2023年12月期有価証券報告書より
  • 社員数
    3,952名(単体) 30,540名(連結)
  • 平均年齢
    38.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    10.7年(単体)
  • 平均年収
    7,405,508円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2023年12月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

日本事業

10,573

[2,758]

中国事業

6,881

[96]

アジアパシフィック事業

2,542

[273]

米州事業

1,805

[17]

欧州事業

2,521

[228]

トラベルリテール事業

561

[12]

全社(共通)

5,657

[1,935]

合計

30,540

[5,319]

 

(注) 1 従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は[  ]内に当連結会計年度の平均人員を外数で記載しています。

     2 臨時従業員には、契約社員、パートタイマーを含み、派遣社員を除いています。

 

(2) 提出会社の状況

2023年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

3,952

[1,541]

38.7

10.7

7,405,508

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

全社(共通)

3,952

[1,541]

 

(注) 1 従業員数は就業人員数であり、臨時従業員数は[  ]内に当事業年度の平均人員を外数で記載しています。

     2 臨時従業員には、契約社員、パートタイマーを含み、派遣社員を除いています。

     3 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでいます。

なお、当連結会計年度より、「(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異」の労働者の男女の賃金差異の算定方法と統一するため、平均年間給与の範囲を給与、賞与および基準外賃金(福利厚生関連の手当を除く)から課税対象となる給与、賞与および基準外賃金に変更しています。

 

(3) 労働組合の状況

資生堂労働組合は、1946年2月に資生堂従業員組合として発足し、現在当社および国内主要連結子会社で組織され、組合員数は12,052名です。

なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1

男性労働者の育児休業取得率(%)(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)1

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

37.2

133

76.9

88.4

72.0

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。労働者の男女の賃金の差異は、男女の平均年間賃金について、男性を100とした場合の女性の割合です。

     2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等の取得割合(育児休業等+育児目的休暇を取得した男性社員・契約社員の数/配偶者が出産した男性社員・契約社員の数×100)を算出しています。

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1

男性労働者の育児休業取得率(%)(注)3

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)1

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期労働者

資生堂ジャパン㈱

(注)2

 

90

62.6

64.5

57.4

㈱ジャパンリテールイノベーション

50

36.1

68.4

66.1

資生堂美容室㈱

62.0

72.2

55.1

㈱資生堂パーラー

55.9

66.3

54.7

㈱イプサ

50.6

49.0

68.5

㈱ザ・ギンザ

58.0

53.4

67.8

 

(注) 1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しています。労働者の男女の賃金の差異は、男女の平均年間賃金について、男性を100とした場合の女性の割合です。

     2 女性管理職比率は国内資生堂グループ全体で管理しており、国内資生堂グループ全体の女性管理職比率は40.0%です。グループ内で雇用管理が一体的になされているため、国内資生堂グループ全体として公表しています。

対象範囲:国内資生堂グループ(21社)

① 本社 株式会社資生堂、

② 連結子会社 資生堂ジャパン㈱、資生堂アステック㈱、花椿ファクトリー㈱、㈱エテュセ、㈱エフェクティム、㈱ジャパンリテールイノベーション、㈱ザ・ギンザ、資生堂美容室㈱、㈱資生堂パーラー、㈱エトバス、KODOMOLOGY㈱、㈱イプサ、資生堂インタラクティブビューティー㈱、資生堂クリエイティブ㈱

③ 連結子会社以外 ㈱ピエールファーブルジャポン、学校法人資生堂学園資生堂美容技術専門学校、資生堂健康保険組合、資生堂企業年金基金、公益財団法人資生堂子ども財団、資生堂労働組合

     3 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等の取得割合を算出しています。

     4 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではない連結子会社については、記載を省略しています。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般

 

当社は、1872年の創業時から、人、社会、自然を敬い、社会価値の創造を行ってきました。企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD (美の力でよりよい世界を)」のもと、ビューティーカンパニーならではのアプローチで社会課題を解決し、2030年に向けて「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指しています。サステナビリティを経営戦略の中心に据え、本業を通じた社会価値創出と社会・環境課題の解決を促進します。

 

 ガバナンス

当社では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。サステナビリティ関連業務においては、迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、専門的に審議する「Sustainability Committee」を設定し、2023年も定期的に開催しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略アクションや方針、TCFD/TNFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表執行役を含むR&D・サプライネットワーク・広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会に提案もしくは報告しています。

確実な業務執行・推進を行うため、「Sustainability Committee」の下部に、主要関連部門の責任者から構成されるSustainability TASKFORCEを設定し、長期的な目標達成に向けての推進方法やサステナビリティに関連した課題解決について議論し、その他関連部門や地域本社・現地法人と連携した活動を行っています。


 

※指名委員会等設置会社への移行(2024年3月26日)に伴い、「代表取締役」から「代表執行役」に変更となりました。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」の「① コーポレート・ガバナンス体制」をご参照ください。

 

 戦略

当社は、サステナビリティを経営戦略の中心に据え、本業を通じた社会価値創造と社会・環境課題の解決を促進しています。サステナブルな社会の実現のため、社会・環境領域でそれぞれ3つの戦略アクションを掲げています。

社会領域では、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を中心に社会課題の解決に取り組んでいます。ビューティーカンパニーとしての特性をいかした「ジェンダー平等」、自分らしく輝くことに貢献する「美の力によるエンパワーメント」、そして、すべての活動の根底となる「人権尊重の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。

環境領域では、社名の由来でもある「万物資生」(注) の考えに基づき、環境負荷を軽減し、使い捨てではなくサーキュラーエコノミーを実現できる技術やビジネスモデルの構築を目指して取り組んでいます。全バリューチェーンを通じて、「地球環境の負荷軽減」、「サステナブルな製品の開発」、環境や人権に配慮した「サステナブルで責任ある調達の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。

 

(注) 中国の古典「易経」の一節、「至哉坤元 万物資生(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、すべてのものはここから生まれる)」の一部

 

 リスク管理

当社は、中長期の事業戦略の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを総合的・多面的な手法を用いて抽出し、特定しています。その中には、「環境対応(気候変動・生物多様性など)」「自然災害・感染症・テロ」といったサステナビリティ領域のリスクも含まれています。気候や生物多様性に関連するリスクも、事業継続や戦略に影響を及ぼす要因の1つとして科学的または社会経済的なデータに基づいて分析され、気候変動や自然災害に関わるリスクとして全社のリスクマネジメントに統合されます。特定されたリスクは、重要度に応じて、「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」にて対応策などが審議されています。また、必要に応じて取締役会に提案もしくは報告される体制となっています。

 

 

 指標及び目標

当社は、戦略アクションに基づいた中長期目標を設定し、進捗を定期的にトラッキングしています。毎年グローバルのステークホルダーに向けた「サステナビリティレポート」を発行し、当社の本業を通じたサステナビリティアクションの中長期目標とその進捗を開示しています。

〔中長期目標〕

・環境

戦略アクション

目標

達成年(注)1

地球環境の負荷軽減

CO2排出量

カーボンニュートラル(注)2

2026年

CO2排出量削減 <SBTi, Scope 1・Scope 2>

△46.2%(注)3

2030年

CO2排出量削減 <SBTi, Scope 3>

△55%(注)4

2030年

水消費量削減

△40%(注)5

2026年

サステナブルな製品の開発

容器包装

サステナブルな容器への切り替え(注)6

100%

2025年

サステナブルで

責任ある調達の推進

パーム油

サステナブルなパーム油への切り替え(注)7

100%

2026年

サステナブルな紙への切り替え(注)8

100%

2023年

 

・社会

戦略アクション

目標

達成年

ジェンダー平等

・あらゆる階層における女性リーダー比率(国内)

50%

2030年

・国内における女性活躍

・グローバルでの女子教育支援と経済的自立支援

100万人

(ダイレクトリーチ)

2030年

美の力による

エンパワーメント

・美の力による自己効力感の醸成

・「自分らしい美しさ」を制限する無意識の思い込みや偏見への取り組み

100万人

(ダイレクトリーチ)

2030年

 

(注) 1 2023年実績は2024年6月下旬発行予定のサステナビリティレポート(https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/report.html)にて開示予定

2 当社全事業所 (対2019年、オフセット含む)

3 当社全事業所 (対2019年)

4 当社全事業所を除くバリューチェーン全体、経済原単位(対2019年)

5 当社全事業所、売上高原単位(対2014年)

6 プラスチック製容器について

7 RSPOの物理的なサプライチェーンモデルによる認証(アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマスバランスに基づくもの)

8 製品における、認証紙または再生紙など

 

 

(2) TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)/TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言の取り組み

 

当社は、気候変動や生物多様性損失などによる事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、TCFDおよびTNFDフレームワークに沿った情報開示を行っています。脱炭素社会への移行、および気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされる長期的なリスク・機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオそれぞれの短期・中期・長期の定性的・定量的な分析を試みました。自然に関しても、生物多様性の損失や水資源の動態を考慮した定量的な長期リスクを特定し、「気候/自然関連財務情報開示レポート」として開示しました。

 

 ガバナンス

 当社の気候・自然関連のリスクおよび機会にかかるガバナンスに関しては、サステナビリティ関連業務における推進体制と同様に取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「① ガバナンス」をご参照ください。

 

 戦略

気候関連リスクおよび機会については1.5/2℃から4℃の範囲で気温上昇を想定し、RCP-SSPシナリオに沿って分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化要因について、各シナリオ条件における影響を分析しました。2030年時点における移行リスクとして、炭素税によって約0.5~8.7億円規模の財務影響が発生する可能性を予測しています。物理的リスクについては、洪水により約9億円、水不足により約35億円の潜在的なリスクを見込んでいます。機会に関しては、1.5/2℃シナリオにおいて、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まると予想されます。4℃シナリオにおいては、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大すると予想されます。イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していくことで、リスクの緩和と新たな機会の創出を目指しています。

 

 

リスク

機会

移行リスク

(主に1.5/2℃)

・炭素税によるコスト増●

・燃料価格の高騰

・シングルユースプラスチック使用製品の販売機会喪失●

・エネルギー効率の向上

・クリーンビューティーなどのエシカルな製品の販売機会拡大

物理的リスク

(主に4℃)

急性

・自然災害による生産活動の停止●

・自然災害による物流機能の断絶

・環境にやさしい製品

・気候対応型ソリューションの開発の販売機会拡大

慢性

・降雨や気象の変化による、原材料の調達コストの増加●

・水不足による生産活動の停止●

 

●がついている要因は定量分析も実施しています。

 

 

自然関連リスクおよび機会に関しては、ライフサイクルアセスメントによって当社のバリューチェーンを通じた生物多様性への影響側面の定量分析を行い、特に原材料調達における影響が大きいことを明らかとしました。TNFDが推奨するLEAPアプローチに沿って、生物多様性への依存度の高い化粧品原料について原産地を推定し、依存側面における物理リスク分析としてミツバチなどの花粉媒介者による生態系サービスの金額化を行いました。同時に、移行リスクとして、サステナビリティ関連規制に関わるリスク分析を、気候問題とあわせて実施しています。

分析条件など詳細な情報を含めた「気候/自然関連財務情報開示レポート」は、当社企業情報サイトで公開しています。

https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/env/pdf/risks_report.pdf

 

 リスク管理

 当社の気候・自然関連のリスクおよび機会にかかるリスクマネジメントに関しては、サステナビリティ関連業務における推進体制と同様に取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「③ リスク管理」をご参照ください。

 

 指標及び目標

当社は、CO2排出量削減を目標として設定し、また定期的に気候変動に伴う状況をモニタリングし対応策を講じることで、リスクの緩和に貢献しています。特にScope 1およびScope 2のCO2排出量については2026年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として設定しました。また、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標に関しては、1.5℃経路に整合した2030年目標に対して、SBTイニシアティブ(SBTi)(注) の認証を取得し、CO2排出量削減に取り組んでいます。

生物多様性に関しては、影響面での寄与の大きな紙やパーム由来原料について、認証原材料への切り替えを進めています。

気候・自然関連リスクと機会の評価の詳細については、「気候/自然関連財務情報開示レポート」、「サステナビリティレポート」をご参照ください。

 

(注) パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定することを推進している国際的

      なイニシアティブ

 

<気候変動・生物多様性への対応の推進>

・気候変動

気候変動に関わる対応としては、2026年カーボンニュートラル達成(注)1 を掲げ、CO2排出量削減に積極的に取り組んでいます。2022年には、バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減目標(注)2 に対してSBTイニシアティブ(SBTi)(注)3 認定を取得し、RE100(注)4 に加盟しました。

全世界の工場や事業所において再生可能エネルギーの導入を積極的に行っており、2023年には、全13工場(注)5 ・自社ディストリビューションセンターにおける再生可能電力への切り替えを100%完了し、中国地域では全事業所で100%切り替えを完了しました。2050年にネットゼロの達成を目指し、引き続きCO2排出量の削減とイノベーションを伴う機会創出に努めています。

 

・生物多様性

生物多様性への対応としては、ステークホルダーと連携した水資源管理(Water Stewardship)の重要性を鑑み、流域における水資源と環境への理解に努め、水消費量の削減や有効利用、徹底した水質管理を図ることにより、持続可能な水資源の利用を進めています。加えて、RSPO認証パーム原料への切り替えなど、生物多様性に関連する適切な指標を選定し推進しています。

また2023年には、戦略サプライヤーに向けて、サステナビリティ方針説明会を開催し、気候変動対応やトレーサビリティを含むサステナブルで責任ある調達に共に取り組むための連携を強化しました。

 

 

なお、当社は環境調査・情報開示を行う国際的な非営利団体であるCDPの「気候変動」「フォレスト」に関する2023年度調査において、最高評価にあたる「Aリスト企業」に選定されました。ダブルAに選定されたのは当社として初めてです。(注)6

 

(注) 1 当社全事業所、Scope 1・Scope 2

2 Scope 1・Scope 2、およびScope 3

3 パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定することを推進している国際的なイニシアティブ

4 100%Renewable Electricityの略で、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする企業で構成される国際的なイニシアティブ

5 2023年末は11工場

6 CDPの「Aリスト企業」選定に関する詳細はこちら

       https://www.cdp.net/en/companies/companies-scores

 

<サステナブルパッケージ開発とステークホルダーとの協働強化> 

当社は、サステナブルな容器包装の開発やステークホルダーとの協働を通じて、グローバルでの環境課題である気候変動や海洋プラスチックゴミ問題などへの対応を進めています。

当社独自の容器包装開発ポリシー「5Rs: Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・Replace(リプレース)」を前提としたイノベーションを通じて、2025年までに100%サステナブルな容器(注)1 を実現するという目標を掲げています。

2023年には、「SHISEIDO」から、ボトル製造と中味液充填をワンステップで実現する技術「LiquiForm®(リキフォーム)(注)2」を世界で初めて化粧品に採用し、日本を皮切りに中国へのグローバル展開も開始しました。「LiquiForm®」の採用により、当社の標準的な従来の容器単体のプラスチック使用量を約70%削減(注)3 できます。さらに、バリューチェーン全体では「つけかえ」容器(同容量)に対して、約70%のCO2排出量削減(注)3 が可能となるイノベーティブな容器設計です。

2023年4月には、使用済みプラスチック製容器を収集し、新たな容器へ再生する循環型プロジェクト「BeauRing(ビューリング)」を立ち上げました。実証試験として横浜市内の一部の資生堂化粧品販売店舗、資生堂グローバルイノベーションセンターなどに回収ボックスを設置し、そして株式会社ポーラ・オルビスホールディングスと連携し、使用済みプラスチック容器収集を開始しています。

2023年7月には、有限な化石資源に依存せず新たな資源として注目される藻類基点の新産業を構築するプロジェクト「MATSURI(注)4」を主導する、ちとせグループと戦略協業契約を締結し、藻類を利用した化粧品原料および化粧品容器にかかる素材の開発、さらには将来的な食品産業に活用できる原料開発などを視野に協業を開始しました。

関連する業界や企業などの外部ステークホルダーとの協働を強化し、サーキュラーエコノミー実現に向けて加速するとともに、お客さまがより前向きに化粧品を使うことができるサステナブルな社会に貢献していくことを目指しています。

 

(注) 1 プラスチック製容器について

2 AMCOR(アムコア)社が中心となって開発した新規容器技術であり、この技術を実用化した株式会社吉野工業所と当社が共同で化粧品容器を開発

3 従来型の「つけかえ」容器とリキフォームによる新規「つけかえ」容器を同じ容量で比較した結果

4 藻類の大規模生産と事業化に強みを持つ、ちとせグループが主体となりサステナブルな新産業を構築するプロジェクト


 

LiquiForm®を活用した化粧品のつけかえ容器(左)とその容器をセットする本体容器(右)


 

BeauRing ボックス

 


 

 

 

 

 

BeauRing ロゴマーク

 

 

 

(3) 人的資本

 人的資本

当社は、価値創造の源泉である人財を当社の最大の資産であると考え、人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の経営理念を掲げ人事制度や施策を進化させ続けてきました。世界中で価値を創出するためには、人財が最も重要な経営資源となります。

企業理念である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を実現し続けていくために、性別や年齢、国籍に関係なく、個々人の違いを認め尊重しあい、新しい価値創造に向けて議論する風土醸成を推進しています。

 

・「個の力を強くする」

<パフォーマンスマネジメント>

ビジネスと社員の持続的成長のために、パフォーマンスマネジメントを強化しています。2021年よりグローバルで共通のスキームを導入し、これにより中長期的な業績の向上と社員の成長を図っています。一人ひとりの社員がストレッチした業務アサインメントに挑戦し、それぞれの専門性を高めていきます。

 

<自律的キャリア開発支援>

主体的なキャリア開発と専門性を強化するために、2020年から国内資生堂グループ全社員に対しキャリアワークショップやe-learningの実施を行っています。また、社員自身が作成した中長期的なキャリアゴールを描くキャリア・ディベロップメントプラン(CDP)はパフォーマンスマネジメントの一環として扱われ、社員はみずからのキャリア開発にいかす基礎的なビジネススキルや、必要な専門性を高めるさまざまな研修プログラムを自発的に利用できます。

 

<トレーニングプログラム>

当社は多様な人財をいかすためにリーダーシップ教育に重点を置いています。

当社の人財育成は「70:20:10の法則」(注)を重視していますが、とりわけトレーニングプログラムは、集中して新しい知見を学ぶ機会であり、優秀な社員と交流しさらに成長意欲を高める機会となります。目的と対象者に応じ、選抜型プログラム・選択型プログラム・必須プログラム、の3種類の研修プログラムを提供しています。

 

(注)人が成長する際には、業務経験から70%、他者との関わりから20%、トレーニングや自己学習から10%の割合で学ぶという法則。

 

当社におけるトレーニングプログラム体系

社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。

 

 

<選抜型プログラム>

戦略的タレント育成を目的に、資生堂グループ各領域の幹部候補社員に対しては、グローバル共通の教育体系Shiseido Leadership Academyにおいて能力開発と国と地域を越えたネットワークの構築を促しています。Shiseido Leadership Academyでは選抜された次世代リーダーに外部ビジネススクールと提携したプログラムを提供し、リーダーシップや経営スキルを学びます。また女性リーダー育成にも力を入れており、優秀な女性社員が自身や周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)から自由になるための「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から毎年実施しています。

次世代を担う経営リーダーを育成する施設「Shiseido Future University」を、創業の地である銀座に2023年11月にオープンしました。「Shiseido Future University」は、資生堂ならではの価値創造とイノベーションを創出するために、ビューティーカンパニーにふさわしい美への感性や心の豊かさ、最先端のグローバルレベルのビジネス知見を合わせもったリーダーの育成を目指しています。国内外グループ会社から選抜された次世代の経営リーダーとなる人財を中心に、みずからビジョンを描き、長期的な視点で企業価値を高め、変革を実現する突き抜けた経営リーダーへの人材開発を行います。 

 


「CAMELLIA 椿」プレゼンテーションルーム  

女性像をテーマにしたヘリテージポスターからカラーリングした研修室

 

 

<選択型プログラム>

社員が高いパフォーマンスを発揮し自律的なキャリアを形成するよう、みずから手を挙げて受講することができる選択型プログラムを実施しています。日本国内では、職種を問わない基礎的なビジネススキル研修や、高い向上心を持つ若手社員を対象としたMBA派遣のほか、それぞれの専門領域でさらに専門性を高めるためのセールスアカデミーやマーケティングアカデミーなどを実施しています。

 

<必須プログラム>

新入社員研修や3年目研修、新任職制マネージャー研修など、キャリア形成の節目となるタイミングで、必須プログラムを提供しています。リーダー(職制マネージャー)に対してはマネージャートレーニングやマネージャーワークショップでマネジメントスキルの研修を強化し、公正な評価と各部門での人財育成に努めています。

また、社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。

 

・「強い個」を育む組織・仕組み 

「強い個」をつくるために力を入れているのが、ジョブ型人事制度に基づく、戦略的タレントマネジメント、パフォーマンスマネジメント、自律的キャリア開発支援です。さまざまな専門性を持った社員それぞれの強みをいかせるよう、当社は社員のみずから成長する姿勢を奨励し、一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援しています。

 

 

<ジョブ型人事制度>

社員の専門性を強化し「グローバルで勝てる組織」となるよう、日本国内の管理職に対しては2015年より、一般社員(総合職)に対しては2021年よりジョブ型人事制度を導入しました。社員のレベルを判定する基準を個人の「能力」から「職務(ジョブ)」に移行することで、グローバルスタンダードに沿った客観的な評価や処遇を可能にします。各部署における職務内容と必要な専門能力を明確化することで、社員一人ひとりのキャリアの自律性を高めることを狙っています。

 

<戦略的タレントマネジメント>

グローバルにおける資生堂グループ全体での適材適所な人材配置と、戦略的タレントを育成するためのマネジメントを行っています。毎年、グローバル/リージョナル/ファンクショナルレベルでそれぞれタレントレビューを実施し、重要なキーポジションに対する後継者の指名・育成計画を作成しています。後継者の育成計画では、能力開発を主目的とした難易度の高い業務へのアサイン(ストレッチアサインメント)やグローバルでの異動機会、リーダーシップ開発プログラムなど、それぞれの強みや開発課題に基づく一人別育成計画が策定され、CEOの承認・支援のもと、実行されます。

 

<多様な人財の育成と活用>

当社では、約100カ国の国・地域からの社員が集まり、性別・年齢・国籍に関係なく、個々人の違いを認め尊重しあい、新しい価値創造に向けて議論する風土醸成を推進しています。

LGBTQ+に関する取り組みとしては、性自認や性的指向による差別やハラスメントをなくし、社員がありのままの姿で職務にあたれるよう環境の整備や啓発に取り組んでいます。

 

日本国内では、2017年から社員の同性パートナーを異性の配偶者と同じように福利厚生などの処遇を受けられるように就業規則で定めています。人事部による社員向けのLGBTQ+の理解促進も行っています。

 

また、誰もがいきいきと働くことができる職場づくりとして、私たちは障がいのある方の雇用に積極的に取り組んでいます。日本国内の資生堂グループでは、営業やマーケティングといったさまざまな職務への配属を推進し、障がいの状況に応じて、支援機器やオフィス設備の整備に取り組んでいます。例えば、特例子会社の花椿ファクトリー株式会社は東京・大阪・掛川など9か所に拠点を持ち、主に知的障がいのある約60名の社員が働いています。当社の障がい者雇用率は2.82%、日本国内の資生堂グループの障がい者雇用率は4.52%です。

 

<多様な働き方をサポートする社内環境整備>

社員の健康や安心・安全、働きがいと、さらなる生産性の向上を通じた事業成長を目指し、「コアタイムのないフレックスタイム制度」への改定や「テレワーク制度の国内グループ全社への展開」、業務の目的に合わせてリモートワークとオフィスワークを柔軟に組み合わせる「資生堂ハイブリッドワークスタイル」を導入するなど、さまざまな属性の社員が働きやすい職場環境の整備を推進しています。

 

DE&I推進

当社は、1872年の創業以来、常に新しい時代を象徴する多様な美の価値観を創造してきました。そして現在、人は本来、多様であるとの認識のもと、固定的な価値観や偏見、同調圧力を払しょくし、一人ひとりが自分らしい人生を実現できるインクルーシブな(包摂性豊かな)社会の実現に向け、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重要な経営戦略と位置づけています。

 

<女性活躍の支援>    

とりわけ女性の活躍の支援は、企業成長を促すうえで極めて重要なテーマです。当社グループは80%以上が女性社員で、女性のエンパワーメントがイノベーションを創出し、当社のさらなる成長と社員の自己実現につながると考え、2030年までに日本国内のあらゆる階層における男女比率を機会均等の象徴である50:50にすることを目指しています。

 

日本国内では女性リーダーを育成するために、管理職候補となる社員に対し「一人別人財育成」として、高いレベルの業務課題を与えてスキルを高め、マネジメントの経験を積ませています。また、将来を担う優秀な女性社員を支援する女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から開催しています。この育成塾は、幹部候補の女性社員がマネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムです。リーダーシップを発揮する際に陥りやすい壁に対処する方法を学び、女性リーダーによる講演や社員同士のネットワーキング、コーチング等などを組み合わせています。こうした包括的なリーダーシップ育成により、受講者は経営にとって女性の活躍が欠かせないことを学び、自信を深め、さらなるリーダーシップを発揮する支援となっています。

2024年1月時点での国内資生堂グループ全体の女性管理職比率は、40%に達しました。

 

・子育て支援の取り組み

日本国内では1990年代初めから育児・介護休業法に先駆け、育児休業制度、育児による短時間勤務制度を導入するなど、長きにわたり、社員のライフイベントを支援するさまざまな制度や支援策を推進してきました。

具体的には、2008年には育児による短時間勤務を取得する美容職社員の代替要員体制として「カンガルースタッフ制」の導入を行い、店頭の美容職における仕事と育児の両立支援を行ってきました。また、事業所内保育所「カンガルーム汐留(2003年)」「カンガルーム掛川(2017年)」を開設し、いずれも近隣企業にも開放してきました。さらに「多様な働き方に合わせた柔軟な保育」を実現するため、2023年4月にシッターサービスを中心とした総合的な保育サービス「KANGAROOM+(カンガルームプラス)」を開始しました。集団保育ではなく1対1の保育サービスにすることで、時間と場所の自由度を上げるとともに、「小1の壁」に代表される社員の保育ニーズに合わせて、対象を未就学児から小学生までに広げました。すべての社員が自分らしく、それぞれの人生とキャリアを自らがデザインすることのできる職場環境の実現を目指しており、国内資生堂グループにおいては、ほぼすべての社員が育児休業から復職しています。また、男性の育児休業取得率においても、国内資生堂グループにおいて113%まで進捗しました。

 

<イノベーション創出を企図した「DE&Iセッション」の実施>

2023年より日本地域のブランドマーケティング活動に従事する社員を対象に、DE&Iリテラシーの向上と新たな価値やライフスタイルを提案・創造していくことを目的とした「DE&Iセッション」を実施し、昨年は570名が参加しました。グローバル動向や人々の価値観変化をDE&Iの文脈から捉えることで、広告・マーケティングにおける表現や対応方法を修得すると同時に、インスピレーションを得た社員がイノベーション創出に向け創造力を高める機会となっています。2024年からは対象を拡大し、より多くの社員の参加を促進します。

 

<資生堂DE&Iラボ>

当社は、多様な人財の活躍と企業成長との関係を研究する社内研究機関「資生堂DE&Iラボ」を2023年2月に発足しました。資生堂の職場を実験場として、実際に高いパフォーマンスをあげている組織のDE&I因子を数値化・可視化し、多様性が組織パフォーマンスにどのように影響するのかについて、経済学的なアプローチからの実証研究に加え、イノベーションにつながった実際の事例収集や要因分析などを進めています。さらには、研究を通じて、多様性の力を最大限に活かす上で有効な要素の可視化、ノウハウの抽出を目指しています。

 

<外部評価・受賞>

2023年11月には「Forbes JAPAN」がジェンダー・ギャップ解消と女性をエンパワーメントすることを目的に主催する日本最大規模の女性アワード「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」において、当社は約1,900社から「企業ランキング1位」に選ばれました。サプライヤー企業から商品・消費者に展開するサービスに至るまでDE&Iを浸透させる事業構造、各キャリアステージのなかでもとりわけトップクラスの女性比率実績、働き方の柔軟性・多様性を認める職場環境の整備などが高く評価されました。

 


 

資生堂DE&Iラボ ロゴマーク

 


「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」ロゴマーク

 

(4) 企業文化

<企業文化誌『花椿』2023年号特別版の刊行> 

創業から150年以上にわたり積み上げてきた資生堂のヘリテージは当社の強みです。蓄積の過程で培ったナレッジや受け継がれる思いは、社員教育に活用するだけでなく、その他のステークホルダーのみなさまとも共有してきました。

『花椿』2023年号のテーマは「OUR ENERGY」。今の時代に私たちがウェルネスに向かうために必要なものとして、このテーマにしました。2023年は、全国の化粧品専門店をビジネスパートナーとして共に歩んできた当社チェインストア制度の100周年にあたります。通常版のほか同制度100周年を記念した特別版も刊行し、全国の化粧品専門店(一部)でも配布しました。特別版には同制度の歴史や今後の取り組みについても掲載し、これまでの歩みを共有することができました。 

当社は、今後もヘリテージを幅広く活用し、さらなる事業成長を確実なものにしていきます。

 


『花椿』2023年号特別版(カバー、バックカバー)