2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 気候変動及び生物多様性の損失に関するリスク

(リスクの概要)

気候変動については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」にも示しましたように年々深刻さを増す気候変動の影響は大きく、環境規制の強化・低炭素な事業活動や代替素材利用への要請といった「移行リスク」と、洪水などの激甚災害による事業所罹災・サプライチェーン寸断による調達停滞といった「物理的リスク」のそれぞれに適切に対応できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、生物多様性においては、豊かな自然の保全と社会経済活動が両立する自然共生社会を目指すことが事業活動の中で求められており、環境課題への取り組みをサプライチェーン全体や地域社会との協働で進めていく必要があります。

(主なリスク対応策)

気候変動リスク対応について当社グループでは、サステナビリティ推進委員会が対応策のとりまとめを行っております。「移行リスク」については、環境規制の要求水準より高いレベルの温室効果ガス排出抑制に向けてSBT認証を受けた削減目標を設定し、省エネ活動や再生可能エネルギーの導入でPDCAを回しております。「物理的リスク」については、BCP対策として罹災に対する備え、被害の軽減策(防風、防水)、製造と調達のバックアップ体制構築による供給体制の維持継続を行っており、長期的な視点でリスクを分析し、対策を進めております。

また、生物多様性リスク対応については、事業活動の推進において、用紙原料の調達における合法性確認や社内外自然共生地域の保全への貢献を行い、サプライチェーン全体で取り組む調達への配慮とともに自然資本の保全を進めております。

 

(2) 環境汚染リスク(有害物質の漏洩、廃棄物の不法投棄等)

(リスクの概要)

当社グループの製造工程及び研究開発におきましては、特定の有害物質を使用し、廃棄物を管理する必要があり、適用される規制を守るために厳重な注意を払っております。しかし、このような物質に起因する偶発的な汚染や放出及びその結果としての影響を完全に予測することは困難であり、万一発生した場合には、近隣など外部への影響及び当社グループの従業員を含め事業活動にも影響を及ぼす可能性があります。

また、事業活動に伴い発生する紙くずや廃プラスチックなどの廃棄物は、廃棄物処理事業者に委託しておりますが、万一これらの委託事業者が不法投棄や不適切な処理を行っていた場合には、排出事業者として当社グループの社名等が公表される他、当社印刷物の得意先商品名がSNS等で拡散され、得意先の社会的信頼を毀損する可能性があるなど、社会的な信用を失い、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

環境汚染リスク対応として、偶発的な汚染や放出の原因となる有害物質の貯蔵タンクの管理、保全を実施しております。日常での設備点検の他、自社で設定した管理ガイドラインに基づき、使用年数に応じて劣化診断や計画的な更新を行っております。また、薬液類の給油時など取扱い時における漏洩流出リスクを想定し、あらかじめ緊急事態対応手順を整備し、定期訓練を行うことで手順の有効性も確認しております。

また、廃棄物リスク対応では、委託事業者による不法投棄や不適切処理対策として、マニュフェスト管理の徹底、自社評価シートによる廃棄物処理事業者の適正処理の評価や現地視察などを行っております。

また、廃棄物の適正処理とともに、最終埋立量や廃プラスチックのマテリアルリサイクル率の環境目標を設定・管理することにより、事業活動に伴って生じる廃棄物の排出抑制や再使用・再資源化にも取り組み、近年注目されている海洋プラスチック問題、サーキュラーエコノミーに対しても、対応を強化してまいります。

 

 

(3) 地震、風水害等の自然災害、感染症による人的・物的被害

(リスクの概要)

当社グループでは、地震、台風等の自然災害の発生や感染症拡大の影響により、事業所の設備や従業員等が大きな被害を受け、その一部又は全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、災害が発生した際に、従業員の安全を確保し、事業活動への影響を最小限に留めるために、事業継続計画(BCP)を策定しております。また、全社体制と対応手順を「災害対策基本計画」にまとめ、毎年見直しを行っております。事業継続マネジメント(BCM)活動を進めるにあたっては、本社法務本部内に設置されたBCP推進チームが中心となり、本社各本部及び全国の事業(本)部に配置したBCP推進担当者と活動を行っております。また、BCPにおけるサプライチェーンの重要性を鑑み、その強化を目的として、外部講師による取引先向けの勉強会を年に1回開催しております。なお、セキュア系事業においては、お客さまからの信頼に応えるために、ISO22301の認証を取得しております。

 

(4) 人権リスク

(リスクの概要)

「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (5)人権」にも記載したように、当社グループでは、「人間尊重」の精神を基本に事業活動を行っており、人権を事業活動やサステナビリティの取り組みを推進するにあたり、最も重要なテーマであると捉えております。

しかしながら、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントをはじめとする人権問題が発生した場合には、職場環境の悪化に留まらず、労災補償やブランド価値の毀損などが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、「人権方針」を2021年10月に制定するとともに、自社の行動規範である「行動指針」で、人格と個性の尊重、差別行為やハラスメント行為の禁止、児童労働・強制労働の禁止など、基本的人権を尊重することを定めております。また、「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」においても人権を重視する姿勢を明示し、サプライチェーン全体で人権に関する取り組みを推進しております。さらに、国内外グループ会社・サプライヤー等の当社グループを取り巻くステークホルダーへの調査・ヒアリングを通じて人権リスクの軽減・是正に向けた取り組みを行っております。また、取り組み内容については適切に情報開示を行い、一連の人権デューデリジェンスプロセスを実行しております。 

推進体制としては、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」の下部に設置されている「コーポレートESGプロジェクト」における「人権ワーキンググループ」が人権尊重の取り組みを主管し、グループ全体への浸透を進め、あらゆる人権リスクに対する対応基盤の構築を目指します。

また、ハラスメントに対しては、「TOPPANグループ行動指針」にハラスメント行為の禁止を定め、研修などを通じて徹底しております。また、総務部門を通じた各職場への啓発活動、各職場の行動指針推進リーダーを中心とした日常業務レベルでの浸透・徹底、各職場の管理職への教育、アンケートによる実態把握などを行っております。各種ハラスメントに関する相談体制を拠点単位で設置するとともに、内部通報制度「TOPPANグループ・ヘルプライン」にも通報することができるようにし、早期に発見し適切に対処する機能を果たしております。

さらに、労使でハラスメントの問題を認識し、労使協力してその行為を防止し、ハラスメントの無い快適な職場環境の実現に向け、「ハラスメント防止に関する取扱い」の労使協定を締結しております。

 

 

(5) グループ統制に関するリスク

(リスクの概要)

当社グループは、国内外に多くのグループ会社を持つことから、グループ統制が重要であると認識しております。そのため、財務報告に係る内部統制を含め、「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、内部統制システムを整備・運用をしておりますが、グループ会社が行った経営上の意思決定に際し、結果的に法令違反や巨額の損失が発生した場合には、当社グループの社会的信用を失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループは、グループ会社の事業運営の独立性と自立性を尊重しつつ、グループ会社の取締役の職務執行の適正を確保するため、「関係会社管理規程」において、管理項目ごとに報告等の手続き方法を定め、報告を受けることとしております。

また、当社グループは、コンプライアンス基本規程として「TOPPANグループ行動指針」を定め、この周知徹底を図ることで従業員の職務執行の適法性を確保しております。そのために、本社法務本部コンプライアンス部を中心に、グループ会社の法務部門等と連携し、グループ全体の法令遵守と企業倫理の確立を図るとともに、行動指針推進リーダー制度を導入し、各職場での浸透活動を展開しております。

さらに、当社の内部監査部門が、定期的に当社及びグループ会社における業務執行状況を監査し、その結果を代表取締役、取締役会、監査役会及びグループ会社の取締役等に直接報告しております。

 

(6) 不祥事(重大な不正、不適切な行為等)・コンプライアンス違反(談合、贈賄、その他法的規制違反)

(リスクの概要)

当社グループは、国内外で多くの拠点を持ち、多種多様な業界にわたる多くの得意先と取引をしていることから、関連する法令や規制は多岐にわたっております。事業活動を行うにあたり、会社法、金融商品取引法、税法、独占禁止法、下請法、贈賄関連諸法などの法規制に従う他、免許・届出・許認可等が必要とされるものもあります。万一、従業員による重大な不正や不適切な行為等の不祥事があった場合、あるいはコンプライアンス違反があった場合には、法令による処罰、損害賠償の請求だけでなく、社会的信用の失墜、得意先や取引先の離反などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループは、従業員一人ひとりの遵法精神と企業倫理に基づく行動のあり方を示した「TOPPANグループ行動指針」を制定し、この行動指針の徹底こそがコンプライアンスの実践であると考えております。そこで、行動指針推進リーダー制度を導入し、各職場の行動指針推進リーダーを中心として、日常業務レベルでの行動指針の浸透・徹底を図っております。

また、談合・カルテル、下請法違反、贈賄などを防止するため、研修や監査を実施するなど、従業員のコンプライアンス意識向上のための施策を実施しております。

当社グループは、法令違反の早期発見と迅速かつ適切な対応を行うため、グループ共通の内部通報制度である「TOPPANグループ・ヘルプライン」を設置しております。

 

(7) 市場環境の変化に関するリスク

(リスクの概要)

当社を取り巻く市場環境は、社会のグローバル化や情報技術の革新、ネットワーク化の進展の他、地球環境保全や人権問題など、サステナブルな社会の実現に向けたニーズも高まり、大きく変化しております。これらの市場環境変化に対する施策が不十分である場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主なリスク対応策)

既存印刷事業の需要が減少する中、DX(Erhoeht-X)、国内SX・海外生活系、新事業の3つを成長事業に掲げ、事業ポートフォリオの変革を推進しております。具体的には、DX(Erhoeht-X)事業においては、顧客企業のBX(ビジネス・トランスフォーメーション)に貢献するデジタルマーケティングの推進の他、デジタル技術と高度なオペレーションノウハウを掛け合わせたハイブリッドBPOの事業展開及び海外セキュア事業の拡大を図ってまいります。国内SX・海外生活系事業においては、バリアフィルムを活用したサステナブル包材のグローバル事業拡大に加え、SX商材の開発・拡販やプラスチックリサイクルスキームへの実証参画などを通じて、CO2排出量やプラスチック使用量削減に貢献してまいります。新事業においては、競争優位を持つテクノロジー・ビジネスモデルを核に、ヘルスケア、メタバース、センサ関連などの領域で、事業化を推進してまいります。

 

(8) 市場性のある有価証券価格の変動リスク

(リスクの概要)

当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。従って、株式市場及び金利相場等の変動によっては、有価証券の時価に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスクの対応策)

当社は、政策保有株式について資産効率向上を目的とし縮減する方針をとっており、中期経営計画においてその縮減目標を定めております。保有については、事業運営面と投資資産としての価値の両面から総合的に分析し、その保有の合理性について定期的に検証を行うとともに、保有先の財務状況等を把握することでリスクの低減に努めております。

また、その状況については取締役会へ報告するとともに、保有意義の薄れた銘柄については売却の判断を行っております。

 

(9) 外国為替相場の変動

(リスクの概要)

国内印刷市場の成熟化が進んでいる中、海外市場での事業が拡大しておりますが、海外現地法人において現地通貨で取引されている収支の各項目は、連結財務諸表を作成する際に円に換算されるため、結果として換算する時点での為替相場の変動に影響される可能性があります。

また、為替相場の変動は、当社グループが現地で販売する製品の価格、現地生産品の製造・調達コスト、国内における販売価格にも影響を与えることが想定されます。そのような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、為替相場の変動について、リスク管理のガイドラインを制定し、グループ全体で為替リスクの軽減に努めております。事業の中で発生する為替変動リスクは取引の中で極力吸収することに努めるとともに、為替予約等のヘッジ手段も適宜活用しながら為替変動リスクを最小化することに努めております。

 

(10) 戦略的提携、投資及び企業買収に関するリスク

(リスクの概要)

当社グループは、他社との戦略的提携、合弁事業、投資を通して、多くの事業を推進しており、将来におきましても、他の企業を買収する可能性があります。このような活動は、新技術の獲得、新製品の発売、新規市場参入のためには重要です。しかし、様々な要因により、提携関係を継続できない場合や当初期待した効果を得られない場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主なリスク対応策)

当社グループは、各投資の実行に際しては、少額出資検討会、投資契約検討会、経営会議等の承認プロセスを経て投資判断を行っており、出資等の実行後も定期的にモニタリングを実施しております。また、特に出資先がスタートアップ企業や海外の企業等の場合は、必要に応じて外部の調査機関も活用し、十分なデューデリジェンスを行った上で投資を実行しております。しかしながら、当初想定通りの効果(回収)が得られないと判断された投資案件は、改善プランを策定し、改めてリスク等の精査に基づく挽回策を実施しておりますが、その上でなお成果が得られないと判断した場合は、株式売却や清算等もやむなく実施してまいります。こうしたケースは知見やノウハウを蓄積するための重要な機会であり、内容の精査・原因分析を通じて次の投資検討案件へのリスク低減と成功確率を高める活動へ繋げてまいります。

 

(11) 研究開発投資の損失等、製品の研究開発上のリスク(市場変化、投資先・アライアンス先の業績悪化、事業化・上市タイミング遅れ等)

(リスクの概要)

当社グループの研究開発活動につきましては、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりであります。当社グループは、各事業分野の新商品開発をはじめ、コストダウン、品質ロスミス削減へ向けての研究開発、さらに産官学との連携を図りながら中長期の収益の柱となる新規事業の創出のための研究開発にも投資をしております。しかしながら、予測を超えた市場の変化、投資先・アライアンス先の業績悪化、事業化や上市のタイミングの遅れなどにより、研究開発投資が十分な成果をもたらさなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

技術戦略室では、グループの研究開発による新事業創出の確度向上を目的とし、事業化の蓋然性に応じた追加投資の優先性や要否判断による経営リソースの有効活用、グループ保有の情報やアセットの活用強化・促進を実施しております。さらに、追加投資対象の研究開発テーマに対し、定期的な進捗確認により抽出した課題をもとに、開発リソースの最適化を図っております。総合研究所では、研究所テーマの中長期スケジュールのもと、細かな進捗確認、ステージアップ判断、リスク把握などを行い、課題遂行の遅延防止に努めております。加えて、市場環境や技術動向、競合他社特許などの調査・分析を定期的に行い、研究開発テーマの方針変更の要否やテーマ継続の可否を適切に判断しております。

 

(12) 事業の発展を支える人材の確保

(リスクの概要)

「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本・多様性」にも記載したように、当社グループが将来にわたり事業を発展させていくためには、既存製品における高品質化と、高度な新技術導入による新製品・新サービスの開発が重要であると認識しております。そのためには、高度な技術力・企画提案力を有した優れた人材が不可欠となります。当社グループは、計画的な人材の採用と育成に向けた教育に注力しておりますが、優秀な人材を確保又は育成できなかった場合には、当社グループが将来にわたって成長し続けていくことができない可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、効果的な採用広報により、当社グループに関心を持つ人材の母集団形成を図るとともに、就業型インターンシップの導入、コース別採用、リファラル採用など、新卒採用と経験者採用の両面において様々な採用チャネルを構築し、幅広い領域の人材を採用しております。また、社内の人材開発プログラムを常に更新し、基礎的能力から実践的スキルまで一貫して習得する場を提供し、事業を牽引する人材を育成している他、人事処遇や働き方の改革により従業員のエンゲージメント向上に努めております。さらに、成長事業への人材シフトやローテーションにより、人材面からの事業基盤強化を進めております。

 

 

(13) 財務に関するリスク(資金調達、不良棚卸資産の発生、不良債権の発生等)

(リスクの概要)

当社グループは、事業の拡大や急速な技術革新に対応するために、事業投資や設備投資を必要としております。これらの投資に向ける資金調達につきましては、事業計画に基づき外部から調達する場合もありますが、金利情勢の大幅な変化等により適正な条件で必要十分な追加資金を調達することができない可能性があります。

また、環境変化による需要の減少等で市場価格が大きく下落した場合や経年劣化した場合は、棚卸資産の評価損が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、多種多様な業界の得意先と取引をしておりますが、各業界の業況悪化を通じた得意先の経営不振等により、多額の債権の回収が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループは、事業計画に基づく資金調達を円滑に遂行するため、資金調達手段と調達期間を適切に分散しております。また、有事の際においても事業継続に必要な資金調達を可能とするため、格付けの維持にも資する健全な財務体質の維持・強化に努めております。さらに、金融市場の動向に関する最新の情報と事業環境の分析に基づき、資金計画の見直しを適時に行っております。

また、営業部門、製造部門、管理部門が連携し、販売促進による回転効率の向上及び棚卸資産の品質と管理状況の定期的なチェックによる品質の保持を徹底することで、不良棚卸資産発生と長期在庫化のリスク回避に努めております。

また、当社グループは、与信管理規程に基づき、取引先ごとに与信限度額を設定するとともに、定期的な与信の見直しを行っております。加えて、回収遅延や信用不安が発生した場合には、迅速に債権保全策を講じ、貸倒リスクの回避に努めております。

 

(14) 情報セキュリティにおけるリスク(サイバー攻撃、情報漏洩)

(リスクの概要)

当社グループでは、事業の一環として得意先から預託された機密情報や個人情報の収集・保管・運用を行っております。特に、BPO事業につきましては、政府・地方自治体や企業等のアウトソーシング需要の取り込みにより、取り扱う情報量が増加しております。また、当社グループが推進するDXにおきましては、データの収集・分析を通じた製品・サービスの提供をビジネスモデルとして実施しており、個人情報を含む情報の利活用を進めております。

(主なリスク対応策)

機密情報や個人情報を含む重要な情報については、厳重な情報セキュリティ管理体制により管理しております。具体的には、当社グループにおいては、「TOPPANグループ情報セキュリティ基本方針」のもと、国内外の法規制及び情報セキュリティに関する規格をもとにした規定を定め、法改正等に合わせた規程類の改定整備や当社グループ各社のセキュリティ対策状況、成熟度の評価・改善指導を適宜行っております。また、従業員等に対しての定期教育による当該規程類の周知や内部監査及び委託先監査による遵守状況の確認、改善指導も行っております。

外部からのサイバー攻撃等による情報漏洩やシステム停止に対する対策としては、端末の振る舞い検知や不正接続端末の遮断、ネットワーク監視、クラウド基盤統制等の技術的な対策の実施に加え、標的型攻撃メールや各種インシデントへの対応、開発部門や製造部門等の特定部門での対応力強化のための教育など、全従業員対象及び各職種・各階層に合わせた教育を実施し、教育、訓練・演習、診断のサイクルを回しながら定着を図っております。

また、重要情報を取扱うエリアを限定し、かつ業務監視を行うなど漏洩対策を実装し、適宜強化・最適化を行っております。さらに当社グループのサービスの脆弱性の監視やサイバー脅威情報を収集・評価・分析し対策に反映させる運用体制を整備するとともに、インシデント対応のためのCSIRT機能(Computer Security Incident Response Team)である「TOPPAN-CERT」(当社グループ全体を対象)及び「TOPPAN Edge CSIRT」(TOPPANエッジグループを対象)を、グローバルで対応できるよう体制を拡充し、関係機関等と連携してサイバーリスク低減に取り組んでまいります。

 

 

(15) 製品、デジタルサービスの品質に関するリスク

(リスクの概要)

当社グループでは、全ての製品、デジタルサービスの製造・提供活動におきまして、品質管理上、十分な注意を払い、品質事故やクレームを発生させないための対応を図っておりますが、万一品質事故が発生した際には、業績に影響を及ぼす可能性があります。製品においては、安全性が損なわれた製品が市場に流出した場合、当該製品を販売する得意先と連携し、製品の自主回収を行うこととなります。その場合、多額の回収費用や賠償費用が発生する他、社会的な信用を失い、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。デジタルサービスにおいては、ITシステムの不具合や機器故障、人的ミスの発生等により、当該サービスを利用する得意先の事業・生産ラインなどの突発的な停止が引き起こされることがあり得ます。その場合も同様に、多額の賠償費用が発生する他、社会的な信用を失い、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、「製品の安全管理についての基本方針」「サービス品質基本方針」のもと、各事業において国際規格に基づく品質マネジメントシステムを構築し、品質管理の徹底と継続的改善を行い、製品、デジタルサービスの品質事故防止に取り組んでおります。製品においては、万一重大な品質事故が発生した場合、当社製造統括本部品質保証センターが中心となり、原因の追究及び対策の指導を全社的に水平展開し、再発の防止に努めております。

また、特に安全衛生面で高い品質保証が求められる食品関連事業・ヘルスケア関連事業に対しては、当社が制定する品質保証ガイドライン及び品質監査チェックシートに基づく監査を実施し、製造を許可する認定制度を採用して、品質事故の未然防止に努めております。デジタルサービスにおいては、当社サービス品質統括室が中心となり、サービス品質規程を定め、サービスのライフサイクル全体を通じて、品質やリスクを適切に管理するとともに継続的な改善活動を全社的に推進しております。

 

(16) サプライチェーンに関するリスク(原材料の供給問題、不適正な発注、取引先の不正行為等)

(リスクの概要)

事業に使用する用紙・インキ・ガラスといった原材料やエネルギーを外部の取引先から調達しております。また、様々な業種のパートナー企業との協業や業務委託により製品・サービスを提供しております。

事業活動を維持するためには、原材料やエネルギーを適正量・適正価格で安定的に確保することが重要になります。しかし、地政学的事象や取引先の被災・倒産・事故、当社を含むサプライチェーン上で人権問題・環境規制や法令の違反などにより、供給の中断・供給量の大幅な減少や納期の遅延、取引停止などが発生することで、十分に調達量を確保できず、製品・サービスの提供が遅れる可能性があります。また、原材料やエネルギー価格の高騰などにより収益に影響する可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループは、サステナブル調達の取り組みを進めており、社会要請や国際規格などを鑑み、安定した持続可能な調達(サステナブル調達)を行うためのガイドライン「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」を策定しております。取引先・協業企業の皆さまと密接に連携し、このガイドラインの浸透を図るとともに、大規模災害発生時などの事業継続の取り組みや人権・労働・環境・腐敗防止への取り組み状況等を定期的に確認し、サステナブル調達を推進しております。

また、エネルギー調達については、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みを強化するとともに、複数のエネルギー供給元を確保するなどリスク分散をしております。

さらに、取引先や協業・業務委託企業との取引の透明性・公平性を高め、より深い信頼関係を築くため、対話による課題把握や相談窓口「サプライヤーホットライン」の当社コーポレートWEBサイト上への設置、社内外教育による周知・社内外監査による調査と是正活動などにより、信頼関係の構築と安定した調達の実現に努めております。

 

 

(17) 労働安全衛生に関するリスク(火災、労災、労働法規違反、労務トラブル等)

(リスクの概要)

当社グループでは、従業員を会社の貴重な財産、すなわち「人財」と捉え、「企業は人なり」という理念のもと、従業員が「やる気」「元気」「本気」の3つの「気」を持つことで、従業員がそれぞれの力を十分に発揮することが大切であると考えております。それを実現するために、従業員の労働については、国の政策や法制度の動向を踏まえ、労働組合と協議しながら、様々な施策を展開しております。

また、「安全は全てに優先する」を第一義とする「安全衛生・防火基本方針」を制定し、労使一体となり、安全衛生・防火活動に取り組んでおります。

いずれの場合も、労働法規違反により当局から行政処分などを受けた場合や労務・安全衛生・防火の管理において不備があった場合は、当社グループの社会的評価に悪影響を与える可能性があります。

また、火災や労働災害が発生した場合、事業所の従業員や設備等が大きな被害を受け、その一部又は全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があり、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの事業活動、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループは、ワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、各事業所の労使関係の中で、継続した労働時間短縮に向けた取り組みや残業実態の分析、新たな勤務制度の導入・活用状況の検証を行っております。また、グループ全体でも各社の労働時間や年次休暇の取得状況を日々把握できる体制・システムを構築し、グループ全体での生産性の向上と労働時間の短縮を目指すとともに、法令順守の体制を構築しております。コロナ禍において定着した「リモートワーク制度」による働き方改革を継続し、従業員が自律的かつ効率的に業務を行える環境を整備する一方で、各拠点に労務相談の窓口を設け、ハラスメント相談員の資格を持った担当者が対応に当たるなど、労務トラブルの未然防止にも努めております。

安全衛生・防火活動においては、全国の事業所に、安全師範や安全推進担当者を配置するとともに、安全意識の浸透を図るべく、リスクアセスメントなどの「安全勉強会」やグループの工程ごとに横断的に意見交換を行う「安全分科会」を開催しております。また、安全に対する意識と危険に対する感受性の向上を目指すため、「挟まれ・巻き込まれ」や「発火・爆発」などを実際に体感することができる「安全道場」を国内外の主要製造拠点に開場している他、職長教育を中心とした階層別教育も行っております。

また、VR技術を活用し、多言語での解説を搭載したバーチャル映像と音を通じて事故の疑似体験をする安全教育も国内外のグループ会社に展開しております。

 

(18) 特許権や著作権等の知的財産権の侵害

(リスクの概要)

当社グループでは、事業戦略と知財戦略をマーケット志向と研究開発活動により、一層密着させ、戦略的な知的財産ポートフォリオの構築に取り組んでおり、創出された知的財産により事業競争力の確保、維持、強化をしております。

しかしながら、当社グループの技術等が、見解の相違等により他者の知的財産権を侵害しているとされる可能性や訴訟に巻き込まれる可能性があります。また、他者が当社グループの知的財産を不正使用することを防止できない可能性や侵害を防ぐための対応が成功しない可能性があります。

さらに、当社グループは、お客さまに印刷物や商品パッケージのデザインを提案する業務において、著作物を日常的に取り扱っております。そのため、当社グループが取り扱う著作物の権利について、事前かつ十分に処理状況を確認できなかった等の理由により、他者の著作権を侵害しているとされる可能性や訴訟に巻き込まれる可能性があります。

 

(主なリスク対応策)

当社グループは、新事業や新商品、新技術の研究・開発にあたり、グローバルな視点も含めて、他者の知的財産権を継続的に調査・経過観察することにより、他者の知的財産権を侵害するリスクを未然に防止しております。当社グループは、事業展開する国や地域に合わせた権利取得を行い、強固な知的財産ポートフォリオを構築することにより、当社グループの知的財産権が他者に侵害されるリスクを回避しております。

また、知的財産に関する階層別の社内教育を定期的に実施して、他者の知的財産権の尊重とその重要性について社内に周知徹底しております。さらに、著作権教育についても社内をはじめ、委託先である外部デザイナーに向けて定期的に実施し、事前かつ適切な著作権処理を徹底することにより、他者の著作権を侵害するリスクを未然に防止しております。

 

(19) 海外に関するリスク(規制法違反、地政学リスク、訴訟、労働争議、国際税務等、前各項に含まれない事項)

(リスクの概要)

当社グループは、グローバルに事業活動を行っており、今後とも海外市場への事業拡大を重点戦略の1つとして展開いたします。事業展開する国や地域における政治及び経済面における不安定さ、疫病及び大規模な災害の発生、労働争議や紛争の発生などにより、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外子会社におけるガバナンス不全や社内管理の不備により、法規制への違反、外国公務員への贈賄や国際カルテルなどの不法行為、現地従業員による着服、不正会計、税制の変更や不適切な税務申告などが発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、地政学リスクという観点では、国際紛争や政治体制の変更による国際情勢の先行き不透明感が増しており、リスクは高まっております。加えて、そのような状況から派生した輸出入規制の強化、資金決済への制限など、当社グループのビジネスにも影響が及んでおります。紛争の長期化や激化、新たな戦闘や抗争による事業停止や撤退など、さらなる影響を受ける可能性があります。

(主なリスク対応策)

海外ビジネスに関するリスクを低減するためには、各海外子会社におけるガバナンス体制の構築と、その実効性の高い運用が重要であると考えております。そこで、当社グループでは、マネジメント全般、コンプライアンス、情報セキュリティ、人事、安全衛生、会計、税務、品質、環境、調達などについて「あるべき姿」を示し、それに基づき各海外子会社で体制・仕組みの構築と遵守・運用・実践を一体となって進めております。また、社内監査や会計監査などを実施し、指摘事項に対する改善指導を行い、より効果的なガバナンス体制の構築に努めております。

さらに、海外での事業開始前に、第三者機関が提供する事業環境リスク評価システムを活用したリスク評価を行うなど対応を強化するとともに、海外出張者・海外駐在員に対し、渡航前に安全教育やリスク管理・危機管理研修を実施しております。

地政学リスクについては、新興リスクの1つであり、新たなリスク対策・取り組みが必要とされております。これまでも情勢の変化を見ながら当社グループへの影響分析・評価を行い、特に重要な海外地域については綿密なBCP策定を行うなどの対策を講じておりますが、それに加えてカントリーリスクに関する各項目や情報の断続的モニタリングを行い、リスク変化に対してより柔軟に対処できる組織体制を整えるべく、現在準備を進めております。

 また、万一不測の事態が発生した場合には、全従業員の健康・安全確保を第一優先とする一方、サプライチェーンへの影響を極小化するよう、グループ全体で最適な事業環境を保てる施策を講じるとともに、内容の改善・見直しを継続していきます。

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主各位への機動的な利益還元ができるよう、剰余金の配当等の決定を取締役会の決議によって行うこととしております。また、毎年3月31日を基準日として期末配当を、毎年9月30日を基準日として中間配当を、この他基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。

株主還元方針につきましては、各期の連結業績、配当性向、手元資金の状況、内部留保、今後の投資計画等を総合的に勘案した上で、安定的な配当に加え機動的な自己株式の取得により、連結総還元性向30%以上を目安に利益還元を行ってまいります。

この方針のもと、第178期の期末配当につきましては、2024年5月30日の取締役会において1株につき普通配当24円と決議いたしました。これにより中間配当(1株当たり24円)と合わせて、第178期の1株当たり配当金は48円となりました。その結果、自己株式の取得も考慮した当期の連結総還元性向は70.9%となりました。

なお、当社は2024年5月13日に、2024年5月14日から2025年5月13日を取得期間とした最大1,000億円の自己株式の取得を公表いたしました。

 

第178期の剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月13日

取締役会決議

7,755

24.00

2024年5月30日

取締役会決議

7,618

24.00