リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあると考えています。なお、当該事項は、本書提出日現在において入手し得る情報にもとづいて判断したものです。
(1) ソニーは収益又は営業利益率の低下につながりかねない一層激化する競争を克服しなければなりません。
ソニーは、業種の異なる複数のビジネス分野に従事しており、さらにそれぞれの分野において数多くの製品・サービス部門を有するため、大規模な多国籍企業から、単一又は数少ないビジネス領域に特化し高度に専門化した企業にわたって、業界の既存企業や新規参入企業などの多くの企業と競争しています。また、潜在的には現在ソニーに製品を供給している企業も競合相手となる可能性もあります。これらの既存の及び潜在的な競合他社がソニーより高度な財務・技術・労働・マーケティング資源を有する可能性があり、ソニーの財政状態及び業績は、当該既存及び新規参入の競合他社に効率的に対抗する能力にかかっています。
ソニーが直面する競合要因は業種により異なります。例えば、エレクトロニクス領域において、ソニーは、競合他社との間で価格や機能を含む様々な要素で競争しています。また、音楽分野及び映画分野では、アーティスト、作詞家、俳優、ディレクター、及びプロデューサーといった才能ある人材ならびに製作・制作、取得、ライセンス、又は配信されるエンタテインメント・コンテンツを得るため競争しています。競合他社との価格競争は、価格の下落に比例して費用が下落しない場合には利益率の低下につながり、また、才能ある人材と魅力的なコンテンツ獲得競争も、そのような才能ある人材やコンテンツの獲得に必要とされる費用の増加を増収により埋め合わせできない場合には、収益力の低下につながる可能性があります。また、生成AIなどの革新的な技術の進化や競合他社による活用等により、既存のビジネスモデルが毀損する可能性があります。さらに、イメージセンサーのように、現在ソニーが強い競争力を有していると考えられる製品においても、競合他社の技術力の向上により、ソニーがその優位性を保てなくなる可能性もあります。また、一般消費者向けエレクトロニクス製品においては、製品に対する消費者の関心が絶えず変化し、例えば、消費電力の低減や、製品や包装材として地球環境に配慮した材料の使用を求めるなど、一層多様化する消費者の嗜好に訴求する製品を作るため、あるいは、消費者の多くが同種の製品をすでに保有しているという状況に対処するために、ソニーはより優れた技術を開発し、消費者の嗜好を予測し、競争力ある価格と特長を有する、魅力的で差異化された製品を迅速に開発する必要があります。ソニーは、様々な一般消費者向け製品において、一層激化する競合他社との価格競争にともなう価格低下圧力の高まり、小売業者の集約化、新規の販売・流通チャネルの構築、及び製品サイクルの短期化に直面しています。音楽分野及び映画分野における業績は、予測が困難である作品に対する世界中の消費者からの支持による影響、ソニーの作品に代わり消費者が利用可能な娯楽及びレジャー活動による影響、ならびに、同時期もしくは近接した時期に公開された他の競合作品による影響を受ける可能性があります。例えば、映画分野では、全米脚本家組合(以下「WGA」)及び映画俳優組合-米テレビ・ラジオ芸術家連盟(以下「SAG-AFTRA」)が2023年に実施したストライキにより中断されていた製作活動の再開にともなって劇場公開作品が増加する中で、主要スタジオ各社による映画公開スケジュールが過密となり、公開可能なスクリーンを巡って競争が激化することにより、映画分野の業績に悪影響が出る可能性があります。
仮に、ソニーが、技術その他の競争力を持つ分野においてその優位性を保てなくなった場合、ソニーの一般消費者向け製品に対して頻繁に影響を及ぼす継続的な価格下落又はその事業に影響を及ぼすコスト圧力について効果的に予測し対応できない場合、既存の事業モデルや消費者の嗜好が変化した場合、又はソニーの一般消費者向け製品の平均価格の下落スピードが当該製品の製造原価削減のスピードを上回った場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) ソニーは、競争力を維持し消費者の需要を喚起し、製品及びサービスの革新を実現するために研究開発投資を行う必要があり、また、新しい製品及びサービスの頻繁な導入を適切に管理しなければなりません。
ソニーは、製品及びサービスの競争力を強化するため、特にG&NS分野及びI&SS分野といった成長分野において、研究開発投資を継続的に行っています。しかしながら、ソニーとして、著しい成長可能性を持った製品及びサービス、ならびに市場動向を特定できなかった場合やそれらを把握できなかった場合、研究開発投資が成功しない可能性があります。加えて、ソニーの研究開発投資が革新的な技術を生み出さない可能性、想定した成果が十分かつ迅速にもたらされない可能性、又は競合他社に技術開発を先行されてしまう可能性があります。これらは、競争力のある新たな製品やサービスを商品化するソニーの機会を妨げる要因となり得ます。
ソニーは、継続的にエレクトロニクス製品及びサービスを導入し、これらを拡充させることにより、顧客の需要を喚起し続けていく必要があります。これらの製品及びサービスは、年末商戦における消費者需要に特に影響を受けます。G&NS分野の売上及び収益性には、ストリーミングを含め、プラットフォームの導入及び普及の成否が重要な影響を及ぼし、この成否は、魅力的なソフトウェアの品揃えとオンラインサービスが消費者に提供されるか否かに影響されます。しかしながら、外部のソフトウェアの開発事業者や開発・販売事業者、主要な協力業者がソフトウェアの開発や供給をし続ける保証はありません。加えて、ソニーは、売上の拡大及び収益性の向上を図るために、ハードウェア、AIを含むソフトウェア、エンタテインメント・コンテンツ及びネットワークサービスの統合を促進させること、消費電力を最小限に抑えること、ならびにそのような統合の効果を達成するための研究開発への投資が不可欠であると考えています。しかしながら、この戦略は、AI及びネットワークサービス技術のさらなる開発能力、ソニーの様々な事業ユニット・販売チャネル間の戦略上及びオペレーション上の課題の調整と適切な優先順位付け、ユーザーインターフェースを含むエネルギー効率に優れたネットワークプラットフォームをシームレスに接続するための、消費者にとって革新的であり、エネルギー効率に優れ、かつ価格競争力のある魅力的な高性能ハードウェアの継続的な提供に依存しています。そして、業界内やネットワークに接続可能なソニーの製品や事業間における技術やインターフェース規格の標準化を行う能力にも依存しています。加えて、G&NS分野、音楽分野及び映画分野では、消費者の支持を得られるかどうかが分かる前に、社内で開発されたソフトウェアのタイトル、アーティスト、ミュージック・カタログ、映画作品、テレビ番組の製作及び番組の放送に関連して、相当の先行投資を含め、多額の投資を行わなければなりません。さらに、映画作品の初期の流通市場における業績と、その後の流通市場における業績には高い相関性がみられるため、初期の流通市場における映画作品の業績が想定を下回った場合、公開年及び将来におけるソニーの業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
新製品及びサービスの導入ならびに切り替えの成功は、開発をタイムリーにかつ成功裏に完了させること、市場における受け入れ度合、効果的なマーケティング戦略の企画及び実行、新製品の導入の管理、生産立ち上げ時における課題への対処、新製品向けアプリケーションソフトウェアが入手できること、品質管理、及び年末商戦における消費者需要の集中度など、数多くの要素に依存しています。研究開発への投資に対して想定した成果を達成できない場合、新製品及びサービスの頻繁な導入を適切に管理できない場合、新製品やサービスが消費者に受け入れられない場合、又は統合戦略を実行できない場合、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) ソニーの戦略的目的を達成するための買収、第三者との合弁、投資、資本的支出、組織再編成、構造改革は成功しない可能性があります。
ソニーは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁、資本的支出及びその他の戦略的出資を積極的に実施しています。例えば、2022年度には、米国の独立系ゲーム開発会社Bungieの全ての株式の取得、Epic Gamesへの追加の戦略的出資、本田技研工業株式会社とのモビリティ分野における合弁会社の設立を行いました。
買収や合併の完了は、関係当局の承認及び許可の取得等が条件となる場合がありますが、競争法制度や競争法当局の審査の厳格化により、確定契約締結後の審査に想定以上の時間がかかる可能性や承認もしくは許可を得られない可能性があります。また、買収・合併する会社の戦略や財務状況の想定外の変化等により、確定契約において定められた取引完了の前提条件が満たされず、買収や合併が想定どおり進展しない可能性や、確定契約が変更又は解除される可能性があります。その結果、ソニーが事業機会を逸失し、当初想定した買収や合併の効果の一部又は全部を実現できない可能性があります。
ソニーは、買収・合併する会社の技術、会計、税務、財務、人事及び法的な観点等における包括的な分析と評価を行いますが、多額の買収コスト又は統合費用の発生や、新たに買収・合併した会社におけるIT及び情報セキュリティリスク、想定したシナジーが実現できないこと、期待された収益の創出とコスト改善の失敗、主要人員の喪失や債務の引受け等により、ソニーの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
ソニーが第三者と合弁会社を設立したり戦略的パートナーシップを構築する場合、ソニーの財政状態及び業績は、パートナーとの戦略の相違又は文化的相違、利害の対立、シナジーが実現できないこと、合弁会社及びパートナーシップ維持のために必要となる追加出資や債務保証、合弁パートナーからの持分買取義務、ソニーが保有する合弁持分の売却義務、もしくはパートナーシップの解消義務、キャッシュ・フローの管理を含む不十分な経営管理、特許技術やノウハウの喪失、減損損失、及びソニーブランドを使用する合弁会社の行為又は事業活動から受ける風評被害により、悪影響を受ける可能性があります。
ソニーは、スマートフォンやその他の製品向けイメージセンサー用製造設備を含む生産設備や装置に多額の投資を行っています。ソニーは、競争環境、想定を下回る消費者需要、ソニーの主要顧客の財政状態やビジネス上の意思決定の変更又は生産設備や装置の調達の遅れに起因して、これらの資本的支出を計画どおりに実行できない又は一部もしくは全部を計画した期間内に回収できない場合があります。ソニーは、イメージセンサーの生産能力増強などのために、2022年度及び2023年度にそれぞれ、3,559億円及び3,396億円の資本を投資しました。
さらに、ソニーは、収益力、事業の自律性及び株主価値を向上させ、また、ソニー全体の事業ポートフォリオにおける各事業の位置づけを明確にするため、構造改革及び事業構造変革の施策を実施しています。しかし、社内外で生じるビジネス上の阻害要因や予想を上回る市況の悪化が原因となり、想定された収益性レベルの達成を含め、これらの施策の実施によって期待される恩恵が得られない可能性があります。ソニーがこれらの施策を達成できない場合、ソニーの業績、財政状態、評判、競争力又は収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在において、金融事業を営むSFGIについて、2025年10月のパーシャル・スピンオフ(以下「本スピンオフ」)の実行及びSFGI株式の上場に向けた具体的な準備を行っています。本スピンオフの実行に向けた検討事項には、SFGI株式を上場する市場、現物配当に関して当社のADR(米国預託証券)保有者との関係で必要となる手続、各国における税制適格要件の充足可能性等が含まれていますが、現時点では、本スピンオフが日本をはじめとする各国の税制適格要件を充足することが保証されているわけではありません。本スピンオフの実行及びその時期は、これらの事項の検討を経て最終的に選択した手法に関する証券取引所その他の関係当局の承認や認定、許認可等の取得を前提としています。
(4) ソニーの売上や収益性は卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者の業績の影響を受ける可能性があります。
ソニーは、製品の流通を卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者に依存しており、その多くが競合他社の製品を同時に取り扱っています。例えば、携帯電話キャリアを通して販売されるソニーのスマートフォンは、そのキャリアから補助金を受けている場合があります。これらのキャリアとの契約更新又は新しいキャリアと締結する契約において、今後もそのような補助金が同額で継続し、又は補助金そのものを継続的に受けられる保証はありません。映画分野では、映画配給においては第三者の映画館運営会社に、映画やテレビ番組の配信においてはケーブル、衛星、インターネット及びその他配信システムに依存しており、当該第三者からソニーが受領するライセンス料の減少が映画分野の売上に悪影響を与える可能性があります。映画分野における様々なテレビネットワークを通じた配信も、第三者のケーブル、衛星及びその他配信システム経由で行われ、これらの第三者配信会社との契約を更新できない、又は不利な条件で契約を更新する場合は、これらの第三者ネットワークを通じた広告販売及び予約販売の実績に悪影響を及ぼす可能性があります。ソニーは、卸売事業者、小売事業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者に対して、ソニー製品を市場に導入し、販売を促進するインセンティブを与えることを目的としたプログラムに資金を投入しています。しかしながら、それらのプログラムの提供が、消費者を競合他社の製品の代わりにソニー製品を買うように促し、結果的にソニーに大きな利益や追加収入をもたらすことを保証するものではありません。
多くの卸売業者、小売業者、その他の再販売事業者及び第三者の販売業者の業績及び財政状態は、特にオンライン小売業者との競争と景気の後退により悪影響を受けます。これらの業者の財政状態が継続的に悪化したり、ソニー製品を取り扱うことを中止したり、もしくはソニー製品に対する需要が不透明になるなどの要因によりこれらの業者がソニー製品の発注数やマーケティング活動、販売奨励金、又は販売を減少させたり縮小させたりするような場合、ソニーの業績及び財政状態は悪影響を受ける可能性があります。
(5) ソニーはグローバルに事業を展開しているため、多くの国々において広範な法規制の適用を受けるとともに、企業の社会的責任を含むサステナビリティに係る取り組みに関する株主、消費者、地域社会、NGO等の外部ステークホルダーの関心の高まりに直面しています。これらの法規制や外部ステークホルダー及び規制当局の関心は大きく変わる可能性があり、その変化がソニーの事業活動費用の増加、事業活動の制約及びソニーの評判への悪影響につながる可能性があります。
ソニーはグローバルに事業を展開しているため、広告、販売促進、消費者保護、輸出入、腐敗防止、反競争的行為、環境保護(気候変動対策にともなう脱炭素規制及び特定の有機フッ素化合物等の有害物質の使用・漏出に係る規制を含む)、データプライバシー及びデータ保護、コンテンツや放送規制、AIの開発や利用、知的財産、労働、安全衛生、製造物責任、課税(デジタルサービスからの収入に係る税金を含む)、外国投資規制、政府調達、為替管理、経済制裁を含む多数の地域における事業活動に影響を与える世界中の多くの国々の法規制の適用を受けます。
これらの法規制を遵守することは事業活動における負担をともない、また、遵守にともない費用が発生する可能性があります。これらの法規制は継続的に変更されるとともに、管轄ごとに異なるものとなる可能性があり、その遵守や事業遂行にかかる費用が増加する可能性があります。このような変更は、場合によっては頻繁に又は事前の通知なくして起こり、消費者にとってのソニー製品又はサービスの魅力の低下、新製品又はサービスの導入の遅延もしくは禁止、あるいはソニーの事業遂行の変更や制約に結びつく可能性があります。例えば、米国及びその他の地域における貿易制限措置及び報復措置の導入が、ソニーの製品に賦課される関税率の増加、部品の調達費用の増加、又は既存及び将来的なソニーの製品及びサービスの顧客への販売の制限又は中止につながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。I&SS分野において、2020年8月に発表された米国政府による輸出規制に従い、ソニーの中国の特定顧客に対するイメージセンサーの出荷を同年9月から一時的に停止していました。その後、米国政府の輸出許可を得て、当該顧客に対する一部の出荷を再開したものの、輸出規制が発効する前に比べて、イメージセンサーの売上が減少しました。また、2020年度において、当該顧客向けのイメージセンサーの在庫に関する評価減を計上しました。加えて、ソニーがオンライン上を含め事業を行う上で依拠又は適用を受ける法規制又はそれに関連する裁判所の解釈に変化が生じた場合や、ソニーがこのような変化を想定できなかった場合にも、ソニーの法的責任に対するリスクの増加、法規制遵守のための費用の増加又は一部の事業活動に対する制限、制約もしくは中止を含む事業活動の変更につながる可能性があります。また、欧州、米国などの規制当局はAIに関する法規制を進めています。ソニーはAIの開発や利用を行っていることから、それら法規制の遵守にともなう費用が増加する可能性があります。
ソニー、又はソニーの役員・従業員、第三者サプライヤー、ビジネスパートナー、もしくは代理人が法規制に違反すると、ソニーが罰金、刑罰、法的制裁の対象となり、また、ソニーの事業遂行への制約や評判への悪影響につながる可能性があります。加えて、気候変動やサプライチェーンにおける人権保護など、企業のサステナビリティに係る取り組みに対し、全世界的に規制当局や外部ステークホルダーの注目が高まっており、また、これらの事項に関する情報開示の法的規制が強化されています。例えば、アジア地域で操業する電子部品及び製品の製造事業者や製造/設計受託事業者(OEM/ODM)における労働環境を含む労働慣行への注目が高まっています。ソニーは製品の製造に多くの部品や原材料を使用しており、それらの部品や原材料の供給を第三者サプライヤーに依存しているため、これらの領域における規制の強化や外部ステークホルダーの関心の高まりによって、ソニーの法規制の遵守にかかる費用が増加する可能性があります。さらに、かかる法規制の不遵守があった場合、又は外部ステークホルダーの関心の高まりに対してソニーが適切に対処していないとみなされた場合には、それが法的に求められているか否かにかかわらず、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) ソニーは市況変動の大きい環境のなか、部品・原材料、ソフトウェア、及びネットワークサービスの在庫量、入手可能性、費用及び品質をコントロールするために第三者のサプライヤー及びその他のビジネスパートナーからの大量かつ広範な調達品を管理する必要があります。
ソニーの製品やサービスは、例えば、半導体、プレイステーションのゲーム機及びモバイル製品向けチップセット、ならびにモバイル製品、テレビ及びサービスに利用されている液晶パネルやアンドロイドOSを含め、部品・原材料、ソフトウェア、及びネットワークサービスに関して、第三者のサプライヤー及びその他のビジネスパートナーに大きく依存しています。したがって、第三者サプライヤーやパートナーにおけるこれらの供給不足、当該第三者サプライヤーやパートナーから提供を受ける部品等の価格変動、品質問題、製造の中止、取引条件の変更、又は第三者サプライヤーやパートナーがエレクトロニクス領域以外の顧客あるいはソニーの競合他社を優先させた場合、ソニーの業績、ブランド及び評判に悪影響を与える可能性があります。例えば、2020年度の後半から2022年度の前半にかけて顕著であった世界的な半導体不足について、2023年度末時点では半導体の世界的な供給は安定していますが、再び供給に制約が生じた場合、ソニーの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者のソフトウェア及び技術への依存は、競合他社の製品とソニーの製品との差異化をますます難しくする可能性があります。さらに、特にソニーが一社に部品の調達を依存している場合、特注の部品の生産能力に限界がある場合、もしくは新しい技術を使用する製品の初期生産能力に制約がある場合には、部品の供給不足や出荷遅延が生じ、その結果、ソニー又はビジネスパートナーの製造事業所における生産調整又は生産停止が起こる可能性があります。
ソニーは消費者需要の予測にもとづいて事前に決定した生産量及び在庫計画に沿って部品を発注していますが、そうした消費者需要の変動は大きく、また、予測が難しいものです。不正確な消費者需要予測や不十分な在庫管理は、在庫不足もしくは過剰在庫を招き、その結果、生産計画に混乱が生じることにより売上の機会損失や在庫調整につながる可能性もあります。ソニーでは、部品や製品が陳腐化したり、在庫レベルが使用見込み数量を上回ったり、もしくは在庫の帳簿価額が正味実現可能価額を上回る場合には、在庫の評価減を行います。過去にこのような売上機会の損失及び在庫調整、ならびに部品の供給不足がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼしたことがあり、今後も及ぼす可能性があります。
(7) ソニーの売上、収益性及び事業活動は、世界及び地域の経済動向及び政治動向ならびに情勢に敏感です。
ソニーの売上及び収益性は、ソニーが事業を営む主要市場の経済動向に敏感です。2023年度のソニーの売上高及び金融ビジネス収入において、日本、米国、欧州における構成比はそれぞれ23.3%、28.8%、20.2%でした。これらの市場が深刻な景気後退に陥ると、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。ソニーの主要市場における経済状況の悪化や今後悪化するという見通しにより、最終消費が低迷して法人顧客の事業が悪影響を受け、その結果、ソニーの製品やサービスに対する需要が減少する可能性があります。
また、ソニーは世界各地において事業活動を行っており、このような世界規模での事業遂行、特に一部の新興市場での事業遂行には困難がともなうこともあります。例えば、ET&S分野、I&SS分野及びG&NS分野においては、中国やその他のアジアの国々・地域において製品及び部品を生産、調達しているため、これらの地域外の市場に製品を供給するために要する時間が長くなり、変化する消費者需要に迅速に対応することがより難しくなる可能性があります。さらにソニーは、複数の国において、ソニーにとって望ましくない政治的・経済的な要因により、事業を企画・管理する上で困難に直面する可能性があります。この例としては、武力紛争、外交関係の悪化、通商政策の変更、期待される行動規範からの逸脱、及び十分なインフラの欠如などがあります。不安定な国際政治又は国内政治・軍事情勢が今後生じた場合、ソニーやそのビジネスパートナーの事業活動が阻害されることにより、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、2021年度に発生したウクライナ・ロシア情勢の悪化を受け、本書提出日現在において、ソニーはロシアにおける事業を中断しています。今後、情勢がさらに悪化した場合、国際情勢の不安をもたらし、ソニーの他地域での事業又は世界的な経済状況の悪化につながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) ソニーの業績及び財政状態は外国為替変動の影響を受ける可能性があります。
ソニーの製品の多くは開発、製造された国・地域と異なる国・地域で販売されるため、ソニーの業績と財政状態は外国為替相場の変動による影響を受けます。例えば、エレクトロニクス領域においては、研究開発費や本社間接費は主に円で、原材料及び部品の調達や外部委託生産を含む製造費用は主に米ドル及び円で発生しています。売上は日本・米国・欧州・中国・新興国市場を含むその他地域において、それぞれの地域の通貨で計上されています。結果として、特に米ドルに対する大幅な円安、ユーロに対する大幅な円高、ならびに新興国通貨に対する米ドル高は、ソニーの業績に悪影響をこれまでも及ぼしており、今後も及ぼす可能性があります。また、ソニーの連結損益計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成されていることから、外国為替相場の変動が、かかる換算にともないソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、近年では中国や新興国市場を含むその他地域におけるビジネス拡大とともに、これらの地域の通貨の米ドル及び円に対する為替レートの変動の影響も大きくなっています。中長期的な為替レート水準の変動により、ソニーの経営資源のグローバルな配分が妨げられたり、ソニーが研究開発、資材調達、生産、物流、販売といった活動を、収益力を保った形で遂行する能力が低下したりする可能性があります。
また、ソニーは、短期の外貨建て債権債務(純額)の一部を取引が発生する前にヘッジすることで為替リスクの低下に努めていますが、かかるヘッジ活動によっても、ヘッジされている為替について限られた期間に為替が不利に変動する場合に、全くもしくは一部しか財政状態への悪影響を解消できない可能性があります。
さらに、ソニーの連結財政状態計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成されるため、米ドル及びユーロならびにその他の外国通貨に対して円高が進行すると、ソニーの自己資本に悪影響を与える可能性があります。
(9) 信用格付けの低下や国際金融市場における深刻かつ不安定な混乱状況は、ソニーの資金調達や資金調達コストに悪影響を及ぼす可能性があります。
ソニーの業績及び財政状態の悪化は、ソニーの信用格付け評価にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。信用格付けの低下は、資金調達コストの上昇を招き、ソニーのコマーシャル・ペーパー(以下「CP」)及び中長期債市場からの受諾可能な条件での調達に悪影響を与える可能性があります。
また、国際金融市場が深刻かつ不安定な混乱状況に陥った場合、金融その他の資産価格全般に下落圧力が生じたり、資金調達に影響が生じたりする可能性があります。従来、ソニーは、営業活動によるキャッシュ・フロー、CP及び中長期債の発行、銀行やその他の融資機関からの借入金などにより資金を調達してきました。しかしながら、将来にわたってこのような資金源からソニーにとって受諾可能な条件で必要かつ十分な資金調達が可能となる状況が継続するという保証はありません。
その結果、ソニーは弁済期限到来時のCPや中長期債の返済、その他事業遂行上必要ある場合や必要な流動性を賄うために、金融機関と契約しているコミットメントラインや資産の売却などの代替的な資金源を活用する可能性がありますが、そのような資金源からソニーにとって受諾可能な条件で必要かつ十分な資金調達ができない可能性があります。その結果、ソニーの業績、財政状態及び流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) ソニーの成功は、挑戦心と成長意欲に満ちた多様な人材との良好な関係の維持と、それら人材の採用・確保に依存しています。
ソニーが、ますます競争が激しくなる市場において、コンテンツの制作やサービスの開発、製品の設計、製造、マーケティング及び販売を継続するためには、マネジメント人材、クリエイティブな人材、及びハードウェアやソフトウェアエンジニアなどの高い専門性や豊富な経験を持った内部及び外部の重要な人材を惹きつけ、確保し、それらの人材との間で良好な関係を維持することが必要となります。しかしながら、そのような人材には高い需要があります。加えて、事業譲渡や構造改革及びその他の事業構造変革施策の実施により、経験豊かな人材やノウハウが意図せず喪失又は流出してしまう可能性があります。また、特にエンタテインメント領域において、労働組合によるストライキが生じた場合、又はそのおそれがある場合、作品のリリースの遅れやコストの増加につながることもあります。例えば、映画分野では、WGAが2023年5月から同年9月にかけて、SAG-AFTRAが同年7月から同年11月にかけて、ストライキを実施しました。これらのストライキがコンテンツ制作に与えた影響により、映画製作における一部作品の劇場公開日の変更やテレビ番組制作における作品納入の後ろ倒しなどの悪影響が出ています。さらに、日本国内においては、少子高齢化にともなう労働人口の減少や、企業間の専門人材獲得競争の激化、人件費の高騰などが進んでおり、人事制度の設計・運用が不十分である場合、必要な人材を確保することが困難となる可能性があります。もしこれらの事象が起きた場合、あるいは高い専門性や豊富な経験を持った人材や重要なマネジメント人材を惹きつけ、確保し、良好な関係を維持できなかった場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(11) ソニーの知的財産は不正利用や窃取の被害を受け、また、第三者が保有する知的財産のソニーによる利用が制限される可能性があります。
ソニーは、ソニーの製品やサービスに関連する知的財産の不正利用や窃取の被害を受ける可能性があります。例えば、デジタル技術、デジタルメディアの利用、世界的なインターネットの普及及び生成AIを含むAI技術の拡大は、ソニーが著作権で保護されたコンテンツを違法コピー及び盗用、偽造等から保護することを困難にさせ、正規の製品・サービスの販売にも悪影響を与えます。ソニーは、知的財産権の保護のために費用を計上しており、今後も引き続き費用を計上します。しかしながら、ソニーが行っているこれらの知的財産保護のための様々な取り組みが想定している効果を達成できない可能性があり、ソニーの競争上の地位や研究開発投資に悪影響を与えるおそれがあります。
さらに、ソニーの知的財産権に関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、ソニーの知的財産権が、ソニーの競争力を維持するうえで十分ではない可能性があります。
また、多くのソニー製品やサービスは、第三者が保有する特許その他の知的財産権のライセンス供与を受けて設計・開発・製造されています。過去の経験や業界の慣行により、将来的にビジネスに必要な様々な知的財産権のライセンス供与を受け又は更新できるとソニーは考えていますが、全く供与されない、又は受諾可能な条件で供与されない可能性があります。そのような場合には、ソニーは、製品又はサービスの設計変更や、マーケティング、販売、あるいは提供もしくは配信の断念を余儀なくされる可能性があります。
ソニーの製品やサービスに利用されている第三者の部品、ソフトウェア及びネットワークサービスを含め、ソニーの製品やサービスが第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張がソニーに対してなされており、また、今後もなされる可能性もあります。特に、新規技術やより高度な機能が製品及びサービスに導入されることにともない、競合他社又は第三者の権利者から、かかる主張がなされる可能性があります。ソニーは、かかる主張により、和解やライセンス契約の締結、又は多額の損害賠償金の支払いを余儀なくされる可能性があり、差止命令、あるいはソニーの製品やサービスの一部についてマーケティング、販売、又は提供の中止に直面する可能性があります。
ソニーの知的財産権の第三者による不正利用や窃取を防止できない場合、必要とされる第三者の知的財産権のライセンスが受けられない場合、ソニーの知的財産権が無効になる場合、又は第三者との間で知的財産の権利侵害の訴えについて和解が成立する場合には、ソニーの評判、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12) 新たな技術や配信プラットフォームによる消費行動の変化や、デジタル音楽配信会社による寡占度が高まること、及び配信会社自らがコンテンツを制作することは、音楽分野及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。
音楽分野及び映画分野で使用される技術、特にデジタル技術は進化を続け、デジタルコンテンツの発掘及び消費の方法とプラットフォームは急速に変化しつつあります。このような技術の進歩は、消費者行動を変化させ、消費者が、デジタルコンテンツを消費するタイミング、場所及び方法を、これまでよりも消費者自身がコントロールすることを可能とさせています。
デジタルストリーミングネットワークやその他新規メディアが普及した場合、従来のテレビ放送や劇場での映画鑑賞にも影響が及ぶことが考えられ、映画分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、より多くの音楽や映像コンテンツがデジタルストリーミングのネットワークで消費されることにより、デジタル音楽配信会社の寡占度がさらに高まり、ソニーの音楽コンテンツの競争力を減少させることで、ソニーの価格設定に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、デジタルの音楽や映像コンテンツの配信会社は生成AIなどの技術も活用して自らのサービスのための自社制作コンテンツを増やす可能性があり、ソニーが制作するコンテンツに対する需要が減少する可能性があります。ソニーがこのような変化に適切に対応できない場合、又は新たな市場の変化に効果的に適応することができない場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(13) 法令改正や金融市場の動向などが、金融分野の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
ソニーの金融分野は、日本における保険や銀行といった法規制や監督の対象となる業界で事業を行っています。将来における法規制・政策などの改正・変更は、当該法規制や政策の遵守に対応するための費用の増加や事業活動に対する制約にもつながる可能性があります。なお、日本の監督官庁の指針にもとづく制約により、当社の金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されています。
また、金融分野においては、金利、外国為替レート及びインフレ率の変動、日本国債、国内社債、米国債、株式、不動産及びその他の投資資産の価値変動ならびに金利・株価・為替のインプライド・ボラティリティの変動が業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ソニーの生命保険事業では、保有契約から生じる長期の負債特性に見合うように、一般勘定資産のうち大部分を超長期日本国債及び国内社債ならびに超長期米国債に投資しています。生命保険事業では、上述の市況変動により投資ポートフォリオの利回りが低下する可能性がある一方で、残存する保険契約の予定利率を保証しています。また、ソニーの銀行事業では、住宅ローンが貸出金の大部分、総資産の過半を占めています。上述の市況変動及び債務者の信用状況の悪化により不良債権の増加や担保不動産価値の減少が生じ、損失評価引当金の積み増しが必要となり、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ソニーの生命保険事業及び損害保険事業においては、上述の市況変動とこれらの変動に対するソニーの管理体制、又は日本における大地震や感染症などの疫病、あるいはその他の大規模災害の発生が、費用計上額の増加につながり、又は保険契約負債を履行する保険事業の能力に悪影響を及ぼす可能性もあります。
保険事業における保険契約負債は、不確実な多くの保険数理上の前提にもとづいて計算されています。その計算前提が大幅に変更された場合や、上述の市況変動により、金融分野の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、保険契約負債の計算前提は、各報告期間末日時点での見直しが求められています。
(14) 大規模な災害や停電、新型コロナウイルスを含む感染症などが生じた場合、ソニーの設備や事業活動は被害や損害を受け、それがサプライチェーンや、製造その他の事業遂行における混乱を引き起こし、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
ソニーの本社及びイメージセンサー等の最先端の製造拠点の多くは、地震のリスクが比較的高い日本国内にあります。日本で大地震が起きた場合、特にソニーの本社がある東京、エレクトロニクス製品の製造事業所が所在する東海地方、又はイメージセンサーの製造事業所が所在する九州地方及び東北地方で起きた場合には、建物や機械設備、棚卸資産が被害を受けたり、製造事業所では生産活動が中断したりするなど、ソニーの事業は大きな被害を受ける可能性があります。例えば、2016年4月14日以降に発生した平成28年(2016年)熊本地震の影響で、九州地方にあるイメージセンサー製造事業所に損傷があり、その事業所における製造が中断しました。
また、ネットワーク、情報通信システムインフラ、研究開発、資材調達、製造、映画やテレビ番組の製作・制作、物流、販売及び、オンラインやその他のサービスに使用される、ソニーやサプライヤー、外部サービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの世界各地にあるオフィスや設備は、自然災害、新型コロナウイルスを含む感染症、テロ行為、武力紛争、大規模停電、大規模火災などの予期できない大惨事により、破壊されたり、一時的に機能が停止したり、混乱に陥ったりする可能性があります。これらのオフィスや設備のいずれかが前述の大惨事により重大な損害を受けた場合、事業活動の停止、設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、又はオフィスや設備の修繕・置換えにかかる多額の費用計上などが生じる可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症については、本書提出日現在において経済活動への影響はほぼ解消しましたが、新型コロナウイルス感染症やその他の感染症などにより経済活動が再び停滞した場合、ソニーの製品又はサービスの部品又は原材料の調達、生産、開発又は制作、及び販売又は提供に悪影響を及ぼし、結果として、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。G&NS分野では、部品のサプライチェーン上の問題からハードウェアの生産に再び悪影響が出る可能性があります。音楽分野では、対面でのコンサートその他のイベントの開催等が再び制限され、これらに関連する収益が減少する可能性があります。映画分野では、映画館が再び閉鎖された場合又は収容人数が制限された場合、劇場興行収入が減少する可能性があります。また、感染再拡大や外出制限等の感染対策の状況によっては、新作映画の製作やテレビ番組作品の制作のスケジュールの遅れ、広告収入の減少といった影響を再び受ける可能性があります。ET&S分野では、製造事業所の稼働停止や稼働率低下、サプライチェーンの混乱及び製品の販売店舗の世界的な閉鎖や休業による悪影響を受ける可能性があります。
さらに、ソニーは、原材料及び部品の価格高騰や、法人顧客の需要減少による影響を受ける可能性があり、これらの場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動の影響で気温上昇が進むにつれて異常気象が激甚化・頻発化することにより、上記のリスク及び不確実な要素に悪影響を与える可能性があります。
(15) ソニーあるいは外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの情報セキュリティに対する侵害又はその他の不正行為があった場合、ソニーのブランドイメージ及び評判や事業への悪影響が及ぶ可能性や、ソニーが法的な責任を追及される可能性があります。
ソニーならびに外部のサービスプロバイダ、サプライヤー及びその他のビジネスパートナーは、情報技術を広範に活用することで営業活動を行い、また、顧客に対しネットワークサービスやオンラインサービスを提供しています。これらの事業及びサービス、ならびにソニーのビジネス情報は、国家が支援する組織を含む悪意をもった第三者、犯罪組織、ソニーの役員・従業員、ソニーもしくは外部のサービスプロバイダ又はその他のビジネスパートナーの故意又は過失により侵害を受ける可能性があります。そのような組織や個人は、悪意のあるソフトウェアをインストールしたり、情報技術の脆弱性を利用したり、ソーシャル・エンジニアリングを用いて役員・従業員やビジネスパートナーのパスワードや機密情報を開示させたり、分散DoS(サービス停止)攻撃を仕組んだり、生成AIを悪用したりするなど、様々な技術の組み合わせにより、サービスを停止させる可能性があります。ソニーはこれまでにサイバー攻撃の対象とされたことがあります。詳細は、「第4 提出会社の状況」『4コーポレート・ガバナンスの状況等』(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治に関するその他の事項 <サイバーセキュリティに関する活動状況>をご参照ください。
サイバー攻撃がますます高度化かつ自動化し、より容易にツールやリソースを利用できるようになりつつあることから、外部からの不正な侵入の防止あるいは検知、侵入への対応、データへのアクセス制限、ビジネス情報の消失、破壊、改変、あるいは流出の防止、それらの攻撃の悪影響を抑制するためにソニーが行っている対策及びセキュリティへの取り組みや管理が、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。また、ソニーの役員・従業員は、出社による勤務と在宅勤務の併用を継続しています。ソニーは、在宅勤務者に対し適切な情報セキュリティ保護が確実に実施されるように措置を講じていますが、外部からの不正な侵入の防止あるいは検知、侵入への対応、データへのアクセス制限、ビジネス情報の消失、破壊、改変、あるいは流出の防止、それらの攻撃の悪影響を抑制するためにソニーが行っている対策及びセキュリティへの取り組みや管理が、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。その結果、個人を識別できる情報を含むソニーのビジネス情報の消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又は承諾を得ない第三者による不正アクセスが発生し、ソニー、あるいは外部のサービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの情報システム又は事業が破壊される可能性があります。また、悪意をもった第三者は、ソニーに知られることなく、ソニーの外部の事業パートナーを侵害するためのプラットフォームとしてソニーのネットワークに不正にアクセスする可能性があります。
こうしたサイバーインシデントによって、多額の復旧費用が発生する可能性があります。加えて、ソニーのネットワークやオンラインサービス、情報技術への破壊行為、その他のソニーの情報セキュリティに対する侵害行為によって、売上の喪失、ビジネスパートナー及びその他の第三者との関係の悪化、専有情報の不正漏洩、改変、破壊あるいは悪用、ならびに顧客の維持や勧誘の失敗などが生じ、その結果、ソニーの事業や活動が重大な打撃を受ける可能性があります。さらに、これらの破壊や侵害行為がマネジメントの関心や経営資源の分散につながる可能性があります。他にも、メディアの報道に悪影響をもたらし、ソニーのブランドイメージや評判を傷つける可能性があります。また、ソニーは、訴訟や、規制当局による調査や法的措置を含む法的手続の対象となる可能性があります。ソニーが加入しているサイバー攻撃に対する保険は、発生する費用や損失の全額を填補できない可能性があり、その結果、ソニー又は外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの情報セキュリティに対するそのような侵害その他の不正行為が、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(16) 訴訟及び規制当局による措置が不利な結果に終わった場合、ソニーの評判、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
ソニーは、様々な国において事業の遂行に関して、訴訟及び規制当局による措置に服するリスクにさらされています。訴訟及び規制当局による措置により、ソニーは、多額かつ不確定な損害賠償や事業活動に対する制約を要求される場合がありますが、その発生の可能性や影響の程度を予測するには相当の期間を要することがあります。例えば、公正な競争に反する市場慣行に関して規制当局が行う調査が、訴訟や規制当局による措置につながる可能性があります。多大な法的責任や規制当局による不利な措置が課された場合や、訴訟及び規制当局による措置への対応に多大なコストがかかった場合、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17) ソニーは製品品質、製品セキュリティ及び製造物責任による財務上のリスクや評判を損なうリスクにさらされています。
急速な技術の進化や、モバイル製品及びオンラインサービスに対する需要増にともない、一般消費者向けエレクトロニクス製品、業務用及び産業用製品、部品、半導体、ソフトウェア、ならびにネットワークサービスなどのソニーの製品・サービスは一層高機能かつ複雑になっており、また、多くの製品が常にインターネットやソニー又は第三者が提供するサービスにつながっている環境におかれています。ソニーは、製品品質及び製品セキュリティを維持しながら、技術の急速な進展や、モバイル製品及びオンラインサービスの需要増加に対応できない可能性があり、これにより、製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があります。その結果、ソニーの評判に悪影響を及ぼし、製品回収やアフターサービスなどの費用が発生する可能性があります。加えて、既存の製品及びサービスへの販売後のアップグレード、機能の拡充、又は新機能の導入に成功しない可能性や、既存の製品及びサービスを、他の技術及びオンラインサービスとの間で便宜的かつ効果的に連携させ続けることができない可能性があります。その上、インターネットに接続されている製品に対するサイバー攻撃は劇的に増加しており、ソニーの製品・サービスが他者からの攻撃にさらされる事態、顧客情報ならびにソニー及び他社の技術情報が流出する事態、又は製品・サービスが利用不能となる事態や他者への攻撃に悪用される事態が生じるおそれがあります。ソニーが導入したセキュリティ対策は、ソニーの製品及びサービスに対する侵害を防止できる保証はありません。
そのため、ソニーの既存の製品及びサービスについて、顧客満足を維持できない可能性や、需要の減少、競争力の低下、あるいは陳腐化を招く可能性があり、その結果、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、根拠の有無にかかわらず、ソニー製品に関するセキュリティ脆弱性、健康面や安全性の問題に関する申立て又は訴訟は、直接的に、ソニーのブランドイメージや、高品質な製品やサービスを提供する企業であるという評価に対して影響を与え、その結果として、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題は、ソニーがその製品を製造したか否かに関係なく、また、ソニーが直接顧客に販売する製品のみならず、半導体などのソニー製の部品が搭載された他社製品においても生じる可能性があります。
(18) ソニーの業績及び財政状態は確定給付制度債務により悪影響を受ける可能性があります。
ソニーは、確定給付年金制度に関する会計基準に従い、確定給付年金制度ごとの確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除した金額を確定給付負債又は資産の純額として認識しています。制度資産の公正価値が確定給付制度債務の現在価値を超過している場合、資産計上額は、利用可能な制度からの返還及び将来掛金の減額の現在価値を上限としています。制度資産の公正価値の減少や割引率の低下、その他の年金数理計算前提となる比率の変動による確定給付制度債務の現在価値増加にともない確定給付負債又は資産の純額が増加又は減少し、その結果、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、ソニーの業績及び財政状態は、日本の確定給付企業年金法の年金積立要求により悪影響を受ける可能性があります。確定給付企業年金法により、ソニーは定期的な財政再計算や年次の財政決算を含む年金財政の検証を行うことが求められています。法定の責任準備金などに対して制度資産の公正価値がこれを下回り、かつ法令もしくは特別な政令などにより認められた期間内にそのような状況が回復しないと見込まれる場合には、ソニーは年金制度への追加拠出が必要となり、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。同様に、海外の年金制度についても各国の法令にもとづき追加拠出が必要となる場合、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。また、今後、法令が定める掛金の更新にともなって制度資産の長期期待収益率などの前提を見直したことにより、年金制度への拠出金の水準が引上げられた場合、ソニーのキャッシュ・フローに対して悪影響を及ぼす可能性があります。
(19) 繰延税金資産に対して評価減を計上している税務管轄におけるさらなる損失の発生、ソニーが繰延税金資産を最大限に利用できないこと、各国の法令にもとづく繰延税金資産の使用の制限、追加的な税金負債あるいは税率の変動がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人所得税を課されており、通常の営業活動において連結会社間の移転価格取引により最終的な税額の決定に不確実な状況が多く生じています。また、ソニーは、多くの税務管轄において税務当局から継続的な調査を受けています。ソニーの税金引当額、及び繰越欠損金や繰越税額控除を含む税金資産の帳簿価額の計算には将来の課税所得の見積りを含む高度な判断と見積りが要求されます。ソニーは、決算日において、繰延税金資産に対して計上している評価減の妥当性を判断するため、これら資産の再評価を行います。2024年3月31日現在、総額で2,421億円の評価減が計上されています。これら評価減の増加は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産は、税務管轄ごとに評価されます。2024年3月31日時点において、ソニーは主に日本において地方税に係る評価減を計上しています。さらに、充分な課税所得を適切な税務管轄内で生み出せないなど様々な理由により、繰延税金資産は未使用のまま消滅、又は回収できない可能性があります。繰延税金資産が未使用のまま消滅した場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
一部の税務管轄において、繰越欠損金又は繰越税額控除の使用が、翌期以降の課税所得に対する一定の水準に制限されており、ある特定の要因の所得との相殺にしか使用できない場合があります。したがって、ソニーは、課税所得が発生した税務管轄において、多額の繰越欠損金又は繰越税額控除があるにもかかわらず、税金の支払いが発生するため税金費用を計上する可能性があります。
また、ソニーの将来における実効税率は、法定税率の変更や異なる法定税率が適用される各国での利益の割合の変化、又は最低税率に関する枠組み、ロイヤルティや利息の損金算入制限、及び税額控除の使用制限を含む租税法規の改正やそれらの解釈の変更などにより不利な影響を受ける可能性があります。
上記に加え、ソニーのビジネスには、実効税率に直接影響しないものの、デジタルサービス税を含む新たな形態の総収益に対する課税や取引税が課される可能性があり、その結果、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(20) ソニーは、のれん、コンテンツ資産、その他の無形資産、もしくは有形固定資産の減損損失を計上する可能性があります。
ソニーは多くののれん、コンテンツ資産、その他の無形資産ならびに製造施設及び設備を含む有形固定資産を保有しています。これらの資産については、業績の悪化や時価総額の減少、将来のキャッシュ・フローの見積額の減少、世界経済情勢の変化、減損の判定に用いられる高度な判断を必要とする見積り・前提の変更により、減損損失を計上する可能性があります。減損の可能性を示す事象又は状況の変化には、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動などが含まれます。なお、ソニーがさらされている国際的な競争環境の激化や技術動向の急激な変化により、減損の判定に用いられる見積り、前提及び判断が変動し、減損損失の計上の可能性が増加することがあります。このような減損損失の計上は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様への利益還元は、継続的な企業価値の増大及び配当を通じて実施していくことを基本と考えています。安定的な配当の継続に努めたうえで、内部留保資金については、成長力の維持及び競争力強化など、企業価値向上に資する様々な投資に活用していく方針です。
なお、配当金額については、連結業績の動向、財務状況ならびに今後の事業展開等を総合的に勘案し、決定していきます。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としています。配当の決定機関は、原則として、中間配当及び期末配当ともに取締役会です。
当事業年度の期末配当金については、2024年5月14日開催の取締役会決議により、2024年6月に1株につき45円の配当を実施しました。また、2023年11月9日開催の取締役会決議により、2023年12月に1株につき40円の中間配当を実施しましたので、年間配当金は1株につき85円となります。
なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当金は、以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月9日 |
49,305 |
40.0 |
取締役会決議 |
||
2024年5月14日 |
54,965 |
45.0 |
取締役会決議 |