リスク
3【事業等のリスク】
投資判断をされる前に以下に述べるリスクについて十分にご検討ください。以下に述べるリスクのいずれかが実際に生じた場合、野村のビジネスや財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。その場合、当社の株式の市場価格が下落し、投資家の皆さまが投資額の全部または一部を失う可能性があります。また、以下に述べられたリスク以外にも、現時点では確認できていない追加的なリスクや現在は重要でないと考えられているリスクも野村に影響を与え、皆さまの投資に影響を与える可能性があります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
目次
経営環境に関するリスク |
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1.
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野村のビジネスは日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向(地政学的イベント含む)により重大な影響を受ける可能性があります |
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(1)
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野村がビジネスを行う国・地域における政府・金融当局による政策の変更が、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります |
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(2) |
市場低迷の長期化や市場参加者の減少が流動性を低下させ、大きな損失が生じる可能性があります |
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(3) |
自然災害、テロ、武力紛争、感染症等により野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
2. |
金融業界は激しい競争に晒されています |
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(1) |
他の金融機関や非金融企業の金融サービス等との競争が激化しています |
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(2) |
金融グループの統合・再編、各種業務提携や連携の進展により競争が激化しています |
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(3)
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野村の海外ビジネスは激しい競争に晒されており、ビジネス・モデルの更なる見直しが必要となる可能性があります |
3.
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市場リスクや資金流動性リスクだけではなく、イベント・リスク(地政学リスク含む)も野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせる可能性があります |
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4.
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気候変動やそれに関わる各国の政策変更などを含む、サステナビリティの要素が野村の事業に影響を及ぼす可能性があります |
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事業に関するリスク |
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5. |
野村のビジネスは業務遂行にあたってさまざまな要因により損失を被る可能性があります |
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(1) |
トレーディングや投資活動から大きな損失を被る可能性があります |
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(2)
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証券やその他の資産に大口かつ集中的なポジションを保有することによって、野村は大きな損失を被る可能性があります |
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(3) |
ヘッジ戦略により損失を回避できない場合があります |
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(4) |
野村のリスク管理方針や手続きがリスクの管理において十分に効果を発揮しない場合があります |
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(5) |
市場リスクによって、その他のリスクが増加する可能性があります |
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(6) |
野村の仲介手数料やアセット・マネジメント業務からの収入が減少する可能性があります |
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(7) |
野村の投資銀行業務からの収入が減少する可能性があります |
6. |
野村に債務を負担する第三者がその債務を履行しない結果、損失を被る可能性があります |
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(1) |
大手金融機関の破綻が金融市場全般に影響を与え、野村に影響を及ぼす可能性があります |
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(2)
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野村の信用リスクに関する情報の正確性、また信用リスク削減のために受け入れている担保の十分性については、必ずしも保証されたものではありません |
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(3) |
野村の顧客や取引相手が政治的・経済的理由から野村に対する債務を履行できない可能性があります |
7.
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モデルに誤りがある場合、またはモデルを不正確もしくは不適切に使用した場合、意思決定を誤り、財務的損失を被る可能性や、顧客からの信頼低下を招く可能性があります |
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8. |
当社は持株会社であり、当社の子会社からの支払に依存しています |
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9. |
投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券について野村が期待する収益を実現できない可能性があります |
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10.
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野村が提供したキャッシュ・リザーブ・ファンドや債券に損失が生じることで顧客資産が流出する可能性があります |
財務に関するリスク |
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11. |
連結貸借対照表に計上されているのれんおよび有形・無形資産にかかる減損が認識される可能性があります |
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12. |
資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります |
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(1) |
野村が無担保あるいは有担保での資金調達ができなくなる場合があります |
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(2) |
野村が資産を売却できなくなる可能性があります |
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(3) |
信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります |
13.
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連結財務諸表に計上されている関連会社およびその他の持分法投資先の株価が一定期間以上大幅に下落した場合には減損が認識される可能性があります |
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非財務リスク |
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14. |
オペレーショナル・リスクの顕在化により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
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15. |
野村の財務報告に関する内部統制に開示すべき重要な不備が特定されました。野村は改善策を策定し取り組んでおりますが、今後も重要な不備が特定される可能性があります |
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16. |
役職員または第三者による不正行為や詐欺により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
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17. |
利益相反を特定し適切に対処することができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
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18. |
野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります |
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(1)
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野村のビジネス等に起因した法的責任が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります |
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(2)
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規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります |
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(3)
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金融システム・金融セクターに対する規制強化の進行が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります |
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(4)
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経営状況、法的規制の変更などにより、繰延税金資産の計上額の見直しが行われ、野村の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります |
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(5)
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マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与に適切に対処できなかった場合には、行政処分や罰金等の対象となる可能性があります |
19. |
野村の保有する個人情報の漏洩により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
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20.
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野村の情報システムが適切に稼働しないこと、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩または十分なサイバーセキュリティを維持するために必要な費用負担により、野村のビジネス、財政状態および経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります |
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21. |
人材の確保・育成ができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります |
経営環境に関するリスク
1.野村のビジネスは日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向(地政学的イベント含む)により重大な影響を受ける可能性があります
野村のビジネスや収益は、日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向により影響を受ける可能性があります。また、各国の経済情勢や金融市場の動向は、経済的要因だけではなく、武力紛争、テロ行為、経済・政治制裁、世界的流行病、地政学的リスクの見通しまたは実際に発生した地政学的イベント、あるいは自然災害などによっても影響を受ける可能性があります。地政学的イベントには、米中対立、ロシアによるウクライナへの侵攻、中東やアジアにおける地政学的緊張のような事象を含みます。仮に、このような事象が生じた場合、金融市場や経済の低迷が長期化し、野村のビジネスに影響が及ぶとともに、大きな損失が発生する可能性があります。あるいは金融市場に限らず、例えば日本が直面する人口高齢化や人口減少の長期的傾向等の社会情勢は、野村の事業分野、特にリテールビジネスの分野において、需要を継続的に圧迫する可能性があります。なお、野村のビジネス・業務運営に影響を与える金融市場や経済情勢に関するリスクには以下のものが含まれます。
(1)野村がビジネスを行う国・地域における政府・金融当局による政策の変更が、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります
野村は、国内外の拠点網を通じて、グローバルにビジネスを展開しています。したがって、野村がビジネスを行う国・地域において、政府・金融当局が財政および金融その他の政策を変更した場合、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります。また、日本を含む多くの主要各国の中央銀行による金融政策が変更され、それにともなう金利や利回りの変動等が進んだ場合、顧客向け運用商品の提供やトレーディング活動または投資活動等に影響を及ぼす可能性があります。近年では、日本銀行が2024年3月19日にマイナス金利政策を解除しました。これまでのところ野村の事業は日本銀行のマイナス金利政策の解除による重大な影響を受けておりませんが、日本銀行の政策の先行きや、政策が野村の事業に与える影響については不確実です。
(2)市場低迷の長期化や市場参加者の減少が流動性を低下させ、大きな損失が生じる可能性があります
市場低迷が長期化すると、野村の業務に関連する市場において取引量が減少し、流動性が低下します。また、規制強化を背景とする金融機関の市場関連業務の縮小も市場の流動性に影響を与えます。この結果、市場において、野村は、自己の保有する資産を売却またはヘッジすることが困難になるほか、当該資産の市場価格が形成されず、自己の保有する資産の時価を認識できない可能性があります。特に店頭デリバティブ等においてはポジションのすべてを適切に解消し、またはヘッジすることができない場合に大きな損失を被る可能性があります。さらに、市場の流動性が低下し、自己の保有するポジションの市場価格が形成されない場合、予期しない損失を生じることがあります。
野村は、これらの市場リスクおよび市場流動性リスク等を日々計測し、事前に設定したリミットを超過する場合は即座の対応をとる等のリスク管理体制を整備しています。
(3)自然災害、テロ、武力紛争、感染症等により野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、不測の事態に備えたコンティンジェンシープランの策定や役職員の安否確認訓練などの危機管理訓練を行っております。また実際に不測の事態が生じた際には、対策本部を設置し、役職員やその家族の安否確認、安全確保、被害拡大の防止、および業務継続態勢を維持するために適切な措置を講じる体制を整えることで、オペレーショナル・レジリエンス(システム障害、サイバー攻撃、自然災害等が発生しても、重要な業務を最低限維持すべき水準において提供し続ける能力)の確保に向けて取り組んでいます。しかしながら、想定を上回る規模の災害、テロ行為または武力紛争、広範囲の感染症の感染拡大等により、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限らず、野村の役職員、施設やシステムが被災し、業務の継続が困難になる可能性があります。例えば、2020年からの新型コロナウイルス感染症の世界的流行とそれにともなう各国政府による感染拡大防止策により、株価の急落・金利の乱高下・ボラティリティの高まり・クレジット・スプレッドの急拡大等の混乱などのリスクが顕在化しました。
2.金融業界は激しい競争に晒されています
野村のビジネスは激しい競争に晒されており、この状況は今後も続くことが予想されます。野村は、取引執行能力や商品・サービス、イノベーション、評判(レピュテーション)、価格など多くの要因において競争しており、特に、仲介業務、引受業務などで激しい価格競争に直面しています。
(1)他の金融機関や非金融企業の金融サービス等との競争が激化しています
金融業界において、野村は多種多様な競合企業との激しい競争に直面しています。独立系証券会社や、商業銀行系の証券会社、日本に限らず各国に拠点を置く証券会社と競合しております。その結果、特に、セールス・トレーディング、投資銀行業務、リテールビジネスの分野において、野村のシェアや取引手数料等に影響を及ぼしています。上記に加え、オンライン証券会社の台頭の他、デジタライゼーションやデジタル・トランスフォーメーション(DX)と呼ばれる潮流によりフィンテック企業の台頭や非金融企業の金融サービス参入など、従来の業界領域を超え、競争が一層激化の様相を呈しています。野村はこうした競争環境の変化に対応するべく、既に多角的な取組みを始動させています。しかしながら、激化する競争環境において、このような取組みが野村のシェアの維持拡大に効果を発揮できない場合、ビジネス獲得の競争力が低下し、野村のビジネスおよび経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
(2)金融グループの統合・再編、各種業務提携や連携の進展により競争が激化しています
金融業界において、金融機関同士の統合・再編が進んでいます。特に、大手の商業銀行、その他幅広い業容を持つ大手金融グループは、その傘下における証券業の設置および獲得ならびに他金融機関との連携に取り組んでいます。これら大手金融グループが、総合的な金融サービスをワンストップで顧客に提供すべく、グループ内での事業連携を引き続き強化しています。具体的には、ローン、預金、保険、証券ブローカレッジ業務、資産運用業務、投資銀行業務など、グループ内での幅広い種類の商品・サービスの提供を進めており、この結果として金融グループの競争力が野村に対し相対的に高まる可能性があります。また、金融グループは、市場シェアを獲得するために、商業銀行業務その他金融サービスの収入により投資銀行業務や証券ブローカレッジ業務を補う可能性があります。また、グループの垣根を越えた商業銀行と証券業との提携や、昨今では新興企業を含む事業会社との提携等、業態・業界を超えた連携へと広がる傾向も見られ、これらの大手金融グループの事業拡大や提携等による収益力の向上などにより、野村の市場シェアが低下する可能性があります。野村においても戦略的提携や出資、新規事業の立ち上げなど行っていますが、事業戦略の構築・実施が想定通りにいかない場合等には、期待したとおりのシナジーその他の効果を得られない可能性があります。また新たな事業活動、より広範な顧客や取引先との取引、新たな資産クラスや新たな市場に関わることによりリスクが増加する可能性があります。
(3)野村の海外ビジネスは激しい競争に晒されており、ビジネス・モデルの更なる見直しが必要となる可能性があります
海外には多くのビジネスの機会およびそれにともなう競争が存在します。野村は、これらのビジネス機会を有効に活用するため、米国、欧州、アジアなどの重要な海外市場において他金融機関と競合しています。野村は、2019年4月以降、ビジネスポートフォリオの見直し、および顧客ビジネスと成長地域への注力を行うべく、ビジネスプラットフォームの再構築に取り組んでおり、2020年にGreentech Capital, LLC(以下「グリーンテック」)を買収したほか、2023年にはCapital Nomura Securities Public Company Limitedの持分売却を行うなど、オーガニックだけでなくインオーガニックにもビジネスプラットフォームを適宜見直してきました。今後も、競争環境を俯瞰しながらビジネスポートフォリオ全体の見直しは継続し、各種リスクを考慮のうえで戦略を実行していきますが、スピードも意識する必要がある中で想定以上の費用がかさんだり、財務、経営その他の資源を想定以上に投じたりすることとなった場合などには、野村のビジネスおよび経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、戦略の土台となる想定が正しくなかった場合、得られる利益が想定以上に落ち込むなど、結果として野村のビジネスおよび経営成績に影響を与える可能性があります。さらに、戦略の実行にともなう人員数や報酬の削減により、野村のビジネスの成功に必要な従業員の獲得および維持に悪影響が及ぶ可能性があります。また、経営体制の合理化が適切に行われなかった場合、野村がグローバルに展開するビジネスを適切に管理監督するための機能に影響を及ぼす可能性があります。
3.市場リスクや資金流動性リスクだけではなく、イベント・リスク(地政学リスク含む)も野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせる可能性があります
イベント・リスクとは、事前に予測が困難な出来事(例えば、自然災害、人災、流行病、テロ行為、武力紛争、政情不安、その他野村のビジネスや取引相手等に影響を与える出来事)によりマーケットに急激な変動がもたらされた場合に発生する潜在的な損失をいいます。これらには、2018年以降の米中通商摩擦やアジア全体の地政学的緊張、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大、2022年のロシアによるウクライナへの侵攻、および中東における地政学的緊張のような突然かつ想定外の貿易環境や安全保障政策の急変などの社会的に重大な事象のほか、より個別具体的に野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせるおそれのある、次のような出来事が含まれます。
・主要格付機関による、野村が保有するトレーディング資産や投資資産に関する信用格付の突然かつ大幅な格下げ
・野村のトレーディング戦略を陳腐化させ、競争力を低下させ、または実行不能にするような、トレーディング、税務、会計、金融規制、法律その他関連規則の突然の変更
・野村が関与する取引が予測不能な事由により遂行されないために野村が受取るべき対価を受取れないこと、または野村がトレーディングもしくは投資資産として保有する有価証券の発行会社の倒産や詐欺的行為もしくはこれらに対する行政処分等
4.気候変動やそれに関わる各国の政策変更などを含む、サステナビリティの要素が野村の事業に影響を及ぼす可能性があります
企業経営における脱炭素やコーポレート・ガバナンスの高度化、社会課題の解決などサステナビリティ分野への取組みに注目が高まる中、野村はこれらの領域における指針および業務能力を継続的に発展させ、株主、顧客、および社会全体を含むステークホルダーに対して積極的にその態勢を示すことが必要となっています。サステナビリティを取り巻く環境の変化は速く、事業活動において環境や、人権等への配慮が充分でない場合、脱炭素化やその他サステナビリティ関連の取組みなどを進めていく顧客に対して十分なサービス提供ができない可能性があるほか、レピュテーション、経営成績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。レピュテーショナル・リスクには、環境配慮に関する表示に対して実態をともなわないことにかかるリスク(いわゆる「グリーン・ウォッシュ」と呼ばれるリスク)も含まれます。
野村は、気候変動を主要なグローバル課題の1つであると認識しています。気候変動がもたらす直接的な影響と、それにともなうビジネス環境の変化により野村は損失を被る可能性があります。気候変動に起因するリスクは、大型の台風、干ばつ、酷暑、霜といった異常気象や気候パターンの長期的変化、海面上昇などによって人的被害や財産上の損害が生じるリスク(物理的リスク)と、脱炭素社会への移行に向けた各国政府の政策変更や急速な技術革新、消費需要の変化に対応できず取り残されるリスク(移行リスク)があるといわれています。
事業に関するリスク
5.野村のビジネスは業務遂行にあたってさまざまな要因により損失を被る可能性があります
(1)トレーディングや投資活動から大きな損失を被る可能性があります
野村は顧客取引および自己売買のために、債券市場や株式市場等でトレーディング・ポジションと投資ポジションを保有しております。野村のポジションは金利、為替、クレジット、証券化商品、株式などさまざまな種類の資産によって構成されており、その中にはデリバティブ、レポ、およびローンなどの取引も含まれます。これらの資産が取引される市場の変動は、当該資産のポジションの価値に影響を及ぼす可能性があります。そのため、野村はさまざまなヘッジ手法を用いてポジションリスクの軽減に努めていますが、それでも資産価格が大きく変動した場合、もしくは、金融システムに過大な負荷がかかることで市場が野村の予測していない動きをした場合、野村は損失を被る可能性があります。また、暗号資産の価格については、業界の動向や暗号資産の規制などさまざまな要因により大きく変動する可能性があります。
野村のビジネスは市場のボラティリティ水準の変化に影響を受けており、今後も継続して影響を受ける可能性があります。トレーディングや裁定取引の機会は市場のボラティリティに依存しており、ボラティリティが低下した場合は取引機会が減少し、これらのビジネスの結果に影響を与える可能性があります。一方、ボラティリティが上昇した場合は取引量が増加し、バリュー・アット・リスク(以下「VaR」)で計測されるリスク量が増大することがあります。また過度なボラティリティの上昇や価格スプレッドの拡大が生じた場合、野村はマーケットメイキングや自己勘定投資においてより高いリスクに晒される可能性があります。そのため、必要に応じてこれらのビジネスの既存ポジションまたは取引量を減らすことがあります。
米国顧客とのプライム・ブローカレッジ取引に関する損失(以下「米国顧客取引に関する損失」(注))への対応として、リスク管理活動の改善に向けた複数の施策を実施しておりますが、野村のビジネス・モデルには必然的に大口の取引が含まれており、その結果、将来的に再び大きな損失を計上する可能性があります。
資本市場における取引を円滑に進めるために、引受業務やトレーディング業務にともない比較的大きなポジションを保有することがあります。また、野村が投資商品の開発を目的として試験的なファンドを設定してポジションを保有し、投資商品の設定・維持を目的として資金を出資することがあります。野村は市場価格の変動によりこれらのポジションから大きな損失を被る可能性があります。
加えて、野村が担保を提供する取引においては、担保資産価値の大幅な下落や、野村の信用格付の引下げ等によって信用力低下にともなう追加担保の提供義務が生じた場合は、取引コストの上昇および収益性の低下を招く可能性があります。一方、担保の提供を受ける取引においては、担保資産価値や信用力の下落が顧客取引の減少につながり、それにともなう収益性の低下を招く可能性があります。信用格付の低下に関しては「財務に関するリスク 12.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります -(3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります」をご参照ください。
(注)米国顧客取引に関する損失の概要:
野村の米国子会社と米国顧客間において、(1)顧客が原資産である個別の株式や指数を保有することなく、それらに対するロングまたはショートのエクスポージャーを保有することができるトータル・リターン・スワップ取引(以下「TRS取引」)と呼ばれるデリバティブ取引(以下「シンセティック・プライム・ブローカレッジ」)、および(2)顧客の口座にある株式ポートフォリオに対する貸付(以下「キャッシュ・プライム・ブローカレッジ」)の取引を実施していました。一般に、野村ではプライム・ブローカレッジ顧客の信用リスク水準を管理するために、同顧客に適用される証拠金比率および保有ポジションに応じた担保(以下「証拠金」)を野村に預託することを求めています。その証拠金比率は、取引先および取引先のポジション構成に関する内部リスク評価の結果に基づいて決定され、その比率に応じた市場動向の影響に基づいて追加証拠金の差入れを要求する場合があります。顧客とTRS取引を行った場合、野村はそのポジションに応じて個別の株式や指数のロング・ポジションやショート・ポジションの保有およびデリバティブ取引により市場リスクの観点からのヘッジを行います。
2021年1月から3月にかけて、市場価格の変動や当該顧客の新規ポジション取得により、当該顧客との取引額・取引量が大幅に増加しました。2021年3月にはシンセティック・プライム・ブローカレッジにおいて大口ポジションを保有している一部銘柄の時価が大幅に下落したため、当該顧客との契約に基づき追加証拠金の差入れを要請しましたが、当該顧客による債務不履行となり、野村から契約解消を通知しました。当該顧客が他の金融機関とも同様に大口のポジションを保有しており、また、それらの金融機関とも債務不履行を起こしていたことも次第に明らかになりました。野村は市場への影響と野村の損失の最小化を図りながら当該TRS取引に紐づくヘッジおよびポジションの巻き戻しを進めましたが、野村と他の金融機関による大量のポジション処理およびそれにともなう市場価格の変動により、野村は2021年3月期第4四半期および通期のトレーディング損益において2,042億円の損失を計上するに至りました。また、有価証券を担保とした顧客への貸付については、当該貸付分を回収できる可能性が低下したことから、2021年3月期第4四半期および通期のその他の費用に貸倒引当金繰入額として416億円を計上しました。2021年5月17日までに当該顧客との取引をすべて解消し、ヘッジ取引を解消した結果、2022年3月期第1四半期および通期において654億円の追加損失を計上しました。そのうち、561億円はトレーディング損失としてエクイティ収益に計上、93億円は貸倒引当金として費用認識しました。
(2)証券やその他の資産に大口かつ集中的なポジションを保有することによって、野村は大きな損失を被る可能性があります
野村は、マーケット・メイク、ブロック取引、引受業務、証券化商品の組成、プライム・ブローカレッジ取引、または、顧客ニーズに対応した各種ファイナンシングおよびソリューションビジネス等においては、特定の資産を大口かつ集中的に保有することがあり、多額の資金をこれらのビジネスに投じています。その結果、しばしば特定の発行者または特定の業界、国もしくは地域の発行者が発行する証券または資産に大口のポジションを保有することがあります。これらの資産の価格変動は、必要に応じたそれらポジションの処理・換金に重大な影響を与える可能性があり、米国顧客取引に関する損失において発生したような、大きなトレーディング損失を計上することがあります。なお、一般に、取引相手としては商業銀行、ブローカー・ディーラー、清算機関、取引所および投資会社といった金融サービス業に携わる者に対するエクスポージャーが大きくなる傾向があります。
(3)ヘッジ戦略により損失を回避できない場合があります
野村はさまざまな金融商品や戦略を用いて、野村が顧客または自己のために行う金融取引から生じるリスク・エクスポージャーをヘッジしています。ヘッジ戦略が効果的に機能しない場合、野村は損失を被る可能性があります。野村のヘッジ戦略の多くは過去の取引パターンや相関性に根拠を置いています。例えば、ある資産を保有する場合は、それまでその資産の価値の変化を相殺する方向に価格が動いていた資産を保有することでヘッジを行っています。しかし野村は、さまざまな市場環境においてあらゆる種類のリスクに晒されており、過去の金融危機の際に見られたように、過去の取引パターンや相関性が維持されず、これらのヘッジ戦略が必ずしも十分に効果を発揮しない可能性があります。さらに、すべてのヘッジ戦略がすべての種類のリスクに対して有効であるわけではなく、リスクが適切に管理されていない場合には、特定の戦略がリスクを増加させる可能性があります。例えば、米国顧客取引に関する損失に至る取引の多くは、顧客に特定の株式に対するTRS取引のエクスポージャーを増大させていました。野村は、顧客へのトータル・リターン・スワップをヘッジするために、原資産を保有していました。しかしながら、この特定のヘッジ戦略は、顧客によるデフォルトのリスクや、変動の激しい市場環境において当該ポジションを処理する必要が出る場面のリスクをヘッジすることを意図したものではなく、このようなリスクが顕在化した際、原資産を保有するというヘッジ戦略において市場の変動に晒され、損失を計上する可能性があります。
(4)野村のリスク管理方針や手続きがリスクの管理において十分に効果を発揮しない場合があります
リスクの特定、モニターおよび管理を行うための野村の方針や手続きが十分な効果を発揮しない場合があります。例えば、野村のリスク管理方法の一部は過去の金融市場におけるデータの動きに基づいて設計、構築されていますが、将来の金融市場における個々のデータの振る舞いは、過去に観察されたものと同じであるとは限りません。その結果、将来のリスク・エクスポージャーが想定を超えて、大きな損失を被る可能性があります。また、野村が使用しているリスク管理方法は、市場、顧客等に関する公表情報または野村が入手可能な情報の評価をよりどころとしています。これらの情報が正確、完全、最新でない、または正しく評価されていない場合には、野村は、リスクを適切に評価できず、大きな損失を被る可能性があります。加えて、市場のボラティリティ等を要因として野村のリスク評価モデルが市場と整合しなくなり、適正な評価やリスク管理が行えなくなる可能性があります。さらに、リスク管理の方針や手続きが定められていたとしても、それらが実際に有効に機能するためには、適切に遵守される必要があります。また、組織の構造やガバナンスの枠組みに潜在的な問題がある場合、リスク管理に係る役割や責任などについて意見の相違が生じる可能性があります。
例えば、米国顧客取引に関する損失においては、顧客のカウンターパーティ・リスクや、顧客とのプライム・ブローカレッジ取引の原資産である有価証券に関する市場リスクのエクスポージャーにより巨額の損失が生じました。野村は、リスク管理の方針・手続きおよびその実施状況を総合的に見直し、改定したほか、それらの運用を強化するための数多くの諸施策を実施し、殆ど完了しております。しかしながら、これらの諸施策が完了したとしても、同種またはその他多くのビジネスにおいて、将来の損失を回避するための方針や手続きの効力を損なうリスク管理上の弱みを特定し、是正することができず、将来のリスクの回避に十分ではない可能性があります。
(5)市場リスクによって、その他のリスクが増加する可能性があります
前述の野村のビジネスに影響を与えうる可能性に加え、市場リスクがその他のリスクを増幅させる可能性があります。例えば、金融工学や金融イノベーションを用いて開発された金融商品に内在する諸リスクは市場リスクによって増幅されることがあります。
また、野村が市場リスクによりトレーディングで大きな損失を被った場合、野村の流動性ニーズが急激に高まる可能性があり、一方で、野村の信用リスクが市場で警戒され、資金の調達が困難になる可能性があります。
さらに、市場環境が悪化している場合に、野村の顧客や取引相手が大きな損失を被り、その財政状態が悪化した場合には、米国顧客取引に関する損失に見られるように顧客や取引相手に対する信用リスクが増加する可能性があります。
(6)野村の仲介手数料やアセット・マネジメント業務からの収入が減少する可能性があります
金融市場や経済情勢が低迷すると、野村が顧客のために仲介する証券取引の取扱高が減少するため、仲介業務にかかる収入が減少する可能性があります。また、アセット・マネジメント業務については、多くの場合、野村は顧客のポートフォリオを管理することで報酬を得ており、その報酬額はポートフォリオの価値に基づいています。したがって、市場の低迷によって、顧客のポートフォリオの価値が下がり、解約等の増加や新規投資の減少が生じることによって、野村がアセット・マネジメント業務から得ている収入も減少する可能性があります。また、顧客の資産運用の趣向が変化し、預金などの安定運用や、相対的に低報酬率であるパッシブファンドなどへシフトすることで、これらの収入は減少する可能性があります。
(7)野村の投資銀行業務からの収入が減少する可能性があります
金融市場や経済情勢の変動によって、野村の行う引受業務やM&Aアドバイザリー業務などの投資銀行業務における案件の数や規模が変化する可能性があります。これらの業務の手数料をはじめとして、投資銀行業務からの収入は、野村が取り扱う案件の数や規模により直接影響を受けるため、野村の投資銀行業務および当該業務における顧客等に好ましくない形で経済または市場が変動した場合には、これらの収入が減少する可能性があります。
6.野村に債務を負担する第三者がその債務を履行しない結果、損失を被る可能性があります
野村の取引先は、ローンやローン・コミットメントに加え、その他偶発債務、デリバティブなどの取引や契約により、野村に対して債務あるいは担保差入れ等の一定の義務を負うことがあります。これら取引先が法的整理手続きの申請、信用力の低下、流動性の欠如、人為的な事務手続き上の過誤、政治的・経済的事象による制約など、さまざまな理由で債務不履行に陥った場合、野村は大きな損失を被る可能性があります。米国顧客取引に関する損失では、米国のプライム・ブローカレッジ取引の顧客が、トレーディング業務に関して追加証拠金を差し入れる義務と、野村が保有する担保に対して貸し付けた金額を返済する債務を履行しませんでした。このほか、当期においては、英国における当社子会社とブローカーである業者との取引における決済不履行にともなう貸倒引当(約140億円)の計上を行いました。貸倒引当金の積立と維持は行っていますが、当該引当金は、入手可能な限りの情報に基づく経営者の判断および仮定に基づいています。しかしながら、それらの情報が不正確または不完全であり、さらにそれらの情報に基づく判断および仮定が、場合によっては重大な誤りであると判明する可能性があります。
信用リスクは、第三者が発行する証券の保有、金融機関やヘッジファンドなどの野村の取引相手による未履行、決済機関・取引所・清算機関等のシステム障害などにより、証券・先物・通貨またはデリバティブ取引の執行が所定の期日に行われない場合からも生じます。
第三者の信用リスクに関連した問題には次のものが含まれます。
(1)大手金融機関の破綻が金融市場全般に影響を与え、野村に影響を及ぼす可能性があります
多くの金融機関の経営健全性は、与信、トレーディング、清算・決済など、金融機関間の取引を通じて密接に関連しています。その結果、ある特定の金融機関に関する信用懸念や債務不履行が、他の金融機関の重大な流動性問題や損失、債務不履行を引き起こし、決済・清算機関、銀行、証券会社、取引所といった、野村が日々取引を行っている金融仲介機関にも影響を及ぼす可能性があります。また将来発生しうる債務不履行や債務不履行懸念の高まり、その他類似の事象が、金融市場や野村に影響を及ぼす可能性があります。国内外を問わず、主要な金融機関が流動性の問題や支払能力の危機に直面した場合、野村の資金調達にも影響を及ぼす可能性があります。
(2)野村の信用リスクに関する情報の正確性、また信用リスク削減のために受け入れている担保の十分性については、必ずしも保証されたものではありません
野村は信用に懸念のある顧客や取引相手、特定の国や地域に対するクレジットエクスポージャーを定期的に見直しています。しかし、債務不履行が発生するリスクは、粉飾決算や詐欺行為のように発見が難しい事象や状況から生じる場合があります。また、野村が取引相手のリスクに関し、すべての情報を手に入れることができない、あるいは情報を正確に管理・評価できない可能性があります。例えば、米国顧客取引に関する損失の原因となった債務不履行に陥った顧客に関する信用リスク評価では、顧客の取引活動の全容が十分に反映されていませんでした。さらに、野村が担保提供を条件として与信をしている場合に、米国顧客取引に関する損失の場合において当該顧客に対して行った融資のように、当該担保の市場価格が急激に下落して担保価値が減少した場合、担保不足に陥る可能性があります。
(3)野村の顧客や取引相手が政治的・経済的理由から野村に対する債務を履行できない可能性があります
カントリー・リスクや地域特有のリスク、政治的リスクは、市場リスクのみならず、信用リスクに影響を与える可能性があります。現地市場における混乱や通貨危機のように、ある国または地域における政治的・経済的問題はその国や地域の顧客・取引相手の信用力や外貨調達力に影響を与え、結果として野村に対する債務の履行に影響を与える可能性があります。
7.モデルに誤りがある場合、またはモデルを不正確もしくは不適切に使用した場合、意思決定を誤り、財務的損失を被る可能性や、顧客からの信頼低下を招く可能性があります
野村では、流動性の低いデリバティブ取引の評価や債務者の信用力の評価等を目的として、さまざまな業務でモデルを使用しています。しかし、モデルは常に完璧とは限らず、モデルを使用することで、モデル・リスクが生じる可能性があります。モデルに誤りがある場合、またはモデルを不正確もしくは不適切に使用した場合、意思決定の誤り、財務的損失、または顧客からの信頼低下を招く可能性があります。野村は、モデルの開発、実装や使用に加え、有効なモデル検証プロセスやモデル・リスクを管理し、軽減するための体制を含むモデル・リスクの管理の枠組みを設置しています。それにより、モデル・リスクの軽減に努めていますが、それでも損失が出る可能性があります。
8.当社は持株会社であり、当社の子会社からの支払に依存しています
当社は持株会社であり、配当金の支払や負債の支払の資金について、当社の子会社から受領する配当金、分配金およびその他の支払に依存しています。会社法などの法規制により、子会社への資金移動または子会社からの資金移動が制限される可能性があります。特に、ブローカー・ディーラー業務を行う子会社を含め、多くの子会社は、親会社である持株会社への資金の移動を停止または減少させる、あるいは一定の状況においてそのような資金の移動を禁止するような、自己資本規制を含む法規制の適用を受けています。例えば、当社の主要なブローカー・ディーラー子会社である野村證券、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルInc、ノムラ・インターナショナルPLCおよびノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITEDは、自己資本規制の適用を受けており、自己資本規制の変更や要求水準によっては、当社への資金移動が制限される可能性があります。当社は、関連する法規制に基づき野村グループ間における資金移動について日々確認し管理しておりますが、これらの法規制は当社の債務履行に必要となる資金調達の方法を制限する可能性があります。
9.投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券について野村が期待する収益を実現できない可能性があります
野村は、プライベート・エクイティ投資を含む、多額の投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券を保有しています。米国会計原則では、市場環境によってこれらの投資にかかる多額の損失が計上されることがあり、このことが野村の損益に大きな影響を与えます。例えば、2020年3月期においては、新型コロナウイルスの感染拡大による市場の混乱により、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損失164億円および投資持分証券の評価損166億円を認識しました。また、野村はこれらの投資持分証券・負債証券の売却を決定する可能性がありますが、市場の環境によっては、これらの投資持分証券・負債証券を売却したい場合に、期待どおり迅速には、また望ましい水準では売却できない可能性があります。
10.野村が提供したキャッシュ・リザーブ・ファンドや債券に損失が生じることで顧客資産が流出する可能性があります
マネー・マーケット・ファンド(MMF)やマネー・リザーブ・ファンド(MRF)といったキャッシュ・リザーブ・ファンドは低リスク商品と位置づけられています。しかし急激な金利上昇にともなうファンドの債券価格の下落による損失、債券のデフォルト、マイナス金利の適用による手数料チャージにより、元本割れを起こす場合があります。また、野村は運用による安定的な利回りが見込めないと判断した場合、これらのキャッシュ・リザーブ・ファンドに対し繰上償還や入金制限を行う可能性があります。
また、野村が提供した債券の発行体が債務不履行に陥り、利息や元本の支払が遅延する場合があります。
上記事象の結果、野村は顧客の信頼を失う可能性があり、ひいては野村が保管する顧客からの預かり資産の流出もしくは預かり資産増加の妨げとなる可能性があります。
財務に関するリスク
11.連結貸借対照表に計上されているのれんおよび有形・無形資産にかかる減損が認識される可能性があります
野村は、事業の拡大等のため、企業の株式などを取得し、または企業グループの一部の事業を承継しており、野村が有益と判断した場合にはこれらの活動を今後も継続して行う可能性があります。このような取得や承継は、米国会計原則に基づき、当社の連結財務諸表において、企業結合として認識され、取得価額は資産と負債に配分され、差額はのれんとしています。例えば、野村は2020年4月1日にグリーンテックの全持分を取得し12,480百万円を連結貸借対照表に計上しております。また、その他にも有形・無形資産を所有しております。
これらの企業結合などにより認識されたのれんおよび有形・無形資産に対して減損損失やその後の取引にともなう損益が認識される可能性があり、野村の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
12.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります
資金流動性、すなわち必要な資金の確保は、野村のビジネスにとって極めて重要です。野村では、資金流動性リスクを野村グループの信用力の低下または市場環境の悪化により必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクと定義しております。即時に利用できるキャッシュ・ポジションを確保しておくことに加え、野村は、レポ取引や有価証券貸借取引、長期借入金の利用や長期社債の発行、コマーシャル・ペーパーのような短期資金調達先の分散、流動性の高いポートフォリオの構築などの方法によって十分な資金流動性の確保に努めています。しかし、野村は一定の環境の下で資金流動性の低下に晒されるリスクを負っています。その内容は以下のとおりです。
(1)野村が無担保あるいは有担保での資金調達ができなくなる場合があります
野村は、借り換えも含めた日常の資金調達において、短期金融市場や債券発行市場での債券発行、銀行からの借入といった無担保資金調達を継続的に行っています。また、トレーディング業務のための資金調達活動として、レポ取引や有価証券貸借取引といった有担保資金調達を行っています。これらの資金調達ができない場合、あるいは通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる場合、野村の資金流動性は大きく損なわれる可能性があります。例えば、野村の短期または中長期の財政状態に対する評価を理由に、資金の出し手が資金提供を拒絶する可能性があるのは、次のような場合です。
・多額のトレーディング損失
・市場の低迷にともなう野村の営業活動水準の低下
・規制当局による行政処分
・信用格付の低下
上記に加え、市場金利の上昇、資金の出し手側の貸付余力の低下、金融市場やクレジット市場における混乱、投資銀行業や証券ブローカレッジ業、その他広く金融サービス業全般に対する否定的な見通し、日本の国家財政の健全性に対する市場の否定的な見方など、野村に固有でない要因によって、野村の資金調達が困難になることもあります。
(2)野村が資産を売却できなくなる可能性があります
野村が資金を調達できない、もしくは資金流動性残高が大幅に減少するなどの場合、野村は期限が到来する債務を履行するために資産を売却するなどの手段を講じなければなりません。市場環境が不安定で不透明な場合には、市場全体の流動性が低下している可能性があります。このような場合、野村は資産を売却することができなくなる可能性や資産を低い価格で売却しなければならなくなる可能性があり、結果的に野村の経営成績や財政状態に影響を与える場合があります。また、他の市場参加者が同種の資産を同時期に市場で売却しようとしている場合には、野村の資産売却に影響を及ぼすことがあります。
(3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります
野村の資金調達は、信用格付に大きく左右されます。格付機関は野村の格付の引下げや取下げを行い、または引下げの可能性ありとして「クレジット・ウォッチ」に掲載することがあります。格付の引下げがあった場合、野村の資金調達コストが上昇する可能性や、資金調達自体が制約される可能性があります。その結果、野村の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
さらに、日本の国家財政の健全性に対する市場の否定的な見方といった、野村に固有でない要因によっても、野村の資金調達が困難になることもあります。
13.連結財務諸表に計上されている関連会社およびその他の持分法投資先の株価が一定期間以上大幅に下落した場合には減損が認識される可能性があります
米国会計基準に基づいて、野村は上場している関連会社およびその他の持分法投資先の株式に投資しており、この投資は持分法で連結財務諸表に計上されています。野村が保有する関連会社の株式の市場価格が一定期間を超えて下落した場合において、価格の下落が一時的ではないと野村が判断したときには、野村は減損を認識しなければなりません。このことは、野村の経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。例えば、野村は2021年3月期に野村不動産ホールディングスに対する投資にかかる減損損失47,661百万円を計上しました。
非財務リスク
14.オペレーショナル・リスクの顕在化により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
オペレーショナル・リスクとは、内部プロセス・システム・役職員の行動が不適切であること、機能しないこと、もしくは外生的事象から生じる財務上の損失、または非財務的影響を被るリスクをいいます。また、オペレーショナル・リスクには、コンプライアンス、リーガル、ITおよびサイバーセキュリティ、不正、外部委託先に関わるリスク、その他の非財務リスクが含まれます。かかるリスクが顕在化した場合には、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります。なお、オペレーショナル・リスクに関連する事項には、以下に記載したものも含まれます。
15.野村の財務報告に関する内部統制に開示すべき重要な不備が特定されました。野村は改善策を策定し取り組んでおりますが、今後も重要な不備が特定される可能性があります
2024年3月期の第4四半期において、野村は提出済みの有価証券報告書に含まれる連結財務諸表に記載された連結キャッシュ・フロー計算書の一部の区分および表示に関する内部統制に重要な不備を特定しました。これにより、野村は当該連結財務諸表および四半期連結財務諸表に含まれる連結キャッシュ・フロー計算書を訂正する必要が生じました。野村は、これらの重要な不備に対処するための多くの改善策を策定し、将来開示する有価証券報告書に含まれる連結キャッシュ・フロー計算書およびその他の連結財務諸表で同様の不備の発生の防止に取り組んでいます。当社は2024年3月31日における当社の財務報告に係る内部統制は有効であるとの結論を下しましたが、それらの対策にもかかわらず開示すべき重要な不備または問題が将来発生する可能性はあり、それにより野村が連結財務諸表およびその他財務情報において正確、迅速かつ信頼性のある方法で財務情報を提供することができない可能性や、連結財務諸表や他の定期的に行う開示において追加的な訂正が発生する可能性があります。これは、公表された財務諸表その他の情報に対する株主を含めた利用者の信頼を失わせることで、米国預託証券の価格を含めた株価を下落させる可能性だけでなく、資本市場へのアクセスが制限される可能性、顧客が野村との取引を控える可能性、潜在的な規制当局の調査や制裁を受ける可能性があります。それが結果として野村の事業、業績、財務状況に対して重大で不利な影響を与える可能性があります。特定された財務報告に関する内部統制の不備、および不備への対処のために取られる措置についての詳細は内部統制報告書をご参照ください。
16.役職員または第三者による不正行為や詐欺により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります。また、不正行為には、インサイダー取引、情報伝達行為や取引推奨行為等の役職員または第三者による野村やその顧客の非公開情報の不適切な使用・漏洩その他の犯罪も含まれ、その結果、野村が行政処分を受け、もしくは法的責任を負う可能性、または野村のレピュテーションや財政状態に重大な悪影響が及ぶ可能性があります。
また、野村は、第三者が行う詐欺的行為に直接または間接に巻き込まれる可能性があります。野村は、投資、融資、保証、その他あらゆる種類のコミットメントを含め、幅広いビジネス分野で多くの第三者と日々取引を行っているため、こうした第三者による詐欺や不正行為を防止し、発見することが困難な場合があり、こうした行為に巻き込まれることにより、野村の将来のレピュテーションや財政状態に影響が及び、野村が被る損失が多額になり、また野村に対する信頼が損なわれる等の悪影響を受けるおそれがあります。
野村は、「野村グループ行動規範」を策定するとともに、コンプライアンス研修等の実施、内部通報制度での対応の充実等を通じて、その浸透と遵守を徹底することをはじめとする役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を防止または発見するための対策を講じていますが、これらの実装済の対策または今後追加する対策により役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を常に防止または発見できるとは限らず、また、不正行為や詐欺的行為の防止・発見のために取っている予防措置がすべての場合に効果を発揮するとは限りません。そのような不正行為や詐欺的行為の結果として野村に対する行政上の処分または司法上の決定・判決等が行われれば、野村はビジネスの機会を喪失する可能性があり、また、顧客、特に公的機関が野村との取引を行わない決定をした場合は、たとえ処分等が解除された後であっても、ビジネスの機会を喪失し、将来の収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
17.利益相反を特定し適切に対処することができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、多様な商品およびサービスを個人、企業、他の金融機関および政府機関を含む幅広い顧客に対して提供するグローバルな金融機関です。それにともない、野村の日々の業務において利益相反が発生するおそれがあります。利益相反は、特定の顧客へのサービスの提供が野村の利益と競合・対立する、または競合・対立するとみなされることにより発生します。また、適切な非公開情報の遮断措置または共有がされていない場合、特定の顧客との取引とグループ各社の取引または他の顧客との取引が競合・対立する、または競合・対立するとみなされることにより利益相反が発生するおそれがあります。野村は利益相反を特定し対処するための「野村グループ利益相反管理方針」に基づく利益相反管理体制を整備していますが、利益相反を特定、開示し、適切に対処することができなかった場合、またはできていないとみなされた場合には、野村のレピュテーションが悪化し、現在または将来の顧客を失い、行政処分、または訴訟の提起を受けるリスクがあり、収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
18.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります
野村が重大な法的責任を負うことまたは野村に対する行政処分がなされることにより、重大な財務上の影響を受け、または野村のレピュテーションが低下し、その結果、ビジネスの見通し、財務状況や経営成績に悪影響を与える可能性があります。また、野村や野村が業務を行う市場に適用される規制に重大な変更がなされた場合、これが野村のビジネスに悪影響を与える可能性があります。野村に対する主な訴訟その他の法的手続きについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 19 コミットメント、偶発事象および債務保証」をご参照ください。
野村は、ビジネスにおいてさまざまなリーガル・リスクに晒されています。これらのリスクには、金融商品取引法およびその他の法令における有価証券の引受けおよび勧誘に関する責任、有価証券その他金融商品の売買から生じる責任、複雑な取引条件に関する紛争、野村との取引にかかる契約の有効性をめぐる紛争、業務提携先との間の紛争ならびにその他の業務に関する法的賠償請求等が含まれます。野村は、重大な法的責任が発生した場合、専門家や第三者機関等にも助言を求め、適切な方針を策定の上、これらへの対応を行っておりますが、紛争等の動向によっては、野村のレピュテーションや財政状態に影響が及び、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)野村のビジネス等に起因した法的責任が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
市場の低迷の長期化または市場に重大な影響を与えるイベントの発生により、野村に対する賠償請求等が増加することが予想され、また、重大な訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟費用は高額にのぼる可能性もあり、訴訟を提起されることにより野村のレピュテーションが悪化する可能性もあります。例えば、2022年3月期においては、米国における世界金融危機(2007~2008年)以前の取引に関連して、約620億円の法的費用(将来的な損失発生の軽減を目的とした一定の取引を含みます。)が認識されました。さらに、適法な取引であったとしても、その取引手法によっては社会的非難の対象となってしまう場合もあります。これらのリスクの査定や数量化は困難であり、リスクの存在およびその規模が認識されない状況が相当期間続く可能性もあります。
(2)規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
金融業界は広範な規制を受けています。野村は、国内において政府機関や自主規制機関の規制を受けるとともに、海外においては業務を行っているそれぞれの国の規制を受けています。また、野村のビジネスの拡大とともに、適用される政府機関や自主規制機関の規制も増加する可能性や、法改正によって、これらの規制が強化される可能性があります。さらに、金融規制の体系の複雑化が進み、ある一国の規制が、当該国以外の活動に域外適用される可能性も増加しています。これらの規制は、広く金融システムの安定や金融市場・金融機関の健全性の確保、野村の顧客および野村と取引を行う第三者の保護等を目的としており、自己資本規制、顧客保護規制、市場行動規範などを通じて野村の活動を制限し、野村の収益に影響を与えることがあります。この他、従来の金融関連法制に加え、広く国際的な政治経済環境や政府当局の規制・法執行方針等によっても、野村のビジネスに適用・影響する法令諸規制の範囲が拡大する可能性があります。とりわけ、金融業界に対する各国の政府機関や自主規制機関による調査手続きや執行については、近年件数が増加し、また、それらによる影響はより重大なものになっており、野村もそのような調査手続きや執行の対象となるリスクに晒されています。この点、野村は、法令諸規制を遵守するため、随時モニタリングや社内管理体制の構築といった対策を講じてはおりますが、法令諸規制に抵触することを完全には防ぐことができない可能性があり、仮に法令違反等が発生した場合には、罰金、一部の業務の停止、社内管理体制の改善等にかかる命令、もしくは営業認可の取消しなどの処分を受ける可能性があります。野村が行政上の処分または司法上の決定・判決等を受けた場合、野村のレピュテーションが悪化し、ビジネス機会の喪失や人材確保が困難になるといった悪影響を受ける可能性があります。また、それらの処分により、顧客(とりわけ公的機関)が野村との金融取引を行わない決定をした場合は、たとえ命令等の処分が解除された後であっても、一定期間、野村がビジネスの機会を喪失する可能性があります。さらに、野村が国際的な制裁の対象地域で事業活動を行う場合には、当該事業活動が制裁規制に違反していなくても、一部の市場関係者が野村への投資や野村との取引を控える可能性があります。
(3)金融システム・金融セクターに対する規制強化の進行が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
野村のビジネスに適用される規制が導入・改正・撤廃される場合、野村は、直接またはその結果生じる市場環境の変化を通じて悪影響を受けることがあります。規制の導入・改正・撤廃により、野村の全部または一部の事業を継続することの経済合理性がなくなる可能性、もしくは規制の対応に膨大な費用が生じる可能性があります。
加えて、野村に適用される会計基準や自己資本比率・流動性比率・レバレッジ比率等に関する規制の変更が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そうした新たな規制の導入または既存の規制の改正には、バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委員会」)によるいわゆるバーゼルⅢと呼ばれる規制パッケージが含まれ、2017年12月には、バーゼルⅢの最終規則文書が公表されました。また、2012年10月、バーゼル委員会は、国内のシステム上重要な銀行(以下「D-SIBs」)に関する評価手法およびより高い損失吸収力の要件に関する一連の原則を策定し、公表しました。2015年12月、金融庁は当社をD-SIBsに指定し、2016年3月以降の追加的な資本賦課水準を3年間の経過措置はありますが0.5%といたしました。さらに、金融安定理事会(以下「FSB」)は、2015年11月にグローバルにシステム上重要な銀行(以下「G-SIBs」)に対して破綻時の総損失吸収力(以下「TLAC」)を一定水準以上保有することを求める最終文書を公表しました。これを受けて、金融庁は、2018年4月に、本邦G-SIBsに加え、本邦D-SIBsのうち、国際的な破綻処理対応の必要性が高く、かつ破綻の際に我が国の金融システムに与える影響が特に大きいと認められる金融機関についても本邦TLAC規制の適用対象とする方針とし、2019年3月に当該方針に基づきTLAC規制にかかる告示等を公表しました。当社は、現時点ではG-SIBsに選定されてはおりませんが、これにより、2021年3月末より本邦TLAC規制の適用対象に加えられることになりました。これらの規制により、野村の資金調達コストが上昇する、あるいは野村のビジネス、資金調達活動や野村の株主の利益に影響を及ぼすような資産売却、資本増強もしくは野村のビジネスの制限を行わなければならない可能性があります。
(4)経営状況、法的規制の変更などにより、繰延税金資産の計上額の見直しが行われ、野村の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります
米国会計基準に基づいて、野村は、一定の条件の下で、将来における税金負担額の軽減効果を有すると見込まれる額を繰延税金資産として当社の連結貸借対照表に計上しております。今後、経営状況の悪化、法人税率の引下げ等の税制改正、米国会計基準の変更などその回収可能性に変動が生じる場合には、当社の連結貸借対照表に計上する繰延税金資産を減額する可能性があります。その結果、野村の経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。繰延税金資産の内訳につきましては「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 14 法人所得税等」をご参照ください。
(5)マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与に適切に対処できなかった場合には、行政処分や罰金等の対象となる可能性があります
近年、金融犯罪の手口は複雑化・高度化・多様化してきています。国際的にも武力紛争、テロ犯罪やサイバー攻撃の脅威が増す中、犯罪者やテロリスト等につながる資金を断つことの重要性は極めて高く、世界的に金融業界は対応の強化が求められています。野村ではこのような状況に適切に対応するため、金融活動作業部会(FATF)の勧告や金融庁「マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策に関するガイドライン」等をはじめ各国の規制等に基づき、グループ全体で一貫したマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策の態勢整備および強化に継続的に取り組んでおります。しかしながら、かかる対策が有効に機能せず、適用される規制に反する取引を未然に防ぐことができなかった場合またはそのような取引に適切に対処できなかった場合には、行政処分や罰金等の対象となる可能性があります。関連する処分等やその影響については「非財務リスク 18.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーショナル・リスクに影響される可能性があります -(2)規制による業務制限や、行政処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります」をご参照ください。
19.野村の保有する個人情報の漏洩により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は業務に関連して顧客から取得する個人情報を保管、管理しています。近年、企業が保有する個人情報および記録への不正アクセスや漏洩にかかる事件や不正利用の事件が多数発生していると報じられており、また、顧客情報の不正取得や転職後の不正使用などのリスクも存在します。
野村は個人情報の保護に関する法令諸規則に基づき、個人情報の保護に留意し、適用されるポリシーや手続きを定め、セキュリティ対策を講じておりますが、仮に個人情報の重大な不正漏洩または不正利用が生じた場合には、野村のビジネスにさまざまな点で悪影響が及ぶ可能性があります。例えば、野村は、これらの法令諸規則を万が一違反した場合、規制当局から行政処分や罰則を受ける可能性があるほか、個人情報の漏洩(業務委託先による漏洩を含む)または不正利用により顧客に損失が生じた場合には、顧客から苦情や損害賠償請求を受ける可能性があります。また、自主的に、もしくは行政上の命令その他の規制上の措置の対応として行うセキュリティ・システムの変更により、追加的な費用が発生する可能性があります。また、顧客からお預かりした個人情報の利用が制限されることにより、既存事業や新規事業に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、不正漏洩または不正利用の結果、野村に対するレピュテーションが悪化することによって、新規顧客が減少したり既存顧客を喪失したりするとともに、野村のブランド・イメージやレピュテーションの悪化の防止・抑制のために行う広報活動のために追加的な費用が発生する可能性があります。
20.野村の情報システムが適切に稼働しないこと、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩または十分なサイバーセキュリティを維持するために必要な費用負担により、野村のビジネス、財政状態および経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります
野村のビジネスは、個人情報および機密情報を野村のシステムにおいて安全に処理、保存、送受信できる環境に依拠しています。野村は、過去において、野村のシステム上にある情報にアクセスしこれを入手することを企図した、または野村のサービスにシステム障害その他の損害をもたらすことを企図した不正アクセス、コンピューターウイルスもしくは破壊工作ソフトその他のサイバー攻撃の標的になってきましたが、今後も再び標的になる可能性があります。また、近年、従業員の多くがネットワーク技術を利用してリモートワークを行っています。これにより、サイバー攻撃その他の情報セキュリティ侵害の対象となる可能性が高まる恐れがあります。これらの脅威は、人為的なミスまたは技術的不具合から発生する場合もありますが、従業員などの内部関係者または海外の非国家主体および過激派組織などの第三者の悪意もしくは不正行為により発生する場合もあります。また、野村のシステムが相互接続している外部事業者、証券取引所、決済機関またはその他の金融機関のいずれかがサイバー攻撃その他の情報セキュリティ侵害の対象となった場合、野村にもその悪影響が及ぶ可能性があります。当該事象により、野村のシステム障害、信用の失墜、顧客の不満、法的責任、行政処分または追加費用が生じる可能性があり、上記事象のいずれかまたはその全部の発生により、野村の財政状態および事業運営が悪影響を受ける可能性があります。
野村は、システムのモニタリングおよびアップデートを行うため多大な経営資源を継続的に投入し、かつシステム保護のため情報セキュリティ対策を講じていますが、実施しているそれらの管理手段や手続きが、将来のセキュリティ侵害から野村を十分に保護できる保証はありません。サイバー上の脅威は日々進化しているため、将来的には、現在の管理手段や手続きが不十分となる可能性があり、また、システム修正または強化のため、更なる経営資源を投入しなければならなくなる可能性があります。
21.人材の確保・育成ができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、人材こそが野村の最大の財産であるとの理念のもと、人材の採用・育成・評価・配置および登用について1つのサイクルとしてとらえ、総合的な観点から各種の人材マネジメント施策に取り組んでおります。適切な人材の確保や育成が想定どおりに進まない場合、野村のビジネスや業務運営に悪影響を及ぼす可能性があります。報酬、労働環境、利用できる研修や福利厚生、雇用者としての評判などの要因により、人材確保において厳しい競争が起きています。また、当該人材確保のための支出は、野村の収益性を損なう可能性があります。加えて、人材育成や企業文化の定着には継続的かつ徹底的な取組みが必要であり、成功しない可能性もあります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主価値の持続的な向上を目指し、拡大する事業機会を迅速かつ確実に捉えるために必要となる十分な株主資本の水準を保持することを基本方針としております。必要となる資本の水準につきましては、以下を考慮しつつ適宜見直してまいります。
・事業活動にともなうリスクと比較して十分であること
・監督規制上求められる水準を充足していること
・グローバルに事業を行っていくために必要な格付を維持すること
当社は、株主の皆様への利益還元について、株主価値の持続的な向上および配当を通じて実施していくことを基本と考えています。
配当につきましては、半期毎の連結業績を基準として、連結配当性向40%以上を重要な指標のひとつとします。各期の配当額については、バーゼル規制強化をはじめとする国内外の規制環境の動向、連結業績をあわせて総合的に勘案し、決定してまいります。
なお、配当回数につきましては、原則として年2回(基準日:9月30日、3月31日)といたします。
また自己株式取得による株主還元分を含めた総還元性向を50%以上とすることを、株主還元上の目処といたします。
内部留保金については、前記規制環境の変化に万全の対応を行うとともに、株主価値の向上につなげるべく、システムや店舗などのインフラの整備も含め、高い収益性と成長性の見込める事業分野に有効投資してまいります。
(当期の剰余金の配当)
上記の剰余金の配当等の決定に関する方針を踏まえ、2023年9月30日を基準日とする配当金は、1株当たり8円をお支払いいたしました。2024年3月31日を基準日とする配当金につきましては、1株当たり15円をお支払いいたしました。これにより年間での剰余金の配当は1株につき23円となります。
当期にかかる剰余金の配当の明細は以下のとおりです。
決議 |
基準日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2023年10月27日 |
取締役会 |
2023年9月30日 |
24,115 |
8.00 |
2024年4月26日 |
取締役会 |
2024年3月31日 |
44,567 |
15.00 |