リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) リスク管理体制の概要
当社グループの事業活動に関する各種のリスク管理については、経営委員会及びリスク管理委員会の指示の下、コーポレート部門に設置したサステナビリティ推進チームがリスクに関する情報を収集・分析し、担当執行役員より経営委員会又は経営会議に報告します。各委員会・会議はリスク評価を行い、対応すべきリスクを確定しリスク対策の概要について協議するとともに、リスク対策の妥当性をリスクの種類に応じて審議します。審議の結果に基づき、代表取締役CEO又は取締役COOが子会社又は事業部門に詳細検討及び実行を指示し、実行状況を把握できる仕組みとしております。特に重要度の高いリスクに関しては、代表取締役CEO又は取締役COOがその対策の実行状況について取締役会へ適宜報告し、取締役会が重要度の高いリスクについて対策の実行状況を把握できる体制を整備しております。
(2) 戦略上のリスク
①地政学上のリスク(政治・経済体制の特殊性) |
重要度:高 |
リスクの概要 [リスク] ・米中経済・安全保障摩擦、ロシアによるウクライナ侵攻の戦況による世界経済・貿易への影響 ・当社グループ全体の受注高において高い割合を占める中東地域(アラブ首長国連邦、イスラエル、イラク、サウジアラビア、クウェート、カタール、バーレーン、オマーン、ヨルダン、トルコ)(2024年3月期において同地域が占める割合は約12.9%)及びアフリカ地域(エジプト、アルジェリア、チェニジア、モロッコ、リビア、ガーナ、ケニア、エスワティニ、スーダン、ナイジェリア)においては以下のリスクが想定される。 a)国家間紛争・内乱・動乱(海上封鎖等)による経済活動の困難性に伴う取引の中断・停止・市場からの撤退リスク b)経済制裁が発動されることによる市場へのアクセスが制約されるリスク c)法制度の未整備及び突然の変更に係る対応リスク [機会] ・他方で、同地域の経済発展の動向や人口の増加に伴う食糧生産・需要の高まりがインフラ事業の必要性を確たるものにしており、同地域の市場規模や成長性については他の地域と比較して見込みが高いと判断されるため、当社製品の市場開拓・サービス事業の拡大、現地顧客のニーズを踏まえた営業の機会がある。 ・特にエジプトやトルコについては、労働人口の層が厚く、教育水準も高いことから、同国への投資・市場開拓を通じて現地の優秀な人材の確保が可能になる。 ・さらに、エジプトについては、地理的にアフリカ大陸の交通の要所であり、北アフリカ市場への開拓を進める上で情報収集の重要な拠点になりうる。 |
|
主な影響 ・輸出入取引の制約により出荷・船積みが停止・中断し、計画どおりの売上げが未達となる事態の発生 ・決済不能・遅延による債権回収遅延・不能 ・不可抗力条項の適用による製品保管費用等のコスト負担 ・現地納入先での作業困難による取引遅延・未履行による契約解除費用の発生 ・う回路を使用することに伴う輸送コスト高騰リスク ・紛争当事国に専ら依存する原材料等の禁輸に伴う製造ラインの停止 |
|
対応策 ・主要マーケットの動向に関する現地拠点の責任者からの情報収集、分析、リスク評価・リスク評価に基づくプロジェクトマネジメントの実施 ・債権回収リスク低減のための決済条件交渉、貿易保険の付保 ・エジプトにおいては、エンドユーザーとの直接対話を通じたプロジェクト与信情報の把握 ・特定国への依存を可能な限り回避するための調達ルートの複数化 |
②サプライチェーンの多様化に伴うリスク |
重要度:中 |
リスクの概要 [リスク] ・新規調達先からの納入品に関して品質問題(製品の材質・組み込まれる部品等の品質不良)が発生するリスク ・安定的に供給できるグローバル調達網の構築に失敗するリスク(品質維持・改善のために指導を要する場合は、マネジメントコストや時間的コストが発生するリスクが考えられる。) [機会] ・他方で、特定地域の特定調達先への依存度を減らすことで、国際政治・経済環境の急激な変化や輸出入規制などの影響を受ける度合いを最小限に抑えることができる。 ・また、検品体制を含めたグローバル調達網の構築に成功すれば、海外顧客への直接納入が可能になり、顧客との取引において納期やコスト面で優位な条件を提示することで競争力の強化にもつながる機会がある。 |
|
主な影響 ・当該調達品の性能未達・納期遅れによって発生する顧客との取引における金銭的負担や交渉コスト(損害賠償請求への対応コスト)の発生 ・グローバル調達を担う人材の育成にかかるコストの発生 |
|
対応策 ・調達品の要求水準の標準化 ・新規調達先の工場視察・製造現場の課題把握・分析・評価による品質改善指導 ・グローバル調達に従事する従業員の人材開発 |
③気候変動に起因する最終顧客のニーズ変化 |
重要度:中 |
リスクの概要 [リスク] ・炭素税等のカーボンプライシングの導入に伴う事業コストの増加(資材調達コスト、生産・物流エネルギーコスト) ・CO2排出に係る規制・政策の強化(気候変動対策が自治体の入札要件となり、脱炭素社会に向けた取り組みの進捗が受注機会に影響を及ぼす) ・再生可能エネルギー電力の採用による生産コストアップ ・低炭素・脱炭素製品ニーズ拡大による既存製品の需要低下(例:火力発電市場の縮小) ・異常気象(豪雨や台風など)の頻発化・激甚化による資材調達や工事の遅延が発生、工期への影響を含めた事業コストへの影響 ・災害発生による保険料増額 [機会] ・省エネに対応した生産設備の導入による生産コスト低減 ・エネルギーミックスの変化(短期的にはバイオマス発電、高効率廃棄物焼却施設、地熱発電向けポンプの需要増加、中長期的にはアンモニア発電、水素発電向けポンプの需要増加) ・脱炭素・再エネ・省エネ技術の需要増(水素発電・アンモニア発電・CCUS等) ・減災技術の需要増(4℃シナリオでより顕著) ・水不足による海水淡水化プラント向け需要増 |
|
主な影響 ・生産コストの増大 ・従来の火力発電市場減少による受注減少 ・販管費の増加 ・低炭素・脱炭素製品ニーズの拡大による研究開発費等増加 ・食料増産・洪水対策・環境保護に配慮した製品の開発費増加 ・気候変動に対する社会的意識の高まりや評価制度(例:CDP)の進展等への対応不備によるレピュテーション低下 |
|
対応策 ・カーボンニュートラル社会に向けた新製品の開発(低炭素製品、水素・アンモニア向け製品の開発) ・顧客とのパートナーシップ構築・強化 ・既存製品の継続的改良・高効率化 ・食料増産・洪水対策・環境保護に配慮した製品の開発 |
④技術革新への対応 |
重要度:中 |
リスクの概要 [リスク] ・IOTやデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応が不十分となり、新規分野への参入が遅延するリスク ・新エネルギー分野(液化水素・アンモニア)向けポンプなど新製品開発に遅延又は失敗するリスク [機会] ・IOTやDXによる新たな需要の掘り起こし ・異種業界との協働による新たな知見・経験の習得、人材開発 ・他社に先行する分野の開発 |
|
主な影響 ・生産性の低下 ・製品開発費用ののれん償却 ・製品の競争力の低下 ・新規マーケットの喪失 ・優秀な研究開発員の確保や新規雇用が困難になる結果、従業員の士気低下 |
|
対応策 ・従業員のDX教育の推進、DX実施による従業員のスキルアップ ・自社の研究開発に従事する従業員の人材開発 ・研究トップレベルの大学との共同研究 ・主要顧客であるプラントメーカとの技術提携 |
(3) オペレーション上のリスク
①サイバーセキュリティとシステム |
重要度:高 |
リスクの概要 [リスク] ・ITシステム障害 ・サイバーインシデント(ランサムウェア攻撃により、電子ファイルが暗号化され事業活動が停止、あるいは情報漏洩が発生するリスク) ・誤操作又は不当な目的をもった役職員による情報漏洩(人為的リスク) [機会] ・サイバーセキュリティインシデント対応に備えた従業員教育による従業員の情報リテラシーの向上 ・サイバーセキュリティインシデント対策の策定による事業運営の安定性確保 |
|
主な影響 ・技術情報の流出 ・顧客からの信頼喪失 ・対応費用等発生による財務状況の悪化 |
|
対応策 ・情報機器についてはデータへのアクセス制御やパスワードの厳重管理を徹底 ・中核となる技術情報や営業情報についてファイヤーウォールを設け、システム障害による影響を最小限にとどめる措置の実施 ・従業員への情報セキュリティ教育の周知徹底 ・とりわけ、コンピューターセキュリティインシデントが発生した場合の被害を最小限にとどめることを目的に設置した部署横断的な対応組織(Torishima Computer Security Incident Response Team; CSIRT)によるインシデント対応計画の策定やインシデント予防のための意識及びスキル向上のための啓発活動の実施 |
②人材(確保と維持) |
重要度:高 |
リスクの概要 [リスク] ・業務に必要な人材の確保困難 ・技術承継の失敗 [機会] ・採用母集団の拡大、多様な人材採用方法の確立 ・特殊技能の可視化、多角的な教育プログラムの整備、技術習熟者の教育意欲向上 |
|
主な影響 ・公共工事等の受注要件を満たせない ・事故等のリスク ・外注利用等によるコスト上昇 |
|
対応策 ・積極的な技術承継の場として社内に設置した「モノづくり道場」等を通した取り組みの継続 ・採用活動の充実化 ・外注先の事業継承による技術の取り込み ・特殊技能への依存度の低減、業務の属人化防止、データ活用によるDXの推進 |
③自然災害 |
重要度:中 |
リスクの概要 天災地変や異常気象(洪水、台風)に伴う操業の一時停止 |
|
主な影響 ・生産地域が大阪府高槻市の本社工場に集中していることから生ずる生産能力の一時的低下 ・設備破損や提携先被災による事業継続困難 ・工場設備の復旧や修理等の費用発生による財政状態の悪化 ・納期遅れによる遅延損害金の支払い |
|
対応策 ・BCP策定・継続的見直し ・サプライチェーンのマネジメント強化 |
④安定的な調達の維持 |
重要度:中 |
リスクの概要 協力会社の廃業等による主要部品の供給や工事施工の困難 |
|
主な影響 ・代替部品の調達によるコスト上昇 ・品質維持困難 ・納期遅延 |
|
対応策 ・代替供給先の発掘 ・協力会社の経営支援 ・安定的な関係構築 |
⑤為替リスク |
重要度:中 |
リスクの概要 急速な円高又は円安 |
|
主な影響 ・為替変動による輸入コストの上昇(円安) ・外貨建て売上減少による損益の悪化(円高) |
|
対応策 ・外貨ポジションの把握 ・為替予約の実施 |
⑥財務リスク |
重要度:中 |
リスクの概要 金利の上昇 |
|
主な影響 ・支払サイトの長短ギャップ拡大による資金繰りの悪化 ・資金繰り悪化による借入増加時の支払い利息の増加 ・金利支払負担による営業外費用の増加 |
|
対応策 ・支払サイトの長短ギャップ発生原因の分析に基づく対応策の実施 ・個別案件における債権回収促進及び遅延の予防 |
⑦有価証券の保有にかかるリスク |
重要度:中 |
リスクの概要 株式市場及び経済環境の動向による保有有価証券の株価下落 |
|
主な影響 経常利益の減少を含む財政状況の悪化 |
|
対応策 保有有価証券の売却及び見直し |
⑧品質と安全性 |
重要度:中 |
リスクの概要 新しい市場向け製品や技術的難易度の高い製品における不具合発生 |
|
主な影響 ・事故の発生等による顧客信用の失墜 ・不具合修理費負担又は損害賠償請求による損失発生 |
|
対応策 「トリシマ品質」の継続的向上 |
⑨安全衛生 |
重要度:中 |
リスクの概要 ・工事現場作業に関連する健康及び安全に係る重大なインシデント(重大な傷害又は死亡)の発生 ・パンデミックの発生 |
|
主な影響 ・作業現場等での事故の発生 ・多額の賠償金や顧客信用の失墜 ・クラスター発生による営業活動の縮小・工事遅延 |
|
対応策 ・定期的な安全衛生大会等の開催 ・定期的な安全パトロールの実施 ・適切な感染症対策 |
⑩係争リスク、倫理・コンプライアンス |
重要度:中 |
リスクの概要 法令・社内規程や倫理規範違反が発生するリスク、訴訟、クレーム紛争 |
|
主な影響 ・敗訴による多額の損害賠償や事業の差止等 ・法令違反による営業停止 |
|
対応策 ・ガバナンス体制の整備 ・主要関係国の輸出管理規制の把握及び子会社への周知徹底 ・取引当事国の投資関係法・基本法・破産法等の最低限の知識・情報収集 |
*重要度とは、当社グループの事業活動の実績及び見込みを踏まえた上で、当社グループ事業への影響度及び当該
リスクが顕在化する蓋然性の二つの観点から総合的に判断した評価基準であります。
配当政策
3【配当政策】
当社の配当方針は株主の皆様への安定的配当を継続することを基本とし、新たな成長のための投資に利益を配分すると共に、株主の皆様への利益還元重視の姿勢をより明確にするため、純資産配当率(DOE)3%及び配当性向35%を目安に、累進配当を目指してまいります。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
なお、当社は機動的な資本政策が行えるように、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。
また、会社法第454条第5項に定める中間配当についても、取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。
当事業年度は、上記の基本方針に基づくとともに、株主各位の日頃のご支援にお応えするため、1株当たり普通配当30円とし、既に実施済みの中間配当金28円を合わせ年間1株当たり58円とさせていただきました。
また、内部留保資金につきましては、新たな成長を目指して、①高度化するポンプ及び関連機器に対する新技術・新製品開発、②ポンプ等のサービス市場に対応するソフトウェア開発及びサービスネットワーク拡大、③生産性向上・生産能力拡大のための設備投資、④地球環境保全のための環境事業展開等のために有効に投資してまいりたいと考えております。
なお、当社は連結配当規制適用会社であります
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2023年11月10日 |
取締役会決議 |
749 |
28 |
2024年5月14日 |
取締役会決議 |
802 |
30 |