リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1) 事業環境に関するリスクについて
① インターネット広告市場について
当社グループのマーケティングテクノロジー事業は、インターネット広告市場を主たる事業対象としておりますが、広告業界においては、景気動向によって広告への支出を増減させる広告主が多いため、景気変動の影響を受けやすい傾向にあります。また、インターネット広告業界においては、技術、顧客ニーズ及び競争が急速に変化することから、頻繁に新しい商品及びサービスの導入、新たな競争相手等が出現しており、当社グループにおいてもこれらの変化等に迅速に対応していく必要があります。
インターネット広告市場は、テレビ広告市場を上回るまでに成長しておりますが、今後これらの状況に変化が生じ、企業がインターネット広告への支出を削減する場合、また当社が急速な環境変化への対応が遅れる場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② プログラマティック広告取引について
当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad(ロジカド)」は、プログラマティック(RTBによるインターネット)広告取引に特徴があります。プログラマティック広告は、広告の費用対効果を高め、効率的な広告出稿を実現するテクノロジーとして、国内の広告業界でも相応のシェアを占めるにいたりました。しかしながら、一部メディアでは従来の非プログラマティックな広告取引への回帰がみられるなど、その将来性はいまだ不透明な部分があることから、今後においてプログラマティック広告の普及及び利用が想定どおり推移しない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 技術革新について
当社グループは、ビッグデータ処理、人工知能、金融工学の専門家を採用し、開発チームとして組織することで、新技術の開発に積極的に取り組んでおります。しかしながら、何らかの理由により、当社グループにおいて急激な環境変化への対応が遅れた場合には、サービスの陳腐化、競争力低下等が生じる可能性があり、また、対応が可能であったとしても、追加の多大な費用や投資の負担が発生する可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 競合について
当社グループのマーケティングテクノロジー事業における主な競争相手は、国内外において複数社存在しており、今後も競合他社による新規参入、市場環境の変化等により、競争が激化する可能性があります。また、競合他社の中には、当社グループに比べ強い財務基盤、広い顧客層及び高い知名度などを有している企業、当社グループにはないサービス及び商品を提供する企業があります。当社グループはプロダクトの競争力の源泉であるビッグデータ処理、人工知能、金融工学の3つをコアテクノロジーとして強化していくことで、競合他社と比較して競争力の高いプロダクトを継続して開発していく方針であります。しかしながら、競合先の営業方針、価格設定及び提供するサービス及び商品は、当社グループの属する市場に影響を与える可能性があり、これらの競合先に対し効果的な差異化を図れず、当社グループが想定している事業進展が図れない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 法的規制について
インターネット関連分野においては、インターネット上のプライバシー保護の観点からcookie(ウェブサイト閲覧者のコンピューターにインストールされ、ユーザーのウェブ閲覧履歴を監視するテキストファイル)に対する規制など、インターネット利用の普及に伴って法的規制の在り方等については検討が引き続き行われている状況にあります。このため、関係諸法令の改正の動向によっては新たな法令遵守体制の構築が必要とされる可能性があり、今後、当社の事業運営において何らかの法規制に関連する紛争が発生した場合には、その管轄地、準拠法を含め、当該紛争に関する法的判断を的確に予想することができず、当社が法的リスクを負担せざるを得ない状況となる恐れがあります。また、今後のインターネットに対する日本を含む各国の法規制のあり方次第では、当社グループの将来の事業展開が制約を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、知的財産権について、過去もしくは現時点において、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したことによる損害賠償等の訴訟が発生している事実はありませんが、今後、当社グループの事業分野で当社グループの認識していない特許等が成立した場合又は競合他社が特許等を取得した場合、その内容によっては競争の激化又は当社グループへの損害賠償やロイヤルティの支払請求、使用差止請求等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関するリスクについて
① DSPにおける仕入先について
当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」は、取引形態の性質上、広告枠を提供するSSP事業者又はアドエクスチェンジ事業者からの広告枠の仕入が必要となります。当社においては、新規仕入先の開拓等の施策により、広告枠の確保に努めております。しかしながら、SSP事業者又はアドエクスチェンジ事業者の方針、事業戦略の転換等によって、取引が継続されず広告枠の仕入ができなくなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② DSPにおける販売先について
当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」の大部分は、広告代理店を経由し広告主へ販売されております。当社グループにおいては、勉強会の開催による当社プロダクトの紹介、新規広告代理店の開拓等の施策により、広告代理店との関係性強化に努めております。しかしながら、主要広告代理店の販売状況や経営環境に変化が生じた場合、もしくは主要広告代理店が他の競合サービスの取り扱いを増やした場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 季節変動について
当社グループのアドテクノロジーの売上は、広告主の広告予算により構成されるため、広告主による月ごとの予算配分に影響を受け、1~3月に集中する傾向にあります。このため、安定的に月次業績が推移する業種に比べ、売上及び利益の変動が起こりやすく、大きく下振れ幅が顕著な場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
④ 新規サービスについて
当社グループは、アドテクノロジー及びマーケティングソリューション以外の新規サービスへ取り組んでおりますが、これによる人件費等の追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、当初の予測とは異なる状況が発生し、新サービスの展開が計画どおり進まない場合、投資を回収できず、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 海外企業との取引及び海外展開について
当社グループでは、DSP「Logicad」において海外の企業と取引を行っております。これらの取引は、国際政治にかかわるリスク、地域特性によるリスクや為替変動によるリスクがあり、こうしたリスクが顕在化した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
海外子会社の財務諸表は原則として現地通貨で作成後、連結財務諸表作成のため円換算されております。したがって、決算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) システム等に関するリスクについて
当社グループのコアプロダクトであるDSP「Logicad」は、利用しているサーバーの全てについて、24時間、365日の管理体制を敷いています。これらサーバーについては、重要性に鑑み、原則として二重化する等の不慮の事故への対策を講じています。しかしながら、不可抗力による緊急事態又は偶発事故の発生、行政もしくは司法当局による規制、地震、火災、洪水その他の自然災害や、十分な電気もしくは他のエネルギーの不足又は取得不能による停電、ソフトウエア又はハードウエアの故障や致命的欠陥、コンピュータウイルスやネットワークへの不正侵入、サービス提供妨害その他の破壊的行為、その他当社に通信回線を提供している電気通信事業者の行為等(以上の事象を含むがこれらに限定されるものではない)により、通信回線が提供されない、通信回線及びサーバーが使用不能となる、復旧まで多大の時間と労力を要する、又は復旧の目処が立たず、サービスの再開が不可能になる等の可能性があり、これらの場合には当社グループの経営、事業の継続性等に重大な影響を及ぼす可能性があります。この場合、当社グループの信用が毀損し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 事業運営体制に関するリスクについて
① 小規模組織について
当社グループは小規模組織であることから、代表取締役を含む役員、幹部社員等の専門的な知識、技術、経験を有している役職員が、経営方針や事業戦略の決定、技術的な判断・遂行において重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会や事業執行会議等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図っており、特定人物に過度に集中しない体制整備を進めておりますが、これらの役職員が何らかの理由により退任、退職し、後任者の採用が困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
② 人材の確保及び育成について
当社グループの事業展開においては、技術力を持つ人員のみならず、サービスの販売、運用調整を行う人員も重要な役割を果たしています。技術開発人員において創造性、技術力、サービス販売・運用人員において営業力、運用力、実行力、管理部門強化のために管理能力等様々な能力を有する人材を確保する必要がありますが、インターネット関連ビジネスにおいては人材の流動性が高いため、今後必要な人材を十分に確保できない恐れがあります。当社グループは人材の採用、育成に努め、また一部業務の外注化やシステム化等の業務内容の効率化に取り組みますが、必要な人材を十分に採用、育成できなかった場合には、当社グループの将来の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 内部管理体制について
当社グループは、当社グループの企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を図る多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
(5) その他
① 配当政策について
当社グループは、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。現在当社グループは成長過程にあると認識しており、内部留保の充実を図り、収益力強化や事業基盤整備のための投資に充当することにより、なお一層の事業拡大をめざすことが、将来において安定的かつ継続的な利益還元に繋がるものと考えております。将来的には各期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案したうえで株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。
② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループでは、株主価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、役員及び従業員に対して新株予約権を付与しております。当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式数は128,000株であり、発行済株式総数14,706,548株の0.9%に相当します。権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、株式価値の希薄化や株式売買需給への影響をもたらし、当社株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
③ M&A及び資本業務提携について
当社グループは、同業他社等に対するM&Aや資本業務提携を実施することにより当社グループの事業を補完・強化することが可能であると考えており、出資及びM&Aを積極的に検討してまいります。その際、対象企業や事業の財務、税務、法務、ビジネス等について詳細なデューデリジェンスを行うなど、意思決定のために必要かつ十分と考えられる情報収集、精査、検討をすることにより、可能な限りリスク回避に努めておりますが、出資及びM&A後において、当社グループが認識していない問題が明らかとなった場合や、市場環境や競合状況の変化及び何らかの事由により事業展開が計画どおりに進まない場合、対象企業の株式価値や譲り受けた事業資産の減損処理を行う必要が生じるなど、当社グループの業績や財務状態に影響を与える可能性があります。
④ 繰越欠損金について
当社は、税務上の繰越欠損金を有しております。これは法人税負担の軽減効果があり、今後とも当該繰越欠損金の繰越期間の使用制限範囲内においては納税額の減少により、キャッシュ・フロー改善に貢献することとなります。しかしながら、当社の業績が順調に推移することで繰越欠損金を上回る課税所得が発生した場合には、所定の税率にもとづく法人税等の納税負担が発生するため、当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) ソニーグループとの関係について
① ソニーグループ内における当社の位置づけについて
当社グループはソニーグループ株式会社を中心とした企業集団に属しております。ソニーグループ株式会社の完全子会社であるソニー株式会社の完全子会社(ソニーグループ株式会社の完全孫会社)として当社株式を直接保有する親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は「エンタテインメント・テクノロジー&サービス」セグメント(提出日現在)に区分され、当社グループはその中においてインターネット関連サービスを展開する企業集団として位置付けられております。
ソニーグループ内においては、インターネット関連サービスを展開する企業は他にも存在しますが、当社グループは主にRTBを活用したDSPを広告主及び広告代理店向けに提供する事業を国内において展開しており、これらの企業との事業及び展開地域における競合は生じておりません。
これらのことから、当社グループ事業に係るソニーグループ内における競合は生じておらず、また現時点では今後発生する予定はないものと認識しておりますが、将来的にソニーグループの経営方針に変更が生じた場合等には、当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
② ソニーグループとの取引及び取引条件について
ソニーグループ内において、ソニーグループ株式会社の完全孫会社であり当社株式を直接保有する親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社とは、当社グループのアドテクノロジーにおいて通信サービスとの広告宣伝取引を行っております。当該取引にあたっては、当社の利益を害することのないよう、他の広告主と同等の取引条件としております。
③ ソニーグループとの人的関係について
本書提出日現在、当社取締役6名のうち、当社グループの親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の業務執行者1名を選任しています。兼任している役員は以下のとおりであります。
当社における役職 |
氏名 |
兼務先における役職 |
取締役(非常勤) |
中川 典宜 |
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 代表取締役 執行役員社長 |
また、当社グループの事業展開においては、創造性、技術力、実行力、管理能力等様々な能力を有する人材を確保する必要があります。しかしながら、インターネット関連ビジネスにおいては人材の流動性が高いため、優秀な人材を適時に採用することは容易ではありません。そのため、当社グループではソニーグループの人的資源を活用し、経営体質の強化と事業の拡大に資するため、これまで出向者を受け入れてきました。なお、現在、当社グループの各部門を統括し、承認権限を持つ者は、原則としてソニーグループ各社から当社に転籍しています。
なお、当社グループに対するソニーグループの出資比率が変更された場合には、これらの人的関係が変動する可能性があります。
④ ソニーグループとの資本的関係について
当連結会計年度末現在において、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は当社株式7,861,200株(当社議決権比率の54.07%)を保有しており、当社グループはソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の子会社となっております。ソニーグループにおいて、その出資比率は、直接保有、間接保有分を含め、当面過半数が維持される見込みです。しかしながら、何らかの理由によりソニーグループの出資比率が過半数を下回った場合、後記「5 経営上の重要な契約等」に記載のとおり、特許権においてソニーグループ株式会社の保有する広範な特許資産を利用することができなくなる可能性があり、他社の特許侵害回避や訴訟等への対応で費用が発生し、当社グループの業績や財務状態に影響を与える可能性があります。一方で、ソニーグループの評判が何らかの理由で著しく損なわれた場合、それが当社グループに起因するものでない場合にも、当社グループの業績や財務状態に影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しておりますが、当面は経営基盤の強化及び積極的な事業展開のために内部留保の充実を図り、財務体質の強化と事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。
第27期事業年度につきましては、当社は成長過程にあり、財務体質の強化と事業拡大のための投資等が当面の優先事項と捉え、配当を実施しておりません。
今後の配当政策の基本方針としましては、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。
内部留保資金につきましては、当社の競争力の維持・強化による将来の収益力向上を図るための設備投資及び効率的な体制整備に有効に活用する方針であります。
なお、当社は、剰余金を配当する場合には、期末配当の年1回を基本方針としておりますが、会社法第459条第1項に基づき、期末配当は3月31日、中間配当は9月30日をそれぞれ基準日として、剰余金の配当等を取締役会の決議により行う旨の定款規定を設けており、配当の決定機関は、取締役会であります。