議論・決定し、取締役会に報告することで実施内容を取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。

 取締役会は、その過半数が社外取締役から構成されており、具体的な活動方針や推進施策等に対し、進捗状況の検証や審議等を実施することにより、PDCAサイクルによって、適切にマネジメントを推進し、継続的に改善を図っています。また経営会議には、業務執行の中心メンバーである社内取締役及び執行役員が全員参加し、少なくとも毎月1度は開催され、その内容については適時に取締役会に報告されます。また、経営会議におけるサステナビリティ経営に関する議論を具体的に進めるため、サステナビリティ企画室を設置しています。

 

ガバナンス体制図(図1)

 

 

 

 

  ②リスク管理

 気候変動に関するリスク管理については上記のサステナビリティのリスク管理に含めて管理しております。詳細については(1) サステナビリティ ②リスク管理を参照ください。

 

  ③戦略

 当社グループは、顧客資産を中長期にわたり運用していくために、持続可能性のある生態系全体を含めた地球環境の維持は必須と認識しております。特に、気候変動問題は、この目的達成のための重要課題と捉えています。

気候変動は平均気温上昇による自然災害の激甚化や脱炭素社会の移行に伴う社会経済の変化をもたらすことから、これらに関連したリスクと機会が生じます。

 リスクには、自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる急性リスクや平均気温上昇に伴い発生する慢性リスクといった「物理的リスク」と、脱炭素化に向けた規制強化や脱炭素技術移行への対応といった「移行リスク」の2つがあります。

 機会には、気候変動問題の解決のための技術革新や市場の変化等に伴う企業の収益機会があります。当社グループは、気候変動対策や脱炭素社会への移行を、新しい投資商品の提供を通じてサポート・実現することで当社ビジネス機会の拡大に繋げ、ひいては持続可能な環境・社会の実現に貢献していきます。

当社グループは、TCFDの提言を踏まえ、以下の通り、リスク(物理的リスク、移行リスク)及び機会について、短期・中期・長期の目線での把握に努めています。投資会社である当社グループへの直接的な影響としては、他の業種に比べて大きくないものと考えていますが、今後は、これらの想定を、複数のシナリオ分析等によって検証し、より具体的な財務的な影響等を把握するよう努めていきます。なお、大規模な自然災害といった物理的リスクについては、自社の事業の継続性を確保するための定期的なBCPの見直しや管理体制の強化を図っています。

 

<気候関連のリスク>

リスクの種類

リスクの内容

想定される主な影響

想定期間

移行リスク

政策・法規制

・GHG排出価格(炭素税)の上昇
・排出量の報告義務の強化 など

・制度変更や規制強化に伴うコスト増加による業績への悪影響

 

中期~長期

 

技術

・急速な技術革新による産業構造の変化への対応の遅れ など

・産業構造の変化をとらえた新たな投資商品を提供する機会を逸することによる結果的な業績への悪影響

中期~長期

 

市場

・投資家の嗜好変化 など

・投資家の嗜好が変化することに対して、適切な投資商品を提供する機会を逸することによる結果的な業績への悪影響

 

中期~長期

 

評判

・気候変動対策への取組み不足によるレピュテーショナルリスクの増加 など

・評判悪化によるビジネス機会の減少による業績への悪影響
・評判悪化による当社の資金調達コスト増

短期~中期

物理的リスク

急性/慢性

・豪雨・巨大台風などの災害増加
・平均気温の上昇、海水面の上昇等による災害の激甚化 など

・当社グループの拠点や社員の被災などによる事業活動の制約による業績への悪影響
・災害への対策や復旧・修繕対応など各種コストの増加による業績への悪影響

中期~長期

(想定期間)短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10~30年

 

<気候関連の機会>

 上記気候関連のリスクへの対応策を検討する際には、例えば「急速な技術革新による産業構造の変化への対応の遅れ」を「産業構造の変化を急速にもたらす技術を有する会社に投資機会を見出し、投資戦略に落とし込んでいく」など事業機会に捉え直すことで、投資戦略の立案に繋げています。

 

 

   ④指標及び目標

 当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、脱炭素に向けた取り組みを進めており、気候関連に関するリスクの軽減や機会の実現を目的に、指標を定め、目標を設定し、そのモニタリングに取り組んでいます。これらの指標の進捗状況については、少なくとも年に1回かつ必要に応じ、経営会議及び取締役会に報告されます。

 2023年度の当社グループの事業活動により、自らが排出する温室効果ガス(以下、「GHG」)排出量のうち、Scope1・Scope2の合計※1は、約80.96 tCO2eであり、2020年度基準比▲43.0%でした。2022年9月より、GHG排出量削減に向けた取り組みの一環として、グループ国内拠点6社が入居するビルで使用する電力に関し、非化石証書を用いた再生可能エネルギー由来の電力契約に変更したため、削減実績が増加しました。中間目標として掲げた2030年度までにGHG排出量を33%削減(2020年度比)の目標を達成することができましたが、今後も更なるGHG排出量削減に取り組んでいきます。

 指標として定めている GHG 排出量に関する実績推移は、以下の通りです。なお、GHG排出量削減目標(Scope1・Scope2)に向けた進捗管理に加え、「環境省グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」等を活用して、サプライチェーンにおけるCO2排出量(Scope3)を算定し、モニタリングを継続しております。また、Scope3の開示強化に向けて、特にカテゴリ15の「投融資」の算定に関しては、金融機関として脱炭素社会の実現に向けた第一歩であると認識しております。今後、PCAF※2の手法に基づく投融資を通じたGHG排出量(Financed Emissions)の計測を進めていきます。

 

Scope1・2

tCO2e

 

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

Scope1(直接的排出)

6.05

6.13

6.13

5.30

Scope2(間接的排出)※3

135.93

126.64

103.67

75.66

Scope1・Scope2合計

141.98

132.77

109.80

80.96

削減実績(2020年度比)

-

▲6.5%

▲22.7%

▲43.0%

削減実績(前年度比)

-

▲6.5%

▲17.3%

▲26.3%

 

Scope3

tCO2e

 

カテゴリ

2021年度

2022年度

2023年度

Scope3

カテゴリ1(購入した製品・サービス)

3.09

2.81

4.23

Scope3

カテゴリ2(資本財)

9.81

249.23

124.47

Scope3

カテゴリ5(事業から出る廃棄物)

0.28

0.39

0.36

Scope3

カテゴリ6(出張)

136.52

576.47

822.59

Scope3

カテゴリ7(雇用者の通勤)

62.93

51.70

54.36

(算定期間)各年度:4月1日~翌年3月31日

(算定範囲)

 Scope1・Scope2:東京拠点グループ6社※4、 SPARX Asset Management Korea Co., Ltd.※5、 SPARX Asia Investment Advisors Limited※5

Scope3:東京拠点グループ6社※4

[算定方法]

 Scope3の算定方法、排出計数等は、環境省・経済産業省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.2.5」「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース Ver.3.3」に基づき算出

カテゴリ1:東京拠点グループ6社のコピー用紙の購入金額に排出原単位を乗じて算出

カテゴリ2:該当年度内、東京拠点グループ6社の固定資産取得額に排出原単位を乗じて算出

カテゴリ5:東京拠点グループ6社の排出廃棄物を種類・処分方法ごとに排出原単位を乗じて算出

カテゴリ6:東京拠点グループ6社の国内外出張金額より算出(航空機、鉄道、バス、タクシーの利用金額ごとに排出原単位を乗じて算出)

カテゴリ7:当年度末の東京拠点グループ6社の社員の月額通勤費を年額に換算して算出(鉄道、バスの利用金額ごとに排出原単位を乗じて算出)

 

※1 GHG排出量算定基準は、GHGプロトコルに基づくScope1(直接排出)+Scope2(間接排出)

※2 Partnership for Carbon Accounting Financials

※3 Scope2は、マーケット基準にて算出

※4 東京拠点グループ6社は、以下の通り

スパークス・グループ株式会社

スパークス・アセット・マネジメント株式会社

スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー株式会社

スパークス・アセット・トラスト&マネジメント株式会社

スパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメント株式会社

スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社

※5 所在国の排出係数を使用して算出

 

 

 

 

  責任投資に係る取り組み (投資会社として)

 

 スパークス・グループ内のアセットマネジメント会社が、受託しているポートフォリオの運用を通じて、投資先の気候変動への対応状況を分析し、影響度を評価する取り組みについては、以下の通りです。

 

  ①ガバナンス

 当社グループは、「(投資を通じて)世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」というパーパスを掲げ、この達成のため、顧客よりお預かりする全ての資産に関する顕在・潜在双方のリスクと機会を適切に把握、管理しております。

 具体的には、責任投資の監督責任、説明責任を果たすため、当社取締役会の諮問機関として、グループCIOを委員長とする責任投資委員会を設置しています。なお、責任投資委員会には、全ての社内取締役、グループ執行役員が委員として参加し、少なくとも四半期に一度は開催され、その内容について適時に取締役会に報告の上、実施内容について取締役会が監督するというガバナンス体制を構築しています。また、責任投資委員会における責任投資原則の実践に関する議論を具体的に進めるため、責任投資推進室を設置しております。

 当該委員会においては、グループ各社の投資政策委員会(もしくは同等の組織)から気候変動関連リスク・機会への対処ならびに人権尊重を含む責任投資の実施状況の報告が行われるほか、気候変動関連リスク・機会への対処ならびに人権尊重を含む責任投資ポリシーなどの変更承認、責任投資の実施に関する年次報告書の承認などを行っています。

 なお、当該委員会には外部アドバイザーが陪席し、独立した立場から、報告や審議内容に対する助言がなされ、責任投資に関する最新の動向が共有されています。

当連結会計年度は責任投資委員会を計4回実施し、各投資政策委員会から、責任投資の実施状況の報告、責任投資方針の見直し、年次報告書が報告され、承認されました。

※体制図は、図1を参照

 

  ②リスク管理

 当社グループは、投資先企業の調査・分析及び投資判断において、ボトムアップリサーチによる企業の定性的評価を重視しています。ボトムアップリサーチにおいて、期待投資リターンの評価を行うとともに、ESGに関する機会とリスクも定性的に評価しております。

 また、外部ベンダーの気候変動関連データをエンゲージメント先の選定や対話に活かしながら、投資先企業に気候変動に係る取り組みを促進するよう働きかけを行うことが可能な態勢整備を進めています。

 なお、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオに関して、外部ベンダーの気候変動関連データを参照し、各ポートフォリオとベンチマーク(もしくは参考インデックス)について、カーボンフットプリント(事業活動に伴って排出される温室効果ガスのCO2換算量)と加重平均カーボンインテンシティ(WACI : Weighted Average Carbon Intensity)を計測した数値を投資政策委員会に、エンゲージメント件数を投資政策委員会に報告しています(*)。

*エンゲージメント件数の投資政策委員会への報告は、2023年1月より開始

 

  ③戦略

 気候変動問題の解決のためには、投資先企業が気候変動に関するリスクと機会を中長期的な目線で経営戦略に組み込み、対応を進めることが重要であると認識しています。アセットマネージャーとして、投資先企業の気候変動に関するリスクと機会が、顧客資産の運用ポートフォリオに及ぼす影響を把握するため、運用資産残高の大部分を占める、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略の、2023年12月末時点のポートフォリオについて、S&PGlobalにシナリオ分析を委託し、実施しました。

 なお、2023年12月末時点の、当社グループの投資戦略別運用資産残高は、表の通りです。

 

(単位:億円)

日本株式

10,936

OneAsia

1,103

実物資産

2,855

プライベート・エクイティ(未来創生他)

1,681

合計

16,576

 

 

 

 

 

2℃未満目標との整合性:温室効果ガス移行経路評価

 上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオとベンチマークについて(*)、移行経路アプローチに基づき温暖化対策のための国際目標との整合性を評価しました。S&P Globalの温室効果ガス移行経路評価を利用することで、ポートフォリオにおける2℃未満目標に対する整合性の程度を把握することができます。

*上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略は、表中の「日本株式」と「OneAsia」の合計です。

*上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のベンチマークは、TOPIX、KOSPI、MSCI Asia除く日本、を対応する市場の運用資産残高で加重平均し合成しています。

 

 本評価では、過去の実績と将来(中期)の予想排出量の双方を評価対象とし、投資先の時間経過に伴う排出削減が温暖化防止目標に沿った適正な水準にあるかどうかを検証します。その結果、上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオでは、昨年に引き続き、2℃以上3℃未満の水準、ベンチマークについては3℃以上の水準にあるとの評価になりました。今後、ポートフォリオを2℃未満に整合させることも視野に当社として何ができるかを社内で検討していきます。

 

移行リスク

 TCFDは、気候関連のリスクを移行リスクと物理的リスクの2つに分類しています。移行リスクは脱炭素経済への移行に関連するリスク、物理的リスクは気候変動の物理的影響に関連したリスクです。

 上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける、気候関連リスクの財務的インパクト(将来のカーボン・プライスが及ぼす財務への影響)を評価しました。

 上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける将来負担すると推定される炭素コスト(Unpriced Cost of Carbon : UCC)割当分の多くは素材セクターであり、地域別には大半が韓国となっていることから、当該戦略のポートフォリオは、韓国国内でのカーボン・コストの上昇をもたらす気候関連の政策変更リスクに最も影響を受けるものと考えられます。投資先企業が将来負担するUCCに対して、現時点でどの程度支払う能力があるかを示すEBITDAアット・リスクは、高位シナリオに基づく2030年時点のポートフォリオ加重平均値で約6.80%、一方ベンチマークは約11.44%でした。

 昨年の分析では、1.75℃未満の水準でしたが、データカバー率がポートフォリオについては約25%、ベンチマークについては56%と、すべての持ち分について評価できませんでした。一方、本年の分析では  、ポートフォリオについては約95%、ベンチマークについては100%と改善が見られ、ポートフォリオの全体像をより反映していると考えます。

 

EBITDAアット・リスク

 

2022年

2023年

ポートフォリオ

ベンチマーク

ポートフォリオ

ベンチマーク

EBITDA

アット・リスク

19.85%

7.72%

6.80%

11.44%

 

 

 

 

カバレッジ

2022年

2023年

ポートフォリオ

ベンチマーク

ポートフォリオ

ベンチマーク

カーボンパフォーマンス

98%

100%

100%

100%

パリ協定との整合性

95%

100%

95%

99%

シナリオ分析―カーボンプライシング

54%

54%

96%

99%

シナリオ分析―物理リスク

91%

91%

100%

100%

パリ協定に整合し、2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるというシナリオで、OECDとIEAの調査に基づいています。

セクター別UCCの内訳

 

国別UCCの内訳

 

 

 

物理的リスク

 上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略のポートフォリオにおける物理的リスクを、2050年時点の中高位シナリオに基づき評価しました。8つのハザードタイプ(山火事、寒波、熱波、水ストレス、海岸洪水、河川洪水、熱帯サイクロン、干ばつ)のうち、エクスポージャースコアが高かったのは、河川洪水でした。また財務インパクトが大きかったのは熱波でした。

 

 

 

 

 

出所:S&P Globalデータよりスパークスにて作成

2100年までの気温上昇が2.8-4.6℃となるシナリオで、Shared Socioeconomic Pathway(SSP)の3, Representative Concentration Pathway (RCP)の7.0に該当します。エクスポージャースコアは1から100 のスケールで表現され、100が考えうる最大のリスク、1は最小のリスクを示します。財務インパクトは、気候変動に関連して発生する可能性のある性のある損失(設備投資、運用経費、事業中断など)を資産価値に対する割合(%)として表示します。

 

 ④指標及び目標

 当社グループは、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として、1企業

として、積極的に活動を行う所存です。そして、2050年までにすべての投資先企業、案件が温室効果ガスの排出量についてネット・ゼロを達成することを目標といたします。

 上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略の2023年12月末時点のポートフォリオに関して、TCFDが開示を推奨しているカーボンフットプリント(事業活動に伴って排出される温室効果ガスのCO2換算量)、加重平均カーボンインテンシティ(WACI : Weighted Average Carbon Intensity)を、以下の通り算出しました。

 

 

2022年

2023年

カーボンフットプリント

830,940 tCO2e

451,291 tCO2e

WACI

104 tCO2e/百万米ドル

78 tCO2e/百万米ドル

 

 上記、カーボンフットプリント、WACIのいずれの算出に関し、投資先の開示情報や、使用可能な開示情報がない場合はモデリングによる独自アプローチによりGHG排出量を算出するS&P Globalのデータを使用しています。なお、Scope1及びScope2を対象に算出しています。当社グループの運用資産において、GHG排出量や外部評価機関の評価などは、分析を補完するために積極的に活用する方針ですが、データの信頼性、評価方法の違いがあることから、数値を比較するのではなく、データを継続してモニターし、今後の利用方法を検討しています。

顧客資産の運用のうち、個別戦略の目標

(上場株式投資戦略及び上場株式オルタナティブ投資戦略)

 当該投資戦略は、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として、積極的に活動を行う所存です。したがって、2050年までにはすべてのポートフォリオの保有銘柄が温室効果ガスの排出量についてネット・ゼロを達成することを目標といたします。

そのためには、投資先企業が、パリ協定に従い温室効果ガス削減計画を立案し、実行していくことが望ましいと考えます。

 ただし、それまでのプロセスとして、すでに排出量が少ない企業、パリ協定に基づき削減施策を実行している企業にだけ投資するのではなく、今後削減施策を実行すると思われる企業を支援することが重要と考えます。

 したがって、当面の目標としましては、2025年までには、日本株式投資戦略(*)の全てのファンドにおいて、ポートフォリオの50%以上がTCFDに賛同を表明し、排出削減計画を実行している企業とすることとし、なるべく多くの投資先企業が賛同することを働きかけてまいりたいと思います。

*上場株式投資戦略および上場株式オルタナティブ投信戦略のうち、日本株式に投資する戦略のこと。

 

今後の目標と実績につきましては以下のとおりです。

 

目標

実績

2023年

(中間目標)

日本株式投資戦略のすべてのファンドにおいて、TCFD賛同率30%以上

TCFD賛同率が30%以上のファンド比率(ファンド数ベース)が97%

2025年

 

日本株式投資戦略のすべてのファンドにおいて、TCFD賛同率50%以上

TCFD賛同率が50%以上のファンド比率(ファンド数ベース)が92%

 当該投資戦略は、長期的に投資先企業が、パリ協定に従い温室効果ガス削減計画を立案し、実行していくことを、対話により支援してまいります。2023年における主な対話事例を下記にご紹介いたします。

 A社は発電関連機器、インフラ設備、航空機器等を手掛ける重工業メーカーです。同社は事業計画の中で、自社グループとバリューチェーン全体を通じて、2040年までのカーボンニュートラル達成を掲げています。自社グループのCO2排出削減について、ヒートポンプや脱炭素電源等を自社工場に導入することにより、事業活動で発生するCO2排出のネット・ゼロを達成することを目指すものとなっています。

 A社に対するエンゲージメントの際、2030年までのScope1,2目標に関しては、自社工場への脱炭素電源・省エネ技術導入等が順調に進んでいることを確認しました。課題としては、Scope3で、引き続きその取り組み状況は注視すべき点と認識しています。

 

(プライベート・エクイティ投資戦略(未来創生ファンド))

 地球環境の持続可能性に関する問題は大きなリスク要因である一方、ベンチャー企業にとってのビジネスチャンスでもあります。当該投資戦略では、例えば、社会全体の効率化・スマート化によるエネルギー消費の抑制、水素の活用など、温室効果ガス排出削減の取組み、資源枯渇を防ぐ糸口となるような新素材の開発など、幅広いテーマから環境問題解決の視点を持ってベンチャー企業を発掘し、投資・支援してまいります。

 また、ベンチャー企業自身が環境に与えうる直接的・間接的な影響を把握しコントロールする能力があるか否か、また、環境保全のマインドを持つ経営者か否かを分析します。

 当該投資戦略は、パリ協定の長期目標に賛同し、世界的な平均気温の上昇を抑えるため、投資会社として積極的に活動を行う所存です。2050年までには、すべての投資先企業が温室効果ガスの排出量についてネット・ゼロを達成することを目標とします。それまでのプロセスとして、当該投資戦略の投資担当者が、投資先企業のTCFD賛同に向けてのガイド役となることを目指します。当該投資戦略がガイド役として、投資先企業が未上場の段階から気候変動に関する財務情報開示に向けて最大限取り組めるよう、気候関連リスクと機会の評価、そしてその財務上の影響についての議論に参加した主な事例を下記にご紹介いたします。

 投資候補先のB社は、金属3Dプリンタを活用した金属部品の製造を行っております。投資検討の過程で、ESGチェックリストを用いて「金属消費量の削減とリサイクル性の最大化」について議論しました。気候変動対策を背景に、一部市場(エレクトロニクス、医療)において金属からリサイクル性の高い材料へ移行する取り組みが強化されることによる事業リスクを認識しました。

 エンゲージメントを通じて、同社は他社に先駆けて金属消費を削減する製造プロセスの技術開発や、リサイクル性の高い合金材料に向けた研究開発への投資を行っていることを確認しました。当該投資戦略は、今後も同社技術の開発状況を注視し、モニタリング・対話を継続して参ります。

 

 今後も、気候変動問題解決に向けた取り組みを一層進め、情報開示を行ってまいります。

 

 (2) 人的資本・多様性に関する方針及び取組

 当社グループのパーパス、ビジョン(=思想)に共感し、集う優秀な人財が、様々な多様性を互いに尊重し、最高のプロフェッショナルとなるべく能力・技術の向上に主体的に取り組むだけでなく、思想・技を実現するための行動規範(=所作)を大切にすることで優れた人格の形成にも取り組み、互いに切磋琢磨する成長の機会を与えられ、全員が一丸となって「もっと良い投資(=技)」を実践・提供することで組織の成長に貢献するという働きがいを感じることのできる場を提供してまいります。

 また、当社グループの競争力の源泉は、「①イノベーション力」×「②コミュニケーション力」、つまり「個々の高い専門性を掛け合わせて組織で戦う」ことにあると考えています。よって、①アカウンタブルで再現性の高い投資力やユニークな投資アイデア創出力を強化するため、②社内に望ましい行動様式を明確化・浸透させるとともに、全社一丸となって投資アイデアを具体的にパッケージング化する力を強化するため、また③それらのベースとなる働きやすい環境を整えるため、それぞれ必要と考える諸施策を講じてまいります。

 

 ① 人材の育成方針について

 プロフェッショナルファームとして役職員は高い専門性を有しておりますが、変化が激しく不確実かつ複雑化した環境下において新たな投資分野への参入などにより業務が拡大していく中、必要とされる知識やスキルは多様化しており、また常にアップデートしていかなければならず、役職員が専門領域において主体的に学び実践することが重要であると考えております。そのために専門領域に関する自己研鑽費用への補助や資格取得時等の報奨金の拡充、社員同士が教え合うOJTの強化などに取り組んでまいります。加えて、専門領域以外においても、プロフェッショナルとしてのインテリジェンスをより高めるために、幅広く知的好奇心を満たす学習機会の提供にも取り組んでまいります。また個々人の主体的な学びを重視しつつ、各部門において必要な知識・スキルを身に付けた役職員を計画的に育成していくために、部門別教育の強化にも取り組んでまいります。

 

 ② 人材の多様性の確保に向けた社内環境整備方針について

 当社グループとしては、異なる経験や知見、属性等を尊重し、それらを反映した多様な視点と価値観を有することは、新たな価値を創造し、持続的な成長と企業価値の向上、ひいては当社グループのパーパスである「世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」の実現に欠かせないものと考えております。このため、従来から性別や国籍等の属性に関係なく、経験や能力、当社グループのパーパスやビジョン、大切にしている価値観に対して理解と共感が出来る人材を人物本位で採用や登用を行っております。

 当社グループの人員は、主に中途採用者で構成されており、品格を備え、意欲と能力がある優秀な人材であれば、性別や国籍等の属性に関わらず、たとえ未経験者であっても積極的に採用しております。中途採用者は、それぞれが異なるキャリアを有していることから、当社グループ固有の価値のみに縛られず、非常に多様性に富んだ組織構成になっております。更に、異業種出身者の採用や異業種から出向者を受け入れる等、金融業界以外の価値観や知見を有する人材を取り込むことで、多様性ある組織の構築を目指しております。

 その上で新規に採用した役職員には、永続させるべき創業来大切にしている価値観や行動指針を代表取締役社長とのミーティングを通して理解を深めてもらい、また定期的に部門単位にワークショップを開催し、皆で考える機会を設ける等して組織全体で体現できるように努めています。その上で、自身の行動を客観的に振り返ることができるように、行動指針に沿った行動が出来ているかを評価する仕組みの導入を進めており、多様なバックグラウンドや知見を有する組織にあっても当社グループが掲げるパーパスの実現に向けて全員のベクトルを合わせております。

 当社グループは「プロフェッショナルファーム」であるという認識のもと、上記方針に従い、性別や国籍等の属性を問わず、経験や能力等人物本位で採用した中途採用者をベースに創業来事業拡大を行っており、これまで社員を管理職へ登用する上で、性別や国籍、採用時期や年齢等といった属性が要因となって昇進・昇格に差が出ているとは考えておりません。よって、「女性」「外国人」「中途採用者」に特化した管理職への登用に関する特別な基準や、それぞれの属性ごとに、定量的な管理職比率等の目標を形式的に定めることは、現時点においては致しません。

 一方で、政府目標である「指導的地位に占める女性の割合が2020年代の可能な限り早期に30%程度となるよう目指して取組を進める」を念頭に置きつつも、当該比率を形式的に達成することを目標にするのではなく、女性があたり前に活躍できる環境づくりとして昨年度は、下記[参考1]にあるようなライフステージに合わせて柔軟に支援ができる人事制度の導入を進めて参りました。加えて今年度は一日又は半日単位で利用できる傷病休暇を時間単位でも利用できるようにすることで、更なる従業員の就業に係る利便性の向上も図ってまいります。また管理職候補者層に向けて、リーダーとして必要な心構えや求められる行動、その責任と遣り甲斐等について研修を通して実践的に学べる機会を提供することで、主体的に管理職として役割を果たしてゆきたいと考える者を増やし、結果的に経営の意思決定に関わる女性社員が増える土壌を構築して参ります。また、現時点では当社グループのビジネス基盤が日本中心であることから、外国人比率及び外国人管理職比率の割合は下記[参考2]の通りでありますが、今後、日本以外でのビジネスの拡大に伴い、当該比率は必然的に上昇してゆくと考えております。

 

[参考1]

ライフステージに沿った主な支援制度

内容

就業時間の複線化

従業員が始業・就業時間帯を一定の範囲で選択できる。

短時間正社員

育児(子の年齢制限無し)や介護(期間制限無し)等の事情から短時間勤務ができる。

不妊治療休暇

有給で年10日限度に取得可能(半日単位でも取得可能)。

看護/介護休暇

有給で対象者一人当たり年5日を限度に取得可能。

バックアップ休暇

未取得の年次有給休暇を最大30日積み立てることが可能。

出産/育児支援金

産前産後休暇を取得する従業員、育児休業を取得する男性従業員に支援金を支給。

*制度利用には会社の承認が必要な場合があります。

[参考2]

2024年3月末時点(当社グループ職員 186名:使用人兼務役員を含む)

女性比率

78名(当社グループ職員に占める割合:41.9%)

女性管理職比率

10名(当社グループ管理職員に占める割合:25.6%)

外国人比率

44名(当社グループ職員に占める割合:23.6%)

外国人管理職比率

8名(当社グループ管理職員に占める割合:20.5%)

中途採用者比率

177名(当社グループ職員に占める割合:94.2%)

中途採用者管理職比率

35名(当社グループ管理職員に占める割合:97.4%)

育児休業取得者数

2024年3月期:男性3名(対象者3名)  女性1名(対象者1名)

2023年3月期:男性1名(対象者2名) 女性2名(対象者2名)

2022年3月期:男性0名(対象者2名) 女性3名(対象者3名)

*育児休業取得者数は国内グループ会社の実績です。

*育児休業取得者数欄に記載の対象者数は本人又は配偶者が出産した人数です。

*育児休業期間が年度をまたぐ場合は、休業を開始した年度のみでカウントしています。

 

 当社グループの多様性の確保に向けた社内環境整備の実施状況は以下のとおりです。

*性別や国籍等の属性や出身業界にとらわれず、多様性に富む中途採用者を軸とした人物本位での採用活動を継続しております。

*出産・育児・介護等、社員のライフステージに応じた支援を行い、また、男性が育児休業を取得しやすい風土の醸成と仕組みの導入にも取り組むことで、性別を問わずに仕事と就業との両立に資する施策を充実させるほか、就業時間帯の複線化や短時間勤務等、多様な働き方を模索しております。

*定年後再雇用の延長等を検討することで、シニア、ベテラン社員の経験を、これまで以上に組織に生かす仕組みを模索しつつ、合わせて、その知識・経験・スキルを次世代の人材に伝承し、若手社員の成長の機会を確保しております。

*ハラスメント研修やアンコンシャスバイアス研修等を通して、組織として多様な人材の受容度を向上させ、風通しの良い、心理的安定性が確保されている組織風土を構築しております。

*管理職手前の対象者に対する研修や情報提供、新規入社者のメンターに任命することで人材マネジメントの入口を経験することなどを通じて、管理職への昇格に対する意欲の向上に努めております。

*既に導入済みの社内公募制を活用し、誰もが自身の能力を発揮することが出来る場の提供に努めると同時に、管理職になるための経験を積む場としても活用しております。

*従業員の健康維持・増進に寄与する施策を充実させ、いわゆる健康経営を実践することで、多様な社員が、健康で活き活きと働き続けることが出来る環境を構築しております。

 尚、健康経営の取り組みが評価され、『健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)』に認定されました。

*上記の人材育成、社内環境整備方針に加え、多様な社員を束ねるためにも当社グループのパーパス、ビジョン、ミッション等の更なる浸透を図り、共感を得ることで従業員エンゲージメントを高めております。