2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 13,853 100.0 2,679 100.0 19.3

事業内容

3【事業の内容】

当社は、空調関連機器の製造、販売及び関連工事等、空調機器製造販売事業を営んでおり、その事業内容は以下のとおりです。

なお、当社は空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(1)事業の特徴

当社は、1945年に創業し、1952年にプレートフィンヒーター・クーラーの製法(※)を確立したことを契機に、約70年にわたり業務用空調の製造販売に特化して事業を営んでまいりました。

その間、社会全般の快適空間への欲求の高まりや地球環境・社会情勢の変化等により、空調に対する要求も大きく変化しており、オフィスビル、商業施設、工場、学校、病院など要求は多様です。

当社ではその要求に応えるべく以下の特徴を生かし事業を遂行しております。

○技術力

特許に裏付けられた技術により、独自性の高い製品を顧客に提案しております。また、当社は、お客様の利用環境および当社製品に合わせた制御システムを内製できる技術も持っております。

※特許取得済み件数193件、申請件数16件(国内海外合計 いずれも2024年3月末現在)

○生産力

当社の生産は、個別受注生産を基本としており、高い品質の製品を効率的に生産することができるよう設備および人材を配備することに取り組んでおります。

○営業力

当社の営業は、積算業務を自ら手掛けるなど、製品、技術に関する知識、経験を積み重ねております。さらに、迅速に技術的なサポートができるよう技術本部と密接につながった営業技術部門を主要営業拠点に配置しております。

○製品力

空気調和機の中でも、導入外気を冷却・加熱するほか、換気、除塵、除加湿などの空気質改善を主な目的とする空調機のことを外調機といいます。当社のヒートポンプ式の外調機は、細やかな調温調湿が可能です。

中でも、室内機と室外機とを一体化させた「ルーフトップ」シリーズは、フロンの使用量が非常に少なく、漏洩リスクを極力抑えることができるなど環境面でも考慮しており、当社の主力製品となっております。

また、当社の工場用ゾーン空調機は、除湿を重視した大空間空調が可能で、暑熱対策が必要な工場において有用です。

なお、これら含め当社製品は、営業部門が集約した年間約2千件のお客様のご意見、ご要望をもとに、開発、改良されております。

 

※プレートフィンヒーター・クーラーの製法

プレートフィンヒーター・クーラーとはアルミプレートに銅管を取り付けた熱交換機です。効率よく空気と水をプレートフィンで熱交換させるためには、銅管とアルミプレートを完全に密着させる必要があり、銅管を内部から円周上に広げる製造工法(いわゆる拡管)でこれを実現しました。当初は自動の拡管機がなく、手回しのウインチを使い、腕力に頼りながら製作していました。

 

(2)当社の取引先について

当社の製品が、最終需要者である施主・オーナーの各種建築物に設置されるまで、複数の段階を経ますが、当社の取引先は各段階における専門事業者および施主・オーナーの企業となります。

各段階における専門事業者とは、総合建設業者(ゼネコン)、設備工事業者(サブコン)などになります。

 

 

[事業系統図]

(参考)

※1 得意先:施主・オーナー、空調機器設置先等

※2 販売先:総合建設業者、設備工事業者

※3 提携工事会社:空調機器設置会社・設備工事業者等

 

(3)主な製品

冷温水式エアハンドリングユニット(AHU/エアハン)

冷却・加熱を行うために必要な熱源装置を別途設け、水を熱媒体として空気の冷却・加熱を行う装置のことです。

 

冷温水式FCU(ファンコイルユニット)

冷却・加熱を行うために必要な熱源装置を別途設け、冷水・温水・蒸気などを用いて冷暖房を行う装置のことで、主に室内側に装置を設置し、個別空調が必要とされる建物の熱負荷処理に用いられます。
エアハンドリングユニットとは異なり、外気を取り入れる機能を有していないため、別途外気を取り入れる機器を設置する必要があります。

 

空冷ヒートポンプ(HP)式空調機&外調機

冷却・加熱を行うために必要な熱源装置を別途設け、冷媒ガスを熱媒体として空気の冷却・加熱を行う装置のことです。その中でも外気の冷暖房のほか、換気、除塵、除加湿などの空気質改善を主な目的とする空調機のことを外調機といいます。

 

冷温水式&空冷ヒートポンプ(HP)式工場用ゾーン空調機

工場、ホールなどの比較的大空間を空調する機器のことであり、局所的な空調を目的とするスポット空調ではなく作業エリア全体をゾーン単位で冷暖房を行う機器のことです。冷温水式とヒートポンプ(HP)式があります。

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

当社は、空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。

 

①財政状態の状況

当事業年度末における総資産は、前事業年度末より2,490,190千円増加し、20,160,222千円となりました。

当事業年度末における負債は、前事業年度末より594,754千円増加し、10,510,198千円となりました。

当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,895,435千円増加し、9,650,023千円となりました。

 

②経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み、設備投資の進展や個人消費の持ち直しが見られるなど景気は緩やかな回復基調にありました。一方で、資源・エネルギー価格高騰の長期化、世界的な金融引き締めによる為替変動、地政学リスクの高まりなど、企業の経営環境は依然として不透明な状況が続いております。

このような中、当事業年度の売上高については、コロナ禍で先送りされた設備投資の再開、生産体制の国内回帰の増加等に伴う国内設備投資需要を取り込めたことにより堅調に推移しました。産業分野においては、暑熱対策および空気質改善気運の高まりにより、工場用ゾーン空調機およびルーフトップ外調機を中心に導入が増加しました。商業分野においては、「換気」「省エネ」対策のため、オフィスビルを中心に熱回収外調機の更新需要が増加しました。

利益面においては、当社独自製品の売上が大幅増加したことに加え、生産工程の見直しや部品調達の多様化によるコスト低減などにより営業利益率が順調に改善し、対前年において増加となりました。

製造部門においては、八尾製作所内の主工場棟、管理棟の建て替えが完了しました。2023年9月8日公表の「八尾製作所の一部建物の建て替えに関するお知らせ」のとおり、残る工場棟の建て替えにも着手しております。さらに、八尾製作所および河芸製作所に試験研究棟の建設を予定しております。これにより、生産能力の強化、技術力の発展に一層取り組んでまいります。

また、全製作所においてCO2フリー電力を導入し、カーボンニュートラルに向けた省エネ製品開発とともに製造過程に発生するCO2排出削減へ積極的に取り組んでおります。

この結果、当期の経営成績は、売上高13,852,563千円(前年同期比18.4%増)、営業利益2,679,415千円(同70.4%増)、経常利益2,682,596千円(同71.1%増)、当期純利益2,065,512千円(同99.2%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純利益が2,681,959千円、有形固定資産の取得による支出1,449,536千円、長期借入れによる収入500,000千円、棚卸資産の増加額483,013千円等により1,716,096千円(前事業年度末は1,338,085千円)となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は2,000,629千円(前事業年度は548,267千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が2,681,959千円、棚卸資産の増加額483,013千円、減価償却費447,943千円、仕入債務の減少額372,441千円、売上債権の増加額367,191千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,504,422千円(前事業年度は2,193,632千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,449,536千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は118,196千円(前事業年度は733,822千円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入500,000千円、短期借入金の純減少額255,000千円、長期借入金の返済による支出176,191千円、配当金の支払額143,519千円、自己株式の取得による支出81,285千円等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

 当社は、空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績につきましては、品目別に記載しております。

a.生産実績

 当事業年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

冷温水式AHU(千円)

2,337,840

121.3

冷温水式FCU(千円)

826,083

90.2

空冷HP式空調機&外調機(千円)

8,156,185

141.0

冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機(千円)

1,611,102

129.7

その他(千円)

2,352,045

107.8

合計(千円)

15,283,257

126.8

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

冷温水式AHU

2,379,379

122.3

967,693

126.8

冷温水式FCU

890,736

94.4

222,912

134.8

空冷HP式空調機&外調機

6,361,167

83.7

3,352,076

82.7

冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機

1,387,621

91.0

895,691

104.3

その他

2,306,924

97.4

554,590

81.5

合計

13,325,828

92.6

5,992,965

91.9

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

冷温水式AHU(千円)

2,174,978

116.8

冷温水式FCU(千円)

833,226

93.0

空冷HP式空調機&外調機(千円)

7,060,513

119.7

冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機(千円)

1,351,075

142.5

その他(千円)

2,432,768

115.9

合計(千円)

13,852,563

118.4

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は特定の顧客への売上高が10%以上でないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの経営成績の状況の記載を省略しております。

a.財政状態

(資産)

当事業年度末における総資産は、20,160,222千円(前事業年度末17,670,032千円)となり、2,490,190千円増加いたしました。これは主に、有形固定資産の増加1,134,859千円、棚卸資産の増加483,013千円、現金及び預金の増加378,010千円、売上債権の増加367,191千円等によるものであります。

(負債)

当事業年度末における負債は、10,510,198千円(前事業年度末9,915,444千円)となり、594,754千円増加となりました。これは主に、未払消費税等の増加274,188千円、未払法人税等の増加260,895千円、未払金の増加192,359千円等によるものであります。

(純資産)

当事業年度末における純資産は、9,650,023千円(前事業年度末7,754,588千円)となり、1,895,435千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上による増加2,065,512千円の計上、自己株式の取得による減少81,077千円、剰余金の配当による減少143,495千円等によるものであります。

 

b.経営成績

(売上高)

経済活動の正常化が進み、コロナ禍で先送りされた設備投資の再開、生産体制の国内回帰の増加等に伴う国内設備投資需要を取り込めたことにより、売上高は堅調に推移しました。産業分野においては、暑熱対策および空気質改善気運の高まりにより、工場用ゾーン空調機およびルーフトップ外調機等の導入が増加しました。商業分野においては、「換気」「省エネ」対策のため、オフィスビルを中心に熱回収外調機の更新需要が増加しました。この結果、売上高は13,852,563千円(前年同期比18.4%増)となりました。

(売上原価、売上総利益)

売上原価は、前事業年度に比べ629,774千円増加し、7,640,240千円となりました。売上総利益は前事業年度に比べ1,519,546千円増加し、6,212,322千円となりました。これは主に、当社独自製品の売上が大幅増加したことに加え、生産工程の見直しや部品調達の多様化によるコスト低減などによるものであります。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ412,929千円増加し、3,532,907千円となりました。これは主に、人件費の増加および売上増加による荷造運搬費の増加によるものであります。

以上の結果、営業利益は前事業年度に比べ1,106,616千円増加し、2,679,415千円となりました。

(営業外損益、経常利益)

営業外収益は、前事業年度に比べ14,473千円増加し、49,241千円となりました。これは主に、設備投資による補助金収入および公租公課の還付によるものであります。また、営業外費用は、前事業年度に比べ6,320千円増加し46,059千円となりました。これは主に、支払利息の増加によるものであります。

以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ1,114,770千円増加し、2,682,596千円となりました。

(特別損益、当期純利益)

特別損失は、前事業年度に比べ140,652千円減少し、636千円となりました。これは、前事業年度において、八尾製作所の建物建て替えに伴う固定資産除却損が発生したことによるものであります。

以上の結果、当期純利益は前事業年度に比べ1,028,370千円増加し、2,065,512千円となりました。

 

当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、市場動向、資材価格の動向、災害・事故・感染症拡大等、様々なリスク要因があると認識しております。

当社の事業が関係する空調業界におきましては、従来の快適性に加え、健康で衛生的な空間の実現が求められると同時に、省エネや温室効果ガス削減等の環境対応、製造現場の暑さ対策等の労働環境改善など持続可能な社会の実現に向けての欲求が高まっております。

市場動向に対しては、分野・用途毎に多様性のある空調ニーズに応えるため、先進的で付加価値の高い空調システム機器の開発を進めることで対応します。

資材価格の動向に対しては、鋼材、非鉄金属、原油等の価格上昇への対応として、資材取引先と従来以上に密接な情報交換を行うことにより関係を強化し、更なるコスト削減に努めてまいります。

災害・事故・感染症拡大に対しては、事前の対応策の立案、現場作業に携わる作業員の意識改革等の継続的な現場管理活動により、事業継続へ影響を与えるような災害・事故・感染症拡大の抑制に努めます。

今後は、エネルギー、資源価格上昇の長期化、世界的な金融引き締めによる為替変動、ウクライナ、中東における地政学リスクの高まりにより、企業の経営環境は不透明な状況が続くものと考えられます。

空調業界におきましては、地政学リスクやサプライチェーン対策による生産体制の国内回帰等、国内の設備投資需要は今後も続くものと考えられます。さらに、温暖化の傾向や工場現場の人手不足等の影響により、暑熱対策、空気質改善への取り組みも増えてくると考えられます。

このような中、当社は、製品開発については、斜平形楕円管熱交換器を搭載した新製品の開発を進め、省資源、省コスト化できる製品からシステムまでを提案してまいります。主な開発内容については、「第2 事業の状況の6 研究開発活動」に記載のとおりであります。

生産活動については、八尾製作所の主工場棟、管理棟の建て替えが完了し、生産力の増強に取り組むとともに、生産工程での脱炭素化の実現に努め、サステナビリティを推進してまいります。

販売面については、従業員の定着化を狙った現場環境改善、暑熱対策等のための需要を取り込むとともに、「陽圧換気空調システム」の営業活動を展開してまいります。さらに、通常の換気で発生する結露、カビ問題対策のための外調機関連の提案を積極化してまいります。

 当社はこれら空調技術の進歩発展を通して社会に貢献することにより、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の必要資金は、当社製品の製造販売に係る原材料費、経費、販売費及び一般管理費等の運転資金および設備投資に係る投資資金が主なものです。

財政状態は健全性を保っており、現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えています。

また、金融市場の混乱等、緊急に資金が必要となる場合に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、資産・負債や収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りおよび判断・評価は、過去の実績等を勘案し合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営上の目標の達成状況について

当社は売上高営業利益率を重要な経営指標として位置付けております。当事業年度における売上高営業利益率は19.3%(前年同期比5.9ポイント改善)であります。引き続きこの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。