2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載します。なお、以下の記載はすべてのリスクを網羅したものではありません。想定できないリスクや重要性の低いと判断した他のリスクの影響を受ける可能性も否定できません。また、当社グループは、以下記載の主要なリスクに対して、実効的と判断する対応策を継続的に実施しているものの、これらの対応策によっても当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼすことを完全に防止できるわけではありません。以下の記載中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在における当社グループの判断によるものです。

 

(1)政治・法律・制度的環境要因

①医療保険行政に関するリスク

<想定されるリスク> メディカル事業は、血液透析関連をはじめとした医療市場を主要な販売先としており、医療保険行政の規制を受けています。したがって、メディカル事業の製品の市場と価格は、直接・間接にその影響を受けます。今後の規制の動向により、市場の縮小や価格の下落などが起きる場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 医療保険行政について、短期的、中長期的な規制動向をできるかぎり的確に把握、予測するために、さまざまな角度から情報収集に努め、生産、営業計画に活かしています。

②税務に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、グローバルに生産・販売拠点を有しており、グループ会社間の国際取引も多く発生しています。グループ会社間の国際的な取引価格に関しては、適用される各国の移転価格税制等の観点からも適切な取引価格となるよう細心の注意を払っています。しかしながら、税務当局又は税関当局との見解の相違等により、追加の税負担が生じる可能性があります。また、世界各国の租税法令の発効、施行、導入及び改廃等により、当社グループの税負担が増加する可能性があります。

<現在の対応策> 移転価格税制に関しては、グループ会社間取引金額の大きい会社との取引には移転価格ポリシーを定めて運用を行っている他、各国の法令に従って移転価格文書を作成して価格の妥当性の検証を行っています。また、組織再編など重要な取引については専門家の助言を得ながら関係各国の法令への準拠性を高めています。

※2021年7月8日、2017年8月に買収したCryogenic Industries グループの外国子会社3社に対してタックス・ヘイブン対策税制の適用を受けるとして、同外国子会社の親会社となる日機装インターナショナル株式会社の2018年度事業所得金額について、その税額の更正通知書を受領しました。本件について、当社グループは意図的な租税回避行為を行っておらず、税務当局も同様に認識していますが、当社グループと税務当局との間で見解の相違が生じています。当社は、当社グループの見解の正当性を主張するため、2021年10月に東京国税不服審判所に対して更正処分の取消を求める審査請求を進めてきましたが、2022年9月に同審判所より審査請求の棄却裁決を受けたため、2023年3月に東京地方裁判所に対し更正処分等の取消請求訴訟を提起しました。引き続き、当社グループとしての正当性を主張してまいります。

(2)経済的環境要因

①為替変動に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、世界の様々なマーケットにおいて製品及びサービスを提供しています。主な通貨は米ドルとユーロであり、これらの通貨の為替変動が当社グループの業績と財務状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループ全体では、外貨建売上が外貨建仕入を上回り、また外貨建資産が外貨建負債を上回るため、これらの通貨に対する円高が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 外貨建資産・負債残高について継続的にモニタリングを実施し、必要に応じ一部を円貨へ転換するなど為替リスクの抑制に努めています。

②資金調達に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、金融市場の状況を踏まえた最適な手段により外部から資金を調達しており、現時点においては主に銀行からの借入による資金調達を実施しています。このため金融市場の不安定化や当社グループの信用状況が悪化した場合などには、資金調達コストの上昇や資金調達自体が困難となり、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 長期金利の動向を踏まえ、適切な時期に借入の固定金利化を実施し金利変動リスクの低減を図っています。

(3)社会的環境要因

①国内血液透析患者数の減少に関するリスク

<想定されるリスク> 国内の血液透析患者数は中長期的には減少に転ずると予想されます。国内血液透析市場が減退する速度が当社グループの想定以上に早い場合には、新たな事業展開の準備が整わない結果、国内血液透析事業の経営成績等が悪化する可能性があります。

<現在の対応策> 治療の安全性や利便性並びに経済性に寄与する血液透析装置や当社血液透析装置との組み合わせで付加価値を提供できる血液回路などお客様のニーズに応える製品を提供しつづけることで国内血液透析市場のシェア拡大に努めています。また、海外市場は、透析医療の普及と市場拡大が続く中国での拡販や、透析大国である米国での本格展開を計画しており、グローバル展開をさらに加速していきます。

②気候変動、低・脱炭素化社会への移行に関するリスク

<想定されるリスク> 次のリスクが想定されます。

■移行リスク

 ・炭素税の課税、再エネ価格の上昇、化石燃料の利用減少がエネルギー価格を押し上げることによる原資材調達コスト、製造コストの上昇

 ・LNG需要の減少に伴い、LNG関連製品・サービスの収益減少

 ・水素、バイオ燃料のコストが上昇、航空機運賃が割高となり、航空機利用客が減少する結果、民間航空機向け製品の収益機会減少

 ・エネルギー価格の上昇などに起因し、顧客医療機関の経営状態が悪化、透析装置購入サイクルの延長・買い控え

■物理的リスク

 ・増加、激甚化する異常気象によるサプライチェーン分断リスクへの対応費用の増加

 ・異常気象やこれに起因する新たな疾病罹患を要因とする従業員の出勤率悪化、生産性低下、操業停止・工場閉鎖

 ・常態的な気温上昇による空調コスト増加、労働条件・環境整備等に関する法規制対応コストの増加

<現在の対応策> 低・脱炭素社会への移行を見据え、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた計画的取組の継続及び水素・アンモニア分野、省エネルギー・高性能社会関連分野、電力駆動の次世代移動手段・人工衛星分野などの従来の事業分野にとどまらない分野へ事業を展開します。あわせて、在庫の積み増し、サプライヤーの複線化、実効的なBCP対策の改善などを継続的に実施することにより、移行リスク・物理的リスクに適合していきます。

(4)技術革新・事業展開の遅れに関するリスク

<想定されるリスク> 技術的な進歩が速く、市場の変化を適切に予測できず、顧客のニーズに合致した新製品をタイムリーに開発できない場合には当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、開発期間の長期化に伴い費用の増加あるいは開発資産の減損損失が発生する可能性があります。当社グループは、生産能力、品質、生産性向上などのため生産設備などの設備投資や成長に向けたM&Aを継続的に行ってきました。その結果、当連結会計年度末において、のれん 25,290百万円(総資産の8.5%)、有形固定資産 53,598百万円(総資産の18.1%)、関係会社株式及び関係会社出資金 67,044百万円(総資産の31.0%)を計上しています。今後、事業展開の遅れ等により、これらの資産が十分な将来キャッシュ・フローを生み出さないと判断される場合には減損損失を認識する必要性が生じます。多額の減損損失を認識した場合、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> これまで当社グループは、エネルギー転換などその時々の環境変化に順応し、事業機会を創出してきました。今後、新たな事業機会の創出を見据え、液化水素・アンモニアなど次世代エネルギーに向けたポンプの要素技術と実用化技術の開発を加速します。また、事業環境の変化等を予測し、時機を失わずに事業ポートフォリオの組み換えも実施していきます。

(5)災害

①自然災害や大規模災害等に関するリスク

<想定されるリスク> 国内においては、南海トラフ地震、首都圏直下型大地震の発生により、当社グループの国内生産・販売拠点、研究開発拠点、本社機能の弱体化、稼働停止など、当社グループの事業の継続に支障をきたす結果、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。海外においても、当社グループが展開する地域において、地震、津波、洪水、火災などの自然災害の発生により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な事業活動が阻害されるおそれがあります。

<現在の対応策> 国内の主要な生産拠点を分散しているほか、本社その他の国内拠点において、適正な備蓄品の確保を含む防災対策を継続的に実施し、事業の継続性確保に向けた計画の策定と適時の見直しを実施しています。

※2024年1月1日に発生した能登半島地震について

当社の金沢製作所(石川県金沢市北陽台3-1)と白山工場(石川県白山市旭丘1-5-1)は石川県に所在しており、最大震度5弱を観測しました。従業員の安全は発生後速やかに確認でき、両工場及びサプライチェーンの被害は最小限にとどまった結果、1月9日以降操業を順次再開しました

 

②感染症に関するリスク

<想定されるリスク> 大規模(パンデミック)な感染症が発生した場合には、従業員の感染のほか、隔離措置・職場感染防止のための出社抑制措置などにより、事業活動の生産性が悪化し、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> コロナ禍収束後も社内外でのアルコール消毒液による手指消毒の励行を継続しているほか、今後も状況に応じて、従業員の健康と安全の確保と感染拡大防止の対策を最優先に対応します。

(6)製品・サービスの品質に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、各種製品・サービスについて、欠陥が発生しないように万全の品質管理基準のもとに生産しています。しかしながら、万一リコールや製造物責任につながるような重大な欠陥が発生した場合には、多額のコスト発生に繋がり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 「技術の日機装」を掲げている当社グループにとって、品質問題は経営の根幹に関わる重大な課題と認識し、全社を挙げて品質保証体制の強化に取り組んでいます。

①当社グループの技術標準・固有技術・ノウハウについて、設計管理システムを用いて技術の継承や人材育成に活用しています。また技術者に対する体系的な教育プログラムを2019年から実施しています。これらにより技術者のスキル向上による設計品質の向上を図っています。

②部品購入を行う取引先に対し、課題を可視化して改善を図る活動を全社で標準化し運用しています。これにより取引先の品質保証体制を強化し、製品・サービス品質のさらなる安定化を進めます。

(7)サプライチェーンに関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループの生産活動には、種々の原材料を使用しており、原材料ソースの多様化に

より安定的な調達に努めていますが、これらについて供給の逼迫や遅延、供給国の通商政策の変更、また、それ

らに伴う価格上昇等が生じる可能性があります。また、原材料等の調達リスクが顕在化することにより、製品・

サービスの供給が途絶する事態が生じ当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 急激な需給の変動に適切に対応できるように調達先の多様化を図っていきます。また、供給

面においては、グローバルレベルでの最適なサプライチェーンを追求することでカントリーリスクを排除し、競争優位の維持及び安定供給体制を構築していきます。

(8)人事採用・確保と人材育成に関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、生産・開発・販売、その他専門分野に携わる優秀な人材を幅広く採用・育成することで、グローバルな事業活動の推進と競争力の維持向上を図っています。しかしながら、人材の獲得競争の激化や社員の退職等によって十分な人材の確保・育成ができなかった場合、競争力の低下に繋がる可能性があります。また、当社グループの中長期的な成長は各従業員の能力に依存する部分が大きく、特に、高い技術力と技量を有する従業員の確保・技能の伝承は、当社グループの経営課題の一つです。このようなキーパーソンとなりうる人材を確保・育成できない場合には、当社グループの競争力が減退し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 当社グループの経営戦略の実現に必要な人材を育成・強化、維持する「人材活躍の最大化」戦略を推進して、チームメンバーや協力企業などを巻き込み組織やプロジェクトを牽引する『中核人材』と事業の最前線において高度な技能・知識・経験をもって「技術の日機装」の根幹を支える『専門人材』の育成強化に計画的に取り組みます。また、人材活躍の最大化を目指し、チャレンジを促進する自由闊達な組織環境作りに努めます。当社の人材戦略の詳細は「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (5)人的資本」に記載しています。

(9)情報セキュリティに関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループは、事業全般においてITシステムを活用していますが、システムに対するサイバー攻撃や、自然災害などの不測の事態によって、システムの長期間停止や、データ滅失が発生することで、安定した業務の継続が困難になる結果、当社グループが担う社会的使命を果たすことができず、グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> コンピューターウイルス対策などの外部攻撃から情報資産を防御するための技術的仕組みを導入し、サイバー攻撃によるシステム停止リスクを低減しています。ミッションクリティカルなITシステムは、立地、建造物、電源、空調等ファシリティに安全面の考慮と各種対策を施したデータセンターに設置された機器を用いて稼働しており、停電や自然災害によるシステム停止リスクを低減しています。業務上重要なシステムやデータは、遠隔地に設置されたバックアップ装置にコピーを保管し、機器の物理的破壊やプログラム・データの消失があっても、代替機を用意することで、システムやデータが復旧できるよう対策を講じています。

(10)コンプライアンスに関するリスク

<想定されるリスク> 当社グループの事業活動は地理的にますます拡大し、法規範や社会規範はさらに高度化し、複雑多岐にわたるうえ、社会の価値観は常に変化し続けます。当社グループは、国籍、人種、文化、信仰する宗教の異なる従業員で構成されています。当社グループの継続的なコンプライアンス活動の効果が及ばない場合には、これらのグループ内外の事情が当社グループの経営成績等や評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

<現在の対応策> 当社グループが事業活動を展開する国、地域における法規範、社会規範を遵守し、社会の期待に応えること、多様な価値観を許容することは当社グループの企業価値向上にとってもっとも重要な課題であるとの認識のもと、日機装グループ・グローバル行動規範の制定、反贈収賄規程の制定、グローバルな内部通報制度の拡充、コンプライアンス教育の継続などコンプライアンスに関する具体的な活動を継続します。

 

配当政策

3【剰余金の配当等の決定に関する方針】

 当社は、財務健全性、資本効率及び株主還元の最適なバランスを追求しつつ、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現していくことを基本的な資本政策としています。継続的かつ安定的な利益還元は当社の資本政策の重要な柱であるとの基本認識のもと、業績、経営環境などを総合的に勘案した利益還元を行っていくとともに、新規事業の育成、生産体制の強化に向け、内部留保を適正に再投資に振り向けます。

 中期経営計画「Nikkiso2025 フェーズ2」では、事業収益力の改善、財務健全性と資本効率性を前提とし、2025年の総還元性向35%を目安として、株主還元の安定的向上に取り組んでいます。

 

 当社は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めており、剰余金の配当は第2四半期末と期末の年2回を基本方針としています。当期の期末配当金は1株当たり15円とし、すでに実施しました中間配当金12.5円とあわせ、当期の年間配当金は、前期の25円から2.5円増額し、1株当たり27.5円となります。

 

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年8月14日

取締役会決議

827

12.5

2024年2月14日

取締役会決議

992

15.0