2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況、キャッシュ・フロー等に影響を与え、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事業等のリスクは以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです

 

<リスク管理体制>

取締役会の下に、コーポレートガバナンス委員会を設置しています。コーポレートガバナンス委員会は、コンプライアンスの徹底やリスク管理に関する施策を展開し、また、関係部門との連携により組織横断的な課題への取組みを推進しています。

詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

 

 


 

<事業等のリスク>

(1) 事業に関するリスク

 ① 気候変動及び低炭素社会への移行

気候変動リスクは、日本及び世界各国で、社会面、規制を含む政治面での関心が高まっています。これらのリスクには、低炭素社会への移行リスク及び気候変動による物理リスクが含まれます。

低炭素社会への移行リスクのうち、当社グループが特に重要度の高いリスクと認識しているものは、自動車のCO2・燃費規制の強化に伴う罰金発生や販売機会の逸失、規制遵守のための研究開発費用の負担増加等、及び炭素税等の導入・強化に伴う操業コストの増加等です。これらは、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、お客様の嗜好や投資家行動の変化による企業価値低下等の可能性があります。

気候変動の物理リスクには、平均気温の上昇に伴うエネルギーコストの増加等、及び水資源リスクの変化に伴うサプライチェーンの停滞や生産コストの増加等の長期的な気候変動による影響と、自然災害の頻発・激甚化に伴う事業拠点の被災や事業活動の停止等の突発的な気象変化による影響の両方が含まれます。突発的な気象変化に対応すべく、水災に特化したBCPの策定に取り組んでおりますが、気候変動の物理的リスクは当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動への対応」をご参照ください。

 

 ② 新商品の開発・投入力

お客様のニーズや自動車を取り巻く環境の変化に迅速に対応し、お客様に満足していただける魅力的な新商品を市場に投入するために、継続的な技術革新と商品開発に取り組んでいます。これには、環境性能の向上や先進技術の導入など、将来に向けた開発力の強化が含まれます。また、優秀な人材の確保と育成、効率的な生産体制の構築、部品調達の最適化など、幅広い分野での取組みを進めています。

しかしながら、国内外の景気低迷による需要減少、環境性能への要求の高まり、先進技術搭載車の普及など、市場の急激な変化を的確に捉え、新商品を適時に開発し市場に投入することができなければ、販売シェアや売上の低下の可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

 

 ③ コンプライアンス

当社グループでは役員及び従業員が健全に職務を遂行するための「スズキグループ行動指針」の制定、コーポレートガバナンス委員会の設置、業務に関連する法令等の遵守、承認・決裁手続、他部門による確認手続の定めを含む業務規程・マニュアル類の整備、コンプライアンス研修や個別の法令等の研修の実施、内部通報窓口(スズキグループ・リスクマネジメント・ホットライン)の設置など、法令等の遵守については違反の未然防止の対策並びにコンプライアンス案件に速やかに対応する体制を講じています。

しかしながら、不測の事態により法令違反の事実や不十分な対応があった場合、当社グループの社会的信用に重大な影響を与える場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④ 人材確保及び人材育成

電動化技術、先進安全技術、デジタル技術の強化等の専門領域の人材を中心として、日本国内のみならずインドを含め、これまで以上に積極的な採用を行うとともに、採用後の人材育成にも力を入れています。また、社員一人ひとりの学びの機会を増やし、挑戦と行動を支え、個の職務能力を向上させることで、会社の創造価値を高めていく環境を整えるため、2024年4月より人事制度を全面的に刷新しました。さらに、様々な個性や価値観を持つ従業員が個々の能力を十分に発揮できるよう、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障がいの有無等の多様性を尊重するとともに、分け隔てなく公平に登用し、働きやすい職場環境の整備に努めています。

しかしながら、労働市場のひっ迫や人材獲得競争の激化等により、人材の確保ができない場合、人材の育成が不十分な場合や、従業員の多様性が尊重された職場環境が実現できない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本に関する取組」をご参照ください。

 

 

 ⑤ 取引先からの部品調達

技術力、品質、価格競争力などの要素を総合的に踏まえ、部品調達先を分散し、安定した調達に向けた取組みをしています。

しかしながら、部品によっては調達が特定の取引先に依存している場合や、当社グループが一次取引先を分散していたとしても、一次取引先が部品調達を二次以降の特定の取引先に依存しているものがあります。これらの部品について、市況、災害、経済安全保障の動向、人権侵害の発覚等により、継続的・安定的に確保できない場合、当社グループの生産に遅延や休止又はコストの増加を引き起こす可能性があります。その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑥ 人権侵害

当社グループは、国際的なビジネスを展開する中で、サプライチェーンにおいて人権尊重の原則に基づいた活動を行っています。

しかしながら、当社や製造・非製造子会社、販売子会社を含むグループ会社のみならず、取引先やその二次取引先以降も含むグローバルなバリューチェーン全体の労働環境や人権状況に関する完全な管理は困難であるという課題があります。児童労働や強制労働、差別的な労働慣行、労働者の健康と安全に関する問題などの人権侵害は、法的な責任や罰金、賠償責任などの経済的な損失などに加え、ブランドイメージの損傷やお客様からの信頼喪失などの当社グループの社会的信用に重大な影響が生じることにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑦ 品質保証

当社グループは、高品質な製品づくりを重要な経営課題の一つとしており、中期経営計画の中でも優先度の高い取組みとして掲げています。

しかしながら、大規模なリコール等が起こった場合、多額のコストとして品質関連費用が発生することに加え、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑧ 情報セキュリティ・サイバーセキュリティ

当社グループは、事業活動全般にわたり、電子データを用いた設計開発、生産、販売、会計などの作成・処理・蓄積を行っており、これらのシステムは適宜更新・変更されています。また、製品には多様な電子制御装置が組み込まれており、これらは車両や装備の制御に不可欠です。これらのシステムと装置には安全対策が施されていますが、それでもなお、ハッカーやウィルスによるサイバー攻撃、システム障害、インフラの停止などのリスクが存在します。サイバー攻撃は特にその脅威が増しており、過去には当社海外子会社が標的とされた事例もあり、同様の事態が発生した場合には業務の中断、データの破損や喪失、機密情報の漏洩などが起こり得て、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、個人情報や経営・業務・技術に関する機密情報の保護に努めていますが、予期せぬ事態によりこれらの情報が流出したり不正に使用されたりすることがあります。そのような場合、法的請求、訴訟、賠償責任、罰金の支払いなどが生じ、これもまた当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑨ 特定の事業及び市場への集中

当社グループは、当連結会計年度において連結売上高のうち、インドでの売上高が四輪事業・二輪事業・その他含めたインド事業全体にて4割強を占めています。

しかしながら、これら事業に関わる需要や市況、同業他社との競争等が予測し得る水準を超えた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑩ 他社との提携

当社グループは、研究開発、生産、販売、金融等、国内外の自動車メーカーをはじめ、他社と様々な提携活動を行っていますが、提携先固有の事情等、当社グループの管理できない要因により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 市場に関するリスク

 ① 経済情勢の変化、市場の需要変動

長期間の景気低迷、世界経済の悪化や金融危機、お客様の購買意欲低下は、四輪車、二輪車、船外機等の当社グループ製品の需要の大幅な低下につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、世界各国において事業を展開しており、特に、アジア地域の新興国を中心とした海外生産工場への依存度も年々高まってきています。これらの市場での経済情勢の急変などの不測の事態や、各国の税制や金融政策などの予期せぬ変更や新たな適用があった場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 他社との競争激化

当社グループは、競争力の維持・向上のための施策に取り組んでいますが、事業を展開する世界各国の市場において他社との競争にさらされています。世界の四輪車・二輪車・船外機産業の国際化及び異業種参入が今後ますます進展することによって、競争はより一層激化する可能性があります。製品の品質、安全性、価格、環境性能等のほか、製品の開発・生産体制の効率性や販売・サービス体制の整備、販売金融など様々な項目において優位に競争することができなくなった場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金融・経済のリスク

 ① 為替及び金利の変動

当社グループは、日本から世界各国へ四輪車、二輪車、船外機並びにそれらの部品などを輸出するとともに、海外の生産拠点からも、それらの製品や部品を複数の国々へ輸出しています。現在では連結売上高に占める海外売上高の割合は7割を占め、特に新興国を中心とした海外生産工場への依存度が高いことから為替変動の影響を受けやすく、為替変動リスク軽減として為替予約等のヘッジや、生産拠点を分散してグローバルに最適化を図るなどの対策を行っています。また資金の多くを低金利が続く日本で調達していることから金利変動影響を受けやすく、金利変動リスクの軽減として借入期間など借入方法の多様化に取り組んでいます。

しかしながら、全てのリスクをヘッジすることは不可能であり、為替及び金利の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 原材料・部品価格の変動

原価低減活動の実施や在庫調整などによる収益改善の取組みを実施していますが、原材料及び部品の購入価格の上昇は、製品コストの上昇につながり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 政治・規制・法的手続・災害等に関するリスク

 ① 政府規制等

排出ガス、燃費、騒音、安全性及び製造工場からの汚染物質排出レベルに関する法規制に対応するため、環境技術の開発や製品の改良、及び事業活動における化石燃料資料の削減に積極的に取り組んでいます。また、消費者保護、労働規制、独占禁止法令など、国内外の広範な法規制に適応するためのコンプライアンス体制を強化しています。

しかしながら、これらの規制の改正により費用負担が増加した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 知的財産の保護

当社グループは、他社製品との区別化のため、技術・ノウハウ等の知的財産を蓄積しており、その保護の対策を講じるとともに、第三者の知的財産権侵害防止の対策を講じています。

しかしながら、当社グループの知的財産が不法に侵害され、あるいは第三者から知的財産侵害の指摘を受け訴訟、製造販売の中止、損害賠償等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③ 法的手続

訴訟リスクや法的手続きに対応するため、関連法規に基づく調査にも迅速かつ適切に対応しています。

しかしながら、現在進行中の訴訟や将来発生する可能性のある法的手続において、不利な判断が下され罰金、損害賠償金が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④ 世界各国での事業展開

当社グループは、世界各国において事業を展開しており、また、いくつかの国においては、その国の法律上又はその他の要件に従い、現地企業との間で合弁による事業を行っています。これらの事業は、各国の様々な法律上その他の規制(課税、関税、海外投資及び資金の本国送金に関するものを含みます。)を受けています。これらの規制、又は合弁相手の経営方針、経営環境などに変化があった場合は、当社グループの業績及び財政状態に対して悪影響を及ぼす可能性があります。

また、多くの政府は、関税の賦課や、価格管理規制及び為替管理規制を定めています。当社グループは、これらの規制を遵守するために費用を負担してきており、今後も負担することになると予想しています。新たな法律の制定又は既存の法律の変更によっても、当社グループが更なる費用を負担する可能性があります。さらに、各国の税制や景気対策等の予期せぬ変更や新たな適用が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑤ 自然災害・パンデミック・戦争・テロ・ストライキ等の影響

日本では、地震、台風、洪水などの自然災害や原子力発電所の予期せぬ事故など様々なリスクにさらされています。特に、当社の本社をはじめとする主要施設や研究開発拠点、主要生産拠点は周期的な巨大地震が発生する可能性が高い静岡県に集中しています。当社グループでは、東海地震・東南海地震などの自然災害による被害の影響を最小限に抑えるべく、建物・設備等の耐震対策、防火対策、事業継続計画の策定、地震保険への加入等、様々な対策を講じていますが、災害等の規模がその想定を超える場には当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

海外においても、当社グループは世界各国において事業を展開しており、海外での事業展開に関連する様々なリスクにさらされています。

これら国内外のリスクには自然災害、パンデミック、戦争、テロ、ストライキ、さらには政治的・社会的な不安定性や困難に起因するもの等があります。これらの予期せぬ事象が発生すると、原材料や部品の調達、生産、販売及び物流やサービスの提供などに遅延や停止が生じる可能性があります。これらの遅延や停止が起こり、長引くようであれば、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、継続的かつ安定的な配当を行う累進配当政策を基本方針としています。

剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としています。配当の決定機関は、定款に基づき、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

当連結会計年度の年間配当金は、累進配当の基本方針のもと、前連結会計年度22円増配の1株当り122円とさせていただきました。この結果、期末配当金は、中間配当金として1株につき55円をお支払いしておりますので、1株につき67円となります。

内部留保資金の使途につきましては、持続的な企業価値の向上のため、成長投資を継続していくこととしております。

 


 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月7日

取締役会決議

26,530

55

2024年6月27日

定時株主総会決議

32,319

67