リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)製品開発の進度に係るリスク
当社は、新技術や新製品の開発を目指し、研究開発投資や設備投資を行っておりますが、様々な環境動向等により、当社の事業成長を可能にする新製品研究開発の対応不足が生じると、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが生じる可能性については、研究開発テーマの新規性や進歩性の程度による部分が大きいと考えますが、数ある開発テーマの中から現場ニーズと製品コンセプト、想定される投資採算などから開発テーマの選択と集中を慎重に検討実施し、製品開発過程の常時見直しと進行テーマの各フェーズにおけるチェック・確認機能の強化に取り組み、当社の開発リソースを最大限有効に活用できるよう取り組んでおります。
(2)製品の販売価格引下げに伴うリスク
国策としての医療費抑制政策によって償還価格(病院が特定保険医療材料を使用した場合に、国に対して請求する価格)は低下傾向にあり、医療機器販売業者による医療機関への販売価格もこれに連動し、低下傾向にあります。また、複数の医療機関の購買をまとめ上げた共同購買体制等もあり、医療機関のメーカーに対する販売価格下落圧力は強まっております。
当社において、原価低減や業務効率全般にわたっての改善を進めておりますが、効果が限定される場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対する対応策として、製品の市場動向、競合他社の状況、行政の動向等当社を取り巻く経営環境
に関する情報を的確かつ早期にキャッチアップし、中長期的な視点から次世代製品開発に反映することを前提
に、当社の強みである医療現場のニーズを汲み取った独創性の高い医療機器の開発、提供を強化、推進してまい
ります。
(3)法的規制に伴うリスク
当社が行っております医療機器の開発、製造及び販売については、国内では医薬品医療機器法により規制を受けますが、改正法が2014年11月に施行され、品質管理、安全管理体制の一層の強化と充実が求められております。
これまで当社は医薬品医療機器法に係る許認可の否認や承認の取消しを受けたことはありませんが、医薬品医療機器法第75条においては当該取消事由が定められており、何らかの理由により当該取消事由が生じた場合には、当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
許可の種類 |
有効期限 |
関連する法令 |
取消等となる事由 |
第一種医療機器製造販売業許可 |
2025年3月 |
医薬品 医療機器法 |
第75条に該当した場合の取消 又は更新漏れ |
医療機器製造業登録 |
2025年3月 |
〃 |
〃 |
高度管理医療機器等販売業許可 |
2025年3月~ 2030年4月 |
〃 |
〃 |
医療機器修理業許可 |
2024年10月~ 2029年5月 |
〃 |
〃 |
なお、欧州市場へ輸出するにはMDD/MDR(欧州医療機器指令/規則)の要求事項を満たす必要があり、米国市場へはFDA(連邦食品・医薬品・化粧品法)の要求事項を満たす必要があります。当社は輸出先国の法律に係る許認可の否認や承認の取消しを受けたことはありませんが、法規制等が変更、強化された場合は当社の業績及び事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。
当社の海外売上比率は、2024年3月期において3.3%であり、海外における法規制のリスクが当社の現状の業績に与える影響は小さいものと考えます。しかしながら、今後は、海外売上比率を高めていくことを中長期の成長の柱としておりますことから、海外市場の規制要求対応を含め海外拡販体制強化のための人員確保、育成に努め、中長期の事業拡大につなげてまいります。
(4)製品の安全性に係るリスク
当社は、高度な技術を要する医療機器を取り扱っており、品質管理の充実に常に努めておりますが、様々な要因による不良品発生や医療現場での不適切な取扱いの可能性を完全に否定することはできません。医療事故等が発生した場合には製造物責任によって係争等に発展する可能性があり、また製造工程での不具合発生により、自主回収を行う可能性があります。その場合は、特別的な損失として自主回収関連費用が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社の責に帰すべき事由による賠償責任の発生に対しましては、生産物賠償責任保険に加入することでそのリスクの軽減を図っております。
(5)特定製品への依存に係るリスク
当社の主力製品であるフィットフィックスを中心とした吸引器関連製品の売上比率が全体の60%を超えてきており、過度な価格競争による販売価格低下等により、当社の業績及び事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。吸引器関連の売上高及び売上比率は、2023年3月期 5,820百万円(63.7%)、2024年3月期 6,190百万円(63.5%)であります。
このため、当社の収益性は、より一層厳しさの増す医療機関の経営環境と特定製品への依存度の高い商品構成に起因した主力製品の販売単価下落に大きく影響を受けるリスクがあります。
ただし、吸引器関連でも病棟向けのキューインポットなど今後も高い成長性が見込まれるものもあり、中長期的には「マイクロポンプ関連製品」をはじめとしたラインナップ拡充に加え、大きな伸びしろとなりうる海外販売の拡大に向けた製品開発、体制準備を強力に進めることで収益構造の改善を図ってまいります。
(6)知的財産権に係るリスク
当社は研究開発に注力しており、知的財産権の確保並びに他社による知的所有権への侵害防止に努めておりますが、係争に発展する可能性を完全には否定できず、その場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、医療機器の製造販売には許可や承認を必要とし、比較的参入障壁が高い業界ではありますが、さらに競合他社を排除するため、当社は、自社開発製品を知的財産権で保護しております。医療現場と密接な関係を築き営業活動を行っておりますが、権利満了に伴う新規参入により競争が激化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
医療機関の医療事故に対する意識が非常に高いことから、総じて医療機器の商品サイクルは長くなっております。当社のトップライン製品につきましては、特許切れ以降も引き続き医療現場では高い評価を頂いておりますが、価格競争の点からも、当社といたしましては、信頼を得ている顧客を維持し、さらに満足度を高めるため、新たな特許を織り込んだ新製品開発を進めることで、権利満了による影響を最小化するよう努めております。
(7)人材確保、育成に係るリスク
医療現場の顧客満足度を高めていくためには、顧客の業務及び先進技術に関する専門知識を常に習得・蓄積する必要があり、事業推進に必要な人材を適時適切に確保し育成・活用できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうした課題に対処するため、当社は、従業員の給与水準の向上及び効率的な働き方を実践するなど、競争力確保のための人的投資強化施策を積極的に実施しております。働くうえで一層魅力的な企業となり、企業文化の継承力と創造性を併せ持った人材を育成して適所に配置することに努めてまいります。
(8)製造拠点の集中、自然災害に係るリスク
当社が販売している注入器関連製品は主に大阪府和泉市の当社アセンブリーセンターにて製造しております。製造工場が地震や火災等の災害を被った場合、生産設備の機能停止による製造停止、修繕費用発生等により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製造委託先の業績悪化等サプライチェーンの崩壊により、生産に支障をきたした場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社といたしましては、複数社の購買体制、複数生産拠点体制を基本とし、リスクとコストのバランスを図りながら、最大限リスク低減を図れるよう取り組んでおります。
(9)新型コロナウイルス感染症等の感染症蔓延に関するリスク
新型コロナウイルス感染症の拡大の第1波から第2波の期間においては、外来患者の減少、手術の延期などの影響から医療現場の逼迫した状況が継続し、手術件数等に影響が出ておりましたが、ワクチン接種の普及拡大、感染防止策の定着等により、医療現場が正常化へ変遷し、いまでは安定した医療体制が形成されております。
今後も感染防止対策を徹底しながら医療提供体制の確保には最善の努力が継続される中、新型コロナウィルスの新たな変異株の出現やその他未知の感染症の出現等により、深刻な医療逼迫の状況が生じる可能性もあり、そのような状況が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、事業継続計画(BCP)の策定、安全在庫の確保など、従業員の安全と医療機器の安定供給のための体制整備に努め、最大限リスク低減を図れるよう取り組んでおります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を最重要経営課題のひとつと位置づけ、将来にわたる事業展開のための内部留保の確保と経営成績に裏づけされた成果の配分を中間配当及び期末配当として年2回行うことを基本方針としております。また、配当性向につきましては安定配当をベースに60%以上の利益還元を基本方針としております。
内部留保資金の使途につきましては、今後の有望な事業分野に投下し、さらに高い利益性と成長性を実現することで企業価値の増大を図り、投資価値の拡大とさらなる利益還元につなげてまいりたいと考えております。
なお、当社は、株主の皆様への機動的な利益還元を可能とするため、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によって会社法第459条第1項各号に定める剰余金の配当をすることができる旨定款に定めております。
当期の期末配当金につきましては、2024年5月15日開催の取締役会決議により、1株当たり12円を実施させていただきます。すでに2023年12月1日に実施済みの中間配当金1株当たり9円とあわせまして、年間配当金は1株当たり21円となります。
基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(千円) |
1株当たり配当額(円) |
2023年10月31日 |
258,555 |
9.00 |
取締役会決議 |
||
2024年5月15日 |
344,741 |
12.00 |
取締役会決議 |