2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの株式に関する投資判断は、本項および本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
 なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 事業環境に係わるリスクについて

① インターネット市場について

当社グループはメディア事業、IT・ソリューション事業を事業領域としており、インターネットのさらなる普及は当社グループの今後の成長にとって重要であります。2023年12月末時点の移動系通信の契約数は、2億1,888万回線(前期比1.5%増)と増加が続いており(出所:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和5年度第3四半期(12月末))」)、スマートフォンおよびタブレット端末や高速通信手段の普及が急速に進んでいくなど、インターネットの利用環境は年々改善されており、今後についても同様の傾向が続くと思われます。しかしながら、インターネット利用に関する新たな規制やその他予期せぬ要因により、インターネット利用環境が悪化し、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります。

 

② 技術革新について

インターネット業界は、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が激しく、新しいサービスが逐次産み出されている中、当社グループも技術革新および顧客ニーズの変化に対応するべく、積極的に最新の情報の蓄積、分析および当社グループサービスへの導入に取り組んでおります。しかしながら、技術革新において当社グループが予期しない急激な変化があり、その対応が遅れた場合には、当社グループのサービスの陳腐化や競争力の低下を引き起こし、当社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 競合について

当社グループが運営する主力サイト「弁護士ドットコム」では、インターネットを通じた弁護士への支援サービスを提供しており、サービスの確立および今後の成長には弁護士業界からの支持が必要不可欠であります。当連結会計年度末現在、国内の全弁護士数45,826人(出所:日本弁護士連合会ホームページ「日弁連の会員2024年4月1日現在の会員数」)の51.9%にあたる23,784人の弁護士が当社グループサービスに会員登録していることが当社グループの市場優位性の基盤となり、競合他社が容易に参入し難い事業環境としておりますが、今後何らかの理由により当社グループが弁護士業界からの支持を失った場合、または当社グループ以外の競合他社が弁護士業界から一定の支持を受けた状態で同サービスに参入した場合は、競争激化により、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが運営する契約マネジメントプラットフォーム「クラウドサイン」では、「紙と印鑑」で行っている契約行為を、クラウド上で完結できるサービスを提供しており、サービスの確立および今後の成長には主に企業ユーザーからの支持が不可欠であります。当連結会計年度には契約送信件数が800万件を超えるなど、2015年の提供開始以来、多くの企業ユーザーに利用されていることが当社グループの市場優位性の基盤となり、競合他社が容易に拡大し難い事業環境としておりますが、今後何らかの理由により当社グループが企業ユーザーからの支持を失った場合、または当社グループ以外の競合他社が企業ユーザーから一定の支持を受けた場合は、競争激化により、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容に係わるリスクについて

① 新規事業について

当社グループは、今後も事業内容の多様化や新規事業への取り組みを進めていく予定であり、これによる事業規模の拡大および収益力の向上に努めてまいりますが、これらの実現には、人材の採用、サービス・ソフトウエア開発費用等の追加的な支出が発生し、さらに、新規事業が目論見通りに推移しないことで、追加的な支出についての回収が行えず、当社グループの利益率が一時的に低下する可能性があります。

 

② サイト運営の健全性について

当社グループが運営する主力サイト「弁護士ドットコム」では、法的トラブルを抱えた一般ユーザーが、会員登録のうえ、無料法律相談サービス「みんなの法律相談」を通じて弁護士に匿名の法律相談をすることが可能です。また、「税理士ドットコム」では、税務の悩みを抱えた一般ユーザーは、会員登録をすることで、無料税務相談サービス「みんなの税務相談」を通じて税理士に匿名の税務相談をすることが可能です。

当社グループはサイト運営に関して利用規約をサイト上に明示し、一般ユーザーの適切な利用を促すよう努めており、「みんなの法律相談」および「みんなの税務相談」では、相談および回答内容の全件監視体制を構築していることから、利用規約で禁止されている、特定個人に対する誹謗中傷、個人情報および企業の名称、知的財産権を侵害する内容、公序良俗に反する内容等の不適切な投稿があった場合には当該相談および回答を削除するなど、健全なサイト運営を維持しております。

このような体制を構築しているにもかかわらず、不適切な投稿に対して当社グループが十分な対応ができない場合は、当社グループがサイト運営者として信頼を失う可能性があり、当グループ社の事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 固定資産の減損

 当社グループは、のれんやソフトウエア等の固定資産を有しておりますが、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。同会計基準では、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減額した当該金額を減損損失として計上することとなります。このため、当該資産又は資産グループの経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社グループの事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業運営体制について

当社グループは、今後の業容の拡大に伴い、継続的な人材の確保が必要となるため、優秀な人材を適切に確保するとともに、人材の育成に努めてまいります。しかしながら、人材の確保および育成が計画通りに進まなかった場合は、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システムリスクについて

当社グループの事業はインターネット環境において行われており、サービスの安定供給のために適切なセキュリティ対策を施しております。しかし、ハードウエア・ソフトウエアの不具合、人為的なミス、コンピュータウィルス、第三者によるサーバーやシステムへのサイバー攻撃、自然災害等の予期せぬ事象の発生によって、当社グループの想定しないシステム障害等が発生した場合は、当社グループの事業活動に支障が生じ、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 法的規制について

① 法的規制について

a インターネットにおける法的規制について

当社グループがインターネット上で運営している事業においては各種法的規制を受けており、当社グループが主に受ける規制の内容は以下の通りであります。

 

(a) 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)

当社グループは、同法における特定電気通信役務提供者として、特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害された場合に、権利を侵害した情報の送信を防止する措置を講じたり、損害賠償義務を負ったりする可能性があります。また、権利を侵害された者に対して、権利を侵害した情報を発信した者に関する情報の開示義務を課される場合があります。

 

(b) 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)

当社グループは、同法におけるアクセス管理者として、不正アクセス行為からの一定の防御措置を講ずる努力義務が課されております。

 

(c) 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)

当社グループが、利用者に対し、広告や宣伝の手段として電子メールを送信する場合には、一定の事項を当該メール上に表示する義務等が課されております。

インターネット上のトラブル等への対応として、インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されている状況にあるため、今後、インターネットの利用や関連するサービスおよびインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等による規制や既存法令等の解釈等が変更等された場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(d) 特定商取引に関する法律(特商法)

インターネットを介したサービス提供は特商法が規定する通信販売に該当するため、当社グループは、かかるサービスの提供に係る広告などにおいて法定の事項を表示し、特商法の遵守に努めております。しかしながら、今後、不測の事態などにより、万が一、特商法の規定に抵触しているとして当社グループが何らかの法的責任を問われた場合、また、今後、特商法の改正、解釈の変更、新たな規制法令の制定などが行われ、かかる変化に迅速に対応できない、または対応に要するコストが過大となるなどの事態に至った場合には、当社グループのサービスの信頼性やブランドが毀損され、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

b その他の法的規制について

(a) 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

当社グループの運営するサイトにおける広告などに該当する表記について、優良誤認表示や有利誤認表示等の不当な表示を行うことがないよう義務が課されておりますが、同法の内容または解釈等が変更された場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(b) 弁護士法および同法の関連法規

当社グループは弁護士への支援サービスを提供しており、弁護士法、同法の関連法規、および各単位弁護士会の規則・ガイドラインを遵守する必要があります。例えば、弁護士法第72条において報酬を得る目的での弁護士に対する訴訟事件等の周旋は禁止されており、同サービスの運営においてはもちろん、新規事業を検討する際には適宜日本弁護士連合会等の所管組織に確認するなど、細心の注意を払った事業運営をしております。しかし、同法の内容または解釈が変更された場合には、当該規制の内容や解釈の変更等の動向により、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(c) 税理士法および同法の関連法規

当社グループは税理士への支援サービスを提供しており、税理士法、同法の関連法規、および規則・ガイドラインを遵守する必要があります。しかし、同法の内容または解釈が変更された場合には、当該規制の内容や解釈の変更等の動向により、当社グループの事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 個人情報の管理について

当社グループは事業運営上個人情報を保有する場合があり、個人情報の管理は当社グループにとって極めて重要な責務となるため、厳重な顧客情報管理のルールに基づき十分なセキュリティ対策を施しております。しかし、当社グループの保有する個人情報が流出し不正に使用された場合、当社グループが責任を問われ社会的信頼を失うことで、当社グループの事業展開に支障が生じ、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権について

当社グループは運営事業に関わる知的財産権の適正な獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権を侵害することがないよう可能な限りの対策を施しております。しかし、当社グループが認識していない知的財産権が既に第三者に成立しており、これを侵害したことを理由として損害賠償請求や差止請求を受けた場合、当社グループの事業展開に支障が生じ、事業および業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 訴訟について

本書提出日現在において、当社グループとして関与している当社グループの事業および業績に影響を及ぼす訴訟手続きはありません。しかし、今後の当社グループの事業展開の中で、第三者の権利・利益を侵害したとして損害賠償請求等の訴訟その他の法的手続が行われる可能性があり、その訴訟その他の法的手続の内容および結果、損害賠償の金額によっては、当社グループの事業展開に支障が生じ、事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) その他

① 配当政策について

当社グループは、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。株主への利益配分につきましては、経営の最重要課題のひとつと位置付けておりますが、現在は内部留保の充実に注力する方針であります。

将来的には、経営成績および財政状態を勘案しながら株主への利益配分を検討いたしますが、配当実施の可能性およびその実施時期等については、現時点において未定であります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(ストック・オプション等関係)のとおり、当社役員、従業員等に対して、新株予約権を付与しております。

これらの新株予約権が権利行使された場合は、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは今後も新株予約権の付与を行う可能性があり、この場合、さらに1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

当連結会計年度末現在、新株予約権による潜在株式数は618,500株であり、発行済株式総数22,382,100株の2.8%に相当しております。

 

③ 投融資について

当社グループでは、成長戦略の一環として、国内外を問わず出資、M&A、合弁会社の設立、アライアンス等の投融資を実施する場合があります。投融資については、リスク及び回収可能性を十分に事前評価し決定してまいりますが、投融資先の事業の状況が当社グループに与える影響を確実に予想することは困難な場合もあり、投融資額を回収できなかった場合や減損の対象となる事業が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
 

配当政策

3 【配当政策】

当社グループは、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。株主への利益配分につきましては、経営の最重要課題のひとつと位置付けておりますが、現在は内部留保の充実に注力する方針であります。

将来的には、経営成績および財政状態を勘案しながら株主への利益配分を検討いたしますが、配当実施の可能性およびその実施時期等については、現時点において未定であります。

なお、当社は、剰余金を配当する場合には、期末配当の年1回を基本方針としておりますが、会社法第459条第1項に基づき、期末配当は3月31日、中間配当は9月30日をそれぞれ基準日として、剰余金の配当等を取締役会の決議により行う旨の定款規定を設けており、配当の決定機関は、取締役会であります。