リスク
3【事業等のリスク】
(1)当社のリスクマネジメント体制
当社は、当社グループの事業活動に関する諸種のリスク管理を所管するリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント委員会規則に従い、取締役会で任命された執行役及び執行役員が以下のリスク管理体制の構築と運用にあたっております。
当社グループの事業活動に関する事業リスク及びオペレーショナルリスクについては、執行役及び執行役員の職務分掌に基づき各執行役及び執行役員が、それぞれの担当職務ごとに管理しており、リスクマネジメント委員会はそれを支援しております。また、リスクマネジメント委員会は、グループ経営上重要なリスクに関する抽出・評価・見直しの実施、対応策の策定、管理状況の確認を定期的に行っております。
当連結会計年度(以下「当期」)はグループ重要リスクとして、以下の3つのリスク項目を選定しました。
・サプライチェーンにおけるリスクマネジメント
・情報セキュリティにおけるリスクマネジメント
・当局の金融政策の変更によるリセッションの動向
(2)当社のリスクマネジメント体制の運用状況
当社は、リスクマネジメント委員会を定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しております。この委員会では、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。当期は、同委員会を2回開催し、主に米中対立やウクライナ情勢及びイスラエル・パレスチナ情勢に起因するグローバルサプライチェーンの混乱及び半導体を中心とした米中ハイテク摩擦に対し、事業への影響度の高い国・地域に適用される制裁や新たな法規制等の定期的なモニタリングを実施しました。
また、リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告しており、取締役会への報告は必要に応じて実施し、取締役会を構成するメンバーには月次の報告が行われております。
なお、当社では、リスクが顕在化し企業価値に大きな影響を及ぼす状況を「危機(クライシス)」と定義し、クライシス発生時には上長経由で担当役員と危機管理担当役員へ報告し、さらに担当役員と危機管理担当役員は、代表執行役へ報告を行います。様々なリスクによって発生するクライシスに対し、当社は迅速・適切に対応するためにクライシス発生時の報告ルールを設け、執行役及び執行役員や当社子会社役員等に周知しております。その報告ルールに沿って、世界各地で発生した災害・事故、その他のクライシスに関する情報を危機管理担当役員が集中管理しております。
(3)事業等のリスク
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクを以下に記載しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられるほかのリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。
また、当社は、リスクを「組織の収益や損失に影響を与える不確実性」と捉えております。リスクを単にマイナスの側面からだけではなく、「機会」としてのプラスの側面からも捉えたうえで、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付けております。
リスクへの対応と機会の考え方は、以降、個々のリスクの項目の中に記載しております。
記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものであります。
最初に、各リスク項目をリスクマップ上にプロットした図を掲載いたします。
なお、「発生可能性」については、3年以内に発生する頻度・確率より評価し、「影響度」については、発生した際に営業利益へ与える影響より評価しております。
また、「発生可能性」と「影響度」について、前連結会計年度(以下「前期」)より評価が変更されているリスクは、評価欄に矢印を用い、前期と当期の評価を記載しております。
①経済環境に関するリスク
1)経済動向・市場環境 |
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発生可能性:高 |
発生する可能性のある時期:1年以内 |
影響度:大 |
●リスク 当社グループは、複合機やデジタル印刷システム、ヘルスケア用機器製品や遺伝子診断・創薬支援等、計測機器や光学部材、ディスプレイ材料及び関連サービス等を世界中の顧客に向けて提供しております。これらの事業の売上及び損益は各国の景気動向に大きく影響を受けます。 当連結会計年度は、国際情勢が一段と不安定化し不確実性が高まる中、年度の後半より世界経済は減速の傾向が続きました。世界的なエネルギーや食料価格の高騰、欧米各国の金融引き締め等による世界的な景気後退懸念等、経済を取り巻く環境は厳しさを増しております。 米国経済は、金融引き締めが続く中、安定した雇用情勢と賃金上昇による良好な家計状況に支えられ、堅調に推移しました。しかし、長期金利上昇の影響及び商業用不動産市況の悪化による金融不安に起因した景気後退のリスクが懸念されております。 欧州連合(EU)の経済は、ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢によるエネルギー供給の制約や価格高騰、またそれ以外の物価も高止まりしていることから経済活動は停滞しており、さらなる金融引き締めによる景気後退のリスクが懸念されております。 中国経済は、不動産市場の長期低迷、ゼロコロナ政策の後遺症による個人消費の伸び悩み、インフラ投資抑制等により景気は停滞しました。大手不動産会社の破綻リスクが高まる等、不動産市場の低迷に起因した金融不安は解消されておらず、今後の景気回復に与える影響が懸念されております。 今後の世界経済は、ウクライナ情勢や米中対立等の地政学リスクへの警戒感や世界主要国をはじめとする金融引き締めによる悪影響が想定されます。特に、米国やEUの金融不安が拡大した場合、経済活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、米国における経済安全保障の強化は、自国の半導体を中心とした技術力強化に大規模な予算を投じるほか、対外的な先端技術の流出を阻止する動きに拍車がかかる可能性があります。このような動きは、先端技術や重要物資を中心に既存のサプライチェーンに大きな影響を及ぼす懸念があります。 こうしたリスクが発生し、各国の経済活動が停滞した場合、顧客の投資抑制や消費行動の変化を引き起こし、結果として当社の予想を超えた新規機器購入の減少、競争激化に伴う販売価格下落、在庫増加等、将来にわたり当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
2)為替レートの変動 |
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発生可能性:高 |
発生する可能性のある時期:1年以内 |
影響度:中 |
●リスク 当社グループは、高い海外売上高比率が示すようにグローバルに事業活動を展開しており、為替レート変動の影響を大きく受ける状況にあります。また、外貨建ての取引から生じる当社の資産及び負債の円貨額や海外子会社の外貨建財務諸表から発生する在外営業活動体の換算差額も変動するおそれがあります。ユーロにつきましては、為替レートが1円円安に変動した場合、欧州での利益増により、営業利益に約4億円のプラスの影響を与えます。人民元も同様に、1円円安に変動した場合、中国での利益増により、営業利益に約10億円のプラスの影響を与えます。一方、米ドルについては、1円円安に変動した場合、調達・製造コスト増等により、営業利益に約1億円のマイナスの影響を与えます。 |
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●対応策 為替レート変動の影響を軽減するため、米ドル・ユーロ等の主要通貨では為替予約を中心としたヘッジを行っております。米ドルにつきましては、米ドル建ての調達と米ドル建ての売上を相殺することにより影響を軽減しております。また、多通貨建てのグローバルでのグループ間決済を、金融機関が提供するネッティングシステムを利用し行っており、子会社が持つ為替変動リスクを当社へ集約することにより為替リスクの集中管理及び効率的なヘッジを行っております。 |
②事業活動に関するリスク
1)デジタルワークプレイス事業 プリント環境の変化に関連するリスク |
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発生可能性:高 |
発生する可能性のある時期:1年以内 |
影響度:大 |
●リスク 先進国を中心に、情報共有の媒体としての役割が紙からタブレット端末やスマートフォン等のデジタル機器に急速に移行していることに加え、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、世界中の企業においてリモートワーク、ハイブリッドワーク及びワークフローのデジタル化が加速しており、今後もオフィスにおけるプリント需要は継続的に減少することが予測されます。IDC(International Data Corporation)によると、2025年の世界市場における電子写真方式による総プリントボリュームは、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年レベルと比べて約3割減となると予測されております。カラープリントは2019年比で82.9%に留まるものの、モノクロプリントは63.0%まで落ち込む予測となっております。永続的にプリントボリュームが下落し続けるわけではなく、ある水準で下げ止まるという見方もあるものの、現時点では、それがどの水準で、いつなのかの確証は得られておりません。このような状況下で、今後の顧客動向に迅速に対応ができない場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 今後も先進国や大企業を中心に紙文書のデジタル化が進み、複合機のスキャン需要並びにプリント出力のセキュリティ対応や管理強化等のオフィスソリューションのニーズがますます増加することが予想されます。これまで以上に、プリント出力にオフィスソリューションを組み合わせた新たな発想によるサービスやソリューションを提供できる可能性が広がると考えております。 |
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●対応策 当社グループでは、複合機を活用したスキャンサービス、ドキュメントマネジメントサービスの拡大を中心に、多様化する顧客のニーズと、オフィスにおけるプリント出力機会の減少リスクへの対応を進めております。 プリント出力契約におきましても、顧客における請求管理、支払い業務や予算管理の簡素化のため、当社では、米国を中心に当社独自のワンレート・サービス契約(注)を提供し、好評を博しております。 同契約の今後のさらなる拡大や他地域展開に加え、リモートサービス推進によるサービス効率化・省人化の加速、さらに価上昇に応じた価格対応や、インド等のプリント出力機会に成長余力のある国や地域におけるカラー複合機の設置拡大等により、プリント出力減少の環境下においても安定的な利益創出が可能な体制を構築してまいります。
(注)複合機のハードウェア・消耗品・プリント管理・セキュリティ対策を含むサービスを一括提供し、定額の月額課金サブスクリプションモデルにすることで、顧客の運用管理及び導入コストの削減を図る契約形態 |
2)各国・各地域の規制 |
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発生可能性:高 |
発生する可能性のある時期:1年以内 |
影響度:中 |
●リスク 当社グループの事業活動の多くの部分は、北米、欧州及びアジア諸国といった日本国外で行われており、その国や地域固有の法制、規制や承認手続きの影響を受けております。米国と中国の貿易摩擦に端を発する相互関税の引き上げ、技術輸出規制等の経済措置の動向には常に十分な注意を払っておりますが、将来、各国の政府や国際的枠組による規制、例えば税制、輸出入規制、通貨規制、個人情報保護規制、デジタル関税、その他各種規則等が新規に導入される、又は変更された場合には、これらに対応するための費用が発生し、事業活動に支障をきたす可能性があります。特に、個人情報保護規制については、巨大IT企業でのターゲティング広告への規制法案や欧州GDPR等、各国で法制化、罰則が強化され、当社で推進しているDX関連事業への影響が高くなります。 さらに、主要国における予期せぬ戦争状態等の発生により、それに対する各国の制裁措置が発動された場合、当社グループが予期しない法制、規制や承認手続き等の変更に直面するリスクがあります。 また、特に、当社グループのヘルスケア事業では、事業活動を行っている各国の様々な医療制度や許認可の手続きの影響を受けております。医療制度改革等によって、予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、その環境変化に速やかに対応できない場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 新制度導入や制度改定による市場参入要件の新設・変更に迅速に対応することで、当社にとって販売機会創出あるいは事業継続強化の可能性があります。特に、環境法規制への対応、個人情報保護や情報セキュリティに関する規制への対応は、当社が強みとする環境経営やITサービス・ソリューションに追い風になるものと認識し、対応を進めております。 また、ヘルスケア事業では、各国医療政策の情報収集、専門学会等との連携により対応を行なっております。医療政策による先端技術の導入は新たな市場創出につながります。 |
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●対応策 各国・各地域の法律・規制の動向、及び地政学リスクの変化には、常に十分な注意を払い、情報の収集に努めております。各地域の法務担当者と連携し、海外各地域の実情を把握し、必要に応じ、弁護士、コンサルタント等、専門機関の協力を得て、国あるいは地域ごとにリスクを判断し、対策を講じております。 ヘルスケア事業においては、近年、診断向上や医師の負担軽減に役立つAIを用いた画像診断の利用が、新型コロナウイルス感染症をきっかけに増大し、かつ、医師偏在の課題解決につながる遠隔医療、未病・個別化医療のニーズを背景にした遺伝子検査等への期待が高まっております。当社は、各国の医療政策に応じた対応を進め、最先端の医療サービス実装に向けた取組みを進めてまいります。 |
3)次世代技術変化 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:3年以内 |
影響度:中 |
●リスク 生成AIの急速な普及や環境法規制等といったグローバル規模での中長期トレンドの進行に伴い事業環境が大きく変貌するリスクがあります。これらの変化の中で、他社に先んじた技術革新は当社グループにとって重要な競争優位の源泉ですが、競合他社が先行して類似技術や代替技術を開発し事業活用する可能性があります。また、グローバルかつ広範な視点で競争優位になり得る革新的技術を開発対象として見定め、迅速・柔軟に市場に提供できなければ、長期にわたり市場でのポジションを喪失する等、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 中長期トレンドの変化は業界における企業間の競争優位性に大きな影響を持つことが予想され、新規市場への参入機会を生む場合があります。その中で、他社に先んじた技術革新による競争優位性の獲得のためにデジタル技術を駆使した開発の高速化が不可避であり、これに適応することで開発・生産が効率化されると考えられます。特にデジタル技術の変化については、生成AIを積極的に活用することで新たな事業機会を創出する可能性があります。また、競争優位を獲得・維持するためには、事業に必要な技術を全て自社で用意するのではなく、社外と連携しエコシステムを自ら迅速に再編し柔軟に対応する能力が欠かせないと認識しております。 当社グループの技術開発力と、各事業において優れた技術を持つ企業が連携することにより、多様化する顧客課題に対応した解決策を導き出す機会を得ることができると考えております。こうした取組みを通して、社会に価値を提供できる企業への変革に取り組んでまいります。 |
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●対応策 当社グループは、グローバルかつ広範な技術理解に基づき、材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術とIoT・AIに代表されるデジタル技術というユニークで幅広い技術ポートフォリオを有しております。研究開発拠点が相互に連携して、幅広い技術横断視点で競争優位を確立するためのコア技術を見定め、マテリアルズ・インフォマティクス等データ駆動型の開発手法を駆使して迅速にコア技術を開発してまいります。 また、コア技術とIoT・AIを融合した「見えないものを見える化する技術」をプロダクトとして具現化し、デジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリント、ヘルスケア、インダストリーの各事業より顧客へ提供しております。さらに生成AIをかけ合わせることにより、さらなる顧客価値の提供や業務効率化等の効果が予想されます。また、当社の技術戦略やコア技術資産を外部に積極的に発信し、環境デジタルプラットフォームや画像IoTを用いて現場のDXを加速させる「FORXAI(フォーサイ)」を介して大学、研究機関、スタートアップ等の幅広いパートナーとエコシステムを構築してまいります。これらの取組みにより、当社グループは気候変動・デジタル革命に伴う社会課題の解決に向けたイノベーションを起こし、次世代技術変化のもたらすリスクに対応してまいります。 |
4)新製品への移行 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:3年以内 |
影響度:大 |
●リスク 当社グループが事業展開する分野は、ハードウェア・ソフトウェアの急速な技術的進歩による製品・サービスに求められる機能の汎用化が早く、製品ライフサイクル期間内であっても性能・サービスの内容・機能の改善が求められる事業分野になります。このため、顧客・市場ニーズに対応するため常に革新的な技術開発に挑戦し、多くのリソースを投入して研究開発を行っておりますが、新製品・新サービスへの移行には多くのリスクが内在しております。例えば、開発又は生産の遅延、量産初期段階での品質問題、製造原価の変動、新製品導入に伴う現行製品への販売影響、半導体・部品・材料の調達影響等は、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、競合他社から当社新製品・新サービスと類似製品・サービスが先行投入される等競合他社の新製品・新サービス市場導入時期により当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 市場での競争力を維持・拡大するためには、顧客の声を聞き、絶え間ない改善に取り組み、顧客ロイヤリティを獲得する必要があります。そのためには顧客やパートナー企業と向き合いながら、解決すべき潜在的な課題を深く理解することが重要です。当社グループには、現場に密着した開発姿勢が根付いており、現場を観察しワークフローを洞察することにより潜在的なニーズを抽出できる機会が多くあります。これらの潜在的なニーズを開発にフィードバックすることにより、顧客価値を提供できる製品やサービスを生み出すことが可能になります。 また、今後予想されるモノづくりの複雑化や環境配慮への社会的要求は、モノづくりにおけるプロセスモニタリングの複雑化を示唆しております。これは、当社のセンシングデバイスを中心としたモニタリング技術にとって、新製品投入の機会となり得ると考えております。 |
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●対応策 当社グループは、各事業分野において顧客満足度を継続的に高め、顧客ロイヤリティを向上させる一方、市場変化の激しい状況を考慮し、競合に対して競争力のある新製品やサービスを計画的に市場導入しております。 例として、デジタル印刷機の自動品質最適化ユニット「IQ-501(インテリジェントクオリティオプティマイザー)」では、従来印刷現場のオペレーターが時間をかけて行っていた細かな調整作業に着目し、この工程を自動化し再現性を高めることにより、顧客の生産性向上に貢献しました。偏光板用新世代光学フィルム「SANUQI(サヌキ)」では、偏光板メーカーの現場に入ることにより、新たな生産課題を発見し、課題対策を新材料の機能設計に落とし込み具現化した製品を顧客へ提供しております。また、ヘルスケア事業では、X線動画像を撮影し高度な画像解析処理を行うことで、従来のX線静止画では得られなかった、生体内の組織の動きの情報を診断情報として取得することができる「X線動態解析」をはじめとした高付加価値なイメージング解析により、簡便に高度な診療を可能とする製品・サービスを提供しております。 循環型社会への貢献の点では、再生プラスチックに高い機能性を付与してアップグレードリサイクルし、複合機をはじめとするきょう体表面に採用するほか、社外製品への展開もしております。 加えて、将来予想される環境対応型モノづくりにおいて市場が形成された際、迅速に製品の市場投入ができるよう、例えば、バイオものづくり領域におけるプロセスモニタリングに関する研究開発を外部機関と連携して実施する等の取組みを行っております。 |
5)他社との協業、企業買収等について |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:中 |
●リスク 当社グループは、事業競争力の強化あるいは効率化の観点から、他社との協業、資本提携・企業買収等を進めております。 企業買収等に伴い、のれん及び無形資産を計上しており、定期的に減損テストを実施しております。事業環境の変化に伴い、買収対象会社に係る将来キャッシュ・フローの低下が見込まれた場合等では、減損損失を認識する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 当社グループが実施する他社との協業や企業買収等は、事業競争力強化や効率化を目的とするものであり、事業ポートフォリオ強化にとって有効な手段であると考えております。双方が有する技術・製品・顧客基盤・人財等の経営資源を有効活用していくことにより、持続的な事業成長の機会が得られると認識しております。 |
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●対応策 当社グループは、他社との協業や企業買収等に際して、当社との戦略的適合性、計画の蓋然性、投資額の妥当性、リスク対応等の観点から投資評価を行ったうえで、投資の可否を見極めております。具体的には、投資回収期間及び投資額等の妥当性判断のため、投下資本に対する期待収益指標として事業別のハードルレート及び中期経営計画ごとの全社加重平均資本コストを基準の一つとして設定しております。 また、投資実施後のモニタリングとして定期的に投資レビューを実施し、上記の加重平均資本コスト及びハードルレートの達成状況に加え、収益性、市場成長等の観点から投資案件ごとの当社企業価値への貢献状況を見極め、投資時点の計画からの変化に対しても迅速に対策を講じられるようにしております。 |
6)生産・調達等 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:1年以内 |
影響度:中 |
●リスク 当社グループの主力事業であるデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業及びインダストリー事業では、コスト競争力強化と市場への迅速な製品供給のために海外での生産活動を継続しております。重要な活動拠点の一つの中国では、経済発展とともに法制面の改定やインフラ整備等も進んでおりますが、法的な変化、労務政策の難しさ、人件費の上昇、輸出入規制や税制、環境規制の変更、台湾にかかわる問題等、予測困難な事態が発生する可能性があります。また、中国のみならず新たに各国の法的な変化、税制・規制見直しによる事業影響が懸念されます。継続して、世界的なインフレによる生活費上昇等の影響により、各国における最低賃金切上げによる労働者の賃金上昇リスクが高まっており、生産コストの上昇につながる可能性があります。生産活動においてこれらのリスクに対処できない場合は、当社グループの経営成績及び成長戦略に悪影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは、特定の製品、部品や材料、及びエネルギーを世界中の複数のサプライヤーから調達する方針を取っております。それらのサプライヤーに不測の事態や震災等の自然災害が発生した場合、当社グループの生産及び供給能力に悪影響を及ぼす可能性があります。 当社グループの生産活動において使用する鉄やアルミニウム等の金属製品、原油を原料とする石油化学製品、レアアース等の希少天然資源等の原材料価格、及びエネルギー価格の高騰は当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業では、調達及びトナー領域において他社との協業・アライアンスによりレジリエンス力を高め、グローバル競争力の強化・安定供給、さらなる事業強化を図ることで持続的な事業成長の機会が得られると認識しております。 |
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●対応策 当社グループは、生産に関するリスクへの対応及び事業環境の変化に対する柔軟性を向上させるため、日本・中国・マレーシアにおいて製品組立の生産拠点を展開しており、特に近年様々な面で高まりを見せる中国のカントリーリスクへの対応として、生産規模の大きい主力製品を中心に中国外生産の比率を高めております。 主力事業であるデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業の消耗品における部品生産及び印刷用トナーの充填を行う拠点として、欧州・北米に当社生産拠点を展開し、消費地生産による需要変動への柔軟性を確保しております。 主力調達地域である日本・中国・ベトナム・マレーシアにその活動に特化した部門を設置し、調達にかかわる各地域の規制・制限・変化等の情報を収集することで、対応の迅速化を図っております。 また、サプライヤーでの品質・生産性向上を含めたコストの競争力を高めるためのコラボレーション活動を推進しております。具体的には、品質改善活動をサプライヤーと協業して推進すること、当社が保有する生産工程の自動化等の生産技術をサプライヤーに導入することにより、生産性の向上と品質・コストの競争力を高めております。 さらに、主要な原材料・電子部品について集中的な調達を行い、市況・市場・業界変動の中でも品質・供給・コスト競争力を維持する活動を行っております。また、他社との協業・アライアンスを活用した調達機能の基盤強化を検討してまいります。 BCP管理体制については当期から、より開発・品質保証・調達・生産で連携した体制へと強化しております。 サプライヤーの材料調達状況、生産稼働状況、出荷等の物流状況を迅速に把握し、早期の意思決定による課題対応を推進しております。 部品のエリア調達へのシフト加速と代替品の評価・検証から生産投入に至る一連の活動を、開発・生産・品質保証における最優先課題として対応を行い、リスク回避を継続しており、これらによる事業活動への影響を抑制しております。 |
7)グローバルサプライチェーン |
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発生可能性:中 → 高 |
発生する可能性のある時期:1年以内 |
影響度:大 |
●リスク 当社グループの生産、販売活動の多くの部分は日本国外で行われており、サプライチェーンもグローバルに展 開しております。各国・各地域の物流上の問題が当社グループのグローバルサプライチェーン全体に波及し、供給遅延により当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 当社グループは中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)における生産が多く、その拠点からグローバルに供給を行っております。中国・ASEAN各国で新たな感染症のパンデミック等による活動制限が発生した場合、港湾・空港での荷役作業の停滞・混雑により物流が滞り、販売拠点への供給に大きなリスクを及ぼす可能性があります。 一方、製品の輸出先である欧米主要国では、主要各港での港湾労使交渉の長期化・決裂によるストライキの発生や、パナマ運河の水不足による通航制限継続、スエズ運河航行制限(喜望峰ルートへの迂回)影響による供給リードタイム延伸とコンテナ輸送費上昇の長期化等により、販売拠点における在庫不足の発生によって顧客への納品遅延による売上機会損失等、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、日本国内では「2024年問題」による供給リードタイム延伸や物流コストの上昇リスクが、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 なお、「発生可能性」は、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化による紅海・スエズ運河ルート回復の目途が立っていない状況が継続していることから、評価を「中」から「高」に変更しております。 |
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●対応策 当社グループの主力事業のひとつであるデジタルワークプレイス事業や、プロフェッショナルプリント事業では、物流実態に応じた販売拠点の在庫見通しシミュレーションを適宜実施しております。将来の在庫見通しに応じて、各地域への供給量の振り分け、物流ルートを柔軟に変更する等、販売への影響を回避しております。 中国・ASEANの港湾課題については、新規フォワーディング会社のサービス利用や通常輸出港以外の代替港利用によりフレキシビリティを確保し、課題発生時には、生産拠点からの貨物の優先付けを行うことで、出港地側での供給リスク回避・低減に努めております。 海上輸送については、従来取引がある主要フォワーダーとのコミュニケーション・情報連携を強化し、コンテナ船のスペースを安定的、かつ柔軟に確保しつつ、コンテナ輸送単価の上昇幅を最小限に留める交渉・調整に努めております。特に、欧州航路においては、イスラエル・パレスチナ情勢に注視しながら、喜望峰迂回ルートによる延伸日数影響を踏まえた適切な供給調整を図り、欧州販売拠点での販売に与える影響や、物流コスト増加による影響を最小化しております。 また、日本国内においては、物流委託パートナー業者とともに「2024年問題」に最優先で取り組み、運搬できないというリスクを回避・低減しつつ、配送効率化施策等を積み上げ、物流コスト上昇の影響の吸収・最小化を図ります。 当社グループでは、必要なものを必要な時に必要なだけ必要なところへ供給できる、柔軟な物流体制を構築し、引き続き、顧客の満足度向上に努めてまいります。 |
8)製造物・品質責任 |
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発生可能性:低 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:中 |
●リスク 当社グループは、国内外のグループ会社や生産委託先において厳格な品質保証体制を構築し、顧客に対して高い性能と信頼性を備えた製品及びサービスを提供しております。万が一、当社グループの製品あるいはサービスに欠陥が発生した場合、その欠陥に起因した損害に対して当社グループは賠償責任を負う可能性があり、また、その欠陥に対して多大な対策費用が発生する可能性があります。さらに、当該問題により、企業ブランドや製品ブランドが毀損され経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●対応策 重大品質問題を起こさない仕組み・取組みとして、品質に関する責任と権限を担う執行役又は執行役員を議長とする「品質保証責任者会議」を設置し、グループ全体の品質マネジメントを統括しております。品質に起因するリスクの極小化と顧客満足度向上に向けた方針・計画の推進・進捗確認、情報共有及び是正・改善に取り組んでおります。さらに、各事業では、品質課題についてPDCAサイクルを徹底することで継続的な品質向上に取り組んでおります。 製品品質にかかわる問題が発生した場合は、当社グループ内世界統一の「市場品質速報データベース」に情報を登録することが義務付けられており、登録された情報は即座に品質担当役員と事業責任者へ伝達され、関連部門で共有、必要な対策・情報開示が迅速に行えるようになっております。また、過去に発生した品質問題に対し、原因の解析、対策の実施及び技術・評価基準への反映を行い、再発防止に努めております。また、法的基準よりも厳しい独自の製品安全基準を設け、製品の様々な箇所について詳細に規定し確認を行っております。これらの施策をより確実に実施するため、「製品安全教育」をグループ内に展開し、品質マインドの定着に努めております。 さらに、品質不正を起こさない仕組みとして、当社グループでは「品質不正予防ガイドライン」の策定・運用と定期的診断・監査を実施しております。継続的に、ガイドラインの内容や運用の見直し・強化、グループ本社としての指示や教育・啓蒙、各所における好事例共有等を実施し、運用の徹底を図っております。 また、デジタル社会の進展や当社IoTサービス関連事業の拡大に伴い、セキュリティ事故のリスクも高まっております。当社グループでは、リスクの極小化に向け、サービス事業及びセキュリティ対応に関連する社内規程の運用を強化しております。製品セキュリティ事故発生時の対応と脆弱性への対策・予防として、製品の脆弱性に関する情報を全社で一元管理し必要な対応を推進するとともに、公的機関等とも連携するための全社共通組織として「KONICA MINOLTA PSIRT(注)」活動を展開しております。加えて、AIを活用した製品・サービスの販売も増えており、AIガバナンス体制を構築し、リスクアセスメントの実施と社内外のAI有識者から構成する「AI倫理審査委員会」での審議等により、AI利活用における倫理的・法的な問題発生リスクの低減に努めております。
(注)KONICA MINOLTA PSIRT (Product Security Incident Response Team)、当社グループの製品脆弱性対応チーム |
③その他のリスク
1)人権 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:中 |
●リスク 当社はグローバルに事業を展開している一方で、東南アジアに多くの部品・材料の取引先があります。サプライチェーン全体での人権が十分尊重されていない場合、サプライチェーン上において児童や移民労働者が強制労働、長時間労働等の人権に関する負の影響が発生する可能性があります。こうした事態は、生産及び販売活動の停滞や企業ブランド・製品ブランドが毀損され、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、2011年に国連人権理事会において「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」が採択されたことにより、各国で人権尊重に関する国別計画(ビジネスと人権に関する国別行動計画)の策定が進められ、例えば、英国では現代奴隷法、アメリカではウイグル強制労働防止法、ドイツではサプライチェーンにおける企業のデュー・デリジェンスに関する法律等が制定されております。最近では、EUにて企業持続性デュー・デリジェンス指令(CSDDD)案の採択や強制労働法により生産された製品のEU域内での流通、EU域外への輸出を禁止する規則案の政治合意がなされる等、各国における法規制の強化が加速しております。これらに対応するための費用が発生する、法規制に対応する社内整備に工数がかかる、また予期しないような事態に対応できない場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 世界各国で人権デュー・デリジェンスを実施することが政府調達要件や製品ラベル取得要件として検討されており、これに対応することは当社グループにとって販売機会の創出につながる可能性があります。 |
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●対応策 当社は、グローバルに事業を展開する企業として、コニカミノルタグループ行動憲章、コニカミノルタグループ人権方針、コニカミノルタサプライチェーン行動規範において、事業活動における最も基本的な要件の一つとして人権尊重を規定しております。また、これらの方針に基づき人権デュー・デリジェンスを実施し、人権尊重に努めるとともに当社グループの事業に関連するビジネスパートナーやその他の関係者に対しても、人権の尊重を求めております。こうした活動では国連グローバル・コンパクト(UNGC)、レスポンシブル・ビジネス・アライアンス(RBA)行動規範等、グローバルに認知された団体の活動理念を反映させております。 人権デュー・デリジェンスにおいては、UNGPsに基づき当社グループの事業活動や取引の結果、潜在的又は顕在的に負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題を抽出し、抽出した負の影響を受けるステークホルダーとその人権課題に対して影響度を評価し、特に優先度が高いと思われる人権課題を特定しております。例えばサプライチェーン(地域住民、先住民を含む)に関しては、サプライチェーン上の強制労働、児童労働、安全衛生等の人権課題に対して当社ではCSR調達の展開をはじめ、責任ある鉱物調達問題への対応をグループ全体で推進する体制を構築することで、負の影響の防止又は軽減に取り組んでおります。 CSR調達の展開においては、RBAのフレームワークに基づいて、自己診断アンケートを使ったCSR診断、CSR監査によるリスク評価と是正を行っております。自己診断アンケートを使用したCSR診断ではアンケートの採点結果により、A~Cの3段階にランク分けし、グループ生産拠点は総合ランクA、取引先は総合ランクB以上を目標として設定しております。目標ランクに達していても、労働(人権)を含め評価が低い項目があった場合は自主的な改善をお願いしております。2023年度において、コニカミノルタグループの生産拠点5拠点、取引先30社で診断を実施し、生産拠点は全て総合ランクA、取引先は全て総合ランクB以上となり、総合ランクB未満と診断されたハイリスクな取引先はありませんでした。 また万が一、人権侵害の申し立てが発生した場合には、ステークホルダーとの真摯な対話と速やかな調査を実行し、人権に対する負の影響を直接的に引き起こした、あるいはこれに関与したことが明確である場合は、社内外のしかるべき手続きを通じて是正策を講じてまいります。 |
2)大地震・自然災害・感染症等 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:大 |
●リスク 当社グループは、研究開発・調達・生産・販売等の拠点を世界各国に置き、グローバルに事業活動を展開しております。地震・火災・気候変動に伴う大規模な台風・洪水・森林火災等の災害、大規模な感染症の発生、また戦争・テロ行為・サイバー攻撃等が起こった場合、当社グループの設備等が被害を受け、一時的に操業が停止し生産及び出荷の遅れにより、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 特に、首都直下、南海トラフ等における巨大地震の発生においては、想定を超えた規模で被害が発生する可能性があり得ると考えられます。 当社グループは、防災対策や事業継続マネジメントを今後も継続して推進してまいりますが、このような事態が発生した場合、機能停止、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害等による顧客へのサービスの提供や製品出荷等の停止等、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。 |
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●対応策 当社グループは、災害や、感染症の発生、戦争・テロ行為・サイバー攻撃等が起こった場合の情報を、危機管理担当役員が集中管理し、従業員の安全を最優先として適切な対応をとる体制を構築しております。 巨大地震をはじめとした日本国内での災害に対しては防災中期計画に基づき、予防・減災対策、応急対策・初動対応、復旧・復興対策の観点でハード・ソフト両面からの対応実践力の強化を図っております。具体的には建物の耐震対策、通信・データ関連の主要サーバーの海外設置、安否確認システム・緊急時情報データベース等のITによる被災時情報共有基盤の整備等の対策を講じております。大規模災害時には国内に有する約220のグループ拠点について緊急時の情報ネットワークを構築し、被害情報の迅速な収集と、必要な支援や対策を実施できる体制を構築しております。さらに、各拠点で従業員が災害時に命を守るための自律的行動をとれるよう、定期的に実践的な防災訓練や教育を実施するとともに、働き方の変化に対応すべく、ITツールを活用し、テレワーク時においても防災体制が機能するよう整備しております。 また、当社グループでは、事業を継続し企業としての社会的責任を遂行するとともに、顧客が必要とする製品やサービスを安定的に供給するために、主要消耗品の生産拠点の分散化によるリスクの低減、調達リスクの高い品目については代替手段の検討、在庫の確保等、対応策の有効性の確認と改善を図っております。各拠点においては、地域の自治体と連携し、自然災害発生時の避難場所や飲料水及び物資の提供等、地域貢献にも努めております。 |
3)気候変動・環境規制 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:中 |
●リスク 世界全体が低炭素社会へ移行した場合、環境関連の法規制が厳格化するおそれがあり、追加的義務及び費用が発生する可能性があります。ステークホルダーからの再生可能エネルギー調達の要求が高まることにより、投融資を受ける機会及び販売機会の逸失、企業ブランドの低下につながる可能性があります。また、オフィスにおける紙への出力の減少、化石燃料や化石資源の代替化による製造・調達コストの増加等も当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 一方、世界各地で気候変動による物理的影響が顕在化した場合、気候災害による森林資源の被災等により、紙原材料の調達が不安定になり事業機会の損失につながる可能性があります。また、気候パターンの変化等気候変動の慢性的な影響が発現すると、原材料等の供給量が制限又は一時停止することで、当社拠点及びサプライヤーで一時的に操業が停止し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。 加えて、大気汚染、水質汚染、有害物質の除去、廃棄物処理、製品含有化学物質、製品リサイクル、容器包装、土壌・地下水汚染等に関する様々な環境法及び規則の適用を受けており、それらの遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動、及び開発・販売活動にかかわる環境責任に伴う費用負担や賠償責任が発生する可能性があります。
気候変動に関するリスクの詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。 |
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●機会 低炭素社会への移行が加速した社会では、顧客の気候変動に関する課題の解決に貢献することで、事業機会につながる可能性があります。当社グループが培ってきた画像技術とIT技術を融合させ、社会・顧客の移行計画の実現へ貢献する新たなサービスやソリューションを提供することで、売上増大を図ることが期待できます。 短期から中期的には、印刷産業及びアパレル産業のサプライチェーンを変革するデジタルソリューション、製品のカーボンフットプリントを低減した機能材料、使用済みプラスチックの分別性・リサイクル率向上に貢献する材料技術やセンシング技術、インクジェット技術による生産プロセスの変革、メタンガスの漏えいの早期発見と排出量の削減に貢献できるガス漏えい検査システムを提供してまいります。 短期的には、継続的な省エネルギー活動により自社工場での原価低減に寄与するとともに、環境・エネルギー視点で取引先やビジネスパートナーと連携することで新たなビジネス機会を創出できる可能性があると考えております。 一方で、気候変動の影響が発現する場合においても、事業機会を生み出す可能性があると考えております。 中期的には、異常気象・自然災害への防災・減災に貢献するセンシングソリューション、災害医療現場で活用できる画像診断ソリューション等、社会の新たな需要を取り込むことができると考えております。 当社グループでは、こうした社会課題の解決に直結した事業を強化しております。 |
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●対応策 リスク低減策としては、当社グループでは生産工程の効率化を徹底して追求するとともに、生産技術の開発・改善を進め、CO2排出削減とコストダウンを同時に実現する「グリーンファクトリー活動」を推進しております。また、自ら培った省エネ技術・ノウハウをデジタル化して提供し、サプライヤーと一体となりエネルギー削減に取り組む「カーボンニュートラルパートナー活動」を通じて、サプライチェーン全体でのエネルギーコスト削減とCO2排出削減の最大化を目指しております。また、再生可能エネルギー100%での事業運営を目指し、国際リーダーイニシアチブ「RE100」に加盟しております。 気候変動による物理的影響が顕在化した場合への適応策として、原材料の供給ルートを粗原料まで遡り把握し、安定供給リスクが高い原材料は、調達先の複数確保や代替材料の検討に取り組んでおります。また、デジタルワークプレイス事業・プロフェッショナルプリント事業では、消耗品として供給する部品生産並びに印刷用トナーの生産及び充填を行う当社生産拠点を、日本、欧州、北米に複数展開し、消費地で供給できるレジリエンスの高いサプライチェーン体制を確保するよう努めております。 機会最大化の仕組みとして、グリーンプロダクツを創出し、事業企画や商品企画の段階で気候変動の課題解決への貢献を最大化してまいります。
「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に関連事項を記載しております。 |
4)知的財産権 |
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発生可能性:低 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:小 |
●リスク 当社グループは、製品やサービスの開発の中で多くの技術あるいはノウハウを蓄積し、それらを保護するための知的財産権の取得に努めております。しかしながら、一部の地域・国では、知的財産権を保護する制度やその適正な運用が不十分な場合があり、第三者が当社グループの知的財産権を使用して類似製品を製造、販売することを防止できない可能性があります。 また、当社グループでは他社の権利を侵害しないように製品等の開発を進めておりますが、見解の相違等により他社の知的財産権を侵害しているとされ、製品等の開発や販売に支障をきたす可能性や多額の損害賠償責任を負う可能性があります。さらに、現在当社グループがライセンスを受けている第三者の知的財産権の使用が将来差し止められる、あるいは不当な条件に変更される可能性があります。 |
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●機会 当社グループの事業、製品、サービス等により提供される顧客価値の源泉となる当社独自のビジネスモデル、技術、データ等の知的財産について、特許権等の知的財産権の取得、不正競争防止法によるノウハウ・データの保護要件を満たす管理等、その特性に応じた適切な保護・活用を行うことにより、知的財産を当社グループの持続的な競争優位性の維持、成長のドライバーとしております。なお、各国の産業構造や事業ライフサイクルに鑑み、当社で事業継続するよりも他社で事業化又は事業強化した方がよい場合については、当該事業に関連する特許権等の知的財産権を他社に譲渡又はライセンス供与することにより、産業界全体への貢献及び当社の収益向上を図っております。 さらに、知的財産による社会貢献にも積極的に取り組み、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する持続可能な社会の実現を目指す技術移転のための国際的なプラットフォーム「WIPO GREEN」にパートナー企業として参画し、環境技術関連特許群をWIPO GREENに登録することでSDGsの推進に知的財産面から貢献しております。 |
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●対応策 当社グループは、技術等を保護する知的財産権(例えば特許権)を適切に取得・執行することが困難な国・地域においては、商標権等に基づいて、行政機関と協力し模倣品の押収や輸入差し止めを行う、運営業者と連携し模倣品取扱業者の電子商取引(EC)サイトへの出店差し止めを行う等、様々な方法により類似製品の流通阻止に努めております。 他社の知的財産権に関しては、製品開発の各フェーズにおいて入念な調査・確認を実施し、他社の知的財産権を侵害していないことを商品化の要件としております。万が一、見解の相違等により他社から知的財産権の侵害を指摘された場合やライセンス条件の変更等の事態に備え、非侵害の主張やライセンス条件等の交渉・訴訟対応を行うための専門人財を当社知的財産部門に配置するとともに、経験豊富な国内外の弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応する体制を整えております。 これらのリスク対応に加え、知的財産が競争優位性の維持・強化の有効なツールであるとの認識に基づき、当社グループの持続的な事業成長を知的財産面から推進するため、各事業の特性や事業ポートフォリオ上の位置付けに対応して事業ごとに知財戦略を構築し、戦略に沿った知財投資及び知財活動を実行しております。 また、これらの知財戦略構築や知財活動の実効性を高めるため、知財人財育成のための戦略と施策を策定・実行し、専門知識・スキルとビジネスセンスを兼ね備えたプロ人財の育成に努めております。 |
5)人財確保 |
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発生可能性:中 |
発生する可能性のある時期:3年以内 |
影響度:大 |
●リスク 当社グループの新規事業を中心とした将来的な成長には、優秀な人財の継続的な獲得が欠かせないと認識しております。特に、先端技術人財であるAIのスペシャリスト等のIT人財の獲得は獲得上のコンペティターが多く、また、その業界も日本に限らずグローバルに渡るため、報酬等の一要素だけで惹きつけることは困難であり、会社の魅力や働くことの付加価値への訴求に対する重要性が増しております。 当社グループの魅力や働くことの付加価値を高めることができない場合、人財確保がより困難になる可能性があります。 |
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●機会 当社グループは、様々な製品を創り出しており、多様な技術領域を有しております。また、デジタルワークプレイス事業等、BtoBビジネスを営む中で、豊富な「データ」を蓄積しております。このデータを活用して、製品とサービスとの組合せ、材料技術とIT技術の組合せ等、様々な組合せからなる「形」を無限に作り出せる可能性に魅力を感じるIT人財は、人財マーケットに多く存在していると考えております。 特に、当社グループが有する豊富な顧客は、その存在そのものが、当社グループのデータビジネス展開を有利に進める基盤となっており、データ分析に魅力を感じる優秀なIT人財を獲得できる機会につながると考えております。 さらに、副業やテレワーク、コア時間のない裁量労働等、従業員に柔軟な働き方を認めている点も、当社グループの魅力として訴求できる点になります。 |
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●対応策 IT人財の獲得にあたり、データサイエンスやAI開発、アーキテクチャ開発等、複数の長期インターンシップを実施しております。この中で、社内研究開発のテーマに取り組みジョブマッチングを向上させるとともに、当社の持つ魅力を対象者に体感いただくことを通じて、人財の獲得に成功しております。また、比較的手薄であった関西地区に2020年10月、高槻サイトに「Innovation Garden OSAKA Center」を新設し、本格的な拠点展開を図ることにより、関西地区での人財確保を進めております。 さらに、海外の大学から専門性の高い外国籍のIT人財を10年以上にわたり継続採用しており、インド工科大学へのリクルート活動に加え、2022年度からはベトナムのハノイ工科大学、ベトナム大学等に対するリクルート活動を開始しております。これらの活動は、優秀なエンジニアの獲得につながるとともに、日本人の技術者にも大きな刺激となっております。 IT人財の育成では、社内におけるIT人財の認定制度を設け、各人財が目指すべきハードルを明確にしたうえで、それに対して必要となるスキルの教育プログラムを用意しております。2023年度までに1,000名のIT技術者を育成するという目標を達成し、さらなる活用に向けた人財の配置を行っております。 また、人事制度の見直しを行い、管理職制度に「エキスパート」職を新設し、ITを含めた専門人財のキャリアアップの道筋を明確にしております。 DX推進による業務環境とプロセスや働き方の急速な変化により、IoT機器の一つとしてドキュメントを扱う複合機の利用方法は顧客により多様化しております。グローバル市場における様々な顧客要望に、より迅速に対応し課題を解決するソリューションを継続的に提供するため、2024年4月、ベトナムの大手IT企業と合弁会社を設立しました。これにより継続的に最先端の人財を確保し、独自の技術を維持してまいります。 |
6)情報セキュリティ |
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発生可能性:高 |
発生する可能性のある時期:特定時期なし |
影響度:大 |
●リスク 昨今、企業を狙ったサイバー攻撃の攻撃手法が高度化、巧妙化しており、中でも、ユーザーアカウントのログオン認証を窃盗し、集中管理されている社内ネットワークに侵入し管理者権限を奪取、不正操作を行うといった被害事例が国内外で多数発生しており、このようなサイバー攻撃に対するリスクは拡大しております。 当社グループにおいても、サイバー攻撃により管理者権限が奪取された場合、不正操作等により、技術、営業秘密、人事等にかかわる当社グループの秘密情報が第三者に漏えい、不正、売買に使用される等の重大な情報セキュリティインシデントが発生する可能性があります。この場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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●機会 当社グループは顧客のセキュリティ対策強化支援も継続的に行っております。IT管理のサービスとしてネットワークやアプリケーションの脆弱性の監視・管理サービス、リスクアセスメントを行うとともに、複合機からの情報漏えいを防止するためのデータの暗号化、パスワード設定やログ管理の機能、設定状況の監視と通知サービスを行う「bizhub(ビズハブ)SECURE」をグローバルに展開しております。 「bizhub iシリーズ」には、社内ネットワークへのウイルス拡散を防止するため、全ての文書・FAXデータのウイルスをチェックする機能を搭載しております。 また、米国のIT管理サービスにおいては、顧客のファイヤーウォールに対して専門家が疑似ハッキングをすることにより脆弱性を診断するサービスも行っております。国内では、マネージドITサービス・「IT-Guardians (ITガーディアンズ)」による包括的なセキュリティ対策(多層防御システム)も提供しております。 これらの機能は継続的に更新を行っており、サイバー攻撃の手法が変化する中においても顧客のセキュリティ対策強化支援を行うことができております。 |
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●対応策 情報セキュリティについて、ネットワークの監視を行い、多様化する攻撃によるサービス停止の早期発見に努めるとともに、定期的にネットワーク侵入テストを実施し、悪用される脆弱性を早期確認する対応を行っております。また、攻撃への備えとして、サイバー保険に加入し、事故発生時の対応フローを整備、当社グループ全体を網羅したセキュリティ推進体制において速やかに対処できるようにしております。 リモートワーク勤務を行う従業員向けに、セキュリティに配慮した物理的な勤務環境を提供するために、外部からの不正アクセス防止のため暗号化通信によるセキュアなネットワーク環境と会社支給パソコン以外の会社のネットワーク接続制限を実現しております。情報漏えい等の注意喚起のため従業員への教育等も定期的に行っております。 さらなる対応強化のため、包括的セキュリティマネジメント体制(Security Management Office)下においてグループ各社に対しグローバルセキュリティ基準を制定し、個社ごとのセキュリティ対応レベルの自己評価とその評価に基づく対策計画の策定・実行を確認するプロセスを運用しております。これらの活動を通じグループ全体のセキュリティレベルの向上を実現してまいります。 |
配当政策
3【配当政策】
剰余金の配当等の決定に関する方針といたしましては、連結業績や成長分野への投資、キャッシュ・フローなどを総合的に勘案し、配当を基本として利益還元の充実に努めることを基本方針としております。自己株式の取得につきましては、当社の財務状況や株価の推移等も勘案しつつ、利益還元策の一つとして適切に判断してまいります。
また、当社は、会社法第459条第1項に基づき、剰余金の配当に係る決定機関を取締役会とする旨を定款で定めております。配当の回数につきましては会社として基本的な方針を定めておりませんが、定款上、毎年3月31日、9月30日及びその他の基準日に剰余金の配当ができることとしております。
当事業年度の剰余金の期末配当は、1株当たり5円の配当としております。なお第2四半期末配当は実施していないため、年間配当は、1株当たり5円となりました。
基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年5月14日 |
2,483 |
5.00 |
取締役会決議 |