リスク
3【事業等のリスク】
当行グループでは、事業を取り巻くリスク事象のうち、影響度や蓋然性の観点から重要度の高いリスクを「トップリスク」として、選定し管理しています。「トップリスク」の選定にあたっては、グループ内外のリスク事象を幅広く網羅したリスクマップを外部専門家の意見も踏まえて作成し、社外取締役やグループ会社とも事前に議論したうえで、取締役会にて選定しています。また、選定した「トップリスク」については、各トップリスクを所管するグループCxOの管理のもとでリスクシナリオ(アラームポイント)を設定し、具体的な対応の検討・実施をしています。こうした、トップリスク運営を通じてグループ内のリスクコミュニケーションを深め、リスク認識の共有を図ることで、フォワードルッキングなリスク管理につなげています。
2024年3月開催の取締役会にて選定した「トップリスク」は次の通りです。
トップリスク |
リスク対応策(例) |
営業地盤悪化による収益力低下 |
他業種、新業種への事業展開による収益基盤の拡大 地公体への伴走支援等による地方創生の対応 |
デジタル転換の後れ |
アプリ・ポータルの機能拡充、DX人材の計画的な育成 |
人材・人材力不足による持続的成長の 停滞 |
職員のエンゲージメント向上、キャリアステップ支援、採用強化 |
お客さま本位の業務運営の不徹底による 信頼の棄損 |
お客さま本位の業務運営(FD)の徹底、定着化 |
役職員による不適切な行為・不作為 |
公正誠実な行動の徹底、正しい企業文化の浸透強化 |
マネー・ローンダリング等対策不備 |
フィルタリングやスクリーニングの徹底 |
与信費用の増加 |
業績悪化先に対する、経営支援・本業支援・事業承継支援等の 積極実施 |
保有資産の価値下落 |
資産毎、個別銘柄毎の評価損益アラームポイントの設定と管理 |
サイバー攻撃 |
セキュリティ対策の強化 |
大規模システム障害 |
発生の未然防止、コンティンジェンシープランの整備 |
大規模自然災害等による業務停止 |
実効的な訓練の実施等による業務継続態勢の強化 |
気候変動対応の後れ |
移行リスク、物理的リスクのシミュレーション高度化 |
上記は認識しているリスクの一部であり、上記以外のリスクによっても経営上、特に重大な悪影響が生ずる可能性があります。有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要かつ重要なリスクは、以下のとおりです。(サステナビリティに関するリスク管理(気候変動、人的資本)については、前述「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください)
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものです。
1.信用リスク(不良債権問題等)
信用リスクとは、信用供与先の財務状況の悪化などにより、資産の価値が減少ないし消失し、当行が損失を被るリスクです。その主なリスク事象、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性の程度※1は中程度を見込んでいます。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
リスク事象 |
影響 |
対応策 |
景気悪化、地域経済動向 悪化 |
・融資先の経営状況悪化により不良債権処理額・引当金※2が増加 |
・審査基準に従った厳正な審査、経営改善が必要なお客さまの支援、破綻先等の整理回収活動を通じた優良な貸出資産の積上げと損失の極小化 |
震災・台風等の災害発生 |
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個別与信が特定の国・ 業種に集中 |
・社会情勢、経済状況の変化により、特定の国・業種において信用悪化が発生し、一時に大きな損失を被る可能性 |
・国別、業種別、格付別等の角度から VaR等の統一的尺度にて計量のうえ、ストレス・テスト等を実施 ・与信上限額の設定などによりリスクをコントロール・削減 |
地価下落 |
・担保権設定した不動産等について、想定金額で換金等ができず、不良債権処理額・引当金が増加 |
・不動産等の処分可能見込額を保守的に見積もるとともに、流動性・換価性を十分に検証のうえ担保取得することによるリスクの削減 |
不動産流動性低下 |
※1.可能性の程度の目安
高…頻度:概ね1年に1回以上
中…頻度:概ね10年に1回以上 1年に1回未満
低…頻度:概ね10年に1回未満
※2.当行グループは貸出先の状況、債権の保全状況及び過去の一定期間における貸倒実績率等に基づき算定した予想損失額に対して貸倒引当金を計上しています。
2.市場関連リスク
市場関連リスクとは、金利、有価証券等の価格、為替等の変動により、保有する資産の価値が変動し当行が損失を被るリスクです。その主なリスク事象、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性の程度は中程度を見込んでいます。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
リスク事象 |
影響 |
対応策 |
株価の下落 |
・保有有価証券に減損又は評価損が発生若しくは拡大し、当行の財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性 |
・有価証券投資などの市場性取引や預貸金といった商品ごとのVaR(想定最大損失額)に基づく市場リスク量に対し、限度額を設定 ・市場リスク量を適切に管理することにより健全性を確保 |
円高の進行 |
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金利の上昇 |
3.流動性リスク
流動性リスクとは、市場の混乱や当行の財務内容の悪化などにより必要な資金が確保できなくなり、資金繰りがつかなくなるリスクや、資金の確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより当行が損失を被るリスクです。その主なリスク事象、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性の程度は中程度を見込んでいます。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
リスク事象 |
影響 |
対応策 |
調達環境の悪化 |
・必要な資金が確保できず資金繰りが悪化する場合や通常の取引よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる可能性 |
・金融危機などのストレス時の資金流出に見合う流動資産を保有 ・市場調達額が過大とならないように一定の限度額を設定 ・資金の調達と運用のミスマッチを抑制 |
当行の信用状態悪化 |
4.オペレーショナル・リスク
オペレーショナル・リスクとは、業務の過程、役職員の活動もしくはシステムが不適切であること、または外生的事象により当行が損失を被るリスクです。その項目や主なリスク事象と可能性の程度、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
項目 |
リスク事象 |
可能性の程度 |
影響 |
対応策 |
事務リスク |
過失による一般的な事務事故の発生 |
高 |
・発生件数は多いが、1件あたりの損失額は数千円程度と小さい |
・業務管理の高度化、業務監査体制の拡充、システム化や本部集中業務の拡大 |
預金誤払いや誤送金など資金移動に関連するもののうち、高額な事務事故の発生 |
低 |
・事務事故発生後の回復が困難な場合、資金移動相当額の損失発生 |
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システムリスク(サイバーリスクも含む) |
システムの全面停止 大量データの誤処理または滞留が発生したシステム障害 |
低 |
・お客さまにサービスが提供できない可能性 ・上記により、お客さまからの信頼低下を招く可能性 ・その結果、業績に悪影響が及ぶ可能性 |
・本質的原因の分析、 再発防止策を徹底 ・基幹システムの二重化やデータの厳正な管理を実施 ・コンピュータウイルス等不正プログラムの侵入防止対策の徹底 ・大規模災害等不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを整備 |
多数の顧客に影響を及ぼすシステム障害 |
中 |
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影響が特定の顧客に限定されるシステム障害 |
高 |
|||
コンプライアンスリスク |
情報漏洩、不祥事件 |
中 |
・行政処分やステークホルダーからの損害賠償請求を受け、業務遂行や業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・情報管理に関する規程・手続きを整備 ・職員に対する教育研修の実施 |
訴訟、ADR |
中 |
・教育研修等によりコンプライアンスを全ての業務の基本に置く姿勢を徹底 |
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マネー・ローンダリング、テロ資金供与、拡散金融及びその他経済制裁違反を目的とした金融機能の不正利用 |
低 |
・国内外の当局による行政処分やコルレス契約を解除されることにより、業務遂行や業績に極めて重大な悪影響を及ぼす可能性 |
・リスクベースの顧客管理 ・不正な取引を検知する ITシステム等の活用 ・職員に対する教育研修 |
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風評リスク |
評判悪化や風説の 流布 |
低 |
・信用の低下や預金の流出により、株価や業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・風評が伝達される媒体に応じて定期的又は随時に風評のチェックを実施 |
5.その他のリスク
上記1.~4.以外に認識している重要なリスク項目や主なリスク事象と可能性の程度、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
項目 |
リスク事象 |
可能性 の程度 |
影響 |
対応策 |
お客さま本位の業務運営の不徹底による信頼の棄損※3 |
顧客からの期待に背く、または信頼を棄損する業務運営による顧客離れ |
中 |
・業務遂行や業績等に悪影響を及ぼす可能性 |
・研修や職場内勉強会等の継続実施による意識の徹底・定着化 ・苦情や地域の声などの端緒の収集・分析の高度化による早期改善の徹底 |
規制緩和等による業務範囲の拡大に伴うリスク |
規制緩和等による 業務範囲の拡大 |
中 |
・業務範囲拡大への取組みが奏功しない可能性 |
・参入前における多面的な事業検証及び参入後の適切なモニタリング |
金融制度規制緩和等による競争激化 |
中 |
・業務遂行や業績等に悪影響を及ぼす可能性 |
・競合に対する差別化、 技術・サービス向上 |
|
営業地盤悪化による収益力低下 |
主要マーケットの経済規模縮小 |
中 |
・既存サービスへの需要減少 |
・地域活性化支援の強化 ・アライアンス等によるサービス向上・コスト削減 ・新事業の拡大 |
デジタル転換の後れ |
次世代金融サービス提供の後れ |
低 |
・他業種参入によるシェア低下 |
・アプリ、法人ポータル関連サービスの拡充 ・デジタルマーケティング ・業務のデジタル化 |
デジタル人材の不足 |
低 |
・デジタル戦略実現の阻害 ・顧客ニーズ対応力低下 |
・デジタル化に対応した人材育成 |
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当行格付の 引き下げ |
信用力の低下 |
低 |
・資金調達コストの増加、 一部金融取引の実行不能 |
・確実なリスク管理、着実な自己資本積み上げによる財務体質強化 |
規制水準への抵触 |
自己資本比率等※4の低下 |
低 |
・業務の全部又は一部の停止 |
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年金債務の 増加 |
市場環境の変化に よる年金資産の 時価下落等 |
中 |
・追加の資金拠出、費用負担が発生する可能性 |
・法制度、当行の人事制度等を踏まえ、企業年金制度の見直しを随時検討、実施 |
企業年金制度の 変更 |
低 |
|||
固定資産の 減損※5 |
使用目的の変更 |
中 |
・減損損失が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・不採算店舗等の収益性向上等による減損発生の回避 |
収益性の低下 |
低 |
|||
リスク管理 体制※6の不備 |
リスクの予測不足 |
低 |
・リスク管理体制が有効に機能しない可能性 |
・四半期毎にストレスシナリオ検討会議を実施。関連部を交え、リスクの蓋然性を検討し、早期警戒を実施 |
自然災害 |
震災・台風等の 災害発生 |
中 |
・業務停止 |
・業務継続訓練の実施 ・防災備品の拡充、見直し ・自家発電の設置、 移動店舗車の配備 |
※3.2023年6月23日、当行に対して、金融商品取引法第51条の2に基づき、仕組債の勧誘販売に係る金融商品仲介業務に関し、投資者保護上の問題が認められる状況に係る業務改善命令が、当行の連結子会社であるちばぎん証券株式会社に対して、金融商品取引法第51条に基づき、仕組債の勧誘販売につき適合性原則に抵触する業務運営の状況に係る業務改善命令が、それぞれ関東財務局より発令されました。これらにより、当行グループに対するお客さまや市場等からの信頼が損なわれ、当行グループの業務遂行や、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、これらの業務改善命令に基づき、当行及びちばぎん証券株式会社は、2023年7月24日に業務改善報告書を関東財務局へ提出いたしました。その後、当行及びちばぎん証券株式会社は、2023年8月31日に各社における調査の結果を踏まえた改善・再発防止に向けた取組み及び関与者の処分等の概要を公表いたしました。なお、改善・再発防止に向けた取組みの進捗状況については、当行およびちばぎん証券株式会社のホームページに公表しており、そのアドレスは次のとおりです。
千葉銀行 https://www.chibabank.co.jp/
ちばぎん証券 https://www.chibagin-sec.co.jp/
※4.当行は、海外営業拠点を有していますので、連結自己資本比率及び単体自己資本比率は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2006年金融庁告示第19号)に定められる国際統一基準やその他諸規制水準を満たす必要があります。
※5.保有する固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」(企業会計審議会)を適用しています。
※6.当行はリスク管理体制を整備し、内部監査部署がそれらの適切性及び有効性の検証を行うなど、リスク管理の強化に努めています。(体制図については、後述「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください)
配当政策
3【配当政策】
当行は、銀行業の公共性に鑑み、十分な健全性を維持しながら、安定配当と自己株式の取得等による積極的な株主還元や成長に向けた資本の有効活用を行っていくことを基本方針としております。また、配当につきましては、毎年9月30日を基準日とする中間配当及び毎年3月31日を基準日とする期末配当の年2回を基本的な方針としております。配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。当事業年度の剰余金の配当につきましては、期末配当金を1株あたり17円(中間配当金15円と合計で当期の年間配当金は32円)として定時株主総会のご承認をいただきました。なお、当行は会社法第454条第5項の規定により、取締役会の決議によって毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2023年11月9日 |
取締役会決議 |
10,872 |
15.00 |
2024年6月26日 |
定時株主総会決議 |
12,162 |
17.00 |