リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの事業には、国内事業基盤の縮小等による長期的かつ緩やかに影響を受けるリスクや、自然災害等比較的短期的な影響に留まると思われるリスクが存在しますが、取り巻く様々なリスクに対応するため、管理体制及び管理手法の整備により、リスクを統括的かつ個別的に管理しております。また、経営の諮問機関としてリスクマネジメント委員会を設置し、経営に重大な影響を及ぼすリスクの洗い出し、分析、対策、発生・顕在化の予防・周知といったリスクマネジメントを実施しながら、継続的に管理を強化することでリスクの軽減を図っております。
これらを前提として、特に当社グループに重要な影響を及ぼす可能性があるリスクとして以下9項目を選定し、現時点において影響度が大きいと思われるリスクの発生可能性及び対応策を記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当社が有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1)事業基盤縮小によるリスク
(2)商品・原材料調達価格の変動によるリスク
(3)環境規制によるリスク
(4)情報セキュリティ及び情報システムに関するリスク
(5)自然災害によるリスク
(6)固定資産減損によるリスク
(7)投資に関するリスク
(8)人材確保に関するリスク
(9)コンプライアンスに関するリスク
(1)事業基盤縮小によるリスク
影響度 |
発生可能性 |
中 |
高 |
①リスク内容
当社グループは日本国内を中心とした石油製品販売、LPガス・産業用ガス販売、電力販売、熱供給、車両販売等のビジネスを展開しております。これに対し、近年発生している国内人口の減少による顧客減少や省エネルギー化、電気自動車の増加等により、取扱商品の販売量減少等の影響を受け、この傾向は今後も継続的に変わらないものと想定されるため、何ら対策を講じない場合には、毎年一定の減収が続くことが見込まれます。
②対応策
当社グループの対応策として、“現場力を強化する”ことで既存事業における顧客基盤の更なる充実を図り、2023年4月より投資実行のプロフェッショナル組織として「投資戦略室」を設置し、投資案件の遂行力を強化することで新たな顧客基盤獲得を推進しております。また、当社では事業部門制を採用しており、事業部門毎に事業基盤縮小への対応策を検討・実行しており、その中でも重要性の高いものは以下のとおりです。
事業 |
対応策 |
ホームライフ事業 |
・国内外M&AによるLPガス顧客数の維持・拡大 ・小売販売事業の効率的な運用及びその機能の提供先拡大 ・顧客基盤へのクロスサービスによる顧客の離脱防止 ・LPWA(※)等のIT活用による業務効率化とコスト削減 |
カーライフ事業 |
・販売店との連携を強化し、地域生活者のニーズを汲み取ることによる系列CSの収益基盤強化 ・販売数量減に伴う収益減に備え、M&Aによる自動車関連事業の拡大 ・環境商材の取り組み |
産業ビジネス事業 |
・AdBlue®やリニューアブル燃料等、今後成長が見込まれる環境配慮型商材の販売及び導入推進、LNG、アンモニア、水素等、石油代替燃料となる次世代エネルギーへの取組みによる収益拡充 ・産業ガスの容器再検査事業強化と周辺事業領域への拡大 |
電力・ユーティリティ事業 |
・IT活用やTERASELブランド構築による、電力小売事業の営業活動の強化 ・代理店網を活用した営業基盤の拡充 |
(※)LPWA(=Low Power Wide Area)とは、消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式です。顧客のガスメーターに専用機器を設置しLPWAを用いることで、検針や配送の合理化を進めております。
(2)商品・原材料調達価格の変動によるリスク
影響度 |
発生可能性 |
中 |
中~高 |
①リスク内容
当社グループでは石油製品、LPガス、電力の取引において、以下の商品・原材料調達価格の変動によるリスクを有しており、世界的な脱炭素化の潮流による資源価格の上昇に加え、ロシアのウクライナ侵攻をはじめとする地政学的要因による更なる高騰が継続する場合、当社グループの経営成績に与える影響は増大します。
(a)石油製品
石油製品は、主にガソリン、灯油、軽油、重油、アスファルト、GTL燃料の取扱いがあり、これらの取引における市況変動による価格変動リスクをヘッジする目的で商品先物・先渡契約等のデリバティブ取引を行っておりますが、市況動向を考慮したうえで買越及び売越ポジションを持つことがあります。その結果、商品バランス(※)が生じ、市況変動によって当社グループの売買損益に影響を及ぼす可能性があります。
(※)商品バランスとは売約残と買約残の差のことであり、売約残とは販売先と契約して未だに引渡ししていない固定価格の売り契約残及び先物取引の売り建玉のことです。また、買約残とは仕入先と契約して未だに引き取りをしていない固定価格の買い契約残及び先物取引の買い建玉、現物在庫のことです。
(b)LPガス
LPガスは、一般家庭や業務用店舗等への小売販売を中心に取扱いがあり、LPガス輸入価格が変動した場合、主として顧客の軒先に設置されている容器内の在庫(軒先在庫)や一部のグループ会社で保有している在庫単価も影響を受け、当社グループの売買損益に影響を及ぼす可能性があります。
なお、市況価格はCP(※)との相関が高くなっております。
(※)CP(Contract Price)とは、LPガスの最大の輸出国であったサウジアラビアが1994年10月から導入した、輸入国の取引先と交わす契約価格。世界のLPGスポット落札価格・世界市場の相場・有力情報誌の市況情報を参考に、サウジアラビアの国営企業であるサウジアラムコ社の価格決定委員会にて決定されます。現在はMB(Mont Belvieu=米国テキサス州モントベルビュー市場での取引価格)を織り込んだ価格フォーミュラを導入しており、以前に比べCPによる価格影響は弱まっているものの、現在もLPガス輸入価格の主要指標となっております。
(c)電力
電力(小売)は、法人及び一般消費者向けに販売しております。当社グループは、自社発電、相対契約、日本卸電力取引所等から電力を調達しておりますが、発電燃料価格や電力市場取引価格に急激な変動が生じた場合には、当社グループの売買損益に影響を及ぼす可能性があります。
②対応策
(a)石油製品
石油製品は仕入価格に連動する販売価格を設定し、原則的には価格変動リスクを負わないビジネスモデルとなっております。加えて行き過ぎた買越及び売越ポジション、商品先物・先渡契約等のデリバティブ取引を抑制するため、「商品バランス管理規程」を策定し、その中で商品バランス枠及び組織毎に損失限度額を設定し、管理しております。これらは、商品取扱い部門の主管部署において所定の時期に損益状態のモニタリングを実施し、管理部門でその状態を確認する等、不測の損失が発生しない体制を構築しております。
(b)LPガス
CP等と連動する販売価格フォーミュラを設定し、顧客への価格転嫁を図ることで、価格変動リスクの抑制を図っております。一部のグループ会社で保有する在庫の評価損益が期間損益に与える影響は避けられませんが、中長期的な視点では価格変動による損益は収斂されるため、経営に大きな影響を与えるものでなく、一過性のものとして判断しております。
(c)電力
当社グループでは、電力調達に関して、大手電力会社とのアライアンス、自社電源の活用や電力先物取引市場を通じたデリバティブ取引等を活用することに加え、販売面でも一部の電力供給取引を対象に、当社グループの電源構成を適正に反映した燃料費調整制度を導入する等、電力市場取引価格や発電燃料価格の変動リスクの抑制を図っております。今後も引き続き、係る価格変動リスクの影響を受けにくい電力供給体制を構築・運用してまいります。
(3)環境規制によるリスク
影響度 |
発生可能性 |
中 |
中 |
①リスク内容
近年地球温暖化の一因とされる温室効果ガスの排出量は増加の一途をたどっており、世界的にも気候変動への危機感が高まっております。今後、世界各地での炭素税の導入やその他環境関連法規制が制定・強化された場合、当社グループの事業活動が制限される可能性や、事業の再編成を強いられる可能性があり、それらのリスクが現実化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②対応策
本項目は、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組 (5)気候変動への対応」の中で記載しております。
(4)情報セキュリティ及び情報システムに関するリスク
影響度 |
発生可能性 |
中~大 |
低~中 |
①リスク内容
当社グループは、お客さまからの石油製品・LPガス・電力等の受注や請求書の発行、ホームページを通じた様々な情報発信等において、情報資産の適切な管理並びに高い情報セキュリティレベルの確保を重要項目と認識し、関連規程を整備のうえ、役員・従業員への教育、啓蒙活動を行うとともに、セキュリティの点検活動を実施しております。また、IT環境においては安全に利用可能なシステムの整備やネットワークの監視強化を実施するとともに、発生したセキュリティ事案に対し速やかに対応できるよう対策強化に取り組んでおります。
しかしながら、サイバー攻撃等は年々巧妙化しているとともに、外部から予期せぬ不正アクセス、コンピューター・ウイルス侵入等による機密情報・個人情報の漏洩、設備の損壊・通信回線のトラブル等による情報システムの停止等のリスクを完全に回避できるものではなく、事業活動の継続に支障をきたす可能性があります。また、信用失墜、多額の賠償請求等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②対応策
当社グループの事業活動において、情報システムや情報ネットワークの重要性は増しており、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)及びIT・デジタル部が中心となって、その構築・運用にあたっては適切な内部統制手続きを整備し、伊藤忠商事株式会社とも連携しながら十分なセキュリティ確保に努めております。具体的には情報管理に係る基本方針や情報管理規程・ルール等の整備を行うとともに、社内会議や社内イントラネット、eラーニング等を通じ、当社グループ従業員への周知・教育と情報管理体制の徹底を図っております。そのうえで、システムやネットワークの冗長化、ウイルス対策、モバイルパソコンのデータレス化、ペーパレス環境の整備等、システム障害やセキュリティリスクの低減に向けた仕組みの導入を推進するとともに情報漏洩賠償責任保険への加入をしております。また、顧客情報・個人情報を含む機密情報の管理・取扱いについても、当社グループの個人情報保護ポリシーを定め、個人情報取扱いに関する目的や管理方法をステークホルダーに広く周知しております。
(5)自然災害によるリスク
影響度 |
発生可能性 |
中 |
低 |
①リスク内容
当社グループは国内全域に事業展開しており、CS(給油所)、石油・ガス・アスファルト基地、ガス・熱供給設備、発電所、自動車販売店舗等の有形固定資産・投資不動産(内、IFRS第16号適用による使用権資産含む。)を有しております。国内に広範囲な大規模自然災害(地震、台風、水害等)が発生した場合、その資産毀損が当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、本社等の主たる機能が首都圏に多いことから、当該エリアで大規模自然災害が生じた場合には事業継続が困難となるリスクを有しております。
②対応策
(a)設備毀損対策
当社グループが保有する資産は日本全国各地に分散保有しており、自然災害によって毀損するリスクも分散されております。また、保有設備の耐震構造については、関連法令等に示される耐震基準に従い建設、維持しており、これまでの大規模自然災害においても、大きな被害は生じておりません。
更に、保険付保による対策を講じており、火災保険については大部分の設備に付保しております。一方、地震保険については、経済性も考慮し、石油基地、アスファルト基地等一部の設備への付保としております。
(b)事業継続
当社ではあらゆる地域で大規模災害が生じた場合に備え、全国の各エリア及び各グループ会社で事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定しております。BCPの実効性を高めるため、各種訓練を定期的に実施しております。また、本社が壊滅的な被害を負った際、本社の代替業務を遂行する代替拠点(広島・福岡)訓練も実施しております。
訓練で洗い出された課題を整理し、課題解決に向けた対策の検討及び対策実行計画を立て、現行のBCPの更なる磨き上げに繋げるための取組みを実施しております。また、事業継続マネジメント(BCM:Business Continuity Management)の運用にむけて体制の構築・推進担当者向けの研修等、BCPの実効性を高めるための取組みを実施しております。
(当社グループのBCP体制)
当社の経営理念である「社会とくらしのパートナー」としての責務を果たすため、当社グループでは事業継続の脅威となる大規模な自然災害によるエネルギーの供給停止や通信の遮断、物流の寸断等の不測の事態が発生した場合に備え、策定したBCP基本方針に基づき、体制整備に努めております。
■当社グループの事業継続に向けた基本方針
・ 人命尊重を最優先とする。 ・ 従業員とその家族の安全を確保したうえで、「社会とくらしのパートナー」として可能な限り当社取扱製品の販売とサービスの提供に努める。 ・ 地域社会と協力して二次災害の防止・被災地の復旧・復興支援を行う。 ・ 本計画と社内規程及びマニュアルの整合性を確保し、継続的改善に努める。 |
■BCP体制図
当社グループでは、非常時の事業継続に迅速に対応するために、災害対策本部、各エリアのグループ会社災害対策本部、各部門の2階層としており、的確に情報収集ができる体制としております。
(6)固定資産減損によるリスク
影響度 |
発生可能性 |
中 |
高 |
①リスク内容
当社グループは事業活動上、様々な事業に係る店舗用不動産、エネルギー供給設備、発電用設備等を保有、賃借しております。事業等のリスクが顕在化したこと等により、それらの資産価値や収益性が低下した場合には、減損処理が必要となり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②対応策
当社グループの保有する固定資産は複数事業に分散し、かつ日本全国各地に分散保有していることから、一定のポートフォリオ効果によるリスク分散がなされております。
また、固定資産取得時には、厳格な「投資基準」を適用し、重要性の高い一定金額以上の案件については、関係部署による十分な審議を行い、損益計画の妥当性、回収の実現性を審査したうえで、経営会議又は取締役会に上程する等、投資判断に誤りが無いよう努めております。
加えて、急激な環境変化等により保有資産に関する収益性が悪くなった場合は、定期的な実績モニタリングの制度等により、不採算・低効率資産の改善策を策定・実行し、改善に努めるとともに、EXITルールによる資産処分・入替を行う等、不採算・低効率の固定資産が蓄積しない仕組みを構築しております。
(7)投資に関するリスク
影響度 |
発生可能性 |
大 |
低~中 |
①リスク内容
当社グループは、国内外において事業に対する投資活動を行っておりますが、事業環境の変化や投資先の業績停滞等に伴い、期待した収益が上げられない場合や投資先の収益低下、投資の回収可能性が低下する場合には、投資の全部又は一部が損失となる、追加の資金拠出を余儀なくされる、あるいは売却先が見つからず、当社グループが希望する時期・方法で撤退できなくなる可能性があります。また、ガバナンス不全等により投資先から適切な情報を入手できないこと等により、当社グループに不利益が生じる可能性があります。
②対応策
当社グループは、(6)固定資産減損によるリスクの対応策に記載のとおり、投資実行時に「投資基準」を適用して案件審査や意思決定を行うとともに、投資後も主管部署による定期的な投資のレビューを行っております。また、2024年4月から事業会社管理及び投資管理等を行う組織として「事業部」を設置し、事業会社に対する定期的なモニタリングを通じて、投資先のガバナンスの強化に努めております。
(8)人材確保に関するリスク
影響度 |
発生可能性 |
中 |
中 |
①リスク内容
当社グループでは、既存事業の拡大や新たな事業領域の開拓等に対応できる高度な知識・スキル・経験を持った人材の確保・育成が不可欠であると考えております。
しかしながら、少子高齢化に伴う労働人口の減少、労働市場における人材流動化等により、そのような人材の確保・育成が計画どおりに進まない場合には、将来的に競争力が低下し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②対応策
本項目は、「第2 事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(6)人的資本・多様性に関する考え方及び取組」の中で記載しております。
(9)コンプライアンスに関するリスク
影響度 |
発生可能性 |
中~大 |
低 |
①リスク内容
当社グループが事業を営むうえで関連する法令、規制は多岐に亘ります。
法令に抵触した場合のほか、予期せぬ法令・規制の制定や改廃等が行われた場合には、追加費用等の負担の増加や法令・規制違反に対する行政処分、当社グループの社会的信用の低下等により、事業活動の継続に支障をきたす可能性があるほか、当社グループの経営成績にも影響を及ぼす可能性があります。
②対応策
本項目は、「第4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④企業統治に関するその他の事項 (a)b.コンプライアンス」の中で記載しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は経営の持続的成長を維持していく中で、株主還元策として引き続き継続的な安定配当を方針として掲げ、連結配当性向40%以上を強く意識した上で、中期経営計画期間のうち2023-24年度の2ヵ年の累進配当を実施いたします。累進配当とは、1株当たりの年間配当額50円を下限とし、次期配当は業績の状況により配当額の維持若しくは増配のどちらかとなり、減配しない政策のことです。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の期末配当につきましては普通配当として1株当たり28円とさせていただきました。また、次期配当につきましては1株当たり年間56円(うち中間配当28円)を予定しております。
なお、内部留保につきましては、事業基盤の強化と更なる収益規模拡大のための事業投資資金等に充当していくことを基本方針としております。
当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年10月31日 |
2,938 |
26 |
取締役会決議 |
||
2024年6月19日 |
3,164 |
28 |
定時株主総会決議 |