リスク
3【事業等のリスク】
以下において、当社グループが事業を展開していく上で、特に重要と考えるリスクを記載しております。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に対する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、本文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)太陽電池市場の停滞又は減速
a.リスクの内容
当社グループの売上高は太陽電池業界向けの割合が高く、将来何かしらの理由により、太陽電池の普及が停滞あるいは減速した場合、減損損失の発生を含め、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
太陽光パネルの新規設置に影響を受ける製品やサービス(太陽電池製造装置、太陽光発電所の竣工前検査等)以外にも、既に設置されたパネルに対する製品やサービス(太陽光発電所の検査機器や検査サービスの提供等)、排出パネルに対する製品やサービス(リユース販売、パネル解体装置、中間処理業等)のように、太陽電池の製造から廃棄まで幅広く事業を展開することで、当該リスクによる影響を低減させる取り組みをしています。また、太陽電池業界以外のFA装置や新規事業にも力を入れることで、太陽電池業界以外の売上高を増やしています。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
太陽電池の経済性の向上や環境意識の高まりを受け、太陽電池の設置は世界的に広がりを見せています。中長期的にも堅調に普及することが期待されており、当該リスク発生の可能性は低いと考えています。
(2)為替の変動
a.リスクの内容
当社グループは数多くの海外企業と取引しており、海外売上高比率は8割を超えています。そのため、為替が円高傾向となる場合には、為替差損が発生する可能性があることや、海外の競合メーカーと比較して価格競争力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、円安傾向となると海外調達コストが上がり、原価への影響が出る可能性がありますが、現段階では海外調達比率が低いためにリスクレベルは低いと考えます。
b.リスクへの対応策
為替差による損益への影響を抑えるため、基本的に海外顧客との取引通貨は円建てとしています。また、例外的に外貨建て取引をする場合については、ある一定の規模を超える取引については為替予約を行っています。また、競争力の高い製品やサービスを提供するため、常に品質向上に努めるとともにコストダウンを図っています。円高傾向となった場合には海外調達比率を上げることがひとつの対策となります。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
為替の変動は様々な要因により発生するものであるため、当社が将来的な動向やリスク発生の可能性を予想することは困難であります。しかしながら当事業年度において、歴史的な円安により日本経済全体が影響を受けており、この状況が続く限り当社業績については、上述のとおり海外調達比率が低く国内調達が中心となっているため、影響は限定的です。
(3)売上計上時期や個別案件の利益率に伴う業績変動
a.リスクの内容
顧客の都合による設計変更や検収時期の変更等が発生する場合があり、当初予定していた売上計上時期が後ろ倒しになることで短期的な業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが提供する製品やサービスは案件毎の利益率が一定ではないため、個別案件の積み上がり状況によっては短期的に利益率が変動する可能性があります。更に、開発要素を含む案件を戦略的に受注した場合や、設計や製造工数の超過等により原価が想定以上となった場合、当初想定していなかった製品の不具合等が発生した場合は、通常見込まれる利益率が確保できない場合があります。
b.リスクへの対応策
基本的に品質マネージメントシステム(ISO9001)に則して、顧客との認識の齟齬によるリスクを発生させないため、ミーティングの際には議事録を作成し、顧客から当該議事録の確認を受けています。客先要求事項を精査したうえで担当部門が試算し、精度の高い見積りをしています。受注後は、複数回のミーティング(デザインレビュー)を実施することで、顧客の要望や当社が対応すべき事項を各部署の担当者が情報共有しています。製造段階においては、製作途中の大型案件について定例幹部会で工程の進捗状況をレビューすることで、費用の超過が発生していないか等を確認し、必要に応じて対策をしています。最終的な売上段階においては、仕様未達による検収遅れのリスクを低減するため、装置の出荷に先立って、松山工場で要求する仕様を満たしているかどうかを顧客立ち合いの下で確認しています。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
当該リスクは常に発生する可能性はありますが、当事業年度及び前事業年度の決算は概ね期初に発表した業績予想どおりとなり、年間を通じた場合には大きな業績変動は発生していません。なお、大型案件の場合には売上高が10億円を超えるものもあることから、仮に発生した場合には期初に発表した業績予想から大きく変動する可能性があります。
(4)大口顧客の事業環境の変動による影響について
a.リスクの内容
当社グループの売上高比率は、自ずと規模の大きい企業又は設備投資に積極的な企業に対する割合が高くなります。現在、特に米国の太陽電池メーカーであるFirst Solar, Inc.及びその子会社(以下「First Solar社」という)に対する当社グループの売上比率が高い状況でありますが、同社の事業環境が大幅に縮小した場合や、同社の信用力が低下した場合、当社との取引が減少した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
First Solar社に対しては今後も安定的な取引が継続できるよう、研究開発やコストダウンに力を入れ、より高品質で低コストな装置を提供することで関係の強化を図っています。また、米国へ工場を設置して同社へのサービスを充実させると同時にハイエンドな製造装置を必要とするFirst Solar社以外の太陽電池メーカーへの販売を強化し、米国での太陽電池業界以外の様々な業界へFA装置の提供をしてまいります。また、市場の拡大が見込まれている環境関連事業を引き続き伸ばしていくことで、業績が特定顧客のみに依存する状況の解消を図っています。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
First Solar社はNASDAQ上場企業であり、信用力が高く財務体質が安定しています。また、同社がメインターゲットとしている米国の太陽電池市場は非常に堅調であり、今後も継続した成長が期待されております。また、当社グループは同社と長年の取引実績があり、信頼関係も構築していることから、取引が急激に減少する可能性は低いと考えています。しかしながら、現時点における依存度は非常に高いことから、仮にリスクが顕在化した場合は当社の業績に大きな影響を与える可能性があります。
(5)部品の長納期化
a.リスクの内容
半導体不足等様々な要因により、当社装置に使用する電装品をはじめとした部品が長納期化し、装置製造に要する期間が通常より長くなる場合があります。状況が悪化した場合、装置に必要な部品が確保できず、製品を出荷できなくなる、あるいは製品の長納期化により顧客の要望に応えられない、通常とは異なるルートからの調達によるコスト増により製造原価が増加する等の事態により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
部品不足の場合は、代替品の調達や、海外子会社を利用した海外調達によって製造に必要な部品を確保しています。また、顧客との納期の交渉によって十分な装置製造期間を確保しています。当社はオーダーメイド装置を製造しており、設計段階で部品を選定できるため、代替品の調達により製造を継続することができます。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
前期において部品の長納期化が世界的に発生しておりましたが、現在は平常の納期に戻りつつあります。同様の事態が再度起こった場合は、装置売上時期の遅れなどにより業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)部品・原材料の価格上昇
a.リスクの内容
部品全般について価格の上昇が発生しています。価格の上昇が継続する場合、製造原価が増加し利益を圧迫する等の事態により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
当社グループはオーダーメイド装置を製造しているため、見積もりの時点で部品価格を装置価格に反映させています。また、仕入先との交渉により、仕入価格の抑制に努めています。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
当社の製造原価における材料費の割合は約60%と高く、部品価格の上昇は当社の業績に大きく影響します。翌事業年度の業績予想においては、すでに部品の価格上昇を反映した販売価格による契約ができているため、一定の利益率を確保できる見込みです。
(7)輸送コストの高騰
a.リスクの内容
当社グループの売上における海外案件の比率は、会計年度により異なりますが、6~8割と高く、海外への製品輸送及び海外からの部品調達には船便を使用しております。原油価格の高騰等の影響で船便の輸送コストが高騰しており、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
当社グループにおける海外顧客との一部の取引については、船積み時点で費用負担が移転する契約であり、輸送コストは顧客負担となるため、世界的な運輸コストの高騰の影響をほぼ受けておりません。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
輸送コストの高騰により、部品の海外調達におけるコストは常に増加する可能性があります。
(8)自然災害の発生
a.リスクの内容
当社グループは、愛媛県松山市に工場を有しておりますが、同地域で想定を超える大規模な自然災害が発生し、工場の生産能力が減少もしくは無くなった場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
松山工場での生産方法は製造設備を使用してライン生産するのではなく、セル方式で製造部員が装置を組み立てる方法であるため、工場が被災した場合でも人員とスペースが確保できれば事業を継続できる体制となっています。現在、生産体制の強化のため製造を協力会社へ一部委託する体制ができており、充分な人員とスペースが確保できない場合においても、協力会社での生産を増やすこと等で臨機応変に生産能力を確保できます。なお、装置図面等の事業上の重要情報や会計データについては、社内ネットワークでバックアップ体制を構築しており、速やかに復旧できる体制を構築しています。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
保険会社が評価している自然災害リスクの評点において、当社松山工場の所在地で今後30年以内に震度6強を超える地震が発生する確率は18.4%とされています。また、全国を13地域に区分する場合、松山工場は四国地域に該当しますが、台風接近数は13地域中8番目となっています。しかしながら、津波被害、洪水被害、土砂災害についてはリスクが低いとされており、一般的に他地域よりリスクが顕在化する可能性は低いと考えています。
(9)繰延税金資産に関するリスク
a.リスクの内容
当社グループは、将来減算一時差異に対して繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づいており、その予測・仮定が変更された場合や、税率変更を含む税制改正、会計基準等の改正が行われた場合には、繰延税金資産の計算の見直しが必要になり、当社グループの当期純利益に影響を与える可能性があります。
b.リスクへの対応策
繰延税金資産の回収可能性の評価にあたり基準とした利益計画の実現可能性について慎重に検討を行い、合理的かつ保守的に見積った課税所得について繰延税金資産を計上することとしております。また、回収可能性を定期的に見直しております。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
当社グループの売上構成において多くを占める主要顧客の設備投資の有無により、事業年度ごとの利益計画が変動すること、また税制等の改正は予期せず行われることから、当該リスクは常に発生する可能性があります。
(10)受注増による生産能力不足
a.リスクの内容
受注の急激な増加や、技術者の高齢化による人員不足等により、装置の生産能力が不足した場合、納期の超過、要求仕様の未達、受注機会の損失等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.リスクへの対応策
装置の組立に関しては、協力会社の業務委託や派遣社員の受け入れにより、設備投資を行うことなく生産能力を拡大しております。他方、設計および電気設計に関しては業務委託が不可能なため人員増強が必要であること、また技術者の高齢化への対応として、若手技術者の採用を強化し教育を行っております。また、製造スケジュールを綿密に調整し、顧客との交渉により十分な納期を確保しています。
c.リスクが顕在化する可能性の程度や時期
顧客からの納期短縮の要求が強まった場合や、受注が急激に増加した場合等、当該リスクは常に発生する可能性がありますが、生産体制の見直しや顧客との交渉により十分に対応可能と考えております。
これらの重要なリスクに加え、訴訟リスク、知的財産を侵害される又は侵害するリスク、法的規制に伴うリスク、カントリーリスク、情報セキュリティリスク等、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性のある様々なリスクが存在しています。
なお、新型コロナウイルス感染症による当社グループへの影響につきましては、業績に与える影響は軽微な状況であります。しかしながら、今後の感染拡大状況により、事業活動への制限や経済への影響等が発生する場合は、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、安定的な利益配分の継続を目指すとともに、財務体質の強化を図り、将来の利益拡大のための設備投資や研究開発等に必要な内部留保の充実に努めており、各期の経営成績、財政状況等を総合的に勘案した上で、期末配当として年1回の剰余金の配当を実施することを基本方針としております。
また、当社は、会社法第454条第5項に定める中間配当制度を採用しております。なお、剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の1株当たり配当金に関しましては、当期の業績、財務状況等を総合的に勘案し、2023年11月29日開催の当社第31期定時株主総会におきまして、1株当たり配当額6.0円、配当総額129,195千円の配当案を付議し承認可決されました。