2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、以下のようなものがあります。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応を行っていく方針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の記載事項全般を網羅的に検討した上で行ってください。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)景気動向の変動について

 当社グループが提供するサービスは、日本国内の広告市場や国内の消費動向に深く連動しており、係る市場環境の変動に影響を受けます。企業の広告宣伝・広報関連予算や消費者の消費マインドは企業の景況に応じて調整されやすく、景気動向に影響を受けやすい傾向にあり、景況感が悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)インターネット広告市場について

 日本の総広告費は、2023年は7兆3,167億円(前年比3.0%増)と、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大、ウクライナ情勢、物価高騰など国内外の様々な影響を受けつつも、社会のデジタル化を背景に好調な「インターネット広告費」の成長に市場全体が支えられ、前年実績を上回りました。このうち当社の事業が属するインターネット広告市場は、2023年においても3兆3,330億円(前年比7.8%増)となり、社会のデジタル化が進むなか、プラス成長が続きました(出典:株式会社電通「2023年 日本の広告費」)。

 このようにインターネット広告市場は拡大しておりますが、インターネット広告市場の環境整備や新たな法的規制の導入等、何らかの要因によってインターネット広告市場の発展が阻害される場合には、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また当社は、メディアのコンテンツとの親和性が高いネイティブ広告に注力した広告プロダクトを展開しておりますが、インターネット広告市場においては、広告配信手法や販売メニューが多様化し、競争が激化する傾向にあり、インターネット広告において革新的な販売メニューや広告配信技術が出現した場合、ネイティブ広告への需要が縮小することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)食関連領域の市場について

 外食産業の市場規模は、1997年をピークに減少傾向にあり、2021年以降は新型コロナウイルス感染症への政府・各自治体の対応により、外食の自粛や営業時間短縮など、外食産業を取り巻く環境は厳しい状況が続きました。しかしながら、コロナによる行動制限が緩和から解除へと進み、社会経済環境は「ポストコロナ」へ移行したことで、国内人流や訪日外国人数が回復してインバウンド需要が拡大、年間を通して外食需要の回復基調が継続したことで、2023年の外食産業市場全体の売上は前年比114.1%となりました(出典:一般社団法人日本フードサービス協会「令和5年(2023年)外食産業市場動向調査」)。

 このように外食産業を取り巻く環境は流動的な状況にありますが、食関連領域においては、安政三年(1856年)創業の下鴨茶寮というブランドを基盤とした高単価高付加価値サービスの提供等の差別化に取り組んでおります。その一方で、他社による革新的なサービスの出現などにより、消費者への訴求が十分にできなかった場合、あるいは新型コロナウイルス感染症拡大時の様に消費行動が制限される場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)技術革新について

 インターネット業界においては、事業に関連する技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が早く、それに基づく新サービスが常に生み出されております。また、当社グループの各セグメント領域においても、新しい広告手法やテクノロジーが次々と開発されております。当社グループでは、ChatGPTなど生成系AI技術をメディア運営とコンテンツ制作に応用する研究に取り組む「INCLUSIVE AI Lab」を設立する等、最新技術を取り込んだサービス開発に取り組んでおりますが、これらの変化へ適切に対応できない場合、当社グループの業界における競争力が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)競合環境が激化するリスク

 当社グループの事業領域は規制業種ではなく、また、参入障壁も低い事から、参画企業の増加による競合激化リスクが存在します。また、当社が主にサービスを提供するインターネットサービスは、ユーザーの可処分時間確保の観点からはキュレーションアプリ(注)、あるいは各種SNS等と競合環境にあり、これら競合となり得るサービスはこれからも増加する事が想定されます。

 メディア&コンテンツ領域では、当社が運営を支援するインターネットサービスをネットワーク化し、オペレーショナルシナジーを創出する事で優位性を創出したり、データマーケティングや広告配信面の確保の観点から優位性を確保したりする事で対応してまいります。また、ユーザーの認知確保の観点からは、当社においてもオウンドメディアや各種SNSの運用支援、コンテンツマーケティングやEC関連ソリューションの提供など、サービス提供領域を拡張させることで対策していく方針です。

 企画&プロデュース領域においては、オウンドメディア運営支援や企業ブランドの認知強化を支援するSNS運用支援、デジタルマーケティングにおける内製化支援サービス等、各社のデジタル化を支援する領域に注力していく方針です。

 加えて、食関連領域においては、リアル店舗での高単価高付加価値サービスの提供とブランド力の維持、ならびにEC領域の商品開発力と販促力の強化と自治体や地域生産者などとの話題性のあるコラボレーション販促施策を講じます。

 しかしながら、これらの戦略がうまく進行しない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 (注)キュレーションアプリとは、ウェブ上のコンテンツを収集・集約し、利用者の興味・関心事項に応じたコンテンツを提供していくタイプのニュース配信アプリを指します。

 

(6)新規事業、業務提携や買収等について

 当社グループは、新規事業への挑戦、他社との業務提携や企業買収等が、将来の成長性、収益性等を確保するために必要不可欠な要素であると認識しております。しかしながら、当初想定した成果を得ることができず、のれんの減損や、事業再編等に伴う事業売却損、事業清算損その他これに伴う費用等が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(7)クライアントの離反リスクについて

 当社収益の多くが、当社がコンサルティングサービスあるいはインターネットサービス制作・運営支援サービスを提供するクライアント企業との業務委託契約から発生しております。現時点においては特定のクライアント企業への収益の依存度は高くはなく、業績に大きな影響を与える事業運営状況の変化は想定しておりません。しかしながら、特定のクライアントに対する依存度が増加する状況において、景況の変化やクライアント企業の業績悪化景況が課題になる場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)自然災害等について

 地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、未知の感染症の拡大、国際紛争等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの主要な事業拠点である日本の首都圏において大規模な自然災害等が発生した場合には、サービスの提供等が止むを得ず一時的に停止する可能性もあり、かかる場合当社の信頼性やブランドイメージを毀損するだけでなく、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループにおいては、自然災害等が発生した場合に備え、事業継続計画の策定等有事の際の対応策検討と準備を推進しておりますが、各種災害等の発生による影響を完全に防止できる保証はなく、各種災害等による物的、人的損害が甚大である場合には事業の継続自体が困難又は不可能となる可能性があります。

 地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、未知の感染症の拡大、国際紛争等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)システム障害について

 当社のサービスは24時間稼働での運用を前提に提供されております。システムに障害が発生することはサービスの停止を意味するため、システムの安定性、安全性には細心の注意を払っております。また、インプレッション数(広告の表示回数)の増加を考慮したサーバー設備の強化や、アクセスが集中した際のサーバー負荷分散を施すために、サーバーを分散したり代替機能を強化するなどを行う事で、冗長化を実現しております。

 当社はAmazon Web Services,Inc.が提供するデーターセンターであるAmazon Web Services(AWS)を利用し、大量のデータを安全かつ迅速に処理することができ、かつ一時的な過負荷や部分停止にもトラブルを回避できるようなサーバー構成を施しております。

 しかしながら、災害のほか、コンピューターウィルスやハッキングなどの外的攻撃やソフトウエアの不具合、その他予測できない重大な事象の発生により、万一当社設備やネットワークが利用できなくなった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10)法的規制等の適用について

 メディア&コンテンツ領域および企画&プロデュース領域では、広告主による広告(提供物・サービスそのものだけでなく広告宣伝の文言を含みます。)、メディア(広告媒体)について、法令に則ったものであること、公序良俗に反しないものであることが重要であると考えております。また、食関連領域においては、食の安全性を担保するため、日頃より食品の検査体制の充実等の対策を講じております。

 メディア&コンテンツ領域および企画&プロデュース領域に関連する領域としては、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)、「著作権法」、「商標法」等の法律の他、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が定める「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン」等があります。当社では、これらの法令に抵触しない様、管理体制を構築しておりますが、当社が取り扱うコンテンツや広告、メディアが法令や公序良俗に反し、あるいは法令違反に該当する事象が発生した場合、当社の信用が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 一方、食関連領域においては、「食品衛生法」等があります。食関連サービス提供に当たっては、法令及び各種ガイドラインに準拠した衛生管理を講じておりますが、食中毒事故などが発生した場合、工場及び店舗における原材料等の廃棄処分、営業許可の取り消し、営業停止等の処分を受け、また損害賠償金の負担や信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)当社グループ制作人員ならびに社外の著作者が執筆・制作する制作物について

 当社グループが運営するメディアにおいて掲載するコンテンツ(記事・図版)の多くは、当社グループ制作人員が執筆・制作するほか、社外の著作者に執筆・制作を依頼しております。それらコンテンツが第三者の著作権に抵触していないことについて、当社グループと社外の著作者との間で契約を締結し確認しております。また、当社グループにおいて、著作権等に関する教育や当社グループ役職員によるコンテンツのチェックを行なうことで、執筆・制作されるコンテンツの第三者の権利問題や名誉棄損、事実誤認等を防いでおります。

 しかし、何らかの理由により、そのコンテンツが第三者の権利に抵触していた場合、当社グループ内の編集または社外の著作者の違法行為に関連して当社グループが起訴され、訴訟費用が発生した場合には、当社グループの事業及び業績や社会的な信用に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループが掲載した記事の内容について、特定の企業や個人から損害賠償・クレーム等が発生した場合には、当社グループの事業及び業績、社会的な信用に影響を与える可能性があります。

 

(12)個人情報等の取扱いについて

 当社グループの事業は、個人情報及び個人のプライバシー権を尊重しつつ、インターネットユーザーのCookie情報(注)や独自の識別子を用いた情報等を使用し、ユーザーに有益なターゲティング広告及び情報等の提供を実現しております。当該情報の漏洩を回避するため、「プライバシーマーク」認証の取得、社内規程、業務マニュアル等のルールの整備、社員教育の徹底等により、個人情報を保護する体制の維持に努めておりますが、万一、個人情報の流出が発生した場合、社会的信用の失墜や当該事象に起因する多額の経費発生等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 なお、本書提出日現在では当社グループの事業の阻害要因とはなっておりませんが、今後、欧州での規制をはじめとして、国内でも検討が進められている、大手ウェブサービス提供者による情報の収集と利用について、情報の安全管理や利用目的の明示あるいは第三者提供に対する制限等、個人情報をはじめとしたユーザーデータ利用について更なる規制が行われる可能性があります。この場合インターネット業界全般として、ユーザーに対する広告配信方法が変更となるなど、影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生する場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 (注)Cookie情報とは、Webサイト提供者が、Webブラウザーを通じて訪問者のインターネットデバイス等に一時的に書き込み保存させるデータのことをいいます。保存されたCookie情報を用いることで、同一のWebブラウザーからの訪問であること、訪問日時、訪問回数、Webサイト内での行動履歴などを記録することができます。

 

(13)内部管理体制について

 当社グループは、グループ企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけ、多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

(14)特定の人物に対する依存について

 当社グループの創業者は、代表取締役社長である藤田 誠であります。同氏は、専門的な知識、技術及び経験を数多く有しており、当社設立以来、経営方針や経営戦略の決定等の事業運営において重要な役割を果たしております。

当社グループとしては、特定の役職員に依存しない組織的な経営体制の構築に努めておりますが、専門的な知識、技術及び経験を有する同氏に、何らかの理由によって不測の事態が生じた場合、又は、同氏が早期に退任するような事態が発生した場合には、当社グループの事業展開及び業績等に影響を与える可能性があります。

 

(15)有能な人材の確保・育成について

 当社グループの事業においては、メディア制作に従事するディレクターや編集者、広告・企画のプランナー、あるいは食関連領域の知識を持った人材のほか、各事業分野において専門性を有する人材が必要であり、今後とも業容拡大に応じて継続した人材の確保が必要であると考えております。現時点では人材獲得について重大な支障が生じる状況にはないものと認識しておりますが、今後、各事業分野及び地域における人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、優秀な人材の獲得が困難となる場合又は現在在職する人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題であると認識しております。しかしながら、現在当社は成長拡大の過程にあると考えており、経営環境の変化に対応するため財務体質を強化し、事業拡大の為の内部留保の充実等を図ることが株主に対する最大の利益還元に繋がるものと考えております。このことから過去において当事業年度を含めて配当を実施しておりません。

 将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主への利益還元を検討していく方針であります。

 

(17)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社では、株主価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、役員及び従業員に対して新株予約権を付与しております。本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は335,900株であり、発行済株式総数の3.4%に相当します。

 権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、株式価値の希薄化や株式売買需給への影響をもたらし、当社株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)原材料の調達について

 食関連領域において提供している食材の原材料は多岐に渡ります。このことから、調達先を複数確保し原材料の安定確保に努めておりますが、異常気象や大規模災害、原油の高騰、為替の変動等により、これらの食材の調達が困難になった場合や仕入価格が高騰した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しておりますが、本書提出日現在は成長過程にあると考えており、経営環境の変化に対応するため財務体質を強化し、事業拡大の為の内部留保の充実等を図ることが株主に対する最大の利益還元に繋がるものと考えております。このことから過去において当事業年度を含めて配当を実施しておりません。

 将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主への利益還元を検討していくことを基本的な方針としておりますが、本書提出日現在において配当実施の可能性及び、その実施時期等については未定であります。内部留保資金の使途につきましては、当社の競争力の維持・強化による将来の収益向上を図るための設備投資及び効率的な体制整備に有効に活用する方針であります。

 なお、剰余金の配当を行う場合、期末配当の年1回を基本的な方針とし、配当の決定機関は株主総会となっております。また、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当は毎年9月30日を基準日として取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。