2023年9月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業遂行には様々なリスクを伴います。本書提出日現在において、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクは、以下のとおりです。なお、これらは、当社グループが事業を遂行する上で発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。また、将来に関する事項につきましては別段の記載がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 事業環境について

①当社グループの事業について

 当社グループはスタジオ事業を成長領域と捉え、フォトウエディング需要の増加に対応するため継続的に新規出店を行っていますが、予期せぬ事態によりフォトウエディング需要が大きく減少した場合には当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 中長期的な経営戦略を策定する中で、当社グループは、婚姻組数、撮影組数、撮影単価、コスト変動等の様々な前提を置いています。このような前提は必ずしも正しいという保証はなく、当社グループは前提が誤っていたことによる影響に対応して経営戦略又は事業運営を適時に変更することができない可能性があります。

 

②他社との競合について

 当社グループの競合他社は、その資本力、サービス・商品、店舗開発力、価格競争力などにおいて、当社グループより優れている場合があります。競合他社がその優位性を現状以上に活用してサービスや商品の販売に取り組んだ場合には、当社グループが販売競争で劣勢に立たされ、当社グループの期待通りにサービス・商品を提供できない、又は現在の受注水準を維持できないことも考えられ、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、競合他社が当社グループと同等又はより優れたサービスを導入した場合や、競合他社が当社グループよりも低い価格でこれらを提供した場合には、当社グループの施策が期待した効果を上げることができないことも考えられ、当社グループの優位性が低下し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③売上収益の季節的変動の影響について

 当社グループのスタジオ事業において提供するフォトウエディングのサービスは、紅葉や桜を背景としたロケ地での撮影の需要が高まる秋と春に繁忙期を迎えます。一方コスト面については、当社はフォトグラファー及びメイクアップアーティストを直接雇用しており、店舗の賃料等も固定して発生することから固定費比率が高くなっています。そのため、当社グループの利益は第1四半期及び第3四半期に偏重する傾向があります。したがって当該期間中に台風等の天候不順や異常気象等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 法規制について

①法規制について

 当社グループのスタジオ事業は、「美容師法」の適用を受けています。

 当社グループは、内部管理体制の充実を図り、社内教育を推進することで法令の遵守に努めていますが、今後新たな法的規制の導入や現行の法的規制の強化もしくは変更等が行われた場合には、当社グループの財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、広告宣伝を行う際の各種制作物の表現について、「不当景品類及び不当表示防止法」の適用を受けています。当社グループは法令を遵守するために、グループで一元的な広告審査体制を構築していますが、万一、これらの法令に違反する行為が行われた場合には、当社グループが社会的信用を失う可能性があり、当社グループの財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

②個人情報等の漏洩リスクについて

 当社グループは、個人情報取扱事業者として個人情報にかかる義務等の遵守を法令上求められています。

 当社グループでは顧客情報管理規程を制定し、個人情報が記載された書類やデータについては保管庫における施錠管理やパスワード管理により管理を徹底する等、安全性及び信頼性に万全の対策を講じていますが、人為的過誤、自然災害、第三者によるセキュリティ侵害や予測しない不正アクセス等により、個人情報その他の顧客情報や当社グループの機密情報が漏洩し、また、その漏洩した情報が悪用された場合には、顧客の経済的・精神的損害に対する損害賠償等が発生する可能性があります。さらに顧客情報の漏洩等が当社グループの信用低下や企業イメージの悪化につながることで、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③労務管理について

 当社グループは、労働基準法などの関係法令を遵守し、労働時間や有給休暇の取得状況を管理するなど、適正な労働環境の整備に努めています。

 しかし、万一当社グループにおいて、これらの法令に抵触するなど労務管理が不十分な事態が生じた場合には、社会的な信用の低下を招き必要な人材の確保に支障をきたすなど、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業に関するリスク

①特定のサービスへの依存について

 当社グループは、売上収益・利益共にフォトウエディングサービスへの依存率が高くなっています。今後もフォトウエディング市場は拡大するものと見込んでいますが、当該市場の成長が鈍化するような場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②人材の確保・育成について

 当社グループは、今後の事業拡大を進めていくにあたり、優秀な人材を確保するとともに人材育成が重要な課題であると認識しています。このため、採用活動、教育研修等の充実、賃金の引上げ等の従業員満足度の向上に努めていますが、必要とする人材の確保ができなかった場合や中核となる優秀な人材の流出等が生じた場合、人材の育成が図れなかった場合には、出店計画の遅延や既存店舗での運営に支障をきたし、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③当社グループのWebサイトにおける外部検索エンジンによる集客について

 当社グループのサービスの利用者の多くは、特定の検索エンジン(「Google」「Yahoo!JAPAN」等)を経由して当社グループのWebサイトを認知しており、今後も検索エンジンからの集客を強化すべくSEO(※)やインターネット広告によるマーケティング活動を実施していく予定です。

 しかしながら、検索エンジンが検索結果を決定するロジック(アルゴリズム)を大幅に変更する等、何等かの要因により、これまでの手法が有効に機能しなかった場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(※)「Search Engine Optimization」の略であり、インターネット検索結果でWebサイトを上位表示させたり、より多く露出するための一連の取組のことを「SEO」といいます。

 

④システム障害について

 当社グループのサービスの利用者の多くは、インターネット上の当社グループのWebサイトを通じて当社グループのサービスを認知しており、また、自社サイトを通じて予約を受け付けているため、事業の安定的な運用のためにシステム強化及びセキュリティ対策を行っています。

 しかしながら、予期せぬ自然災害や不慮の事故等により当社グループが運営する媒体のコンピューターシステムに障害が発生した場合や、想定を超える急激なアクセス増等の一時的な過負荷によってコンピューターシステムが動作不能に陥った場合には、サービス停止により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤出店について

 当社グループは、売上収益拡大のために出店を積極的に進めてまいります。出店にあたっては店舗の立地が業績を左右する重要な要素となるため、出店にあたり緻密なマーケティングを行い、需要予測や採算性の評価を十分に行った上で出店の意思決定をしています。複数の展開地域で並行して店舗開発を進めているものの、出店立地として適切な候補物件が確保できない場合、出店に必要な人材が確保できない等の理由により出店予定時期までに出店ができない場合、又は出店実績が計画と乖離する場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥当社グループが提供するサービス及び商品に関するクレームについて

 当社グループは、利用者からの品質に対する期待に応えつづけることが重要だと認識しており、日頃から従業員に対して高品質なサービス提供をするよう指導や教育を行っています。また、スタジオ事業における写真データ保存上の不備やアルバム等の納品漏れ等を事前に回避するための管理体制を確保しています。しかしながら、万一不具合などの問題を回避できずお客様に損害を与えた場合には、クレームや損害賠償請求等が発生する可能性があり、当社グループの信用や財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦風評等の影響について

 当社グループが運営しているサービスは、それぞれ個人を対象としたサービスであるため、利用者の口コミやインターネット上の書き込み、マスコミ報道等により影響を受けるものと認識しています。これに対して当社グループでは、顧客満足度を高めるための意識や、コンプライアンスを遵守する意識を高く保つように従業員への教育を行っています。しかしながら、当社グループに不利益な情報や風評が流れた場合には、当社グループが提供するサービスの利用者が減少する等、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧内部管理体制について

 当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しています。今後、事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も充実・強化させていく方針ですが、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨自然災害について

 万一、大規模地震や台風等の自然災害により、当社グループの本社や店舗又は顧客に甚大な被害が発生した場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩感染症について

 インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症等の感染症の大流行により長期にわたる営業休止を余儀なくされた場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪新規事業について

 当社グループは、現在までの事業活動を通して培ったスタジオ事業のノウハウを生かし、更なる成長を目指して写真撮影関連・周辺事業へ投資していく予定です。新規事業展開にあたっては慎重な検討を重ねた上で取り組んでまいりますが、当該事業を取り巻く環境の変化等により、当初の計画通りの成果が得られない場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他業績に影響を及ぼす可能性のある事項について

①有利子負債について

 当社グループは、旧株式会社デコルテの株式取得資金等を金融機関からの借入れにより調達しています。また、当連結会計年度末時点で7,525,144千円の有利子負債(注1)を計上しており有利子負債比率(注2)は158.0%となっています。このうちシンジケートローン契約による借入金残高2,388,858千円の金利については市場金利と連動して3ヵ月毎に見直される契約となっており、今後、市場金利が上昇した場合には当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注1)有利子負債:借入金及びリース負債(主として店舗の物件賃借契約より生じたもの)

(注2)有利子負債比率:有利子負債÷資本×100

 

 なお、シンジケートローン契約については、2023年11月末をもって返済期限を迎え、新たに三井住友銀行他計7行との相対取引により、2,334,000千円の借入を2023年11月30日に実施しています。それに伴い、これまで付されていた財務制限条項(財務コベナンツ)はすべて解消していますが、引き続き、下記の取組については実施してまいります。

 

・収益性を重視した戦略立案と経営管理

 当社グループは、収益性を重視した戦略立案と経営管理を行っています。具体的には、新規出店にあたり緻密なマーケティングを行い、需要予測や採算性の評価を十分に行った上で取締役会において新規出店の意思決定をしています。また、当社グループでは、各店舗を経営上の重要な単位として管理しています。

・財務バランスを意識した投資計画、資金計画の立案と実行

 当社グループにおける主な資金需要は、新規出店の建設資金及びこれに関連した保証金の差入です。財務バランスを悪化させるような不必要な追加借入を発生させないため、営業活動によるキャッシュ・フローの実績等を参考にした設備投資計画及び出店計画を立案し、これに従って投資を実行しています。

 

②総資産に占めるのれんの割合が高いことについて

 当社グループはIFRSに基づき連結財務諸表を作成しているため現行基準下では当該のれんの償却は不要となりますが、非流動資産にのれんとして当連結会計年度末時点で5,635,785千円を計上しており、総資産に占める割合が41.3%となっており、減損が発生した場合は当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 ただし、当連結会計年度末における回収可能価額は、のれんが含まれる資金生成単位又はそのグループの資産の帳簿価額を大幅に上回っていることから、減損テストに用いた主要な仮定が合理的な範囲内で変更されたとしても、当該資金生成単位又はそのグループの回収可能価額が帳簿価額を下回る可能性は低いと考えています。仮に税引前割引率が245.8%上昇した場合又は将来キャッシュ・フローの見積額が68.5%減少した場合に減損損失が発生する可能性がありますが、今後5年間の成長率がゼロであった場合でも回収可能価額はのれんが含まれる資金生成単位又はそのグループの資産の帳簿価額を十分に上回るため、減損の可能性は低いと考えています。

 当社グループでは、のれんの減損に係るリスクを逓減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取組を実施しています。

 

・緻密な出店戦略による収益構造の最適化

 前述の「(4)①有利子負債について ・収益性を重視した戦略立案と経営管理」にて説明しましたとおり、当社グループの新規出店は緻密なマーケティング、十分な需要予測や採算性の評価を特徴としています。これにより、人件費の最適化、稼働率の向上等、費用構造の最適化を目指しています。今後も、緻密なマーケティング、十分な需要予測や採算性の評価を出店戦略の根本に据え、引き続き、売上収益の拡大及び利益率の向上に努める方針です。

・集客手法の工夫による受注組数の増加

 スタジオ事業は、インターネット利用の増加とともに、顧客によるウェブ検索が増加傾向にあり、SNSを中心とした新たな情報発信手段の台頭等、当社グループを取り巻く事業環境は変化してきています。こうした変化を捉え、当社グループでは、紙面広告、ウェブ広告やその他メディアを利用した集客から店舗における接客、サービスの提供まで各部門を一気通貫したPDCAサイクルを運用し、受注組数の増加に努めています。

 

 ただし、これらの取組が十分ではなく、のれんの対象となる事業の収益力が低下し減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 14.非金融資産の減損」をご参照ください。

 

③投資に伴う減損リスクについて

 当社グループの所有する固定資産は将来の収益を生み出すことを前提に資産として計上しています。しかしながら、事業環境や競争状況の変化等により期待する成果が得られない場合には、減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④賃貸借による店舗展開について

 当社グループは、当連結会計年度末現在の建物賃貸借契約により賃貸人に差し入れている敷金及び保証金を541,749千円計上しています。この資産は、賃貸人の財政状態が悪化し、返還不能になったときは、賃料及び解体費用との相殺ができない範囲において貸倒損失が発生し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤株式会社MIXIとの関係について

 当社は、株式会社MIXIが主要株主である筆頭株主であり、当連結会計年度末現在において、当社発行済株式総数の27.03%を保有しています。株式会社MIXIの今後の当社株式の保有方針によっては、当社株式の流動性や市場価格等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥新株予約権による株式の希薄化について

 当社グループでは、役員、従業員等を対象として、業績向上に対する意欲・士気向上、及び優秀な人材の確保のため、ストックオプション制度を採用しています。

 これらのストックオプションの行使が行われた場合には、発行済株式総数が増加することにより1株当たりの株式価値が希薄化し、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

⑦配当について

 当社グループは、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識していますが、当面は内部留保の充実を図るため、当社は設立以来、配当を実施していません。将来的には、業績を勘案しながら株主への利益の配当を目指していく方針です。現時点において配当実施の可能性及びその実施時期につきましては、未定です。

 

⑧M&Aについて

 当社グループでは、新規事業やサービスの拡大のため、M&Aを有効な手段のひとつに位置付けており、今後も必要に応じてM&Aを実施する方針です。

 M&Aに際しては、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針です。しかしながら、これらの調査段階で想定されなかった事象が、M&A実行後に発生する場合や、事業展開が計画通りに進まず当初期待した業績への寄与の効果が得られない場合、実施後の業績未達等によるのれん等の減損が発生した場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、本書提出日現在において具体的に計画している企業買収や資本提携等の案件はありません。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、設立以来配当を行っていませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しています。当社は現在成長過程にあり、当面は内部留保を確保しつつ、事業規模の拡大や収益力の強化のために優先的に投資することが、将来における企業価値の最大化と、継続的な利益還元に繋がると考えています。

 今後の剰余金の配当につきましては、内部留保の確保とのバランスを考慮した上で実施していくことを基本方針としていますが、当面は内部留保を優先し、さらなる事業の強化を図っていく方針です。

 配当実施の時期につきましては未定です。

 また、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本方針としており、配当の決定機関は株主総会となっています。なお、当社は会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めています。