2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 (1) 海外市場への事業展開について

 当社グループは、日本、米国、韓国、中国、タイ、欧州、豪州に会社を設立してグローバルに事業展開を行っております。各国の市場において特徴があり、経済情勢、諸法令、慣行、慣例等により事業計画の大幅な変更や遅延が生じる可能性があります。

 

 ①韓国市場での事業展開について
 当社は、1979年2月に韓国GMB工業株式会社(現GMB KOREA CORP.以下、韓国GMBという。)を設立し、その後当社が1991年12月に81.7%出資・設立しておりました韓国ベアリング株式会社を、韓国GMBが吸収合併することで、当社の韓国GMBに対する持分比率が53.9%となりました。さらに2008年6月の株式追加取得、2012年11月の韓国証券取引所への株式上場と公募増資、2013年8月の株式追加取得を経て持分比率は54.4%に至りました。今後も韓国の法規則・慣行等により、当社グループの事業計画に影響を受ける可能性があります。

  また、韓国GMBは現代自動車グループへバルブスプールや電動ウォーターポンプ等の自動車部品のOEM供給を行っており、現代自動車グループへの販売比率は2024年3月期連結売上高に対して、32.5%となっております。現代自動車グループは近年海外生産・販売を拡大しており、当社グループにおいても、現代自動車の海外展開とともに、海外投資を検討する案件が増加してまいります。今後の現代自動車グループの事業動向により、業績に影響を受ける可能性があります。

 

 ②中国市場での事業展開について
 中国では、青島吉明美机械制造有限公司、青島吉明美汽車配件有限公司、吉明美(杭州)汽配有限公司、吉明美汽配(南通)有限公司の4社を有しております。経済成長を続ける中国経済では、人件費の上昇などによる生産コストアップが懸念されています。さらに、外資企業に対する優遇税制の改正や環境規制強化などの政策変更によって影響を受ける可能性もあります。そのような環境の中でも、自動車産業が発展中の中国で事業活動を維持・拡大することは、グループとしての事業拡大と価格競争力強化にとって効果のあるものと判断しておりますので、引き続き中国子会社の効率的運営と販売・調達先の開拓に取り組んでまいります。このような急激な環境変化によって、当社グループの事業展開、業績に影響を受ける可能性があります。

 

 ③米国補修用部品市場での事業展開について
 米国には販売子会社GMB NORTH AMERICA INC.を有しており、補修用部品においても重要な市場と位置付けております。近年、米国では中国製の自動車部品等が、低価格を武器とした価格引下げ競争を激化させており、低価格製品を大規模に供給できる業者による寡占化が進んでおります。また、このような大手取引先との取引を継続するためには適時に納品できる在庫と品揃えを維持する必要があります。当社グループとして、生産拠点を中国やタイへ移管したり、当社の品質基準を満たす製品・部品供給先を中国内に求めたりしながら、品質と価格の水準における最適なバランスを追求しつつ適切な在庫水準の維持に努めておりますが、低価格競争の激化や寡占化が進む業界内の競合状況の進展により、今後の業績に影響を受ける可能性があります。

  米国では、最終ユーザー自身で部品交換をするDIY方式も一般的であり、最終ユーザーが取り付けを円滑にできない場合、クレームと称し部品の返品をしてくる事態が多く発生いたします。米国では、大手小売業者においては一旦販売者が買取る慣行にあります。これに対応するため、製品の品質の向上に努めておりますが、大手小売業者との取引高が増加して返品数量が増加する場合には、業績に影響を受ける可能性があります。

 

 ④海外における生産体制について
 当社グループの生産部門は、生産コストを低減できる国での製造及び技術・品質面で日本の技術指導に応えられる国での生産を前提にしております。そのため、韓国、中国、タイ、欧州、米国に順次生産拠点の一部を移管してまいりました。今後、各地域に生産移管を進めていく中で、当社及び韓国GMBからの十分な技術支援が出来ない場合や優秀な技術者が確保できない場合には、事業計画に影響を受ける可能性があります。

  当社グループはグループ各拠点間での製品の競争力と品質の均一化に努めております。そのため海外子会社への支援・指導を強化しておりますが、機械故障などの不測の事態が発生した場合には生産遅延や納期遅延等により、業績に影響を受ける可能性があります。

  グループ内での一貫生産体制の原則を保つ一方で、コスト競争力に劣ると判断する場合には、当社グループ以外から一部の製品や部品を調達することも推進しており、当社グループが認める品質水準を維持できる海外調達先を開拓しつつあります。この計画の推進状況により、業績に影響を受ける可能性があります。

 

 ⑤海外での商標権の管理について
 当社グループは特許権や商標権等の世界各国の知的財産権を当社で原則管理しており、50の国または地域において商標権の登録をしております。しかし、アジア地域などではGMBの偽ブランドの自動車部品等も出回っております。今後も商標権保護を積極的に実施してまいります。

 

 (2) 為替変動について

 当社グループの2024年3月期連結売上高に占める海外売上高の比率は90.8%となっております。当社におきましても、直接輸出による売上高は49.0%と高い比率であります。当社は、為替変動への対策として、取引通貨バランスの改善、円建て取引の増加、海外調達の拡大、生産の海外移転の推進や為替予約等により、総体的な為替リスクの軽減を図っております。グループ各社においても取引通貨バランスの改善や現地生産・調達の強化等の為替リスク軽減を図っております。しかしながら、急激な為替変動により、業績に影響を受ける可能性があります。

 

 (3) 製品の品質について

 当社グループは、お客様に信頼される製品の品質保証体制を構築することで品質の維持と向上に努めております。しかしながら、すべての製品に欠陥がなく、将来にリコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。また、万一のリコールや製造物責任賠償が発生した場合に備え保険に加入しておりますが、最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコスト負担や当社グループの社会的評価の悪化により、業績に影響を受ける可能性があります。

 

 (4) 自然災害・戦争・テロ・感染症等について

 当社グループおよび主要な取引先の拠点の所在地域において、予期せぬ自然災害・戦争・テロ・感染症等が発生した場合、生産・調達・販売などの事業活動の停滞や中断による影響を受ける可能性があります。事業継続計画の整備等の対策を通じてリスク低減に努めておりますが、完全にリスクを回避することは困難であり、業績に影響を受ける可能性があります。

 また、当社グループはロシアに連結子会社を有しており、2022年2月に開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻により翌3月以降、工場の稼働を停止しておりましたが、顧客が事業を現地企業に譲渡したことに伴い、譲渡先に対して納入契約が残存する部品の供給を継続するため、2024年より限定的な稼働を再開いたしました。引き続き、顧客動向や現地の社会経済状況を慎重に注視しながら慎重に対応を進めますが、今後の戦闘地域の拡大や紛争の長期化、ロシアに対する経済制裁等により業績に影響を受ける可能性があります。

 

 (5) 情報セキュリティリスクについて

 当社グループは、サイバー攻撃やインターネット環境に大きな影響を与えるような事象等により、社内システムに障害が発生し、基幹システムや通信システムが停止する場合は、生産・販売・財務経理などの業務活動が中断し、顧客に製商品を供給できないなど、業績に影響を受ける可能性があります。また、取引先情報や技術情報等の重要情報が漏洩した場合は、顧客等に対する賠償責任の発生や信頼性の低下など、業績に影響を受ける可能性があります。このような事態に備えて、ウイルス対策ソフトの導入、ネットワーク環境のセキュリティ強化、挙動検知に関する製品やバックアップシステムの導入など被害拡大防止と迅速な復旧体制の確保、従業員に対する教育等の対策を実施しております。

配当政策

3【配当政策】

 当社は2027年3月期を最終年度する中期経営計画を策定し、当期よりスタートしております。その中で株主還元を強化する一環として、配当方針を見直し「将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、年間40円を最低配当金とし、2027年3月期までに連結配当性向25%を目標とする配当を実施する。」と明確化いたしました。

 また、当社は中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これら剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 2024年3月期の配当につきましては、1株当たり30.0円の配当(うち中間配当15.0円)を実施いたしました。この結果、2024年3月期の配当性向は△23.8%(連結配当性向は38.8%)となりました。

 内部留保資金につきましては市場ニーズに応える技術・製品開発体制の強化など、グローバル戦略の展開を図るために有効投資していく方針であります。

 当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月1日

79,461

15.00

取締役会決議

2024年6月21日

79,459

15.00

定時株主総会