2024年2月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境

当社グループの主力セグメントである百貨店業は、主に一般消費者を対象とするため、地方・郊外の人口減少等の社会情勢や景気動向、消費動向等の経済情勢に大きく影響を受けるほか、流通業界における競争激化も予想されます。さらに、消費行動・生活様式の変容、デジタル化の進行、衣料品・アパレルの低迷、インバウンド需要の減退等、今まで以上に変化のスピードが加速しており、これらの環境変化が当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、このような環境変化に対応するため、店舗構造改革、コスト構造改革を推し進め、事業モデルの抜本的な改革に取り組んでおります。また、今後持続的な成長を続けるため、最終年度を迎える中期経営計画に基づき、新たなビジネスモデルの構築に邁進いたします。同計画については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題」に記載しております。

 

(2)商品取引

当社グループの主力セグメントである百貨店業は、消費者向け取引を行っております。当社グループが製造・販売する商品の品質や食品の安全性に対して信用毀損が生じた場合、売上高の減少等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは百貨店業の外商部門をはじめとして、法人向け等の掛売取引を行っております。取引先の倒産による売掛金の回収不能等による損失の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

商品の品質や食品の安全性については、関係法令の遵守状況の確認や品質・衛生管理のチェックなどを定期的に実施し十分留意しております。また、法人向け等の掛売取引については与信管理を十分に行っております。

 

(3)法律の規制、制度の変更

当社グループは事業展開するにあたり、出店等については大規模小売店舗立地法、商品仕入面においては独占禁止法・下請法等、商品販売面においては景品表示法・JAS法・食品衛生法・製造物責任法(PL法)等、その他、環境・リサイクル関連法規など様々な法律による規制を受けております。万一これに違反する事態が生じた場合は、社会的信用が失墜するとともに、企業活動が制限される可能性があります。

当社グループでは、関係法令・規則の制定、改正等の動向について常にモニタリングしており、必要に応じて顧問弁護士への相談や意見聴取を行うとともに、社員教育等を通じて法令遵守の重要性を社内に周知徹底しております。

 

(4)新規事業

当社グループでは、企業の成長、競争力を高めるため従来の枠組みにとらわれることなく新規事業への取組みをおこなってまいります。新規事業においては不確実な要素が多く、事業環境や市場ニーズの変化等により新規事業の確立が困難となり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすほか、法律や規制に対する事前確認の不足により、社会的信用が失墜するとともに、企業活動が制限される可能性があります。

当社グループでは、新規事業において想定されるあらゆるリスクを事前に洗い出し、評価し、対策を講じるための体制を強化するため、当社にコンプライアンス推進本部を新設し、様々なリスクに対する検証を行ってまいります。

 

 

 

(5)災害

当社グループの主要な店舗・事業所の所在地は、東南海・南海地震の対策強化地域に含まれており、地震発生の可能性が比較的高い地域であります。想定を超える大規模な地震が発生した場合は、店舗等の事業所が甚大な被害を受け、復旧に多額の費用と時間を要するなどの直接的な影響があります。さらに、仕入先の被災による商品調達の停滞、さらには日本経済全体の消費マインドが冷え込むなど間接的な影響を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、大規模な火災が発生した場合、被害者への損害賠償責任、商品・建物への被害が考えられ、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、これら災害等の影響により、電気・水道・ガスの使用制限、道路・空港・港湾施設の閉鎖、通信機能の不具合等社会インフラ機能の低下が生じた場合、当社、協力会社及び取引先の事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、緊急地震速報の受信装置を主要店舗に設置しているほか、危機管理マニュアルを作成・配布し、地震発生時の対応の周知徹底を図っております。火災については、消防法に基づき定期的に検査・訓練等を実施し、万一の火災に備え、予防又は被害を最小限にとどめる努力をしております。

さらに、当社グループは、災害等の発生に備えた危機管理体制の整備に取り組んでおり、平時から、老朽化したインフラへの投資、施設の定期的な点検、損害保険の付保等の対策を講じているほか、店舗等が被災した場合でも、お客様・従業員の安全確保を前提として、早期の営業再開、営業の継続による商品供給を通じて、社会インフラとしての役割、社会的責任を果たすことを目的とした事業継続計画(BCP)を策定しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症へ移行されたことに伴い、経済活動が正常化に向かってはいるものの、今後新たな感染症が流行した場合は、当社グループの業績及び財政状態に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。そういった場合においても、これまでの経験を活かし、関係各所と連携を図りながら影響の最小化に向けた取り組みを実施し、営業の継続に努めてまいります。

 

(6)情報管理

①情報システムの機能不全

当社グループは、POSシステム、経理システム、商品受発注システム、顧客情報管理システム等多くの情報システムを有しております。想定した以上の自然災害の発生、従業員の過誤によるシステム障害やコンピュータウィルスの感染等が起こった場合、営業活動に大きな支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、これらの情報システムの機能不全を防ぐため、電源の二重化、バックアップシステム構築、不正侵入防止プログラム等の対策を講じております。

 

②個人情報の漏洩

当社グループは、外商顧客、ギフト顧客、友の会会員など多数の個人情報を保有しております。万一、情報が外部に漏洩した場合は、当社グループの社会的信用が失墜するなどして、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、個人情報保護法その他の関係法令等を遵守し、お客様からお預かりしている個人情報の保護に万全を期すため個人情報保護方針を定めるとともに、個人情報管理規程などの社内規程等の整備や情報システムのセキュリティ向上、従業員教育の充実などにより万全を期しております。また保険を付保することにより業績への影響に備えております。

 

(7)資金調達・金利変動のリスク

当社グループは、主に金融機関からの借入れによって資金調達を行っておりますが、消費環境の悪化及び競争の激化などによって当社グループの中長期的な経営計画に不安が生じた場合や、急激な金利変動が生じた場合、当社グループの業績、財政状態及び資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、金利変動による影響を軽減するため、状況に応じて一定程度の金額を長期固定金利で調達しているほか、取引金融機関との間で情報交換を密にし、相互の信頼関係を築くとともに、銀行取引以外の資金調達方法についても研究しております。また、金融環境変化について状況把握に努め、安定的・効率的な資金繰りの実践に取り組んでおります。

 

 (8) ESG経営への取り組みの遅れ

当社グループは2030年に向けての長期戦略において「地域に寄り添い、地域と活きる」というESG方針を掲げESG経営を推進しておりますが、取り組みの遅れにより、ステークホルダーからの信用失墜、気候変動リスクへの対応の遅れ、炭素税規制による増税等のリスクを有しております。

当社グループでは、これらのリスクへの対応として、ESGの推進及び取り組み状況の開示等を実施しております。

 

(9)スタンダード市場上場維持基準

当社は、株式会社東京証券取引所にて2022年4月適用の新市場区分について、スタンダード市場を選択しておりますが、移行基準日時点(2021年6月30日)において、上場維持基準のうち、流通株式比率については基準を充たしていないことから、2021年12月24日に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出し、2027年2月末までに上場維持基準を充たすために各種取組を進める旨開示しております。これまでに、2021年8月20日に立会外分売を実施、2022年5月26日及び2023年8月22日に流通株式比率向上を目的とする株式需給緩衝信託®を設定しましたが、2024年2月末時点で流通株式比率は21.3%であり、上場維持基準25%以上を充たしておりません。

2023年3月31日に株式会社東京証券取引所から「上場維持基準に関する経過措置の取扱い等に係る有価証券上場規程等の一部改正について」が公表され、当社におきましては、上場維持基準の経過措置の終了時期が2026年2月末、改善期間の終了時期が2027年2月末となり、2027年2月末時点で上場維持基準を充たしていない場合、整理銘柄へ指定され、2027年8月末までに上場維持基準を充たしていない場合は上場廃止となります。2027年2月末までに上場維持基準を充たすため、今後も各種取組を進めてまいりますが、計画通り進捗しない場合、当社株式の上場を維持することができない可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、将来の事業展開に備え財務体質の強化を図る一方で、業績や経済情勢などを総合的に勘案し、安定的な配当を目指していくこととしております。

当社の剰余金の配当は、年1回の期末配当を基本方針としており、その決定機関は株主総会であります。なお、当社は毎年8月31日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、その決定機関は取締役会であります。

当事業年度の期末配当につきましては、上記の方針に基づき、1株当たり10円の配当を実施することを決定いたし ました。

内部留保資金については、近鉄百貨店「中期経営計画(2021-2024年度)」に基づき、構造改革・事業ポートフォリオの変革を推進するため、あべの・天王寺エリアの魅力最大化や、地域中核店・郊外店のタウンセンター化、DX戦略等に投資する所存であります。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年5月23日

403

10.00

定時株主総会