2023年8月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社の財政状態、経営成績等に与える影響の内容については、合理的に予見することが困難であるものについては具体的には記載しておりません。

当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であり、リスク管理体制として取締役執行役員CFOを最高責任者とするリスクマネジメント委員会を設置しております。管理部管掌の取締役執行役員CFOの下、管理部が中心となり重要リスクを特定し、当該委員会で審議のうえ、対策を講じております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境に関わるリスク

① 競合状況について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループが属するデジタルトランスフォーメーション(DX)市場は、その市場の拡大とともに競合他社の参入が増加しており、一定の競争環境があるものと認識しております。今後、低価格で優れたサービスを提供する競合企業、又は大きな資本力で優秀な人材獲得を行う競合企業が現れた場合、プロジェクト獲得や人材獲得競争等の競合状況の激化により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

当社グループは、拡大するDX市場に向けて、積極的な広報活動に加え、マーケティング活動の強化を行ってまいりました。今後は継続的にマーケティングの実施体制をさらに拡充し、マーケティング活動の分析活動・効果検証による改善活動の実施、アライアンスによる新規案件の創出、事例発信の強化、ナーチャリングの強化等についても取り組み、さらなるプロジェクトの提案機会を獲得してまいります。

また成長するDX市場における新たなニーズ(戦略策定やマネタイズ設計、組織支援等)に応え、顧客企業の課題解決にさらに貢献していくためには、提供するソリューションの領域を拡張させ、幅広いサービス提供を可能にすることが重要と考えております。そのため、当社グループでは、UXデザイン領域を軸に「デザイン×事業戦略」、「デザイン×組織」、「デザイン×CXテクノロジー」、「デザイン×ブランド」に事業領域を拡げ、各領域に適した内部組織を設計し、高品質なソリューション提供による競争力の強化を目指してまいります。

 

② DX市場の成長性について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、デザインパートナー事業を中心にDX市場に属しております。デジタルトランスフォーメーション(DX)は企業価値向上を実現する重要な経営課題の一つと位置付けられ、企業のDX戦略の策定及び推進体制の構築が進み、各部門や現場に合わせた具体的なDX施策に向けた本格的な投資に伴い、DX市場は拡大することが見込まれます。

しかしながら、当社グループの想定を上回る景気悪化等により長期的に市況が低迷した場合は、デザイン支援プロジェクトに対する問い合わせ減少やプロジェクトの終了又はプロジェクト稼働人数縮小に伴い品質が低下するなど、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

当社グループは、企業がDXを成功させるために、急速に変化する顧客の環境を意識しながら柔軟な思考で最適なサービス設計を行うという、UI/UXデザインに直結する要素が欠かせないと考えております。当社グループでは、UI/UXデザインにおける強みを活かし、特に大手企業のDX戦略の実行に際しデザインを活用し支援する活動を推進しております。プロジェクトの実施において、プロジェクトの課題解決を出発点とし、顧客企業の発展に貢献する取り組みやアイデアを積極的に提案し、プロジェクト関係者にとどまらず、顧客企業の経営層や意思決定者層も巻き込んで対話を進め、顧客企業と長期的な関係を築いてまいります。

 

 

(2) 事業内容に関わるリスク

① デザイナー人材の確保と育成について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループでは、当社の持続的な成長のためには、継続的に優秀なデザイナーとなりうる人材を確保し、かつ長期的に活躍してもらう仕組みを整備することが重要な要素であると認識しております。しかしながら、当社の想定を超える人材市場の逼迫や業務拡大・業務内容の変化のため、育成や採用が想定の通りに進まず、適正な人材配置がなされない場合、退職による人材流出が想定を上回った場合には、プロジェクト量の縮小やプロジェクト品質低下など当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また労務環境が悪化した場合には、従業員の心身の健康が保てなくなり、労働生産性の低下や人材流出につながる可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

既存事業の需要拡大を見据えた計画的なデザイナー人員の採用・育成を計画しております。「ReDesigner」等の運営によりデザイナー人材の市場動向を迅速に把握することや、採用チャネルの拡充や採用人員の増加等のデザイン人材採用を強化するとともに、社内にてデザイナーとしてのスキル向上を図るための体系的なデザイン研修等を実施し人材開発を推進してまいります。また、従業員が自身の成長へ取り組めるよう、品質向上のためのナレッジ共有やeラーニング研修などの福利厚生等を整備し、ジュニアメンバーを含む全従業員の成長を促すように努めております。加えて、働き方や価値観の多様化に対応しDE&Iの推進や健康経営の推進を行い、副業制度等の人事制度の構築やフルフレックス制度、リモート勤務等の労務環境の整備を実施し、従業員の心身へのケア、労働生産性低下防止、人材流出の予防に努めております。

 

② M&Aの実施について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、M&Aによる戦略的投資を推進し、デザインパートナー事業のケイパビリティ強化(強みの拡大)をはじめとした既存事業の強化、事業間シナジーの強化、新規事業機会の創出等により成長を図りたいと考えております。当該推進については、対象企業の顧客、業績、財政状況、競争優位性、当社グループ事業とのシナジーやリスク分析結果等を十分に考慮した上で進めてまいります。しかしながら、M&A後に未認識債務の判明や偶発債務の発生等事前の調査で把握できなかった問題が生じること等が発生する際には、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

当社グループでは、「デザイン領域と親和性の高い開発領域の企業」、「顧客サービス運用支援を行う企業」等、開発及びグロース領域に位置する企業を検討対象としており、M&Aを実施する場合には、対象企業の峻別を図ってまいります。

また、当社グループのデザインノウハウ及びデザイン人材を活用し、中長期的視点で成長が見込まれる企業についても、併せて検討対象とすることといたします。また当該対象企業については外部機関を活用した十分な調査の実施、対象となる企業の財務内容や事業についてデューデリジェンス、買収メリット等を総合的に勘案し検討してまいります。

 

③ プロジェクト提供品質の管理について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

デザインパートナー事業におけるプロジェクト推進にあたっては、当社のデザイナーによるデザインプロセスの遂行状況やアプリやウェブページ等のデザイン品質の提供状況をスキルに定評のある上位職のデザイナーが確認しながら進める管理体制を採用し、プロジェクトの提供品質を確保しております。しかしながら、上位デザイナーのリソース確保が十分に行われない場合、プロジェクトの提供品質にばらつきが生じ、顧客満足に影響を及ぼし、当社のブランドを棄損する可能性があり、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

稼働中のプロジェクト品質及び上位デザイナーの監修リソース、その他デザイナーの稼働把握を目的に、管理役職者らを中心に、週次単位でのプロジェクトメンバーヒアリング、ヒアリング結果を基にプロジェクト状況の評価を全プロジェクト対象に実施しております。また、社内の品質評価だけでなく、顧客満足度をパートナー企業へヒアリングし、品質基準と顧客満足度の改善にも努めております。

 

 

④ 技術革新について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、インターネット関連技術に基づいて事業を展開しております。当該領域は技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が極めて速く、それらに基づく新機能や新サービスの導入が相次いで行われる変化の激しい市場であります。このような環境の中で、当社グループは、最新技術の開発を率先して行っております。しかしながら、今後何らかの革新的な技術が開発され、当社グループの対応が遅れた場合や、そのような革新的な技術に対応するために多額のシステム開発費用が追加的に発生する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

最新技術に関する情報収集や試用、技術への深い理解をもつ有識者の採用を積極的に行っており、従業員がナレッジとして、情報集約したのち、全社へと公開・共有することで、技術革新のトレンドを収集、激しい環境変化への順応を実現しております。

 

⑤ 資産の減損リスクについて

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループが保有する有形固定資産及びM&Aに伴い発生するのれんや無形資産等は減損リスクにさらされております。今後、当社の想定を上回る景気悪化、市況の低迷、競合状況の変化等により、保有する固定資産から得られる将来キャッシュ・フローの状況等が悪化し、経済価値が著しく低下した場合には減損処理が必要となります。こうした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

当社グループが保有する上記の有形固定資産は営業活動において使用するオフィス設備やPCが主なものであります。従って、当社グループの事業運営において、収益力の維持向上を図ることが当該リスクの低減につながるものと考えております。本稿記載の各種[リスクへの対応策]を講じ、収益力の維持向上に努めてまいります。

また、のれんや無形資産等については、当社から連結子会社等へ役員を派遣し経営参画するなど、連結子会社等の業績の適時把握や収益性改善施策の実施、管理体制の強化、当社とのシナジーの醸成等を行い、収益性向上に努めております。

 

⑥ 新規事業の立ち上げについて

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、デザインの価値を引き上げるために複数の新規事業又はサービスを企図しております。新規事業を立ち上げる場合、安定した収益獲得までには一定の時間がかかることが想定され、その間、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、新規事業の採算性には不透明な面も多く、予想通りの収益が獲得できない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

新規事業への投資にあたっては、当社グループの各事業とのシナジー、事業計画等を慎重に調査・検討し、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合に実行をしております。また、新規事業への投資後は、事業の推移等を定期的にモニタリングし、計画の修正や再生等が必要な場合には、取締役会又は経営会議にて審議を行っております。

 

 

(3) 事業運営体制に関わるリスク

① 特定人物への依存について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社代表取締役社長の土屋尚史は、デザインパートナー事業開始以来当社グループの事業推進において重要な役割を担ってまいりました。同氏は、多数の企業へのデザインプロジェクトの経験からデザインのビジネスへの展開において豊富な経験と知識を有しております。急な病や事故、そのほかの理由により、同氏が経営執行を継続することが困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

当社グループでは、取締役会等において役員及び従業員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。また代表からの説明機会や従業員と代表間の学習機会を開催し、土屋の経験と知識を全社へと還元する取り組みを行っております。

 

② 内部管理体制について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、未だ成長途上にあると考えており、今後の事業及び経営成績を予測する上で必要な経験等が十分に蓄積されていないものと考えております。当社グループの事業運営において、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、管理体制の整備と連携強化、及び体制拡大のための人材確保・育成へと取り組んでおります。

 

③ 情報管理体制について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。不正アクセス、コンピュータウィルスの侵入、情報セキュリティの欠陥等により重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社の社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生、ブランドの毀損等により、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

これらの情報資産を保護するため情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。また、当社は従業員への教育、アクセス権限の設定、アクセスログの管理等、情報漏洩のリスクの回避を図っております。

 

④ コンプライアンスについて

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループは、ブランド価値を向上させ、企業価値の持続的な拡大を図るにはコンプライアンスが重要だと認識しております。現時点では特段のリスクは顕在化しておりませんが、当社グループの役職員がコンプライアンスに違反する行為を行った場合は、当社グループの信用が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

コンプライアンスに対する従業員の理解を深めるため、入社時の説明、役員・管理職への教育活動、など啓蒙活動を徹底しております。また内部通報用のホットラインを監査役・法務宛に設置し、いつでも通報・対応することが可能な体制を整え、早期にコンプライアンス違反の発見と適切な対応を可能にしております。

 

 

(4) 法的規制及び知的財産等に関するリスクについて

① 法的規制の変更等について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

デザインパートナー事業では、受託案件の一部を他社へ委託することがあり、その場合は下請代金支払遅延等防止法の規制を受けることとなります。また、デザインプラットフォーム事業では、「ReDesigner」において職業安定法、オンラインホワイトボードツール「Strap」において電気通信事業法、プロトタイピングツール「Prott」において電気通信事業法及び特定商取引に関する法律の規制をそれぞれ受けております。

特に、「ReDesigner」は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣から許可を受けておりますが、当該事業活動の継続には有料職業紹介事業の許可が不可欠であるため、何らかの理由により許可の取り消しがあった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当該許可の取り消しとなる事由は職業安定法第32条の9において定められており、当社グループが認識している限りでは、当該許可の取り消しとなる事由に該当する事実はありません。なお、当社グループが保有している有料職業紹介事業許可の許可番号及びその取得年月は以下のとおりです。

 

所轄官庁等

許認可等の名称

許可番号

取得年月

有効期限

厚生労働省

有料職業紹介事業許可

13-ユ-309448

2021年5月1日

2026年4月30日

 

 

今後、新たに当社のデザインプラットフォーム事業に関する規制等の制定等又は改正が実施された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

当社では、コンプライアンス経営の確立に努め、顧問弁護士等を通じて、新たな規制の情報を直ちに入手し、影響を検討・対応する体制や法務担当者による法令適合性の審査や、契約書のリーガルチェック、法令違反の発生を防止する社内管理体制を構築し、法律、条例、関連諸規則等の遵守体制を強化しております。

 

② 知的財産権について

[リスクの内容と顕在化した際の影響]

当社グループが使用する商標、ソフトウェア、システム等について、現時点において第三者の知的財産権を侵害するものはないと認識しております。万が一、第三者の知的財産権を侵害した場合は、当該第三者より、損害賠償請求、使用差止請求等が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

[リスクへの対応策]

顧問弁護士へと相談する体制を整え、侵害を回避するための法務担当者による著作権等の監視、管理等を行っていく方針であります。

 

(5) その他

配当政策について

当社グループは、内部留保の充実よりも迅速な事業拡大を図ることが重要であると考え、創業以来配当を実施しておりませんが、今後については株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。当社は未だ成長過程にあると考えており、さらなる内部留保の充実を図り、経営体質の強化、事業拡大のための投資等に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。現時点においては配当の実施及びその時期については未定でありますが、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。

 

 

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、配当に関しては年1回の期末配当及び業績に応じて中間配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

ただし、当社は、財務体質の強化と事業拡大のための内部留保の充実等を図ることが重要であると考え、創業以来配当を実施しておりませんが、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。当社は未だ成長過程にあると考えており、さらなる内部留保の充実を図り、経営体質の強化、事業拡大のための投資等に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。

現時点においては配当の実施及びその時期については未定でありますが、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。